住友林業株式会社
2023シーズン⑧ 住友林業《後編》
木で社会問題を解決する会社 100年以上前からSDGs実践【人事のホンネ】
人事部 採用グループ グループマネージャー 三浦将太(みうら・しょうた)さん
2021年12月08日
(前編はこちら)
■面接
──面接はどんな形式ですか。
2022年卒から変えたのですが、1次から3次まですべて個人面接です。以前は1次がグループディスカッションと学生3人の集団面接でしたが、「WEBで3人は難しい」と判断しました。
職種によって若干異なりますが、1次が25分程度、2次は1対1で50分。最終は人事部長による対面面接で40分ほどです。
──それぞれの面接で見るポイントは?
各職種の求める人物像ごとに分けているので、ひとことで表現するのは難しいですが、たとえば、業務企画職については、資源環境事業から商社事業、再生可能エネルギー事業、海外住宅不動産事業と、活躍するフィールドが本当に広い職種なので、やはり何にでも興味関心を抱けるレンジの広さを持った人か、というポイントは見ています。住宅営業職と建築技術職はBtoCで接客する仕事ですから、対話力はもちろん、古典的かもしれませんが、身だしなみや清潔感は見ていますね。
■何の会社?
──住友林業は住宅メーカーだと思っていたのですが、今回調べてみて、木に関わる非常に幅広い事業を展開していると知って驚きました。社有林の面積が日本の国土の約800分の1、東京ドーム1万個分もあるというのもびっくりです。
びっくりしてもらってよかったです(笑)。ひとことで言うと「“木”で社会問題を解決する会社」なんです。貴重な自然資本である木を軸に、地球環境と社会を支える事業をグローバルに展開している企業です。
──学生にはどう説明しているのでしょう。
セミナー等ではあえてみなさんのイメージ通りの「住宅メーカーの顔」から入ります。そこから当社の歴史について時間をかけて説明します。約330年前に別子銅山(愛媛県新居浜市)開坑に伴う木材調達が事業の始まりであったこと、それが高じて周辺の森林を荒廃させてしまったこと、その経験から持続可能性の大切さを学び、大規模な植林を通じて森を再生させたこと、そしてこうした足跡が今日の経営理念につながっていること。事業を一つひとつ個別に説明するよりも当社の姿をよく理解してもらえているようです。
──いま注目のSDGs(持続可能な開発目標)に昔から取り組んできたと。
そうなんです。100年以上前から続けています。森林経営や流通、建設をセットで手がける会社は他にもありますが、ここまでの規模かつグローバルに展開している企業は、世界でも稀有ではないかと思います。
──採用で競合する業界は?
5年ほど前までは住宅会社を含む各メーカーと商社が多かったですが、最近増えているのはエネルギー系やインフラ系の業界ですね。鉄道会社とか電力・ガス会社など、社会基盤を本業で根底から支えるような会社です。最近当社では、緑化ならぬ「木化(もっか)事業」といって、商業施設などの中大規模建築物を木造で建てるビジネスを拡大させていますが、この影響もあってかゼネコンやディベロッパーとも競合します。
全社で「脱炭素」に貢献 「人生で一番大きな買い物」売る難しさも
──どんな社員が多いのですか。
真面目な人が多いですね。「公正、信用を重視し社会を利する」という経営理念のもとに江戸時代の創業以来330年間続いているのは、根っこにこの真面目さがあったからだと思っています。派手さはないかもしれませんが、私は好きなところです。
──この変化の激しい時代に、真面目な人の集まりで大丈夫ですか。
ご心配ありがとうございます(笑)。真面目イコール柔軟性や状況適応力に欠ける、ということではないと私は思います。住友の理念の中に「浮利に趨(はし)らず軽進すべからず」という言葉があります。目先の利益を追わず、信用を重視すべしという考え方が今も脈々と受け継がれています。また少し難しいのですが、「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)」という言葉もあります。事業は自らを利するとともに、国家を利し、社会を利するものでなくてはならない、というものです。気候変動や感染症の蔓延(まんえん)など地球規模の危機に向き合う激動の時代だからこそ、本業を通じて環境や社会に真摯に向き合う当社が活躍すべきときだと信じています。真面目でいいんです!(笑)
■やりがいと厳しさ
──「木の会社」のやりがいを教えてください。
今は「脱炭素」が大きなキーワードになっています。当社も本業を通じて脱炭素社会の実現に貢献するべく全力で取り組んでいます。木は成長の過程でCO₂を吸収しますが、実は伐採され木材となった後も炭素として固定し続けます。つまり、木材を活用した建物をたくさん建てて、その一方で植林をしていくことで、温室効果ガスの削減に取り組むことにつながる。そして川上から川下まで、当社グループのどの部門にいる社員もこの活動に携わっている。このことは、大きなやりがいにつながると思っています。
――逆に、厳しさは?
難しさももちろんあります。木材は低層建築物の市場では、そのリーズナブルさを十分発揮できますが、中高層ではとくにコストの面で競争力を発揮するにはまだまだです。また市場には、合法に持続可能な森林から調達された木材と、環境に配慮されていない木材とがまだ混在しているのが現状。木材を扱う流通店や建設会社などのお客様にとっては、環境配慮も分かるが日々の商売も大事で、「とにかくコスト重視」となりがちです。お客様の要望もあるし、コストも考えなきゃいけない。でも我々には社会的責任があり、環境配慮された木材を選択してもらうために、その価値を地道に伝えなければならない……。商社パーソンというときれいでカッコいいイメージでしょうが、そういう粘り強さや泥臭さが必要なところは、厳しさかもしれませんね。
──「人生に寄り添う」のは魅力的な仕事だと思いますが、他の住宅メーカーの方から前に「車の営業なら月に1台も売れなかったら厳しい。でも住宅は月に1棟どころか1年に1棟も売れないこともある仕事なんですよ」と聞きました。
家は人生で一番大きな買い物ですから、その難しさはありますね。分譲住宅なら、決まったプランに基づいて建築し、既にできあがった物件をお見せしながら「いかがですか」と販売できますが、何にもない真っ白なところから、お客様の夢を形にしていく注文住宅の提案型営業は、もっと時間がかかる、根気のいる仕事でもあります。ですがその分「ずっと寄り添ってくれたあなただから」と、決めていただいたときの喜びは、何物にも替え難い、と住宅営業の担当は口をそろえて言いますね。
社員の雰囲気で選ぶのも重要 就活でもPDCAサイクルを
──三浦さんの就活を振り返ってください。
入社は1996年です。バブルが崩壊して就職氷河期が始まったころです。1995年に阪神大震災があり、兵庫県の実家は全壊しました。慣れ親しんだ街が崩壊する現実に大きな影響を受けて、人が社会生活を営む中で「なくてはならない会社」である衣食住関連を中心に就活しました。
ただ、住友林業との出会いはちょっと違います。私は小学生時代からボーイスカウトをずっとやっていて、森林や木に親しみを抱いてきました。衣食住とは別枠で「趣味枠」を設けていて、「住友林業は面白そうな会社だな」とその中に入れていました。実はどんな会社かは知らなくて、ハウスメーカーということすら知らなかったんですが(笑)。
──何の会社だと?
最初は「林業だから、森林を持っていて、木材を調達している商社かな」などと思っていました。決めた理由は、内定を早めにもらったこともありますが(笑)、セミナーや面接で出会った社員の雰囲気が自分にマッチしていたことが大きかったと思います。今でも最後に入社を決めた動機を聞くと、「雰囲気」などと曖昧とも受け取れることを言う学生がいますが、個人的には実は重要な要素だと思っています。
■印象的な仕事
──入社後はどんな仕事を?
商社営業がやりたくて「業務企画職」で入社しましたが、「住友林業の家」を販売する住宅建築事業本部の支店に配属になりました。福岡支店からキャリアをスタートさせて、同本部の住宅企画部、人材開発部を約2年半ずつ経験した後に、本社の管理部門である総務部広報グループ(現コーポレート・コミュニケーション部)に異動し企業広報IRやブランディングを5年半ほど担当しました。その後約10年間、木材建材商社部門で初のバイオマス発電施設の立ち上げや木構造推進室といった新規事業を担当しました。3年前から人事部です。
──印象に残っている仕事を教えてください。
いくつもありますが、15年ほど前、広報部門にいたときに企業ブランディングの一環として、住友林業のシンボルキャラクター「きこりん」をグループ一丸で開発したことですね。「いち住宅メーカーに留まらない住友林業の企業価値を正しく広く伝えられていないのでは」という課題解決のためさまざまな試行錯誤を経てたどり着いたのが「きこりん」です。シンボルキャラクターを語り部として、森林から建築、国内から海外に至るまでの、サステナブルで多様な事業を伝えようと始まりました。以来、「きこりん」はずっと活躍し続けています。
──それでも、まだまだ「住友林業は住宅メーカー」のイメージが強いのでは?
鋭いですね(笑)。住宅としてのブランドがそれだけ強固に確立されている証しとも言えますが、確かに伝えきれていない部分はまだまだ大きいです。それだけ一筋縄ではいかない、他に類を見ない希有なビジネスモデルを持った会社だからなのかもしれません。森林に、商社に、建築に、そして海外に、どこかに興味関心を抱いてくれた好奇心旺盛な学生のみなさんには「いっぺんドアをたたいてみてください!」と言いたいですね。
(写真・大嶋千尋)
みなさんに一言!
まずは「本音」で勝負、それから「修正力」が大事だと思います。というのも、僕は楽天イーグルスの田中将大投手のファンなのですが、彼が優れているのは「修正力」です。1、2回で打ち込まれるんですが、「自分と対話」してピッチングを修正して最後に勝ちます。会社の仕事もそうですが、最初からは絶対にうまくはいきません。就活もPDCAサイクル(Plan計画→Do実行→Check評価→Action改善の順に行う業務管理手法)を回すといいと思います。まずESを書いてみる、面接を受けてみる。うまくいかないなら自問自答して、「本当に本音で書けているかどうか」「偽った自分になっていないかどうか」を考えてみてください。学生のみなさんと話していて感じるのは、自己分析した自分のイメージを行きたい会社に重ね合わせようとして、「こうなりたい自分」にカッコよく変換している人が多いことです。そうすると、ミスマッチにつながります。とことん自分と対話し、自分の信念を大切にして、本当の自分で就活に向かっていってください。
住友林業株式会社
【林業、商社、住宅建設・販売】
1691年創業。国土の約1/800の社有林を保有し国内・海外での山林経営をはじめ、木材建材商社として国内売上NO.1、木造注文住宅ではリーディングカンパニーの地位を築いています。近年では木造の中大規模建築や環太平洋地域を中心とする海外事業など、成長が見込まれる事業分野に経営資源を投入し、安定的な収益基盤の構築に取り組んでいます。木を植え、育て、使って、また植えるという稀有なビジネスモデルで持続可能な循環型事業を行っています。(写真は、祖業の地の「別子銅山」)
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