人事のホンネ

富士通

2022シーズン② 富士通《前編》
WEB面接で家族やペットの声が…応募のハードルは下がった【人事のホンネ】

総務・人事本部 人材開発部 人材採用センター 太刀川明(たちかわ・めい)さん

2020年09月24日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2022シーズン第2弾は、日本を代表するIT企業、富士通です。新型コロナウイルスの影響で面接はすべてWEBに切り替え、一度も会わずに内定を出したそうです。そこにはオンラインならではのメリットもデメリットもありました。学生はどこを見られているのか、注意すべきポイントも見えてきました。(編集長・木之本敬介)

■コロナ対策
 ──新型コロナウイルスの直撃を受けた2021年卒採用はいかがでしたか。
 採用選考の真っ直中でコロナの影響があり、走りながらの対応になりましたが、学生や面接官に臨機応変に対応してもらったお陰で、おおむね計画通りに進めることができています。当社は、通年採用を実施しているので、最後まで気を抜かずしっかり応募者と向き合っていきたいと思います。
 面接は、すべて対面からWEB面接に切り替えました。選考コースによっては、グループディスカッション(GD)を実施する予定のコースもありましたが、「3密」を避けるため廃止し、すべて個人面接に切り替えました。

 ──GDをやめた影響は?
 面接のみで学生のスキルやポテンシャルを判断しなくてはいけなくなったため、協調性やチームワークなどの行動特性が見えづらかったことはありますが、学生時代の経験やこれまでの取り組み姿勢などをより丁寧に確認し、総合的に判断しました。

 ──一度も直接会わずに内々定を出したのですね。
 もちろん、対面で会えていない不安はありますが、それは学生側も同じです。お互いの不安を解消し相互理解を深めるために、面接の中でさまざまな内容について確認しています。
 また、内定後の学生については、内定者同士のオンライン懇親会を開催することで横のつながりを形成したり、継続的にフォローが必要な学生に対して採用センターのメンバーが継続的に電話やメールでやりとりしたりするなど、内定者フォローの質を上げ、学生の疑問や不安解消に努めています。

■WEB面接
 ――WEB面接の形式は?
 自由応募の面接は基本的に3回。すべて1対1で50分です。自由応募には「オープンコース」と「職種約束コース」があって、会う面接官が異なります。「オープンコース」はすべての面接で人事部が面接しますが、「職種約束コース」はソリューション&サービスエンジニアや営業など、それぞれの職種の幹部社員が面接して適性を確認します。
 学校推薦は3対1で50分です。面接官3人のうち2人がエンジニア、うち1人が人事なので、学生の研究内容や今まで学んできたスキルが富士通でどういかせるか、技術的な観点からも適性を確認します。

 ──WEB面接をやってみていかがでしたか。
 ここまで全面的に導入したのは初めてですが、海外大の学生や留学中の学生には実施していたので、ある程度のノウハウはありました。
 ただし、対面と違って面接部屋に入る際や会話の身振り手振り等が見えない分、学生の素の状態が見えづらかった面はあります。メリットは学生が面接に参加するハードルが下がったことです。とくに地方や海外の学生は参加しやすくなったと思います。面接官も例年、全国各地の会場で1日中面接をしていましたが、そうした拘束が緩和されました。富士通は新しい環境での働き方を進めているので、来年以降もWEB面接は継続する方向で検討しています。

 ──「素が見えづらい」とは?
 オンラインだと、目線とか話しているときの動作、コミュニケーションのとり方が見えづらくなります。画面に映らない部分はこちらからは見えないので、エントリーシート(ES)や用意しているカンペを読んでいる学生もいました。対面ではない分、学生の緊張感は少し低くなってしまうように感じました。面接官からは「どうしても画面に目が行ってしまい目線が下がってしまう」「富士通側から学生に伝えたいことが伝わりづらい」という話もありました。

 ──カンペを読むのはNGですか。
 何かを読んでいる学生は分かります。面接に向けて準備をしているともいえますが、対面ならそのようなことはできませんし、聞かれたことに対して自分の思いを自分の言葉で伝えるという面では準備不足と感じます。柔軟性に欠けたり、臨機応変に対応できなかったりする部分が見えてしまうということだと思います。

緊張感足りない学生も 控室の様子見る代わりにオンライン質問会

■WEB面接の功罪
 ──オンラインならではの失敗例は?
 もう映像が切れているものだと思って一緒に住んでいる相手と話はじめたり、家族の物音、ペットの鳴き声、インターホン、家族から「〇〇、ご飯だよ」という声が聞こえたりしたことがありました。

 ──ある程度は仕方ないのですか。脇が甘いという評価になりますか。
 インターホンなどは予期できないので、ひと言「失礼いたしました」と言うか、そのままスルーしてもらうなど、面接に集中している態度が見えれば問題ないと思います。ただし、事前に防げる事象であれば、緊張感が足りなかったと捉えられることもあると思います。

 ──背景の映り込みも気になりますか。
 雑多な背景が映っている学生もいれば、配慮してカーテンを引いている学生もいました。逆にアピールの場ととらえて、賞状やトロフィーを並べている学生もいました。面接官がそこに反応するかどうかは別ですが、突っ込めば話のネタになります。

 ──面接官側の対応策は?
 3月以降は基本的に在宅勤務となり、面接官も自宅から面接していたので、最初のころはネットワーク関係のトラブルが起こり、面接官同士や、学生とコミュニケーションが取りづらいことがありました。ハード面のトラブルは回数を重ねるとほぼ無くなりましたが、WEBを介してのコミュニケーションは難しいため、面接官に事前ガイダンスやトレーニングを行い、「なるべく目線が下がらないように」「学生の話にはオーバーリアクション気味に」など細かいところまで説明をしました。また、学生が録音や録画をしたり、スクリーンショットを撮ったりする可能性もあるため、対面以上にコンプライアンスに気をつけるよう伝えました。
 対面であれば、控室でも学生の様子を見ることができましたが、今年はなかったため、学校推薦採用では「オンライン質問会」を設けるなどして、少しでも学生の不安を解消し、かつ富士通としても学生の様子が見られるよう工夫しました。質問会は面接後に毎日開催し、参加学生は最大40人くらい。任意参加ですが、「富士通に対しての質問や今後の選考プランについて確認事項がある場合は参加してください」と知らせて参加を促しました。

■WEB説明会
 ──説明会はどうでしたか。
 2月までは対面でできましたが、3月に入ってすべて中止になりました。随時オンラインに切り替えたので、例年より実施回数が減りました。社員の座談会や自社セミナー、イベントも中止になってしまったので、さまざまな企業が参加するオンラインイベントにできる限り参加し、自社のイベントもオンラインに切り替え、WEB座談会や説明会を設けてフォローしました。

 ──WEB説明会の功罪は?
 学生は授業や他企業のイベントでもオンラインを活用しているので、慣れているなと感じました。WEB説明会は質問やコメントのハードルが下がるため、チャットを利用するなどして学生の反応がより多く見られました。特に質問のレベルが変わった印象もありません。一方で、カメラをオフにしたままの学生もいますし、富士通に対してどう思っているのか、説明会で何を感じたのか、学生の感触がつかみづらかったですね。

■採用実績
 ──エントリー数の増減は?
 2021年卒採用では15~20%増加しました。コロナ禍で学生も不安で、いろんな企業にエントリーしておこうという人が多かったのではないでしょうか。

 ──採用実績を教えてください。
 新卒は毎年750人ほど採用していて、今年も同じです。別途キャリア採用(中途採用)が300人くらいです。
 750人のうち250人くらいが女性です。高専卒も採用し、短大卒は一部グループ会社で採用しています。

通年採用導入は毎月締め切り 文系出身のエンジニアも活躍

■通年採用
 ──通年採用はどんなスケジュールですか。
 2019年の8月から本格的に始めました。自由応募が対象です。毎月21日に締め切って選考しています。

 ──夏以降は、どんな人が応募してくるのですか。
 夏以降も継続して就職活動を続けている学生はもちろん、富士通に対する思いが捨てられず、いったんほかの企業に就職したけれどもやっぱり再チャレンジしたいと受けに来る人もいますし、全然違う領域から自分の力が富士通でいかせるのではないかと受けに来る人もいます。私も選考参加者に会いますが、これまでの経験や志望動機が様々で面白いですよ。

 ──大卒後3年以内の第2新卒と、就活がうまくいかずに受ける4年生とどちらが多い?
 どちらもいます。加えて、海外の大学に留学中の学生で、帰国したタイミングで選考に参加する人もいますし、外国籍で既卒として参加する人もいます。

■職種
 ──コースについて説明してください。
 コースは四つです。
 一つ目の「スキルマッチングコース(学校推薦)」は配属先の部署を約束して入社します。
 二つ目の「オープンコース(自由応募/学校推薦)」は富士通への適性を確認し、入社後にスキルや適性を見て配属先を決めます。
 三つ目が「職種約束コース(自由応募/学校推薦)」で、職種を約束して入社します。
 四つ目が「研究所コース(学校推薦)」で、富士通研究所というグループ会社の採用です。基本的には博士対象ですが、修士の院生も一部います。研究に特化して就職したい学生向けのコースです。

 ──文系の学生は「自由応募」で、「オープンコース」か「職種約束コース」か選べるんですね。どちらが多い?
 まだオープンコースのほうが多いですね。ただ、ある程度やりたいことが決まっている学生も増えているので、割合は変わってくると感じています。

 ──職種にある「セールス&マーケティング」は営業で、「ソリューション&サービスエンジニア」はいわゆるSE(システムエンジニア)ですか。
 はい。SEというとクライアントが望むシステムを作り上げる、必要なものを提供するというイメージですが、富士通の「ソリューション&サービスエンジニア」はクライアントの課題やニーズを聞き出し、クライアントが望んでいるその先を見据えてソリューションを提供。そのソリューションを提供するために富士通の最新技術を活用します。世間一般のSEよりも幅広い仕事をします。ちなみに、富士通ではクライアントのニーズを聞き出したり、富士通の技術を使ってソリューションを提供したりする創造力やアイデアも非常に大事で、文系出身のエンジニアも活躍しています。現状でソリューション&サービスエンジニアの3割が文系出身です。

 ──「理系の会社」のイメージですが。
 学生にもよく「理系の会社だから文系は活躍できないのでは」と言われますが、文系が活躍できるフィールドも広いんです。何の知識もスキルもない状態でエンジニア系の職場に配属されることはありませんが、独学でプログラミングを勉強していたり、専門分野への知識があったりすれば、本人の意欲次第でいくらでもチャンスがあります。

 ──文系にも「職種約束コース」を用意している理由は?
 ある程度やりたいことが決まっている学生に職種を約束することで富士通に目を向けてもらうためです。ミスマッチが起こりにくくなるので、お互いにメリットがあります。

 ──学生の評判は?
 漠然とでも「営業がいい」「SEがいい」という思いを持っている学生には響いていると思います。
 理系で高度専門といわれる知識・スキルを持っている学生にも、「自分の知識や経験をこういう部署でいかしたい」「こういう技術を使って、こういうソリューションを提供したい」とはっきりしているのでジョブマッチはとても有効だと思います。「ジョブマッチがあったから富士通の内定を受諾しました」という学生も増えています。

 ──採用ホームページの「Job&Department GUIDE」を見ると、事業本部の多さに驚かされます。
 私もすべての組織について詳細に把握しているわけではありません(笑)。富士通は非常にビジネスフィールドが広いのですが、お客様に対して最善のソリューションをスピーディーに提供できるよう、会社の形(組織の在り方)を柔軟に変えています。IT業界ならではですね。

 ──学生にはどんな部署が人気ですか。
 富士通はDX(デジタルトランスフォーメーション)企業として打ち出しているので、AI(人工知能)や5G、セキュリティなどの部署はとくに人気ですね。応募数も非常に多いです。
後編に続く)

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 コロナの影響がどのくらい続くかは分かりませんが、間違いなくこれまでの対面中心の就職活動ではなくなると思います。予想外の事態に対応できる人間であってほしい。そうした人は会社の中でどんなことが起こっても臨機応変に対応できます。富士通は、世の中の変化に柔軟に対応できる会社であることを、これからも示していきます。そんな企業で働きたい、チャレンジしたいと思っている方はぜひ富士通に興味を持っていただけると嬉しく思います。これから自分の就活の軸を見定めていくところだと思うので、こうした状況を逆にポジティブにとらえ、前向きに就職活動に取り組んでもらえるといいなと思います。

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