宇宙航空研究開発機構(JAXA)
2022シーズン⑪ 宇宙航空研究開発機構(JAXA)《後編》
「新しい価値」誰かと生み出した体験話して 日常業務は地道【人事のホンネ】
人事部 人事課 課長 松村祐介(まつむら・ゆうすけ)さん
2021年02月17日
人気企業・団体の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2022シーズン第11弾、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の後編です。民間企業では経験できないスケールの大きなプロジェクトに携われるのがJAXAの魅力。今では、その成功にとどまらず、生活を豊かに、安全に、便利にする「新しい価値」を生み出すことが目標だといいます。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら)
■求める人材
――求める人材像について、改めて教えてください。
求める人材像については、JAXAのWEBサイトに「人材育成実施方針」を公開していて、二つの力が必要だと書いています。一つは「専門力」。何かしらの専門家であってほしい。専門力は絶対に必要です。
もう一つが「提案力」。二つ意味合いがあって、一つ目は「付加価値」ですね。宇宙航空の研究開発をすることで何の価値を社会に提供できるのかが非常に強く問われます。その新しい価値を生み出していく力です。二つ目は「協業」です。今、JAXAは30~40のプロジェクトを同時並行で行っていますが、ほぼすべて共同プロジェクトで単独のプロジェクトは一つもないと思います。国内、海外、いろんなところと一緒にやっています。以前はモノをつくる組織としての共同だったのが、だんだんそのプロジェクトで得たデータを使ってもらうために共同するようになりました。以前はモノができてから「じゃあどうぞ」ということもありましたが、今は最初から一緒にプロジェクトを立ち上げることがあります。新しい価値を生み出すことと、一緒に協同してそれを実現すること。この二つの能力を合わせて「提案力」といっています。
──その能力をどう判断しますか。
将来のことを聞くのは難しいので、そういう経験をしてきたか、です。どんなレベルでもかまわないので、何か新しい価値をどう生み出したか、もしくは考えてきたか。誰かと一緒に何かをしてきたか、そこの成功体験や失敗体験を話してもらいます。
──JAXAって、どんな組織ですか。
以前は課せられた使命を確実に果たすこと、ミッションを成功させることに最大の価値があったのですが、今は「社会にどんな価値を提供できるのか」が大事になり、そこを目指す組織になっています。ミッションを確実に行う人材も必要ですし、それを達成するとみなさんの生活がどう豊かになるのか、安全になるのか、便利になるのかという思いが必要ですね。
もちろん、エンジニアとして「とにかくこれをやりたい」というのも大事ですが、それが他者にとって何の利益になるのかというところに一定の価値観を持っていることが大事です。
──「宇宙好き」の度合いは大事ですか。
正直に言ってしまうと、来年の就職に影響があるかもしれないんですが……(笑)。大前提として宇宙が嫌いでうちに来る人はいないと思います。宇宙にネガティブな印象を持っているとキャリアとしては難しいし、あまり楽しい人生じゃないだろうなと。ただ、そこを選考で重視しているかというと、実はそうでもありません。繰り返しになりますが、求める人材の幅が広くなっているからです。
でも、さきほどの漁業や海洋資源でもそうですが、その分野を専門に学んできた人たちに、JAXAに入るイメージがないと思うんです。そこにギャップがあって、「JAXAはそういう人材を求めています。宇宙でこんなことができるんですよ」とリーチしていきたい。今まではそこまで宇宙のことを考えたことがなかった人でも、宇宙という場を使って自分の専門性で世の中に貢献できる、そういうキャリアもあると知ってもらえれば本当にありがたいです。
──そういう学生へのアプローチは?
JAXAに関心のない層に自分が候補者かもしれないと気づいてもらう、ホームページを見てもらうのが非常に難しい。大金があればCMをバンバン打てるんですけれども、いかんせんお金がないので(笑)。一つはSNSですね。JAXA、「はやぶさ」と「はやぶさ2」、若田光一宇宙飛行士等の公式ツイッターには、一定数のフォロワーがいるので、そこで「工学系じゃない人も求めていますよ」というメッセージを拡散してもらっています。
──文系ではどんな人が来ますか。
「公的機関」というところに魅力を感じ公的なところで貢献したい、あるいは「グローバル」という視点から国際的な場で活躍したい人が多いです。あとは「未知」というキーワードですね。新しい領域でチャレンジしたいという人もいます。ただ、技術系もそうですが、日常業務は非常に地道ですので、イメージと実際とのギャップが過度にないかということも確認しています。
(前編はこちら)
■求める人材
――求める人材像について、改めて教えてください。
求める人材像については、JAXAのWEBサイトに「人材育成実施方針」を公開していて、二つの力が必要だと書いています。一つは「専門力」。何かしらの専門家であってほしい。専門力は絶対に必要です。
もう一つが「提案力」。二つ意味合いがあって、一つ目は「付加価値」ですね。宇宙航空の研究開発をすることで何の価値を社会に提供できるのかが非常に強く問われます。その新しい価値を生み出していく力です。二つ目は「協業」です。今、JAXAは30~40のプロジェクトを同時並行で行っていますが、ほぼすべて共同プロジェクトで単独のプロジェクトは一つもないと思います。国内、海外、いろんなところと一緒にやっています。以前はモノをつくる組織としての共同だったのが、だんだんそのプロジェクトで得たデータを使ってもらうために共同するようになりました。以前はモノができてから「じゃあどうぞ」ということもありましたが、今は最初から一緒にプロジェクトを立ち上げることがあります。新しい価値を生み出すことと、一緒に協同してそれを実現すること。この二つの能力を合わせて「提案力」といっています。
──その能力をどう判断しますか。
将来のことを聞くのは難しいので、そういう経験をしてきたか、です。どんなレベルでもかまわないので、何か新しい価値をどう生み出したか、もしくは考えてきたか。誰かと一緒に何かをしてきたか、そこの成功体験や失敗体験を話してもらいます。
──JAXAって、どんな組織ですか。
以前は課せられた使命を確実に果たすこと、ミッションを成功させることに最大の価値があったのですが、今は「社会にどんな価値を提供できるのか」が大事になり、そこを目指す組織になっています。ミッションを確実に行う人材も必要ですし、それを達成するとみなさんの生活がどう豊かになるのか、安全になるのか、便利になるのかという思いが必要ですね。
もちろん、エンジニアとして「とにかくこれをやりたい」というのも大事ですが、それが他者にとって何の利益になるのかというところに一定の価値観を持っていることが大事です。
──「宇宙好き」の度合いは大事ですか。
正直に言ってしまうと、来年の就職に影響があるかもしれないんですが……(笑)。大前提として宇宙が嫌いでうちに来る人はいないと思います。宇宙にネガティブな印象を持っているとキャリアとしては難しいし、あまり楽しい人生じゃないだろうなと。ただ、そこを選考で重視しているかというと、実はそうでもありません。繰り返しになりますが、求める人材の幅が広くなっているからです。
でも、さきほどの漁業や海洋資源でもそうですが、その分野を専門に学んできた人たちに、JAXAに入るイメージがないと思うんです。そこにギャップがあって、「JAXAはそういう人材を求めています。宇宙でこんなことができるんですよ」とリーチしていきたい。今まではそこまで宇宙のことを考えたことがなかった人でも、宇宙という場を使って自分の専門性で世の中に貢献できる、そういうキャリアもあると知ってもらえれば本当にありがたいです。
──そういう学生へのアプローチは?
JAXAに関心のない層に自分が候補者かもしれないと気づいてもらう、ホームページを見てもらうのが非常に難しい。大金があればCMをバンバン打てるんですけれども、いかんせんお金がないので(笑)。一つはSNSですね。JAXA、「はやぶさ」と「はやぶさ2」、若田光一宇宙飛行士等の公式ツイッターには、一定数のフォロワーがいるので、そこで「工学系じゃない人も求めていますよ」というメッセージを拡散してもらっています。
──文系ではどんな人が来ますか。
「公的機関」というところに魅力を感じ公的なところで貢献したい、あるいは「グローバル」という視点から国際的な場で活躍したい人が多いです。あとは「未知」というキーワードですね。新しい領域でチャレンジしたいという人もいます。ただ、技術系もそうですが、日常業務は非常に地道ですので、イメージと実際とのギャップが過度にないかということも確認しています。
民間ではできない大きなスケールの価値提供 成長する機会・人脈が豊富
■ニュース
──面接でニュースについては聞きますか。
最低限、社会常識は持っていてほしいと思います。技術系集団なので技術的なところにはアンテナを張っていてほしい。どういう技術が最近注目されたか、その技術を使ったら何が実現でき、社会がどう変わるか、というアンテナは磨いてほしいですね。
──2022年卒の電気系職種の募集をすでに始めていますね。
はい。DX(デジタルトランスフォーメーション)化の流れを受けて、電気系の人材獲得競争が激しくなっています。新卒社員に1000万円支払うような会社もあるので、先駆けたいと思って早めました。
処遇では勝てませんが、うちには成長する機会や人脈があります。JAXAが就職先としていかに魅力的かを理解してもらえればありがたいのですが。
──内定が競合する企業・団体は?
宇宙関連の企業が多いのですが、だんだんバラエティーに富んできました。
■インターンシップ
──インターンシップについて教えてください。
2020年の夏はコロナでインターンができませんでした。就活の一環とは位置付けておらず、就業体験として例年実施しています。
2021年2月にはワンデーのWEBセミナーを実施します。会社紹介と対談です。
──2022年卒向けには新しいインターンを考えていますか。
インターンの機会はできる限り提供していきたいと思っています。ただJAXAの場合、施設や試験設備を使う現場に来てもらうところに特色がありました。WEBインターンで何を提供できるか、またコロナの状況によって、これらの現場でも職員がテレワークベースとなった場合は難しいかもしれません。
■やりがいと厳しさ
──JAXAの仕事のやりがいは何でしょう?
JAXAでしかできない経験が豊富にあります。JAXAは今までにないものを新しく社会に提供します。他社でも新製品は常にそういう心構えで出していると思いますが、JAXAではプラットフォームづくりなど、より大きなスケールで考えられます。種出しをして、つくりあげて、運用まで持っていく。上流から下流まで関われる。この機会は他社では難しいかもしれません。
──逆に厳しさは?
結果がなかなか分からないところです。今までにないものについて、「これができたら社会が変わるんですよ」と価値を理解してもらうのはすごく難しい。でも理解してもらって、立ち上げて、実現まで持っていきますが、その成否には常にリスクが伴う。そういう難しさや辛さはありますね。
──どんな風土ですか。会社なら社風ですね。
上司にガンガンものを言います(笑)。テクニカルに正しいことが正しいので「それって最適じゃない。こちらのほうがいいですよね」といったことは、全員が何のちゅうちょもなく言います。思ったことを言えないという場面は、僕は見たことがないですね。ただ、それが通るかというと、さまざまな観点から議論され段階を踏んで、最後は組織として意志決定することになります。
──面接でニュースについては聞きますか。
最低限、社会常識は持っていてほしいと思います。技術系集団なので技術的なところにはアンテナを張っていてほしい。どういう技術が最近注目されたか、その技術を使ったら何が実現でき、社会がどう変わるか、というアンテナは磨いてほしいですね。
──2022年卒の電気系職種の募集をすでに始めていますね。
はい。DX(デジタルトランスフォーメーション)化の流れを受けて、電気系の人材獲得競争が激しくなっています。新卒社員に1000万円支払うような会社もあるので、先駆けたいと思って早めました。
処遇では勝てませんが、うちには成長する機会や人脈があります。JAXAが就職先としていかに魅力的かを理解してもらえればありがたいのですが。
──内定が競合する企業・団体は?
宇宙関連の企業が多いのですが、だんだんバラエティーに富んできました。
■インターンシップ
──インターンシップについて教えてください。
2020年の夏はコロナでインターンができませんでした。就活の一環とは位置付けておらず、就業体験として例年実施しています。
2021年2月にはワンデーのWEBセミナーを実施します。会社紹介と対談です。
──2022年卒向けには新しいインターンを考えていますか。
インターンの機会はできる限り提供していきたいと思っています。ただJAXAの場合、施設や試験設備を使う現場に来てもらうところに特色がありました。WEBインターンで何を提供できるか、またコロナの状況によって、これらの現場でも職員がテレワークベースとなった場合は難しいかもしれません。
■やりがいと厳しさ
──JAXAの仕事のやりがいは何でしょう?
JAXAでしかできない経験が豊富にあります。JAXAは今までにないものを新しく社会に提供します。他社でも新製品は常にそういう心構えで出していると思いますが、JAXAではプラットフォームづくりなど、より大きなスケールで考えられます。種出しをして、つくりあげて、運用まで持っていく。上流から下流まで関われる。この機会は他社では難しいかもしれません。
──逆に厳しさは?
結果がなかなか分からないところです。今までにないものについて、「これができたら社会が変わるんですよ」と価値を理解してもらうのはすごく難しい。でも理解してもらって、立ち上げて、実現まで持っていきますが、その成否には常にリスクが伴う。そういう難しさや辛さはありますね。
──どんな風土ですか。会社なら社風ですね。
上司にガンガンものを言います(笑)。テクニカルに正しいことが正しいので「それって最適じゃない。こちらのほうがいいですよね」といったことは、全員が何のちゅうちょもなく言います。思ったことを言えないという場面は、僕は見たことがないですね。ただ、それが通るかというと、さまざまな観点から議論され段階を踏んで、最後は組織として意志決定することになります。
数百機の小型衛星放出した宇宙実験施設「きぼう」を担当
■松村さんの就活と仕事
──松村さんの就活について教えてください。
修士課程で航空宇宙工学を学び、1993(平成5)年にNASDA(JAXAの前身組織の一つ)に入りました。バブルがはじけた直後で、大学の1~2年の就活シーズンには毎日のように先輩リクルーターが来て、お昼に金を払ったことがないみたいな時代だったんですが、自分が就職するときにはありませんでした。
公務員試験を受けていました。民間企業の大学推薦もありましたが、民間のほうが時期が早く、内定辞退は許されないので推薦は受けませんでした。当時の科学技術庁(現文部科学省)といくつか受けましたが、科学技術庁はダメでした。それより後の採用で興味があるのはNASDAしかありませんでした。
──仕事の経歴を教えてください。
まず研究開発部門で人工衛星の概念検討をしていました。その後、本社の経営推進部で計画管理をやった後、国際宇宙ステーション(ISS)の有人宇宙実験施設「きぼう」を担当しました。「きぼう」の打ち上げから運用の初期段階まで5~6年いました。今は人事部4年目です。
──一番印象に残っているのは?
「きぼう」は、霞ケ浦からいかだみたいなものに載せて川を下って横浜港まで行き、そこからアメリカに運びました。筑波宇宙センターから霞ケ浦までは陸路ですが、どうしても歩道橋をくぐれないところがありました。当局に「通過時だけ道路を掘っていいから、通過後埋めるように」と言われ、「きぼう」が通る30分前くらいに掘り出して5センチ位掘り下げて、即埋め戻したりしました。
──超アナログな仕事でしたね(笑)。
テクニカルな仕事でいうと、「きぼう」から小型衛星の放出をしています。それ以前は、大学の研究室などが小型衛星を打ち上げる場合、主にロケットに相乗りしてついでに軌道投入してもらう「ピギーバック方式」しかありませんでした。「きぼう」では、持っていった小型衛星を宇宙飛行士が軌道に投入することに、世界で初めて成功しました。「きぼう」からは数百機の小型衛星を軌道に放出しています。
──松村さんの発案なんですか。
私ひとりではありませんが、メンバーとして担当しました。ピギーバック方式だと何年かに1回しかチャンスがないのですが、ISSへは年に5回くらい打ち上げ便があります。大学の研究室の小型衛星もたくさん放出していて、多くの学生が衛星に関わる機会を提供できてよかったと思っています。小型衛星打上げのプラットフォームになりました。
──いずれ研究や現場に戻るとして、エンジニアとしての夢はありますか。
二つあります。一つは「きぼう」をもっと使ってもらえるようにしたい。宇宙にアクセスするのはハードルが高いと思われていますが、ISSは宇宙の中で格段にアクセスが容易なんです。人間が住んでいられるので。ISSで使っているパソコンは普通のノートPCで、iPad、家電レベルのものも使えます。それくらいハードルが低いプラットフォームなので使わない手はありません。小型衛星もご相談いただいてから場合によっては最短1年とか非常に短期間で打ち上げられます。そんなことは他ではなかなかできないので、もっと有効に使ってもらってプラットフォームの価値を高めたいです。もう一つは、国際協力のアルテミス計画などで月に行こうとしているので、これに関われたら楽しそうだなと思います。
(写真・1枚目はJAXA提供、その他は岸本絢撮影)
──松村さんの就活について教えてください。
修士課程で航空宇宙工学を学び、1993(平成5)年にNASDA(JAXAの前身組織の一つ)に入りました。バブルがはじけた直後で、大学の1~2年の就活シーズンには毎日のように先輩リクルーターが来て、お昼に金を払ったことがないみたいな時代だったんですが、自分が就職するときにはありませんでした。
公務員試験を受けていました。民間企業の大学推薦もありましたが、民間のほうが時期が早く、内定辞退は許されないので推薦は受けませんでした。当時の科学技術庁(現文部科学省)といくつか受けましたが、科学技術庁はダメでした。それより後の採用で興味があるのはNASDAしかありませんでした。
──仕事の経歴を教えてください。
まず研究開発部門で人工衛星の概念検討をしていました。その後、本社の経営推進部で計画管理をやった後、国際宇宙ステーション(ISS)の有人宇宙実験施設「きぼう」を担当しました。「きぼう」の打ち上げから運用の初期段階まで5~6年いました。今は人事部4年目です。
──一番印象に残っているのは?
「きぼう」は、霞ケ浦からいかだみたいなものに載せて川を下って横浜港まで行き、そこからアメリカに運びました。筑波宇宙センターから霞ケ浦までは陸路ですが、どうしても歩道橋をくぐれないところがありました。当局に「通過時だけ道路を掘っていいから、通過後埋めるように」と言われ、「きぼう」が通る30分前くらいに掘り出して5センチ位掘り下げて、即埋め戻したりしました。
──超アナログな仕事でしたね(笑)。
テクニカルな仕事でいうと、「きぼう」から小型衛星の放出をしています。それ以前は、大学の研究室などが小型衛星を打ち上げる場合、主にロケットに相乗りしてついでに軌道投入してもらう「ピギーバック方式」しかありませんでした。「きぼう」では、持っていった小型衛星を宇宙飛行士が軌道に投入することに、世界で初めて成功しました。「きぼう」からは数百機の小型衛星を軌道に放出しています。
──松村さんの発案なんですか。
私ひとりではありませんが、メンバーとして担当しました。ピギーバック方式だと何年かに1回しかチャンスがないのですが、ISSへは年に5回くらい打ち上げ便があります。大学の研究室の小型衛星もたくさん放出していて、多くの学生が衛星に関わる機会を提供できてよかったと思っています。小型衛星打上げのプラットフォームになりました。
──いずれ研究や現場に戻るとして、エンジニアとしての夢はありますか。
二つあります。一つは「きぼう」をもっと使ってもらえるようにしたい。宇宙にアクセスするのはハードルが高いと思われていますが、ISSは宇宙の中で格段にアクセスが容易なんです。人間が住んでいられるので。ISSで使っているパソコンは普通のノートPCで、iPad、家電レベルのものも使えます。それくらいハードルが低いプラットフォームなので使わない手はありません。小型衛星もご相談いただいてから場合によっては最短1年とか非常に短期間で打ち上げられます。そんなことは他ではなかなかできないので、もっと有効に使ってもらってプラットフォームの価値を高めたいです。もう一つは、国際協力のアルテミス計画などで月に行こうとしているので、これに関われたら楽しそうだなと思います。
(写真・1枚目はJAXA提供、その他は岸本絢撮影)
みなさんに一言!
JAXAは専門性をすごく大事にしています。学問でも学問以外の分野でも、何かしらの専門性、「これだけの経験をして、ここは絶対に誰にも負けない」というものがあれば、ぜひ磨いてください。たとえJAXAに来ないとしても自信になりますし、自分が何屋として生きていくのか、自身の人生を考えるきっかけになると思います。また、今後は終身雇用から、人が流動する社会に少しずつ変わっていくと思います。専門性を磨けば、労働市場でどこに行っても自分の価値が通用します。ぜひ専門性を持って磨いてください。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
【宇宙航空研究開発】
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、政府全体の宇宙航空分野の開発利用を技術で支える中核的実施機関と位置付けられ、同分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行っています。「宇宙と空を活かし、安全で豊かな社会を実現します」を経営理念とし、先導的な技術開発を通じて、幅広い英知と共に生み出した成果を、人類社会に提供します。
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2024/10/14 更新
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