京セラ
2023シーズン④ 京セラ《後編》
「大家族主義」が強み コロナ禍でも頑張ったことアピールして【人事のホンネ】
総務人事本部 人材開発部 横浜人材開発課 責任者 木村陽平(きむら・ようへい)さん
2021年10月13日
(前編はこちら)
■面接
──面接について教えてください。
技術系、営業管理系共に、例年面接は複数回行っています。とくに技術ではプロダクト別採用を行っているので、学生が希望した部門の責任者と面接してもらい、技術的なマッチングを図っています。
──それぞれの段階で確認するポイントは?
たとえば3回行うとしたら、1次は人事の目を通して次に進んでもらう人を見極め、2次は営業なら営業の責任者が仕事への適性を中心に見ます。会社への理解がより深まるように、学生からの質問の時間も大切にしています。最終の3次は幹部の立場から見ての総合評価となります。
■適性検査
──コロナ禍で適性検査が自宅でのWEB検査になりました。誰が受けているか分からないという面もあります。
原則はテストセンター受検です。「テストセンターで受けられる状態であれば、テストセンターで受けてください」という姿勢で、緊急事態宣言が出ている地域は自宅でのWEBテストにしました。中には外出して受けたくないという人もいるので相談に応じて対応しました。
──適性検査の使い方は?
能力面は一定の点数で線引きをしますが、そこから先は営業向きか管理向きかなど職務適性を見るので、合否判定には使いません。
■ニュースへの関心
──世の中の出来事やニュースへの関心度合いは重視しますか。
市場感覚というか、世の中の動向に興味を持っているかどうかは非常に大切です。営業の社員はもちろんですし、職種に限らず技術系も自分のやっている仕事がどういう世の中の流れで注文をもらっているのか、次にどんな戦略で会社が伸びていこうとしているのかなど、経営的な感覚は持っている必要があると思います。
──面接で聞きますか。
人によりますが、時事ネタを聞く面接官はけっこういます。事業に関連する内容について興味があるかどうかを聞くケースが多いと思います。
■学校推薦
──技術系の採用には学校推薦制度もあると思いますが、内定者の何割くらいを占めるのですか。
2022年卒では、最終的に9割ほどの学生が学校推薦での採用になりました。
――技術系の大半が推薦なんですね。
今は大学ごとにやり方が違って、「学校推薦の選考期間中もいろんな企業を受けに行っていいぞ。マッチングした会社に最終的に推薦状を出すよ」としている大学もあるようです。
──選考が進むうちにマッチングが成立して、その時点で推薦状を持ってくる「後付け推薦」といわれるものですね。
そういう大学もあれば、推薦状を出せない大学もあるのでケースバイケースです。企業としては、来てもらいたい学生が来るか来ないかわからないのはネックですし、推薦状をもらってきてもらえると正直安心です。でも、学生の側からすると、これだけ企業がある中で合格が出たらそこしか行けないと道を狭めるようなやり方は理想ではないと思います。京セラとしては、自由に受けてもらって最終的にうちに決まったら確実に来てね、という感じです。
──ガチガチの学校推薦より、お互いに良いのかもしれないですね。
学生や大学の先生と話すと、最近は学校推薦を使う学生が減って自由応募で受ける学生が増えてきていると聞きます。専攻によって違って、電気・電子系は今でも学校推薦を選ぶ学生が比較的多いようですが、情報系などでは推薦を使わず自由に行くところを決めたいと考える人が多いそうです。
──京セラが推薦の対象にしている学校はどのくらいあるのですか。
全国で100校ほどです。京セラの事業領域は多岐にわたるため求人対象学科が多く、電気電子、機械、情報、材料、物理などを中心に、学科ごとに求人票を送付しています。
商材の社会的影響力の大きさ実感
──インターンシップについて教えてください。ステージ1、2、3と分かれていますね。
すべてオンラインです。ファーストステージは人事が中心になって会社の説明をします。続いて、営業なら営業部門、技術なら技術部門の社員と話して仕事や会社への理解を深めてもらいます。それをセカンド、サードとさらに深めていきます。
――参加者数は?
具体的な数字は出せませんが、2023年卒では、ファーストステージは1回あたり数百人で行い、途中から4人くらいずつのグループに分けてディスカッションをしました。京セラのルーツ、考え方を理解してもらう内容です。グループ討議した内容をチームの代表に答えてもらいました。
――セカンド、サードとほぼ同じ数が参加するのですか。
学生もだんだん興味のある業界や企業を絞っていくのでサードまで全く同じ数とはいきません。ただ、昨年はだいたいこちらで想定していた数の学生には参加してもらえました。
■社風とやりがい
──創業者の「稲盛イズム」が浸透しているようですが、どんな会社なのでしょう?
非常に「人がいい」というか、根っこが京セラの考え方に共感している人の集まりなので、仕事でも仕事以外でも悩み事を相談しやすい雰囲気です。「大家族主義」と呼んでいますが、仲間意識がすごく強くて、会社の大きさをいい意味であまり感じません。相談事を受けたら部署が違っても親身になって聞くし、間違っていれば「違う」と言ってくれます。つながり、コミュニケーションをとても大事にしている会社だなあと思います。
――全社での大運動会や、社内の大広間でコンパを開く会社として有名ですね。
今はコロナで運動会も職場ごとのコンパもできない状況です。たまにオンラインコンパをやると、毎回「直接会えるほうがいいね」という結論になります。でも、コンパは一つの手段に過ぎません。WEBでも頻繁にやり取りできるチャットツールがあるし、もともとお互いに声かけする文化があるので、同じ部署の人との関係性が薄れることには直結しません。ただ、これから入ってくる人には良き文化を意識して伝えていかないと。「大家族主義」は京セラの良さであり強みでもあるので、今後のあり方を模索していく必要があります。
──仕事のやりがいと厳しさを教えてください。
やりがいは、会社が取り扱う商材の社会的影響力の大きさですね。使ってくれるお客さんは実に多くて幅広く、自分の仕事が世の中に大きな影響を与えていると実感できます。
一方、たとえば電子部品なら、非常に信頼性の高い部品として取り扱ってもらっているので、安全性や品質でお客さんの信頼を裏切ってはいけないという厳しさがあります。
サークルで得た「みんなで一つの目標に向かって」を大切に就活
──木村さんはどんな就活をしたのでしょう?
入社は2007年です。リーマンショックの前で、けっこう良い時代でした。
私の就活はあまりほめられたものでもなくて……。当時はヨットサークルで毎週末、合宿所に泊まって練習していました。3年の10月ごろから外資系や広告代理店の説明会にちょこちょこ参加したんですが、秋から年明けまで大きな大会が続くので3月の引退まではサークル活動が中心でした。本格的に就活を始めたころには、「もう終わりました」という企業もありましたが、「ガクチカをしっかりつくった」と前向きに捉え、サークルで得た「みんなで一つの目標に向かって」を大切に就活。同じようにチームプレーを大事にする雰囲気の企業で働きたいというのが軸になりました。
──なぜ京セラに?
幼少期に親の仕事の関係でタイのバンコクに数年間住んでいました。タイ人の方から「メイド・イン・ジャパンは素晴らしい」「これをつくる日本人も素晴らしい。勤勉だし真面目だし、約束は守るし優しい」と言われて、子ども心に誇りに感じました。文系でしたが、モノづくりに何らかの形で携わりたいと思ってメーカー志望に。「日本のモノづくりを支えるメーカーは?」と考え、電子機器やその中に入っている電子部品かと。モノづくりの上流にある素材メーカーや、京セラをはじめとする部品メーカーで働きたい思いが固まり、第1志望だった京セラの内定を得て就活を終えました。稲盛名誉会長のビジネス書を読み、フィロソフィに共感したことも決め手です。
──入社後の経歴と、印象に残った仕事を教えてください。
まず滋賀県の工場で労務の仕事をしました。勤怠管理や給与計算、社会保険手続きや人員配置などの業務です。次は大阪の事業所、その後、鹿児島の工場と転勤し、2019年の9月から現在の新卒採用の仕事をしています。
鹿児島の工場で働いていたとき、お客様からの大量受注で生産が追い付かず、新規設備導入と同時並行で人員確保を早急に行わなければならないことがありました。納期が遅れてお客様からの信頼を損なうわけにはいかないので、何としても良い人材を獲得しなければ、という責任感を持って仕事ができたと思います。事業部の製造部門と連携して、必要人員の精査、中途採用や他拠点からの製造応援検討、入社後の教育などを進めていきました。また、求人に関してはメンバーで案を出し合い、従来のやり方に捉われないやり方で、求人媒体や広報なども工夫しました。まさに経営に携わっている実感が得られましたし、製造責任者からは「事業部の未来を担う良い若者にたくさん入ってもらえた。本当にありがとう」と感謝の言葉をいただき、達成感も得ることができました。
(写真・山本倫子)
みなさんに一言!
今はコロナ禍でWEBで就職活動をするしかない状況です。さらに、どうやって企業を探したらいいか分からず、企業を知るのも難しい大変な状況だと思います。でも、条件はみんな同じですし、乗り切るしかありません。我々は、そんな中でもできることを探す姿勢を大事にしたいし、しっかり見ていきたいと考えています。「コロナでガクチカがない」と嘆いているかもしれませんが、それで終わりではなく「そんな中でこういうことをしたんです!」とアピールしてください。お互い腹を割って話せる工夫をしていくので、学生のみなさんもぜひ飾らないあなたの本音を聞かせてください。
京セラ
【電子部品】
京セラ株式会社は、1959年に創業し、京都市に本社を置く電子部品、ファインセラミック部品、半導体部品、情報機器、通信機器、太陽電池 、医療用製品などを製造する大手電子部品・電気機器メーカー。連結売上高は1兆5000億円を超え、グループ会社308社、グループ従業員数は約7万8000人を有し、多角化された事業をグローバルに展開している。「情報通信」「自動車関連」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」を重点市場として注力し、さらなる成長発展を目指している。
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