
■テレビで働くための資質
――優秀なテレビパーソンに求められる資質とは何だと思いますか。
難しいですね。クリエイターは、自分のつくりたい、やりたいものをつくっています。そして作ったものが多くの人に受け入れられた人が優秀ということになると思いますが、ここが難しい。多くの人に受け入れられようと、こねくりまわしてしまったものほど、実際は受け入れられず成功していないのです。どんなテーマを扱うと受けがいい、といったテクニックはありますが、そもそもこの番組で何を伝えたいかという軸がしっかりしていて、ものづくりにこだわれる人ほど成功している、と感じます。
「アメトーーク!」演出の加地倫三、「激レアさんを連れてきた」演出の舟橋政宏などは、これまで注目されなかったところに光をあてて番組をつくり、成功しています。「アメトーーク!」人気企画の「運動神経悪い芸人」など、運動神経が悪い人をいやな感じではなく、輝いて映るように番組をつくっている。報道でもそうかもしれませんが、光の当たっていないところに光を当てられる人が優秀なクリエイターなのではないかと思います。
――プラットフォームが多様化するなかで、「テレビ」で仕事をする魅力とは何ですか。
どこでもものづくりができる時代ですが、テレビには60年間培ってきたノウハウの蓄積、環境があります。チームで「ものづくり」をしてきたからこそ、過去の経験など多角的な情報が入ってきて自分のやりたいことがより膨らませられるのがテレビの力。そうやって周りの力もうまく使い、恵まれた環境を使いこなせる、ということがテレビ局で働くには必要なのかなと思います。
■テレビ朝日の魅力
――在京キー5局のなかで、テレビ朝日のよさとは何ですか。
報道やスポーツなど生中継に強いところと、高齢者から子どもまですべてのターゲットに向けた番組をラインアップしているのがテレビ朝日の強みです。一方で、深夜枠の「バラバラ大作戦」「スーパーバラバラ大作戦」など若者の支持が高い番組では配信を意識した短尺のバラエティーを心掛けています。
サイバーエージェントさんと組んで展開しているスマホ向け動画サービス「ABEMA」も、テレビではできないことができるということで志望してくる学生もいます。話題性はもちろん、マス向けの配信サービスとしてのプラットフォームとしての信頼性は、唯一無二の存在になっていると思います。
――女性も活躍していますね。
「おっさんずラブ」シリーズを手がけているプロデューサーの貴島彩理など、ドラマのプロデューサーは女性が多く活躍しています。ドラマをつくりたい女性が弊社を希望してくれていますね。
■学生時代にやってほしいこと
――テレビ局に入るために、学生にやってきてほしいことはありますか。
テレビ局に入るためにやってほしいことはないですが、インプットを増やしてきてほしい。それも興味のあることだけではなく、興味のないことも経験したほうが将来に生きると思います。先ほども言いましたが、視聴者にはいろいろな方がいます。自分がいまいる環境だけが普通の環境ではないと知るために、いろいろなことに挑戦してほしい。社会人になると自分の自由にできる時間も限られてくるので、就活を機にいろいろな会社を見るなど、学生時代にできるだけいろいろ情報を入れることに時間を使って欲しいと思います。
■小宮さんの就活
――ご自身の就活と職歴を振り返って下さい。
サッカーをやっていたのでスポーツ中継にあこがれ、テレビ業界を志望しました。他にも内定を頂きましたが、毎日違ったことができて歴史的瞬間にも立ち会えると考えテレビ朝日を選びました。
技術職で入ったのですが、最初の3年間は「回線センター」という部署でテレビ局に入ってくる回線をいろいろなところに分配する仕事をしていました。そのあと音声担当になり、ゴルフの生中継やサッカーのワールドカップ、リオ五輪にも携わることができました。そのあと総合編成部を経て現職です。
――仕事のやりがいは何でしたか。
技術職は準備9割で本番1割と教えられました。不測の事態に備えて万全に準備をし、きちんと放送できるようにするのが技術の力です。
それに加えて音声としては、生の臨場感をできるだけそのまま伝えたい。音声を担当していて一番うれしかったのは、選手の会話やキック、ショットの音をしっかり伝えられた時でした。