人事のホンネ

武田薬品工業株式会社

2020シーズン【第4回 武田薬品工業】(前編)
世界トップ10入りへ 「MR・総合職」で多様なキャリアを

ジャパンファーマビジネスユニット 人事部課長代理 樋口淳(ひぐち・じゅん)さん

2018年10月16日

 人気企業の採用担当者を直撃する「人事のホンネ」2020シーズンの第4弾は、国内最大の医薬品メーカー、武田薬品工業にお邪魔しました。アイルランドの製薬大手シャイアーの巨額買収で話題のグローバル企業。製薬会社といえば営業を担う「MR」が思い浮かびますが、今回から「MR・総合職」として募集したとか。そこには、ある思いが込められていました。(編集長・木之本敬介)

■新社屋
 ──こちらの「武田グローバル本社」はできたばかりですね。
 7月2日にグランドオープンしました。2019年卒の新卒採用の選考のときはまだグランドオープン前でしたが、面接ではこちらのオフィスを使いました。

 ──使い心地はいかがですか。
 非常に快適です。一つひとつのデスクが広くなり、仕事がしやすくなりました。昇降式のデスクやソファ、さまざまなテーブルがあるので、わざわざ会議を開かなくても気軽にコミュニケーションがとれて、ありがたいですね。

 ──「グローバル本社」という呼称は珍しいですね。
 当社は創業の地である大阪とビジネス上利便性の高い東京との2本社制を取っています。日本発祥の企業として世界に発信し、世界からビジネスが集まる拠点でもあるので「武田グローバル本社」という呼び方をしています。

■2019年卒採用の特徴
 ──2019年採用を振り返ってください。
 就活全体がググーッと前倒しになり、さらに早期化しました。学生にとってインターンシップが当たり前になった年でもありました。今までは「製薬会社がどんなところか学びに来ました」という人がいましたが、今年2月のインターンでは「製薬5社目」「6社目です」という人たちがいて、「製薬企業についてグループディスカッションをしてください」と指示したときのスタートダッシュが違います。「○○が□□で、国の動きは△△で……」と、いきなり専門用語が飛び交ってレベルが高い。製薬業界を一から学びに来たというより、「その中の武田の特徴は何か」を見ていると感じましたね。

 ──武田薬品にとってはいいこと?
 就活の早期化については議論があるところですが、学生が製薬ビジネスに関心を持ち、熱く語ってくれるのはすごく嬉しい。「よく知っているな」「よく見てくれているな」と思うと純粋にワクワクします。

70カ国超でビジネス展開する「グローバライズドカンパニー」

■採用実績
 ──2019年卒採用の内定者数を教えてください。
 全体の内定者は35人です。私が関わったのは「MR・総合職」の十数人ですが、それ以外に「研究職」「開発職」が20人弱、「製造職」が5人です。総合職は基本的にMR(Medical Representative=医薬情報担当者)で、研究・開発は医学部・薬学部系の専門職、製造は工場勤務の専門職です。専門職は修士課程や博士課程以上が対象で、採用がない年もあります。

 ──MR・総合職の男女比は?
 年によって変わりますが、今回は結果的に女性のほうが多かったです。男女に能力の差はないと思いますが、採用は人しだいであり、完全に実力主義でやっています。

 ──MR・総合職は文系、理系のどちらが多いのですか。
 MR・総合職の採用は文理ではなく「薬学」か「非薬学」で分けていますが、今回は半数ずつでした。

 ──2018年入社の人数は?
 2018年入社は30人ちょっとで、うちMR・総合職が23人でした。2019年卒採用でMRは少し減ったので、2020年卒はもう少し増やしたいと思っています。

■キャリア形成
 ──アイルランドの製薬大手シャイアーの買収により、製薬の世界トップ10に入りますね。
 私はもちろん、多くの従業員がワクワクしています。シャイアー社の保有する製品やパイプラインの価値提供も合わせて、日本発の研究開発型グローバルバイオ医薬品のリーディングカンパニーの一員として、今まで以上に患者さんのためにできることが広がると期待しているからです。
 岩﨑真人取締役(ジャパンファーマビジネスユニット プレジデント)は「武田はグローバライジング企業ではない。グローバライズドカンパニーだ」と言っています。すでに70カ国以上でビジネスを展開しているので、日本からもグローバルに活躍する人材をもっともっと送り出していきたい。今年から「MR・総合職」という名前で募集したのも、そういった理由からです。多様なキャリアを自ら切り開き、もっと伸びてほしいという意味を込めています。

 ――前年までは?
 これまでは「MR職」でした。MRは医療機関を訪問して、自社の医療用医薬品を中心とした医薬情報を医療関係者に提供し、自社医薬品の適正な使用と普及を図ること、医療の第一線から有効性や安全性などの情報を収集して会社に報告することや得られた情報を医療関係者にフィードバックすることが主な業務ですが、今後はMR職としての活躍はもちろん、グローバルも含めたさまざまな職種を経験して製薬ビジネスを動かしていくことを期待しています。

 ──名前を変えた効果は?
 まったくありませんでした(笑)。思いを込めて広報活動をしたのですが、特に何かがガラリと変わることはありませんでした。入社して早期からマーケティング部門や学術部門など多様なキャリアプランの可能性を見せられれば違ったかもしれません。しかし、製薬ビジネスの根幹は医療機関など患者さんに近い場所にあります。MR職を経験することで、患者さんのためにするべきことへの理解が深まると考えています。入社後は半年ほど宿泊棟を併設した自社の研修施設で導入研修を行います。それを敬遠した人もいるかもしれません。

 ──長い研修ですね。
 MR認定センターが実施するMR認定試験には医学・薬学の知識や関連法規など、MRとして必ず理解しておく必要がある内容が網羅されているので、入社1年目に受験してもらいます。医薬品は薬剤というモノですが、情報がセットになってはじめて医薬品となるので、患者さんに適切な形で届けるために勉強は欠かせません。大学での授業と比べればアウトプットのウエイトも高いです。たとえば循環器の疾患を学んだところで、それをプレゼンテーションしたり、「1対1」で話したりといったトレーニングも行います。

 ──MRの後のキャリアは?
 「MR・総合職」は入社後2年経ったら、全員が人事部と面談をします。MRとしてずっと活躍したい人もいるし、本社でマーケティングをしたい、人の教育に携わりたい、グローバルに活躍したいという人もいます。入社4年目のある社員は、MR職を経験した後、先月まで採用を担当していましたが、今インドネシアに行っていて、留学ならぬ「留職」というプログラムに参加しています。

インターンの「MR同行」は医療機関に丸一日

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 2019年卒生向けは、8月と2月にそれぞれ東京、大阪で2回ずつ行いました。2020年卒向けは7月に薬学部生を対象にしたインターンシップを東京、大阪で2回ずつ開催し、8月に薬学部以外の学生を対象に東京、大阪で各2回開き、前年より夏開催を増やしました。2019年2月にも開催する予定です。

 ──人数と期間は?
 1回あたり40人弱で、今年は6回開催予定です。
 従来は5日間でしたが、去年は4日間、今年は3日間にしました。参加者アンケートで、「4日間だったので深く学べて良かった」という意見の一方、「いろんな企業のインターンに行きたいので、もう少し短くていい」という意見もあり3日間にしました。

 ──どんなインターンですか。
 本来、インターンは「職業体験」です。実際の職場を身近に感じてもらいたいので、「MR同行」を設けています。「MR職とは」と口頭で説明してもなかなか伝わらないので、朝から晩までMRと一緒に医療機関などを訪問し、MRが医師や薬剤師ら医療関係の方々にどのような活動をしているかを見てもらっています。

 ──MR1人に学生1人?
 原則マンツーマンです。1日目は業界やMR職の理解を深めるためのワークやスキルトレーニングなど、2日目がMR同行、3日目は主に同行の振り返りをしました。1日だけの同行では、見せられるシーンは限られます。あるMRは大学病院へ、別のMRは開業医の先生方のところへ行く。都市部と地方でも違います。3日目にグループワークで振り返ると「僕はそうじゃなかった」「私はこうだった」とそれぞれ感じ方が違うので、ディスカッションを通じてさらに理解が深まります。
 学生たちは「いい意味で期待を裏切られた」と言います。アポイントを取っていても医師に緊急手術が入れば会えなくなります。「医療現場は忙しく、予定通りにはいかない」と驚いたり、「医師と対面で1時間も話すこともあるんだ」と驚いたり。業界でもMR同行は珍しいと思います。

■インターンの選考
 ──インターンの応募方法は?
 これまでエントリーシート(ES)と適性検査での書類選考の後、面接をしていましたが、今年はESの代わりにビデオエントリーにしました。ESだと似た内容が多いように感じ、絞り込むのが難しい。そこでビデオエントリーを試したのですが、すごく良かったですよ。本当に熱意を持って語ってくれるのがうれしいし、その人の魅力や強みも十分感じられました。

 ──どんな仕組みですか。
 「HireVue®」という自動録画システムで、まず1分間で「インターンに応募した理由」、次に2分間で「学生時代に主体的に取り組んだこと」を話してもらいました。
 フリップを使ってプレゼンするなど、みんな工夫を凝らしていました。服装も就活スーツが多いものの、部活動のユニホームを着てプレゼンし「私のこの服装の理由は……」と話し始めるなど独創的な切り口もありました。

 ──選ぶのが大変だったのでは?
 いえ、むしろ選びやすかったですね。熱意が伝わってきたり、一生懸命考え、練習してきたことが伝わったり、どれだけ真剣に志望してくれているかが分かります。書面よりダイレクトに分かるし、ビデオを見るのは楽しかったです。

 ──インターンと採用選考の関係は?
 インターン参加者は会う機会が多いため、人となりもよくわかりますが、採用選考での特別扱いは一切しません。経団連指針の形骸化が叫ばれるなか、当社だけのんびりしていていいのか議論しましたが、当社のバリューであるタケダイズム「誠実・公正・正直・不屈」の観点からも、インターンに参加した人だけがパスするのは不公平なので、全員3回の選考ステップを踏んでもらいました。
 ただインターンの後、採用選考の面接まで期間が開いてしまうので、インターン参加者と1対1で話す機会を設けて接点を増やしました。学生が一番気になっていることを話してもらいました。人によっては「ESはどう書いたらいいですか」「面接の準備は何をしたらいいですか」と具体的なアドバイスを求めてくる人や、「インターンで私をどう思われましたか」と評価やフィードバックを求める人もいましたが、すべて率直に答えました。
後編に続く)

(写真・岸本 絢)

みなさんに一言!

 誰しも人生でキャリアの節目がありますが、就活は間違いなく大きな節目です。昔より転職が身近な時代になったので、入社してから人生を考えるという人もいるかもしれませんが、大事なキャリアの節目のときこそ、後悔がないようにじっくりと考えてほしいと思います。
 友だちから聞いた情報も参考にはするものの鵜呑みにせず、自分の目で見て、足を使って情報を集めてほしいと思います。「自分はどんな人間か」「何がやりたいのか」を突き詰めてほしいですね。もちろん製薬業界に興味を持ってもらえれば嬉しいですが、あなたが天職だと思える仕事に出会ってほしいです。ぜひあきらめずに頑張ってください。

武田薬品工業株式会社

【医薬品】

 タケダは、230年を超える長い歴史の中で培われた普遍の価値観である「タケダイズム(誠実・公正・正直・不屈)」を行動指針とするとともに、四つの重要事項である「患者さん中心(Patient)」、「社会との信頼関係構築(Trust with Society)」、「レピュテーションの向上(Reputation)」、「事業の発展(Business)」をその優先順位に従って考えることで、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」というミッションを追求しています。