人事のホンネ

2025シーズン 伊藤忠商事
【人事のホンネ 特別編】「人気企業ランキング」6年連続1位! 人気の理由聞きました

人事・総務部 採用・人材マネジメント室 市川丈陽(いちかわ・じょうや)さん

2024年03月26日

 人気企業の採用担当者に編集長が直撃インタビューする「人事のホンネ」。2025シーズンの特別編として、2023年11月に学情が発表した就職人気企業ランキングで6年連続の1位を獲得した伊藤忠商事のインタビューをお届けします。人気の理由や採用に対する考え方、欲しい人材像、学生へのメッセージを聞きました。記事末には、伊藤忠商事が参加する4月の合同企業セミナーのご案内もあります。(編集長・福井洋平)

ゼロからビジネスつくりあげてきた歴史

■人気の理由
 ――6年連続でランキング1位を獲得されました。人気の理由は何だと思われますか。
 市川さん 1つは、伊藤忠商事をはじめとする大手総合商社の業績が伸びているためだと思います。伊藤忠商事は2022年3月期に最高益を達成。2023年度も多分野で大きく収益を伸ばしています。
 業績好調な業種の中でも、商社という業種は可能性が制限されておらず、新しい挑戦ができる業界とみられています。私たち伊藤忠商事は江戸時代末期に伊藤忠兵衛が創業して以来、ゼロからビジネスを作り上げてきたという会社のDNAがあります。社員一人ひとりが挑戦を続けてきた歴史や社風がある、ということを学生にも伝えています。

 ――総合商社の中でも、伊藤忠商事のランキングは目立って高いです。
 コンビニ大手のファミリーマートやアパレルブランドを傘下に持つなど、生活消費関連という学生に親しみのある分野に強みを持っていることが大きな特徴と思います。私も学生に、伊藤忠商事ではみなさん自身が生活で触れている世界を構築できるという話をしています。
 中期経営計画でも消費者からのニーズをくみ取った「マーケットイン」の発想による事業変革に取り組むと記載しており、ビッグデータを解析してマーケットのニーズにあった製品を世に出そうという意識を強く持っています。そういったブランディングが、効を奏しているのかなと思います。

■SDGsへの取り組み
 ――SDGs推進にも積極的に取り組んでいますね。
 ファミリーマートの中食包装をバイオマスにしたり、フードロス削減に取り組んだりと、生活消費関連分野を通してSDGsに積極的に取り組んでいることが学生に伝わっていると感じます。いまは福利厚生や待遇面だけでなく、自分がどれだけ会社を通して社会貢献できるかを就職活動の軸にする学生が増えており、就活イベントの質疑応答でも「伊藤忠商事で代表的なSDGs関連の取り組みは何ですか」という質問をよく受けます。当社はそういう学生のニーズに訴求できているのではないでしょうか。

 ――学生はどこで伊藤忠商事を知るのでしょうか。
 中学、高校時代にニュースで見たり、CMで知ったりした学生が多いようです。

■働き方改革への取り組み
 ――働き方改革にも取り組まれています。
 2013年に午後8時以降の残業を禁止し、仕事を朝型にシフトする「朝型勤務」を取り入れました。さらにフレックスタイム制度も取り入れ、勤務時間を柔軟にしました。私も、フレックスタイム制度を活用しています。朝6時半には軽食が提供されていて、その時間であっても既に行列ができています。

 ――なぜ、伊藤忠商事では働き方改革が浸透したのでしょうか。
 伊藤忠商事は10年かけて長時間労働をよしとする意識を変えてきました。伊藤忠商事は他商社に比べて社員数が少なく、成果が求められるため、一人ひとりが生産性を上げていかないといけません。「厳しくとも働きがいのある会社」というのが当社のフレーズですが、その中で無駄を省き、限られた時間で効率的に仕事をしていく文化が育っていたと思います。先日受けた取材では「OSができていた」という表現を経営トップがしていました。
 働き方改革では特に、メリハリのある働き方ができていると思います。今の学生の多くは成長のできる職場を求めており、伊藤忠はメリハリのある働き方で成長できるという風に学生にとらえられているのでは、と思います。そこも人気の理由ではないでしょうか。私も就活時、オンとオフを切り替えながらいきいきと働きたいという思いがありましたので、この会社はすごく適していたと思います。

商社パーソンの心得を最終面接で

■市川さんの就職活動
 ――市川さんは、就活時はどのような会社をみていましたか。
 市川 私は、自分自身がやった仕事が社会の役に立っているということを自分で認識できる業界に行きたいと考えていて、メーカーや航空業界を見ていました。
 最終製品が商社のものってないですよね。だから商社では働く実感がわかなくて、最初は就職先には考えていませんでした。しかし就活を始め、3年生の夏や冬にメーカーのインターンシップに参加してそこで商社が原料調達などでメーカーと関わっていると知り、自分の軸に沿っていると感じました。3年の1月にダイレクトリクルーティングサイトや大学のキャリア支援室を利用して商社のOB・OG訪問をして、志望度が高くなりました。いわゆる5大商社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)はすべてエントリーしました。

 ――伊藤忠商事を選んだ決め手は。
 シンプルかもしれませんが、社員の方から感じた社風や価値観が一番魅力的だったのが伊藤忠商事でした。4年生6月の選考スタート直後、最初に内定をいただいたので、そのまま入社を決めました。

■社風
 ――印象に残っている社員の方は。
 最終面接を担当してくださった役員の方が、一番社会人として尊敬できると感じました。営業の経験が長い方で、とても話し方が柔和で心をつかまれました。
 その方からは、事前の対策では対応できない質問をされました。覚えているのが「なんでチューインガムは廃れたと思う?」という質問です。考えたことのない質問で、「健康志向が高まって、歯の詰め物がとれるのが嫌がられるようになったから」とよく分からない返事をしてしまいました。
 その方によると、因果関係は分からないけれどスマートフォンが普及するにつれてガムの売り上げが落ちているそうなんです。そこから、「自分の担当するビジネスがどういう外的要因に影響を受けるかわからないが、それに対応するのが地球規模でビジネスをしている商社パーソンだから、君がもし優秀な商社パーソンになりたいなら自分の担当しているものだけではなくこの世界全体を俯瞰しよう」という話をしていただきました。自分が入社を決めたきっかけになった言葉です。

 ――伊藤忠商事の社風とは。
 「ひとりの商人、無数の使命」というコーポレートメッセージがあります。自分の担当分野にとどまらず、仕事を俯瞰的に見ているという意識は全員が持っていると思います。

 ――入社後はどのような仕事をしてきましたか。
 入社から新卒採用を担当し、2年目からはキャリア採用も少し担当しています。今は新卒採用チームのリーダーになっています。伊藤忠商事は私のような若手が新卒採用を担当する文化が醸成されています。

 ――配属は自分で希望できるのですか。
 採用時に希望できます。私は人事が第二希望でした。

インスタグラムで1年生社員のドキュメント発信

■採用について
 ――コロナ禍で、学生側にも変化は出てきていますか。
 在宅勤務が一般化して、学生が「全出社」を避けるようになってきていますね。
 人とひとのつながりの大事さも分かっているんですが、毎日出社しなければいけないいう感覚が薄くなっています。伊藤忠商事は、週2回までの在宅勤務を認めています。

 ――2024卒、2025卒採用で工夫されたことは何ですか。
 オンラインとオフラインの機会を使い分けています。就活初期で情報を提供する段階はオンラインで、インターンシップなど、より会社の本質や社風を理解してもらうイベントはオフラインで、というように使い分けています。また、VR空間を活用した伊藤忠商事社屋の完全再現や、海外駐在事務所を海外で働く様子を体感するといったイベントもやっています。

 ――SNSでも発信をされています。
 学生との対面での接点が減っており、近年学生が企業情報をSNSから得ることが多くなっていることを踏まえ、SNSにも注力しています。現在注力しているのはインスタグラムの運用で、新入社員に密着したドキュメンタリーなどのコンテンツを出しています(写真)。学生は入社してからどのような仕事をするのか不安を覚えたり、どのように仕事での壁を乗り越えていくのかということを知りたがったりしていますが、ベテラン社員に聞いても思い出話になってしまいます。そこで、新入社員の生の仕事の様子をなるべくそのまま写して、学生に実情を伝えようと思っています。

 ――インターンシップは実施されていますか。
 2025卒採用については、5日間のインターンシップを12月、1月、2月の3回行いました。応募者が大変多く、選考を実施しています。書類選考、面接を経てインターンに参加してもらっています。

 ――どういう企業と併願されることが多いですか。
 大学は本当に幅広い学群からご応募いただいておりますが、コンサルティング会社と併願している学生さんが多いですね。あとはメーカー、投資業務の関連性からは金融機関との併願が多い。学生の興味に応じて併願先が変わっています。

夢中になれることに全力尽くして

■求める人材像
 ――どのような学生に入社して欲しいですか。
 成長意欲が強い人というのは中心に据えています。
 伊藤忠商事は少数精鋭体制ですので、一人あたりが担当する業務が多い。担当者になれば営業、契約書の処理、入金の確認、様々な業務を一人で担うので、自分から情報を掴みに行き、成長しようという思いがなければ活躍できません。
 もうひとつは「目の前の課題を解決する能力」です。商社の仕事はトレーディングだけではなく、事業に投資したりなど、様々な要素があります。未知の分野に挑んだときに構造的に目の前の課題を解釈し、組織やビジネスの本質的な課題を特定できる能力を重視して選考しています。

 ――学生のどういうところに注目されますか。
 学生はよく、「私は全国大会に出るような経験をしていません」など、経験の優劣を考えてしまいがちです。当社はそういった経験の表層を評価しているわけではありません。
 どんな経験でもいいので、自分がこれまでの人生で力を入れてやってきたこと、そして課題に直面したときにどのように推察し、どう行動してきたかを見ています。仕事の中で課題に直面したときにどう行動するかを知りたいので、そこはよく見ています。

 ――伊藤忠商事を志望する学生にアドバイスはありますか。
 その場をうまく取り繕えるかといったテクニカルなスキルは必要としていません。学生には今自分が全力を尽くしていることことに100%注力してほしいと思っています。
 面接では「あなた自身がどのような壁を乗り越えて今があるのか」とよく聞きます。自分自身が夢中になる中で様々な壁を乗り越えるという経験を、人生を通じて積んでもらいたい。今やっていることが就活で有利になるとかはあまり考えずに、夢中になれることに全力を尽くしてほしいと思っています。
 私はワーキングホリデーで10カ月間オーストラリアに行きました。「ワーキングホリデーは就活で不利になるのか」という質問もよく受けますが、「そんなことはない」と伝えています。私は現地の飲食店で働きながら、シェアハウスを活用したり、車を購入したりなど、生活の立ち上げを一から行いました。コンフォートゾーンを抜け出し新たなステージにチャレンジする経験は、会社に入ってゼロから仕事をするときにも活きる大切な経験だったと思っています。

■ニュース
 ――ニュースを知ることは重要ですか。
 僕自身は、紙の新聞を読んだほうがいいと思っています。
 オンラインの新聞はアルゴリズムが活用されている分、読者が興味のあるニュースが出現する傾向が高いです。自分の世界や知見を広げるためには、思わぬ形で目に入ってくる情報が重要だったりします。新たな世界との出会いは紙の新聞じゃないと得られないと思っています。ただ、オンラインのニュースも履歴が残るなどの利点はあると思います。

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みなさんに一言!

 私自身が採用リーダーをやっていることからも分かるように、若手のうちから仕事を任せられ、成長できる環境が伊藤忠商事にはあります。働き方改革も進む中、限られた時間内で集中して業務をするやことで成長できる環境です。社会が移り変わるスピードが速い時代で、どんな時代、どんな場面でも通用する人材になりたいという学生が多いと思いますが、伊藤忠商事はそんな学生のニーズにも訴求できる企業です。
 就職活動を内定の数をもらうことが目的のゲームのように捉えている学生がいますが、自分自身の人生を豊かにするためにどういう決断をすべきかを真剣に考える貴重な機会だと思うので、他者の価値観にまどわされずに最善の決断をしてほしいと思います。