人事のホンネ

東京エレクトロン株式会社

東京エレクトロン〈前編〉
若手からベテラン社員まで「自分が社内のパイオニア」意識【人事のホンネ】

東京エレクトロン株式会社 人事部スタッフィンググループリーダー 大久保智也(おおくぼ・ともや)さん  人事部スタッフィンググループ 阪井素子(さかい・もとこ)さん

2024年07月31日

 人気企業の採用担当者に編集長が直撃インタビューする「人事のホンネ」。今回は、半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン(TEL)が登場します。今年、一時は時価総額が日本2位になるなど大企業に成長した東京エレクトロンですが、社内にはベンチャー精神がいまも強く息づきます。若いうちから裁量をもって活躍できる同社では、若手からベテランまで自分が社内のパイオニアという意識をもって働いているといいます。求める学生像やインターンシップへの考え方などを聞いてきました。(編集長・福井洋平)



 ──まずは東京エレクトロンという会社について教えてください。
 阪井素子さん(写真左) 1963年11月11日に創業した半導体製造装置メーカーです。最初はTBS(テレビ局)の出資のもと、創業者たちが半導体製造装置に着目して輸入販売を始めました。創業当初より商社機能にメーカー機能を併せもつことが重要だという考え がありましたが、半導体の需要が高まっていくなかでどうやって利益を創出していくかを考えたとき、「メーカー」となったほうがやりたいことを実現できるという判断があり、業態を変えていき、現在のような半導体製造装置メーカーとなりました。
 太陽電池など、他の事業領域に参入したこともありますが、半導体製造装置の技術を突き詰めていくほうがビジネスとして利益も出るし、技術レベルが高くなり市場のニーズにも応えられるので、今は半導体製造装置を専業としてとしておこなっています。現在、半導体製造装置における世界シェアは4位、日本とアジアでは圧倒的に1位です。また、2024年4月2日にははじめて時価総額で日本2位にもなりました。

 ──それは何が寄与したと思われますか。
 大久保智也さん(写真右) 生成AIをはじめ、半導体に関連するニュースが過熱しています。半導体産業としては、デバイスメーカーは日本以外の海外の企業が強いものの、製造装置は日本企業がグローバルでのシェアが高い。そこが認知されて、今のような好況になっているのかなと思います。

半導体製造商社からメーカーに進化

■東京エレクトロンについて
 ──TELの社員数は。
 大久保 2024年4月時点では、TEL単体だと約2000人、グローバル全体で約1万8000人です。

 ──2024年卒採用について教えてください。
 阪井 総合職、一般職を含めて約400人入社しました。

 ──文系・理系の比率を教えて下さい。
 大久保 8割以上が理系です。2割の文系は営業、生産管理、資材、物流、人事総務といった管理系です。

■エンジニアの職種
 ──エンジニアは細かく職種がありますが、職種ごとに人数枠を設けて採用されるのですか。
 阪井 はい。一番採用数が多い職種はプロセスエンジニアです。

 ──プロセスエンジニアとは何をする職種ですか。
 大久保 半導体製造装置にもいろいろな種類があり、それぞれにプロセスエンジニアがいます。例えば、「エッチング」という装置はガスや圧力などのパラメーターをコントロールして、お客様が希望する半導体のデバイス加工形状をつくります。どんなガスを使えばいいのか、どんな温度調整をすればいいのかといったところを考えるのがプロセスエンジニアです。化学や物理を専攻している人が多いですね。

 ──「装置」と聞くと、ロボットアームがガチャガチャものをつくっている機械のような印象がありますが、プロセスエンジニアはもっと細かな素材の扱い方を調整するんですね。
 大久保 そうですね。半導体をつくる本体のもとはシリコンウエハーと呼ばれる円盤状の素材です。ロボットアームが動く行程もありますが、チャンバーと呼ばれるユニットの中で化学反応、物理現象により微細加工を行う工程もあります。プロセスエンジニアはそういった工程を管理し、半導体製造装置を使ってお客様の求めるデバイスをつくるためにどうしたらいいのかを考えています。

エンジニアは職種ごとに採用 プロセスエンジニアが最多

(写真は工場内で働くエンジニアの様子/東京エレクトロン提供)
 ──オーダーメイドの半導体製造装置をつくっている、というわけですね。プロセスエンジニア以外に多い職種は何ですか。
 阪井 他はメカエンジニアやフィールドエンジニアですね。今は業界自体に勢いがあり、開発するための人材が必要ですので、採用活動には力を入れています。

■2025年卒採用について
 ──2025年卒採用の採用状況はいかがですか。
 大久保 半導体の重要性が認識され、注目度も高まり、株価上昇報道など追い風となるような要素が多かった年で、おかげさまで非常に順調です。学生も私たちの業界に興味を持って調べてくれていると感じました。毎年、エントリー数は過去最高水準を更新しています。

 ──プレエントリーは何人ぐらいですか。
 大久保 現状は2万人を超えています。ですが、そこからイベントに出てくれたり、実際に選考に進んだりする人数は絞られます。

情報系職種のインターンシップは長期間

■インターンシップについて
 ──2026年卒の就活がスタートします。インターンシップはどのぐらいの頻度でやっていますか。
 大久保 いろいろな種類がありますが、広く参加していただきやすいものとしてはワンデイの体験型イベントを8月から毎月行います。

 ──夏のインターンは何日間ですか。
 大久保 いくつかプログラムがありますが、情報系の学生向けに検討しているインターンは3週間です。以前は対面でやっていましたがコロナ禍で一度ストップして、昨年から復活しました。

 ──情報系というのは職種でいうと何ですか。
 大久保 ソフトエンジニアとAIエンジニアです。さきほど説明したプロセスエンジニアと同じく半導体製造装置に携わりますが、装置を使うための各種制御やデータベース構築、インターフェース画面などを開発するのがソフトエンジニアです。また、半導体製造装置にいろいろな付加価値をつけるのがAIエンジニアです。

 ──AIを利用するとどういったことができるのですか。
 大久保 半導体製造装置の自律化です。半導体製造装置はたくさんのデータを取得していますが、そのデータをお客様にとって有益なものに変えていきます。装置が消耗したり、故障で装置を止めたりするのはお客様にとってマイナスとなります。そういったことを機械学習によって少なくしたり、一気に効率化を図ったりすることがAIで可能になります。
 たとえば装置を止めるのと一緒に周辺機器も止めて交換ができるようにしたり、装置自体から「もうすぐ交換が必要になりますよ」と教えてくれるようにしたりするのが、社外に向けたAIエンジニアの仕事です。社内では、プロセスの最適化にAIを使います。こういった条件のときにはどういったパラメーターを使うのがいいか、AIが教えてくれます。

 ──情報系のインターンはなぜ長いのですか。
 阪井 情報系の人材獲得が難しいからです。情報系人材の活躍フィールドはデータアナリスト、セキュリティ関係、アプリ開発と多岐にわたりますので、年々獲得が難しくなり、なかなか職種理解が進まないのが私たちの課題です。インターンシップにしっかり参加していただき、仕事を理解してもらって入社に繋げていきたい、というのが狙いです。インターンシップ経験者の方は当社との関係性ができるので、かなり選考にも残ってくれます。
■情報系インターンシップの選考
 ──インターンも選考しますか。
 阪井 選考をするものもあれば、そのまま申し込んで受けていただけるものもあります。3週間のものは適性検査と2回の面接があります。

 ──どういう人を採りますか。
 大久保 情報系のインターンに関しては最終的に当社に興味を持って入ってもらいたいということまで考えますので、一定の情報系のスキルや、知識を持っていることが前提となります。そして、私たちの企業理念や会社の開発方針に共感してくれる人がいいなと思います。

 ──エントリーはいつですか。
 大久保 随時受け付けています。2026年卒も大学3年、修士1年の4月にオープンしていて、エントリー可能です。

 ──インターン参加者については、本選考も早くスタートするのですか。
 阪井 2026年卒に関しては、年内は基本的にイベント活動だけで、本格的な面接は12月、1月ごろから始まります。

 大久保 学生側から「早期のインターンシップに参加した学生にはできるだけ早めに本選考を案内してほしい」という要望があるので、そこに対応することも今後は必要なのかなと考えています。

常にゼロベース思考求められる 自分がパイオニアという意識

■求める人物像
 ──どういう学生に入ってほしいですか。
 大久保 当社は2006年につくられた「TEL Values」という形で会社の価値観、考え方を定めているので、ここに共感して、同じ志を持ってくれる人がいいと思っています。

 ──TEL Valuesができたきっかけは。
 大久保 ITバブル後、社内の士気も下がっていたときに、もう一度原点に立ち返って企業理念を実現するためにはどんな取り組みが必要か、社員で話し合いました。そこでTELグループの価値観や社員一人ひとりの心構えや行動規範を明示したTEL Valuesを策定しました。誇りとチャレンジとオーナーシップ(主体性)、チームワーク、自覚を重視しています。

 ──オーナーシップを重視されている理由は何ですか。
 大久保 当社は若いうちから裁量を持って活躍できる、自由闊達な会社です。それゆえにしっかり自身のミッションを持ち、やり遂げる。自分が当事者であるという考え方のもとで、行動してほしいと考えています。

 阪井 設立から60年が経っても社内にはベンチャー気質が残っています。チャレンジ精神やオーナーシップをもって仕事に取り組むことが、TELらしさの醸成につながっているのかなと感じています。

■社風
 ──作っているものが大きいだけにチームで仕事をすすめるイメージですが、実際の仕事では何を重視しているのでしょうか。
 大久保 チームでも仕事をするのですが、技術領域がすごく幅広いので、ある意味社員一人ひとりが「自分が会社の中でのパイオニア」という存在です。ベテランだけではなく、かなり若い人でもそういう状況です。ちゃんと自分の知識を磨いて、それをもとにチームを引っ張る。その領域においては自分の上司や先輩を超えて、取り組みを推進しています。

 ──管理部門でもそうした社風は感じますか。
 阪井 すごく感じますね。ゼロベース思考を求められて、「前にやっていたから、今年もそのまま」というよりは、本当にそれが合っているのかどうか、必ず自分で考える。もし、課題があればどうしたらいいか考え、どんな意見でも伝えて、それが「いいね」となったら「やってみよう」となります。

 大久保 私たちの取り組みも上司の指示から何か始まるということはほとんどなく、課題の特定、提案と施策の実行に至るまで、各担当がやっていますね。
(社内の仕事風景/東京エレクトロン提供)
 ──お二人は、これは一からやったという仕事はありますか。
 大久保 採用以外の話になりますけれども、私は3~4年前にキャリアに関する「テクニカルキャリアラダー」という人事制度構築に携わりました。当社はいわゆる等級、GTCレベルを2017年に導入しました。CEOを20として、1から20までのグレードを定めたものです。それぞれの定義を定め、マネジメントのキャリアの定義としては一定の明確さがあったのですが、マネジメントではない社員、特に技術者には専門性を推しはかる物差しがなかったのです。そこで高度専門職のキャリアラダーを定めました。私は中途入社で当時は入社3~4年目と社歴としては浅かったのですが、長く会社に残るであろう仕組みづくりに取り組むことができたのは非常に印象に残る出来事でした。

──阪井さんはいかがですか。
 阪井 新卒採用は毎年課題が変わり、学生の動きも変わります。去年は予定通り採用できた職種が急に市場の変化を受けて採用困難になるかもしれないとき、どういうアクションを起こすとよいかは毎年考えます。情報系以外にも、メカエンジニアの採用も課題になっていますが、半導体製造装置にどう機械系が関わってくるのかイメージが湧きにくく、学生はもっとイメージがしやすい業界に流れていくんですね。そういった採用の難しい職種の魅力を訴求していくにはどうしたらいいか、最近のインターンシップでは実際に社員はどういったところに面白味を感じていて、どうしたらそれを学生に知ってもらえるかということを、現場と二人三脚で考えつくりあげています。

自己推薦制度も導入 初任配属会社を決められる

■自己推薦を導入
 阪井 採用の選考方法も実は毎年変わっていて、自由応募以外に学校推薦と、去年は初めて自己推薦を導入しました。学校推薦の推薦書が出るのを待っていると他の志望度の高い学生で枠が埋まってしまうので、自己推薦を始めました。どれほど東京エレクトロンに行きたいかというアピールをしてもらい、推薦と同様の扱いで初任配属会社を決める形で応募してもらいます。良いか、悪いかはやってみないと分からないんですが、上司は「メンバーでやってみようと決めたのであれば、やってみていいよ」と言ってくれ、実現しました。

 ──自己推薦の書類はどういうことを書いてもらうんですか。
 阪井 「東京エレクトロンでやりたいこと」「挑戦したいこと」「どうして東京エレクトロンを志望したのか」ですね。また初任配属会社を決めるため、どうしてその配属先を希望したのかを聞きます。

 ──配属される会社は東京エレクトロン以外にもあるということですか。
 阪井 東京エレクトロンを筆頭に、生産や開発拠点である東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ、東京エレクトロン宮城、東京エレクトロン九州、フィールドエンジニアが所属する東京エレクトロンFEがあります。内定辞退の理由の一つとして勤務地にこだわりがある学生もいることが分かり、その不安を少しでも払拭したいと考えています。
 初任配属は決められるんですが、その後の異動に関しては組織の都合や、自分のキャリアによって場所が変わることはあります。地域によって極端に配属数が変わらないようある程度の管理はしているのですが、少なくとも最初の配属地だけは決められるように配慮しています。

 ──学校推薦で入社するのは何割ぐらいですか。
 阪井 数自体は決めていません。「この研究室から何人」という学校推薦枠もありません。最後にちゃんと東京エレクトロンにマッチする人かを見極めたいので、学校、自己推薦も自由応募も選考は一緒に動いていきます。

後編はこちらから

(インタビュー写真・山本友来)

みなさんに一言!

 大久保 これから就職活動を開始するみなさん、ぜひ自分が興味を持った業界や企業について、しっかり時間を取って調べてみてください。また関連する報道などに目を向け、新聞やインターネットの記事なども見てみるといいと思います。学業との両立で大変かと思いますが、頑張ってください。

 阪井 東京エレクトロンはまだ多くの方には知られていない企業かもしれませんが、好奇心を持って楽しむ開発者がいたり、会社の中を良くしようという社員がいたり、本当にいろんな人が働いています。私もそんな人たちに魅力を感じて、この会社に入りました。ぜひ、そういった人たちの魅力をみなさんにも知ってもらえたら嬉しいです。

東京エレクトロン株式会社

【半導体製造装置】

革新的な半導体製造装置のリーディングカンパニーである東京エレクトロンは、世界の半導体デバイスメーカーに優れたプロセス性能と量産性能をもつ数々の製品を、確かな技術サービスとともに提供しています。日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、各地域に広がるグローバル拠点をベースに、東京エレクトロンは世界中のお客さまの生産ラインに日夜貢献し、たゆまぬ技術革新を通じて、デジタルネットワーク時代の未来を切り拓いていきます。