人事のホンネ

日鉄住金物産株式会社

2020シーズン【第11回 日鉄物産(旧日鉄住金物産)】(前編)
4事業を柱にすえる「複合専業商社」 多様な人材求める

人事部 人材開発課 植田裕真(うえだ・ゆうま)さん、小竹綾華(こたけ・あやか)さん

2019年02月19日

 人気企業の採用担当者を直撃する「人事のホンネ」2020シーズンの第11弾は、日鉄住金物産(2019年4月から「日鉄物産」に社名変更)です。新日鉄住金(同月から「日本製鉄」)グループの中核商社。2019年卒採用ではプレエントリー数が前年の倍以上に急増しました。いったいどんな取り組みをしたのでしょう?(編集長・木之本敬介)

■2019年卒採用
 ──2019年卒採用はいかがでしたか。
 植田さん(写真左) 当社はBtoB(企業間取引)企業なので、世間一般にあまりなじみはないのですが、例年、学生の皆さんには多くのエントリーをしていただいています。僕はもともと営業出身で、採用担当としては2年目です。採用1年目は選考までの流れや学生の現状について学び、2年目の2019年卒採用から主体的に活動をしています。
 当社における採用は、国籍や性別に区別はなく、学歴フィルターももちろんありません。近年は、新卒総合職における女性比率も30%を超えており、外国籍の方も複数採用しています。加えて今回、地方の学生に会いに行く機会を増やしました。全国を巡り大学でインターンシップを実施したんです。たとえば、西日本の地方国立大学に、商社を目指すようなグローバル人材を育てる学部をもっている大学があります。そちらの大学と連携し、学部内で20~30人対象のインターンを実施させていただきました。2017年度は3校でしたが、2018年度は実施の要望をいただくところもあり、10校程度に増えました。

 ──2019年卒採用の内定状況を教えてください。
 植田 「総合職」の内定者は50人ほど、「一般職」が25人程度です。理系、院卒は数人ずつ。学部学科、文理に関係なく採用しています。総合職の出身大学は30大学以上。この多様性も当社らしい特徴だと思います。

 ――採用数を増やした?
 植田 業容が拡大していることもあり、前年度の総合職42人、一般職12人から増加しました。

 ──なぜ地方大学からの採用に力を入れたのですか。
 小竹さん(写真右) 当社は、「鉄鋼」「産機・インフラ」「繊維」「食糧」の4事業を柱にした「複合専業商社」として、専門性の高いスペシャリストを育てています。事業内容は多岐にわたっており、多様な人材を求めています。
 実は、前年までは関東・関西圏の内定者がすごく多かったんです。内定者全体でみても高い比率となっていて、似たようなタイプの学生がやや多い傾向がありました。
 地方には、都会とはまた違う人材がいますし、ダイバーシティの観点からもいろいろな学生に出会いたい。しかし、地方の学生がわざわざ東京に来てインターンを受けるのは難しい。そこで、こちらから足を運ぶようにしました。

 ──どんな人材に出会いましたか。
 植田 九州や四国、東北などの国立大学で、グローバルな人材育成をめざす学部の学生や、マレー語、中国語、英語、日本語の4カ国語が話せるマレーシア出身の女子学生、日本語はあまり得意ではないけれど、とても努力家で真面目な中国人学生などと出会うことができました。日本語が完璧でないと採用できないという考えもあるかと思いますが、ダイバーシティを推進するグローバル企業として、語学は不足していても、ほかに秀でた部分がある学生は採用すべきだと思っています。
 また、小竹は台湾出身ということもあり、ダイバーシティに関する議論をよくします。価値観が違うがゆえに理解が難しい部分もありますが、議論をしながら、少しずつ歩みを前に進めていく必要があると常々思っています。
 2019年卒は、2018年卒とは一味違うカラーの学生がそろいました。外国籍の学生は中国、韓国、マレーシア、アメリカの4人。多様性を求める商社ですので国籍にはこだわりません。同期で集まると「本当にいろんなタイプの人がいますね!」とみんな言います。それで良かったと思います。

 ──「一般職」採用は続けますか。銀行などは減らしていますが。
 小竹 当面は採用すると思います。当社の一般職はみな自信をもって働いており、出産・育児休業を経て勤務を継続するのが普通になっています。また、入社4年目以降は総合職への職掌転換もできるので、一般職で自信をつけてから総合職に換わる人も出てきています。

学内や一般公募のインターンで商社ビジネス体感

■インターンシップ
 ──インターンは東京や大阪に学生を集めるのが一般的ですが、地方の大学の学内で行うのですか。
 小竹 はい。大学から直接要望をいただくこともありますし、内定者等より先生を通じて「後輩のキャリア形成のために開いてほしい」との話があり、ゼミ単位などで実施することもあります。インターンはワークショップ形式で、学生が将来を考えるきっかけになるような内容にしています。ほかに一般公募のインターンもあります。

 ──大学内、公募合わせて何回実施しますか。
 小竹 公募も内容は学内と同じで、半日のインターンで、月2回、全12回程度です。もう一つは5日間のインターンを年2回実施しています。こちらは1回につき30人くらいです。
 半日のほうは「いろんな人にキャリアを考える機会を提供すること」が狙いなので、エントリーシート(ES)も選考もなく予約すれば誰でも参加できます。学年も問いませんので、大学1年生でも参加できます。

 ──選考なしだと応募が殺到しませんか。
 植田 おかげさまで関東は割とすぐに埋まってしまいますね。そのほか関西や九州、北海道地区でも実施しています。応募状況は地域によってややばらつきがある印象です。

 ──どんなワーク?
 植田 まず、「商社の歴史」を座学で学びます。商社の生い立ちから説明し、商社の存在理由が分かったところでワークに入ります。商社ビジネスを体感する2時間ほどのワークです。
 小竹 ワークの前半は、いろんな仕入れ先があって、自分たちが適切だと思う取引先とつなげるものです。後半では、どこから仕入れ、物流をどう選び、どう加工してという行程を自分たちで組み立てます。単に答えを見つけるのとは違う、気づきを含んだワークです。

 ──学生の反応は?
 植田 ダイヤモンド社のインターンシップ人気企業ランキング(2018年度)で全200社中40位に入りました。「プログラムが魅力的だったから」と「友人に勧められたから」の項目では200社の中でも上位の評価でした。学生目線でプログラムを組み立て、地域や学生の層によって社員をアレンジしたり、進め方を変更したりするなど、満足度が高くなるように工夫した結果が出て、嬉しく思っています。