人事のホンネ

Sky

2021シーズン⑩ Sky株式会社《前編》
CMで認知度アップ 開発・営業・事務…選考中に職種選んで【人事のホンネ】

リクルーティンググループ次長 南出致聖(みなみで・ちさと)さん、リクルーティンググループ主幹補 潟岡雅士(かたおか・まさし)さん

2020年01月22日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2021シーズン第10弾は、Sky株式会社です。テレビCMや東海道新幹線の車内広告を見たことがある人が多いと思います。就職人気企業ランキングでも上位に入っていますが、何の会社か、どんな会社か、知っていますか? 今回はSkyの東京本社と大阪本社をTV会議システムでつないでもらい、採用担当のお二人に根掘り葉掘り聞いてきました。(編集長・木之本敬介)

■何の会社?
 ──近年Skyの社名をよく聞くようになり、就職人気企業ランキングでも上位入りしていますが、そもそも何をしている会社ですか。
 潟岡さん(写真上) 俳優の藤原竜也さんを起用したテレビCMを見たことがある人もいると思いますが、ソフトウェアを開発し、企業や学校、省庁、団体に販売しているIT企業です。BtoB(企業間取引)の会社でCMを流している企業は珍しいかもしれませんね。ソフトウェアでは主に「SKY SEA Client View」という企業向けの情報漏洩対策ソフトを開発しています。性能、機能、運用性、サポート面等を総合評価する「日経コンピュータ」の顧客満足度調査で8年連続1位になりました(製品ではなく企業を対象にした調査)。また、自社商品だけではなくお客様のシステム開発(車載、デジタルカメラ、医療分野、業務系)も行っています。

 ──派手ではないBtoBの会社が、どうして学生たちに人気なのでしょう?
 潟岡 露出が増えていることと、学生との接点でしょうか。CMに加えて大学の最寄り駅に大きな広告を出したり、新幹線の車内に広告を出したりしています。東京から大阪まで2時間半かかりますし、「何の会社かな?」とスマホで調べるようです。学生からすると「見たことあるな」という感じではないでしょうか。合同企業セミナーで大きなブースを設けていますし、インターンなどで社に来て社風に共感してくれた人も多いのだと思います。

■2020年卒採用
 ──2020年卒の採用を振り返ってください。
 南出さん(写真下の右) この2~3年の傾向ですが、「最終的な決断は大手を待ってから」という学生が増えている印象で、大手志望、安定志向が高まっていると感じます。親に「大手のほうがいいんじゃないか」と言われて辞退する学生もいますが、CMなどで認知度が上がり、「Skyなら」と言ってくれる親御さんも増えています。

 ──採用実績を教えてください。
 南出 2020年卒予定の内定者は190人。大卒が8割、大学院卒が1割、専門学校・短大卒が1割です。男女比は7対3で男性が多く、理系・文系は6対4、エンジニア職だけだと7対3で理系が多いです。
 2019年卒は196人が入社しました。男女比、文理の割合は2020年卒採用と同じくらいです。2018年卒は230人でした。

 ──業績が伸びていますが、2021年卒では採用数を増やしますか。
 南出 今後の会社の事業計画から、毎年200人採用が目標です。数合わせのための採用はせず、当社に共感してくれる学生を採用しています。当社が新卒採用に力を入れはじめたのは4~5年前から。それまでは即戦力の中途採用がメインでした。2020年度に売上高1000億円、2025年度に3000億円を目指しており、会社を支える土台となる新卒採用を増やすことになりました。そのために、まずは認知度を上げようとCMや看板でPRし、早い時期のインターンシップも始めました。

自社開発ソフトを全国の企業、学校に販売 自動運転システム開発も主流に

■職種
 ──職種について教えてください。
 南出 「開発職」「営業職」「事務職」「システムサポート職」と、大きく四つあります。学部指定はありません。「開発職」はプログラマー・SE(システムエンジニア)です。「営業職」は自社パッケージ営業と開発プロジェクト受託営業がありますが、営業職として一括採用します。「事務職」は総務、営業事務、経理事務など、「システムサポート職」はネットワークエンジニアやインストラクターです。
 内定者190人のうち170人、採用の8割くらいが開発職です。営業職が1割、その他が事務職、システムサポート職で、この3職種は文系が多いですね。

 ──総合職採用ではないのですね。
 潟岡 職種別採用です。選考の段階で学生に選んでもらいます。具体的には、会社説明会、集団面接を経て職種を一つに絞り、希望する職種の現場担当者に会ってもらいます。
 基本的にジョブローテーションはなく、開発職なら開発のスペシャリストに、営業職なら営業のトップにと専門性を磨き、部門ごとにマネジャー、課長などの幹部になるキャリアパスです。

 ──営業職が意外に少ないんですね。
 潟岡 営業職も非常に重要なポジションです。「自社パッケージ」と「開発プロジェクト受託」の二つの営業部隊があります。「自社パッケージ」のほうが人数は多く、全国の企業、学校が対象なので、全国の拠点に営業職がいます。
 「開発プロジェクト受託」は、家電メーカーのデジカメを開発する、自動車メーカーのカーナビを開発するといった仕事ですが、こちらは営業職と一緒に開発職のマネジャーが同行するため、それほど人数は多くありません。SEが商売もする「現場営業」も多い会社なので。

 ──デジカメやカーナビの開発といっても、製品をつくるわけじゃないんですよね?
 潟岡 主に「組み込み」という分野で、デジカメやカーナビに内蔵されている特定の機能、たとえばカーナビだと音声認識とか、経路探索などですね。これらを実現するためのソフトウェア開発をしています。

 ──すると、情報漏洩対策ソフトから「組み込み」まで、ソフトウェア開発については何でもやる?
 潟岡 はい、何でもやる可能性があります。当社は大きな案件としてはデジタル複合機、いわゆるコピー機から開発を始めました。その時代、時代によって旬な家電製品は違うので、コピー機からカーナビ、ガラケー、デジカメと移り変わり、今は自動車の自動運転に関わるシステム開発が主流です。常に「今はこのビジネスにうまみがあるな」と察知するのが当社のスタンスです。先駆けて乗り込み、開発して、それを武器に他社にも売り込み、仕事を広げています。

 ──「エンジニア、SEの数が絶対的に足りなくなる」と言われます。開発職の3割が文系出身と聞きましたが、文系学生でもなれるのですか。
 潟岡 文系でも「手に職つけたい」と開発職を希望する学生が増えています。
 南出 ほぼゼロから始める人もいますし、文系でも「自分でホームページをつくっていた」「プログラミングをしていた」という人もいます。3カ月程度のしっかりした研修制度もありますが、できるかどうかは本人のやる気次第だと思います。

インターン、すでに5000人参加 採用チームのミッションはギャップなくすこと

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 南出 2段階あります。まずは「『好働力!』体感インターンシップ」です。カードを使ったワークでSkyの社風を知ってもらいながら、ソフトウェア業界のこれまでの流れを学びます。1日のインターンで、1月ごろまで開く予定です。1回数十人規模で、現段階ですでに約5000人が参加しています。基本的に希望する学生はすべて受け入れています。
 次が「コース別インターンシップ」。こちらも1日で、2019年は7月から始めて12月末まで実施しました。各回5~15人が参加し、開発系、営業系、事務系、SE体験コースなどに分かれます。開発系はソフトウェア開発に必要なことを学んで実際にプログラミングをする、営業系は自社商品に触れて仮想のお客様に対してプレゼンする、事務系は課題を解いて発表する、といった実践に近い内容です。

 ──インターンから本選考に進む学生は?
 南出 「選考に進みたい」という意欲のある学生には現場の担当者に会ってもらいます。その後、年末~年明けにかけて選考し、早いと2月ごろに内定を出します。内定者のうち4割くらいがインターン参加者です。

■選考スケジュール
 ――通常の本選考の日程は?
 南出 3月から説明会を開き、4月から選考ですね。説明会は3~5月に東京、大阪、名古屋、札幌、福岡と各地で開きます。
 説明会に来てくれた学生にはエントリーシート(ES)を出してもらいます。採用チーム面接、現場社員面接、役員面接があって、早い人で4月末か5月に内定が出ます。2020年卒採用では最後に内定を出したのは11月でした。

 ――インターンや説明会で大事にしていることは?
 南出 当社の採用チームの仕事は「採用」専門。新卒採用に力を入れ始めたころから規模が大きくなり、今では40人います。採用チームのミッションは「選考」ではなく、等身大で会社のことを学生に伝えて入社後のギャップをなくすこと。選考過程で合わないと思ったら辞退もやむを得ません。ですから、会社の「良い」も「悪い」も正直に伝えます。
 「良い人材を採用する」のも大事ですが、社風に合わないと本人も会社も苦労します。今はM&A(合併・買収)で大きくなる会社もありますが、当社に共感してくれる人を採用するのが肝心なんです。
後編に続く)

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 本音で、嘘をつかないで、自分の言葉でしゃべってほしいですね。いくらカッコつけても話せば分かります。自分を取り繕って入社してもギャップが生まれるだけ。そのまま素の自分で受けに来てください。(南出)

 就活はゴールではなく、就職してからのほうがずっと長い。長く働ける会社、仕事を選んでください。私は新卒採用のほかに退職者のヒアリングもしています。入社後3年未満の退職が増えていて、面談すると「プログラミングをやってみたけど、やっぱり合いませんでした」「ITが合わなかったんです」とあっさり辞めてしまう。就活の段階で自分のやりたいことを見定めてほしいし、入社後は自分から合わせる努力も必要です。せっかくの「新卒採用」というチャンスを失うのはもったいない。自分のやりたいことを決めて、先輩に聞いたり、自分で触ったりしてみてほしい。野球選手になりたければ練習するのと同じで、IT企業で働きたいなら、どんな仕事か具体的に知ろうとする努力をしてほしい。ネットで調べて分かった気になるのではなく、直接自分の足で先輩や現場の声を聞きに行くことが大事ですよ!(潟岡)

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【ソフトウェア・情報処理】

 業務系ビジネスシステム開発をはじめ、自動車やデジタル複合機などの製品に組み込まれるソフトウェアの開発や検証業務に従事。また、自治体や民間企業向けの情報漏洩対策ソフトウェア、医療機関向けのIT機器管理ソフトウェア、文教市場向けの学習支援ソフトウェアや、シンクライアントシステムなどの自社パッケージ商品の企画・開発・サポート・ICT環境整備などを行っており、幅広い分野でソフトウェア技術を提供しています。