人事のホンネ

日鉄住金物産株式会社

2020シーズン【第11回 日鉄物産(旧日鉄住金物産)】(後編)
規模と専門性兼ね備えた商社 自分の強みと志望、論理的に伝えて

人事部 人材開発課 植田裕真(うえだ・ゆうま)さん、小竹綾華(こたけ・あやか)さん

2019年02月26日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2020シーズンの第11弾、日鉄住金物産(2019年4月から「日鉄物産」に社名変更)の後編です。総合商社でも専門商社でもない、「複合専業商社」ならではのやりがいや魅力をじっくりうかがいました。(編集長・木之本敬介)
前編はこちら

■面接
 ──面接の方法は?
 植田 序盤の面接は40~50分のグループ面接です。

 ──なぜグループ面接を? 個人面接のほうがじっくり見られますよね。
 植田 多くの人と協働で仕事をするのが当社のビジネスですので、集団の中で特性を見極める必要があります。
 小竹 終盤の面接では、全事業本部の部長と人事部長が出席するので、内定者にとっては自信になるようです。全事業本部の人が見てOKしてもらえたんだと。

 ──学生は面接に向けて準備をしてきます。大事なことは?
 植田 学生時代にやってきたことの「感想文」を述べる人が多いのですが、面接は自己表現の場。1人あたり10分~15分しかない面接では、自分の何を知ってもらいたいのかを吟味せねばなりません。表面的なものではなく、それぞれが持っている強みや特性を分析し、企業の求める人物像と照らし合わせ、なぜ商社なのか、なぜ当社なのかを、論理的かつ情熱的に伝えてほしいと思います。

 小竹 もちろん、人間同士なのでフィーリングの部分もあります。私も受けたとき、この会社が一番自分らしくいられる気がしました。面接で準備してくるのはいいけれど、猫をかぶって自分を取り繕ってくる人がいるので、「それはしないでね」と伝えています。
 
 植田 TPO(時間や場所にふさわしい対応)はしっかりしてもらいたいですが、自分を就活用に取り繕い内定だけを目指す、つまり、その先の「働く」ことを忘れている人がいます。そうではなく、素直にありのままで、納得いかなければ面接でも「それは違うと思います」と言ってくれる学生のほうがいいですね。僕は、取り繕って鎧(よろい)を着た人が面接に来ると、まずそれをはがせるような(その人の素が見られるような)質問をしていきます。

 ──どうやってはがすのですか。
 植田 「○○をしました」と言ったら、「どうしてやろうと思ったの?」「いつも○○をしているの?」とその人の本質にアプローチする質問をして、素に近い状態を探ります 。また、「本当はこういう方じゃないのかな?」という予想を立て、質問を通じて仮説検証をしていくこともあります。

 ──「求める人物像」は?
 植田 平たく言えば「コミュニケーション能力」「バイタリティ」「課題発見・解決能力」といったところではないでしょうか。社員に何人か会えば、おぼろげながらそれぞれの会社の「軸」は見えてくると思います。他の商社とも交流がありますが、会社によって社風というか、カラーが違うなぁと感じることがあります。 当社は比較的ざっくばらんでフランクかなと思います。会社の看板ではなく、自分の中身で商売をしている人が多い印象ですね。ですので、商社において求める人物像を探るうえでは、“人”に会うことも重要なことの一つかと思います。

総合商社並みの規模で専門商社並みのスペシャリスト育成

■社風
 ──どんな会社ですか。
 植田 主体性をもって自らが動き、自分自身で道をひらいていく社風があると思います。また、それぞれの分野での専門性を求めるため、商材や業界に対する知識や経験、深さは他の商社と比べても誇れると思います。スペシャリストとして自己研鑽(けんさん)し、それぞれのフィールドで勝負している社員が多い会社です。

 ──日鉄住金物産の魅力は?
 植田 当社は複合専業商社であり、多様性にあふれ刺激的です。また、ボトムアップの文化があります。会社の規模が大きくなるとトップダウンで物事が決まりがちですが、当社は程よい規模感のため、自分の意見を発信しやすい風土があり、実力がつけば下から上に意見を上げることができます。小竹は2年目のときに一人でアメリカに行き、5大学で学内セミナーをしてきました。
 小竹 日本人留学生向けで、5日間で5大学、毎日違う大学を巡りました。企画して実際に行くまでは大変でしたが、その経験を通じ、仕事は自分でつくるものなんだということと、努力すれば本当に行かせてもらえるんだということを身をもって体感しました。そこから内定者も出るなど、成果もありました。

 ──総合商社と専門商社、どちらに近い?
 植田 どちらにも位置付けられない、というのが正直なところです。というのも、当社はトレーディングが商売の大半を占めるのですが、それでも年商2兆円を超えて総合商社並みの規模になってきた面もあります。一方、それぞれのフィールドでプロフェッショナルを目指し、専門商社並みのスペシャリストを育てている面もあります。規模が大きいからこそできることもありますが、初心忘るべからずで、専門性をちゃんと持ち、個々のビジネスパーソンがビジネスではなく「商い」をしていく。それが当社の目指す形であり、複合専業商社と名乗るゆえんです。「規模と専門性を兼ね備えた商社」と学生には伝えています。

 ──仕事のやりがいと厳しさを教えてください。
 植田 衣食住にかかわる商材の専門性と個性を磨くことができます。僕は若手時代、「人のせいにするな」とか「言い訳するな」とかめちゃくちゃ怒られて、入社してから何回か泣きました(笑)。大学入学以降は親にもそこまで怒られたことはなく、社会人になって泣くとは思いませんでしたね。でも、それも本気で育ててくれる当社の風土があるからこそだと思います。意見を聞いてもらえるし、与えられる裁量は大きく、ビジネスができるフィールドも広い。商社として、あらゆる商流(受発注や販売管理など取引関係の流れ)に介在しながらビジネスを推し進めていく厳しさとやりがいを存分に体感できると思います。

断トツだった「社員の魅力」 モノづくり最前線のプレッシャーも

■就活振り返り
 ──お二人の就活を振り返ってください。
 植田 リーマン・ショック前の2007年入社です。就活の前に「働くって何だろう」「給料はどのくらい必要か」など、4カ月ほど自分探しをしていました。その後、業界・業種を問わず、80社ほどの説明会に行きました。あらゆる業界・企業を見た中で、直感で「いいな」と思ったうちの一社が住金物産(当時)でした。特に社員の魅力が断トツだったんです。説明会に来ていた先輩社員にひかれたのですが、話に深みがあって、その人を中心にビジネスが回っている様子を思い描けました。商社という業態もそのときに初めて知り、「モノを持たず、人と人をつなげてビジネスを生み出す」と聞いて、そんな業態があるのかと驚きました。
 人事部に「他の社員にも会わせてください」とお願いし、6人の社員と会わせてもらいました。いろんな人と会う中で、「おごらない誇りがある」「小さな仕事でも信頼関係をつくって大事にしている」と感じたことを今でも覚えています。面接でも社員と会って感じたことを話し、「御社がダメだったら、来年もう一度受けようと思っています」と言ったくらい、覚悟を決めて受けていましたね。

 ──小竹さんは?
 小竹 日本の大学を卒業後、イギリスの大学院へ行き、修了後に実家がある台湾に帰るか、イギリスで働くか、考えました。日本の企業は育ててくれる風土があると思い、日本人留学生向けの就活イベント「ボストンキャリアフォーラム」に参加しました。せっかくグローバルに育ったし商社の話も聞いてみようと思って、日鉄住金物産の説明会に出たら、駐在員が魅力的だったんです。仕事内容に興味を持った会社は他にもありましたが、初めて「人」にひかれました。1人だけ見て決めるのは怖くて、3人に会わせてもらいました。タイプはさまざまでしたが、みな温かみがあり、誇りを持って仕事をしていると感じました。面接では今の人事部長に当たったのですが、飾らずに素で話すことができ、それがすごく楽しかったんです。「こんなに自分を出していいのかな。落ちるパターンかな」と思っていたら合格していました。

■印象的な仕事
 ──入社後の経歴を教えてください。
 植田 入社以来10年間、繊維事業本部のメンズ衣料部に所属していました。もともと服にそれほど興味があったわけではないので、まずは専門知識をつけないと仕事ができないと感じ、入社当初はひたすら生地や製品の勉強をしました。当社の繊維事業では、生地も縫製もトレンドも物流のことも、すべて営業が把握・理解し、それをチームで共有して営業をしなければいけません。勉強の甲斐もあり、3年目を過ぎたころには素材の配合や縫製がだいぶ分かるようになり、5年目頃には生地の設計もできるくらいになりました。その後営業に出たとき、素材から縫製、物流から納品と、すべての仕事の流れを把握できている強みを感じたことをはっきりと覚えています。

 ──なぜ繊維にしたのですか。
 植田 一番身近で面白そうと思ったからです。でも、いざ仕事をしてみるとものすごく大変でした。たとえば、ダウンジャケットはボタンや長さの違うファスナーなど数十個のパーツでできています。そのうちの一つの部品でも間違えたり、不足したりすると、工場の生産が止まってしまいます。モノづくりの最前線にいるという臨場感とともに、一つのこともおろそかにできないというプレッシャーが常にありました。

 ――印象的な仕事は?
 植田 好きなセレクトショップがあったのですが、当社はうまく営業活動ができておらず、ほとんど取引ができていませんでした。そこで、自分で開拓しようと考え、作戦を練りました。
 新規での飛び込み営業は間口が狭かったため、事前にブランドのことや他社のシェア、当社の強みや他社との違い、何よりそのブランドが当社を仕入れ先としたくなる材料をそろえるとともに、課長や後輩、チームのデザイナーや生地屋さんなどとも連携し、万全の準備をしたうえで飛び込みました。飛び込んだタイミングもよく、縁も重なり商売を始めることができたときは非常に嬉しかったですし、そのブランドに対してはとくに強い思い入れでモノづくりに励んだことはよい思い出です。

 ──小竹さんは?
 小竹 入社して採用チームに配属され、3年目です。海外経験も長いので、グローバル関連の研修も担当しています。価値観の違いなどもあり思うようにいかず、入社当初は悩んだこともありましたが、仕事をしていく中で自分の視野が広がったこともあり、今は大変ながらも充実した日々を送っています。
 仕事でとくに印象に残っているのはアメリカの大学での説明会ですね。「海外に行きたい」「出張に行きたい」と思い、実現するには行動しかないと、自ら企画を練り、上司への提案を重ねたところ、最終的に承認を得て実現することができました。「あ、頑張ればやらせてくれるんだな」と。

(写真・岸本絢)

みなさんに一言!

 今は売り手市場ですが、だからこそいろんな企業を見たほうがいいと思います。しっかり自分探しをして、自分のやりたいことができる、そこに少しでも近い会社を探してください。仕事は人生の一部です。やりたいことや生き方を考えて、仕事を選んでください。(植田さん)
 就活をきっかけに業界を詳しく知ったり、会社に興味をもったりする人がほとんどだと思います。そこでいろんな企業を見るのももちろん大事ですが、これからは就職したとしても、転職も増える時代。自分のやりたいことは何か、キャリアプランや生き方そのものを考えて、広い視野を持ってもらえたらと思います。(小竹さん)

日鉄住金物産株式会社

【商社】

 日鉄住金物産株式会社は、住金物産株式会社と日鐵商事株式会社が2013年10月に経営統合し、発足しました。歴史ある両社がこれまで培ってきた経営資源を結集したことで、人の力、機能、ネットワークなど、全てが圧倒的に強化され、新しいステージに立ちました。いま私たちは、その世界を更に大きく拡げていこうとしています。現状に満足することなく、新しい価値を生み出したい。失敗を恐れることなく、常に前を向き歩み続けたい。社員一人ひとりの思いが新たな挑戦を生み、私たちのビジネスを無限大に拡げていきます。私たちのテーマは、「この道では誰にも負けない」。情熱・好奇心・向上心をもって挑戦し続けたい。更なる成長を実現したい。そして、自分の世界を拡げていきたい。そんな志をもった未来の商社マン・商社ウーマンをお待ちしています。