人事のホンネ

2025シーズン テレビ朝日
【人事のホンネ 特別編】1位をめざし「チャレンジ」できる人が欲しい 世帯視聴率3冠&個人全体2冠・テレビ朝日に聞きました

人事部 小宮立千(こみや・たつゆき)さん

2024年04月16日

 人気企業の採用担当者に編集長が直撃インタビューする「人事のホンネ」。2025シーズンの特別編第3弾は、テレビ朝日のインタビューをお届けします。世帯視聴率で2年連続3冠(全日、ゴールデン、プライム)を達成(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、ネットも積極的に活用し好調な同社がほしい人材は「チャレンジできる人」。採用に際しての考え方や方法、学生へのメッセージを聞きました。(編集長・福井洋平)

■採用状況
 ――2024年卒の入社状況を教えてください。
 アナウンサー2人を含めて27人が入社しました。テレビ番組をはじめとしたコンテンツを制作し、それをビジネスに展開していく「コンテンツ制作・ビジネス」部門が19人、テレビ局の仕事を技術面から支える「テクノロジー」部門が6人です。例年、だいたいこのような比率で採用しています。

 ――コンテンツ制作・ビジネス部門は仕事がイメージしやすいですが、テクノロジー部門はどういった仕事が含まれますか。
 かつては放送・番組制作のための技術を担っていましたが、いまはそれだけではなく広範囲にわたる技術を担当しています。特に番組配信を含めてネットの活用、業務DX化、AIやVR/AR、ビッグデータ分析などが求められるので、デジタルサービスを作れる人が欲しいですね。テレビ局がそういった人材を求めていることを知らない学生も多く、説明をすると興味をもってくれたりするので、なるべく学生との接点を増やしたいと考えています。

 ――2025年卒の採用状況はいかがでしょうか。
 2024年卒と同程度の人数を採用する予定です。

 ――2026年卒採用のスケジュールを教えて下さい。
 最初はアナウンサー希望者を対象にした「アナトーーク!」というスタジオでのアナウンサー体験プログラムが大学3年の4~5月にあります。そのあと7月にビズリーチの主催で弊社をはじめ在京キー局5局の人事職員が登壇する「キー局ライブ」というオンラインの合同説明会があり、これはかなり視聴数が多いです。そのあと7月末からいわゆるインターンシップ(厳密にはオープン・カンパニー)の募集が始まり、8月末から9月に実施するという流れになります。

ESで書いた企画案に社員からフィードバック

■就業体験
 ――オープン・カンパニーの内容について教えて下さい。
 日程は2日間で1日目はオンライン、2日目はリアルで行っています。採用で優遇されるなどの措置はありませんが、2025卒採用ですと全体の3分の1程度がこのイベントの経験者でした。イベントに参加することでテレビ朝日への思いが強くなったのかな、と思います。 報道、スポーツ、ドラマ、バラエティー、ビジネスとテクノロジーの6ジャンルで募集し、会場の都合で選考は行わせていただいております。

 ――選考はどのように行いますか。
 まずエントリーシート(ES)を書いてもらいますが、ここではいわゆる採用に向けての選考ではないので、シンプルに企画書を書いてもらいます。テレビ局の仕事を知ってもらうことがイベントの主目的ですし、選考に落ちて「この会社は違う」と思われることも避けたいので、私たち社員からESを書いて下さった方の企画についてフィードバックをして「テレビ朝日はこんなことを考えている」とお伝えするようにしています。
 そのあとオンラインで複数人が集まり、それぞれ自分の企画書をプレゼンするグループワークをしていただきます。ここでも、企画に対してフィードバックを行います。テレビ局員の考え方や企画の足りなかったところを学べる機会になるようにしていますし、受けて頂いた学生からは、学生同士の考えも知ることが出来て新鮮だったと感想を貰いました。

 ――イベントの内容は。
 オンラインパートは記者やディレクターなどいろいろな職種の社員を呼び、30分×社員6人などで、3時間程度の講義を聴いてもらいます。リアルのパートでは、放送時間帯などを具体的に設定して新しい企画を考えてもらい、その場で社員からフィードバックをします。いろんな人が意見を出し合い企画がどんどん膨らんでいくのが、テレビ局の醍醐味でもあるので、それを体感してほしいと考えています。あとは社内の見学や収録現場視察などを実施しています。

 ――テクノロジー部門はどういう内容になりますか。
 10年後に流行っていそうな技術、サービスを考えてもらいます。学生がいま取り組んでいることを私たちがヒアリングし、うちの会社だとこういうことができるということを、技術系の社員とすりあわせ、先輩社員と交流して学ぶ機会をもちます。

壁を乗り越えられる力を見る

■本選考
 ――本選考のスケジュールを教えて下さい。
 アナウンサー部門、コンテンツ制作・ビジネス部門、テクノロジー部門は秋から情報更新していきますので、弊社採用HPをご確認ください。アナウンサー部門以外では例年ESと、30秒の自己紹介動画を出してもらっています。

 ――ESではどのようなところを見ますか。
 何かに熱量を注げるということが、この仕事では一番大事だと思います。一人ひとり、作り手の思いが強く込められたものはちゃんと人に伝わるので、そこをしっかり考えて過ごしてきたかをみなさんの経験から見ていきます。
 また、仕事をしていくと、必ず壁にぶつかると思います。テレビ業界は社会的にも注目度が高い仕事なので、多くの人に見られ、様々な意見や考えの中で判断する必要があり、そこを乗り越えていける力強さがあるかも見ています。

 ――動画はどのようなところをチェックしますか。
 テレビはわずかな時間で伝えなければいけないので第一印象をチェックします。奇抜なことをする人もまじめな内容をやる人も様々ですが、根本は、「短い時間でわかりやすく人に伝える」ことが大切。そこができているかを、動画で見させてもらっています。

■面接
 ――書類選考のあとはどういう流れになりますか。
 複数回の面接(オンライン面接やリアル面接含む)、筆記試験、GWなどです。面接は1対1が原則で、面接官の相性で選考が決まってしまう「面接官ガチャ」は避けたいと思い、どの選考も別の面接官にも見てもらっています。結果として10人以上の選考員に会っていただくことになります。そうすることで、ミスマッチも防ぐことができると考えています。
 
 ――面接ではどういうところを見ますか。
 面接官によっても違いますが、「伝えたい」「何かをやりたい」という熱量が大事ですので、「やる気がある」「元気がある」といったところもひとつの武器になると考えてチェックしています。それに加えてテレビ局員は多くの職種、業界の人と関わる仕事でもあるので、周りの人に気遣いができるかどうかという人間性も見させてもらっています。
 それぞれの面接フェーズによって見るポイントは変えていますが、全体を通してテレビ局員として働いていると起こりうるシチュエーションに対応できるか、ということを意識して面接しています。

価値の源泉はコンテンツ チャレンジできる人が欲しい

■欲しい人材
 ――どういう人に入社してほしいですか。
 基本的には、「チャレンジができる人」とお伝えしています。
 テレビ朝日はまだ、視聴率でも売り上げの面でも在京キー局5局のなかで総合1位をとったことがありません。しかし、視聴率では2年連続、個人全体で2冠を獲得し、ビジネスについては「テレビ朝日360°」をかかげて多角的なビジネス展開を仕掛けています。チャレンジをしていかなければ1位を取れないので、ほかの局がやる以上の新規分野に手を出しているのがテレビ朝日です。なのでチャレンジや変化を恐れず、何か新しいことに挑み続ける意識を強く持っている学生に来てほしいです。

 ――テレビへの思いはどの程度求めますか。
 我々は「すべての価値の源泉はコンテンツ」をキーワードとして掲げています。
インターネットが浸透し、テレビの持っている力が弱まっているのは事実です。ただ、テレビ以外のプラットフォームにも展開できるチャンスが広まっている。そのチャンスを活かすにしても基礎はコンテンツ。テレビ朝日はコンテンツを主軸としてそれをビジネスに展開するところからぶれないようにしたいと思います。

 ――テレビの人気は下がっている?
 確かに学生の生活スタイルはすごく変わったと思います。テレビは良くも悪くも注目される業界なので、テレビの力を見切ってしまっている学生も多いのではないでしょうか。
 ただ、テレビはコンテンツホルダーとしての強みがあり、それをテレビというプラットフォームだけではなく、世界に向けて展開する力もあります。配信の視聴数など大きく取り上げられますが、テレビの視聴率や見逃し配信の視聴数などをトータルで換算したリーチ力はまだまだ価値があると思います。また、世の中にひろがっているコンテンツの多くは意外にテレビ局発信だったということも知って欲しいなと思います。

■働き方
 ――テレビ業界といえば、激務の代名詞でもあります。
 確かに24時間365日放送しているので、忙しい部署もあります。
 コンテンツ制作は、ゴールがないなかで勝負を続けていく世界です。自分の作りたいものにこだわりを持って、いいものにしていくという思いでみんな仕事をしています。
 もちろん、テレビ局も休みやすい環境を整え、現場にもしっかり浸透しています。テレワークも浸透しているので、安心して応募してほしいです。

 ――正直、働く現場が怖いという印象もありますが……。
 昔はバラエティーなどのエピソード話で聞いたりしたこともありますが、いまはコンプライアンスの意識も高まり、若い人たちは大切にされています。
 ただ……、それはいいことなのですが、仕事については、自分でやらなければいけない時代になりました。自分で時間を作って成長することができる子にとってはいい働き方ができる時代になったし、そうでない人にとっては、勝手に成長できるという環境ではないので、逆に厳しい時代になったのかもしれないと思っています。

光の当たらないところに光をあてられるのが優秀なクリエイター

■テレビで働くための資質
 ――優秀なテレビパーソンに求められる資質とは何だと思いますか。
 難しいですね。クリエイターは、自分のつくりたい、やりたいものをつくっています。そして作ったものが多くの人に受け入れられた人が優秀ということになると思いますが、ここが難しい。多くの人に受け入れられようと、こねくりまわしてしまったものほど、実際は受け入れられず成功していないのです。どんなテーマを扱うと受けがいい、といったテクニックはありますが、そもそもこの番組で何を伝えたいかという軸がしっかりしていて、ものづくりにこだわれる人ほど成功している、と感じます。

「アメトーーク!」演出の加地倫三、「激レアさんを連れてきた」演出の舟橋政宏などは、これまで注目されなかったところに光をあてて番組をつくり、成功しています。「アメトーーク!」人気企画の「運動神経悪い芸人」など、運動神経が悪い人をいやな感じではなく、輝いて映るように番組をつくっている。報道でもそうかもしれませんが、光の当たっていないところに光を当てられる人が優秀なクリエイターなのではないかと思います。

 ――プラットフォームが多様化するなかで、「テレビ」で仕事をする魅力とは何ですか。
 どこでもものづくりができる時代ですが、テレビには60年間培ってきたノウハウの蓄積、環境があります。チームで「ものづくり」をしてきたからこそ、過去の経験など多角的な情報が入ってきて自分のやりたいことがより膨らませられるのがテレビの力。そうやって周りの力もうまく使い、恵まれた環境を使いこなせる、ということがテレビ局で働くには必要なのかなと思います。

■テレビ朝日の魅力
 ――在京キー5局のなかで、テレビ朝日のよさとは何ですか。
 報道やスポーツなど生中継に強いところと、高齢者から子どもまですべてのターゲットに向けた番組をラインアップしているのがテレビ朝日の強みです。一方で、深夜枠の「バラバラ大作戦」「スーパーバラバラ大作戦」など若者の支持が高い番組では配信を意識した短尺のバラエティーを心掛けています。
 サイバーエージェントさんと組んで展開しているスマホ向け動画サービス「ABEMA」も、テレビではできないことができるということで志望してくる学生もいます。話題性はもちろん、マス向けの配信サービスとしてのプラットフォームとしての信頼性は、唯一無二の存在になっていると思います。
 
 ――女性も活躍していますね。
 「おっさんずラブ」シリーズを手がけているプロデューサーの貴島彩理など、ドラマのプロデューサーは女性が多く活躍しています。ドラマをつくりたい女性が弊社を希望してくれていますね。

■学生時代にやってほしいこと
 ――テレビ局に入るために、学生にやってきてほしいことはありますか。
 テレビ局に入るためにやってほしいことはないですが、インプットを増やしてきてほしい。それも興味のあることだけではなく、興味のないことも経験したほうが将来に生きると思います。先ほども言いましたが、視聴者にはいろいろな方がいます。自分がいまいる環境だけが普通の環境ではないと知るために、いろいろなことに挑戦してほしい。社会人になると自分の自由にできる時間も限られてくるので、就活を機にいろいろな会社を見るなど、学生時代にできるだけいろいろ情報を入れることに時間を使って欲しいと思います。

■小宮さんの就活
 ――ご自身の就活と職歴を振り返って下さい。
 サッカーをやっていたのでスポーツ中継にあこがれ、テレビ業界を志望しました。他にも内定を頂きましたが、毎日違ったことができて歴史的瞬間にも立ち会えると考えテレビ朝日を選びました。
 技術職で入ったのですが、最初の3年間は「回線センター」という部署でテレビ局に入ってくる回線をいろいろなところに分配する仕事をしていました。そのあと音声担当になり、ゴルフの生中継やサッカーのワールドカップ、リオ五輪にも携わることができました。そのあと総合編成部を経て現職です。

 ――仕事のやりがいは何でしたか。
 技術職は準備9割で本番1割と教えられました。不測の事態に備えて万全に準備をし、きちんと放送できるようにするのが技術の力です。
 それに加えて音声としては、生の臨場感をできるだけそのまま伝えたい。音声を担当していて一番うれしかったのは、選手の会話やキック、ショットの音をしっかり伝えられた時でした。