人事のホンネ

小田急電鉄株式会社

2019シーズン【第10回 小田急電鉄】
公共交通の責任と使命感じて!複々線化で沿線の魅力向上へ

人事部(採用・能力開発担当)課長代理 万代竜司(ばんだい・りゅうじ)さん

2018年03月13日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2019シーズン第10回は、関東を代表する私鉄・小田急電鉄です。通勤・通学の足としてだけでなく、箱根、湘南という人気観光地と都心を結ぶ小田急は今年、悲願の複々線化を実現させて新たな一歩を踏み出しました。とても身近な鉄道会社ですが、「総合職」と運行などに直接携わる「エキスパート職」では、求める人物像が異なるためエントリーシートの質問も変えているとか。興味深いお話をうかがってきました。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ──2017年卒と2018年卒の採用実績を教えてください。
 当社は職種別の採用を行っています。2017年入社は「総合職」が18人(男性10人、女性8人)でした。高卒、専門学校卒、短大卒、院卒を含めた「エキスパート職」は136人(男性114人、女性22人)。トータルで154人(男性124人、女性30人)です。
 2018年の内定者は「総合職」が19人(男性10人、女性9人)です。「エキスパート職」は102人(男性78人、女性24人)。トータル121人(男性88人、女性33人)となっています。

 ──文系・理系はどうでしょう。
 技術系職種は理系に限ります。「総合職」の技術系、「エキスパート職」の「車両」「電気」「土木・建築」「商業施設(技術)」などは学科・専攻の指定があります。それ以外は、「運転」も含め文理を問いません。ちなみに、「総合職」のうち技術系は2017年、2018年とも6人です。

 ──採用数の増減は?
 2016年入社の総合職13人はやや少なめでしたが、例年15~20人くらいです。
 エキスパート職は2016年、2017年は複々線化に向けて運輸系の職種の採用を増やしていたので、やや多めでした。2018年は複々線完成後なのでおおむね平常の水準に戻りました。

■職種
 ──それぞれの職種について教えてください。
 総合職はさまざまな業務を経験し、ゆくゆくはグループ全体の舵取りを担うことが期待されています。管理職層や経営層を目指し、事業の中心的な役割、企画立案にも大きく携わる職種です。
 エキスパート職は「鉄道」「商業施設」「IT」に分かれていて、さらに「鉄道」の中には「運転」「駅務」「車両」「電気」「土木・建築」の5職種があります。それぞれの分野の中で専門知識を深めたり、能力を高めたりして、その道のプロフェッショナルを目指します。
 「IT」は2017年卒採用から新設しました。各種業務等のシステム化のほか、アプリ開発や駅へのWi-Fi設置などのお客さま向けサービスに関わる場合もあり、グループも含めたIT戦略を担う人材を採用します。

 ──総合職、エキスパート職、どちらの人気が高いですか。
 お陰さまでどちらの職種も応募者が多く、かなり高い倍率です。ただ、それぞれ求められる役割や働き方が異なるので、我々もミスマッチがないよう入念に説明しています。

 ──鉄道は男性のファンが多いイメージがありますが、女性の採用は意識していますか。
 「意図的に女性を増やそう」ということはなく、来てくれた人を純粋に人柄とか話の内容で選考しています。ただ、昨今の「女性活躍推進」「ダイバーシティ推進」といった観点は当社も重要視していて、今約8%の女性社員比率を2020年度に10%にすることを目指しています。昔は法律で女性の深夜勤務が制限されていたので、全体としてはまだ女性の数は多くないですが、応募者数は増えてきています。

 ──車内アナウンスで女性の声を聞くことが多くなりました。女性運転士も増えている?
 運転と駅務を一緒に採用する会社もありますが、当社は別々です。現状では女子学生は駅務志望のほうが多いですね。別にしているのは求められる役割や働き方が違うからです。学生の話を聞いている限りでは、接客などお客さま向けのサービスに関心のある人が「駅務」、列車の運行に直接関わりたい人が「運転」を志望する傾向があります。
 確実にキャリア選択ができるので、学生には好評です。やはり、エキスパート職を志望する人は希望する業務に確実に就けることを重視しているように見えますね。

 ──駅務で入社した人が「やっぱり運転士になりたい」と異動することは?
 ありません。逆のケース、たとえば健康上の理由などで列車への乗務が難しくなった場合、「運転」から職種変更するケースはあります。

 ──総合職とエキスパート職間の異動は?
 それぞれの職種間の転換制度を用意しています。

 ──やはり鉄道オタク的な学生の応募が多いのですか。
 そういう感覚はないですね。たまに学生から「鉄オタだとバレると受からないのでは?」と聞かれますが、そんなことはありません(笑)。鉄道好きの人も、「昔からの夢でした」という人もいます。ただ、仕事なのでバランスは必要です。「鉄道が好き」ばかりで視野が狭くなると支障がありますが、そうしたことがなければ全く構いません。

 ──鉄オタは、総合職、エキスパート職、どちらにもいますか。
 どちらかというとエキスパート職のほうが多い気がしますね。

 ──技術職の採用に推薦制度はありますか。
 ありません。完全に自由応募です。

総合職は課題解決力、エキスパート職は打ち込んだ経験を

■インターンシップ
 ──最近は「売り手市場」で、各社とも特に技術系総合職の採用に苦労しています。
 簡単ではないですね。当社は夏と冬、年に2回インターンシップを行い、それをとっかかりにして興味を持ってもらえるように説明しています。

 ──どんなインターンですか。
 総合職の技術系は4~5日間で行います。保線作業や車両所の設備を見たり体験したりするほか、ワークや先輩社員との懇談を通じて仕事内容を知ってもらいます。「土木・建築コース」「電気・機械コース」と二つに分かれて行い、各コース6~8人で実施しています。
 さらに、1日のインターンが解禁になったので、通常のプログラムを短縮したものを複数回実施しました。1日のものは2月に実施し、100人以上に参加してもらいました。

 ──事務系のインターンは?
 今後はわかりませんが、現状は実施していません。業務内容が広いこともあり、会社のことを正確に知ってもらうプログラムが現状では難しいと考えています。

■ES
 ──3月1日解禁のあと、エントリーシート(ES)の提出期限はいつごろですか。
 総合職は4月上旬、エキスパート職の大卒は5月中旬~下旬ごろです。エントリー数は例年数千人です。

 ──会社説明会は?
 3月にプレエントリーしてくれた学生に会社説明会の案内をします。鉄道だけでなく、いろんな事業をしているので、どんな事業を展開しているのか、各部門の役割や仕組みのほか、当社の今後の方向性などについて説明します。
 総合職向けの説明会に来て違和感があった人には、エキスパート職の説明会も案内しています。エキスパート職は、鉄道と商業施設、ITの職種別に開きます。

 ──ESの特徴を教えてください。
 総合職とエキスパート職で内容は別ですが、どちらも手書きです。志望度や書き方によって個性が表れるので。
 総合職の自己PRは「写真やイラストなどを自由にお使いください。文字だけの場合は下線を引いたり、色づけをしたりしてください」としています。

 ──どんなESが来ますか。
 サークルの写真を貼って自分の役割を説明したり、自分をキャラクター化したり、何かにたとえたり……。「明るい人間です」と太陽をイメージできる写真を載せた人などバラエティーに富んでいます。
 写真と文章が半々くらいの人が多いですね。自分を中心にした体系図を書き周囲のおかげで自分が成り立っていると示す人、周りとの関係を書く人、自分が取り組んできたことについて書く人もいます。「あなたの取り組みたいこと」の欄に、いろんな路線図を描いて「こういう開発をしたい」という人もいました。

 ──コピペできないし、文章以上にごまかしがききませんね。
 みなさん工夫しています。非常に思いが伝わるし、志望理由もよく分かります。自由表現で「正解」がないので、学生は内容やスペースの配分に頭を悩ませているようですが。

 ──総合職のESに「学生時代に特に頑張った取り組み」を一つ挙げ、「特に問題と感じたことと問題をどのように解決したか」を書く欄がありますね。いわゆる「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」ですが、あえて「取り組み」「問題」「解決法」を聞くのはどうしてですか。
 総合職は事業の企画立案などを早い段階から担っていくことが期待されているので、チームで問題が起きたとき、周囲との関係性の中で、どのように努力して乗り越えたり、苦労して打開したりしたかといった具体的なエピソードを聞きたいんです。
 一人ひとりに話を聞く時間は限られているので、表面的な話しかできないとお互いに不幸です。短い時間の中で、みなさんの話をしっかり聞けるようESをこういう設問にしています。

 ──入社後に「取り組んでみたいこと」の欄も具体的な内容を求めているのですか。
 そこまで具体的でなくて構いません。知らないことも多いでしょうし、具体性を求めすぎると小さくまとまり、みんな同じ話になってしまう。みなさんが思い描いている発想を大事にして書いてもらいたいです。

 ──「鉄道の沿線の開発がしたい」「商業施設をつくりたい」くらいの方向性は必要ですか。
 最初は「鉄道」「不動産」と明確でなくても構いませんが、ある程度は軸となる「やりたいこと」があるからこそ応募するのだと思いますので、そこを表現してもらえたらありがたいですね。

 ──一方のエキスパート職のESは文章だけ。エントリーの時点で志望職種を書くのですか。
 はい。職種が細分化されているし、エキスパート職は「この仕事をやりたい」と受ける人が多いので、「志望する理由」も書いてもらうようにしています。

 ──ここは、「鉄道が好き」「昔から小田急に憧れていた」という人が多い?
 「好き」というのもありますが、「憧れて」という人も結構います。
 ただ、どうして当社なのか、なぜ鉄道の仕事をしたいのかを聞きたいですし、鉄道業界や小田急を目指す「軸」もぜひ聞けたらと思います。

 ――どんな軸の学生がいましたか。
 「人々の生活の根幹となる移動を直接支える仕事をしたい」「小さい頃から特急ロマンスカーの乗務員に憧れて」「小田急の路線特性に魅力を感じて」といった学生がいました。

 ──「小田急ならでは」ってどんなところですか。
 一例ですが、通勤・通学だけでなく休日に観光で乗る方も多い路線特性や、特急ロマンスカーなどが挙げられますね。

 ──「学生時代に一生懸命取り組んだこと」は二つ書くんですね。なぜ「二つ」?
 一つだと、皆さんの考えていることが正確に伝わらない場合もあります。実際に話を聞く中で二つについて聞くと、個性が多面的に分かることがよくあります。一つの話だけを掘り下げる場合もありますが。
 総合職では「しっかりやり遂げた課題解決能力」を書いてもらうのに対し、一つの仕事を極めていくエキスパート職は「一生懸命に取り組んできたこと」を書いてもらい何かに打ち込んだ経験があるかどうかを見ます。

 ──サークル、アルバイトの話題が多いですか。
 そうですね。部活動やゼミ活動、ボランティアなどもあります。

 ──最後の質問が「あなたが働くうえで大切にしたいことを一言で表し、その理由も書いてください」ですね。ここが「軸」?
 軸の一つでもありますし、思いをもって当社の現場を担う一員になることを目指す人に多くお会いしたいという期待も込めています。当社は公共交通機関の一翼を担っているので、責任感、使命感が感じられるといいなと思います。人柄がある程度イメージできる利点もあります。

総合職はゼネラリスト、エキスパート職はスペシャリスト目指す

■面接
 ――書類選考を通過すると?
 あくまで2018年卒採用の実績ベースですが、総合職に関してはグループディスカッションを実施しました。与えられたテーマについて5~6人で40~50分議論して結論を出してもらいます。発表はしませんが、どんな形で議論していくかを見させてもらっています。

 ──グループディスカッションでは何を見ますか。
 協調性はもちろんのこと、同調するだけで終わらずしっかり考えて議論する力や合意形成を図るうえでのプロセスなどを見ています。ディスカッションのテーマは「新規事業はどんなものがよいか」「今後、重視していくべき事業は」といった事業に近いものが多いですね。候補をいくつか提示して、その中から一つを選んでもらうための議論をしてもらいます。

 ──面接の形式を教えてください。
 最終のみ個人で、そこまではグループ形式です。グループは社員2~4人に対し学生3~4人で約1時間。個人は社員2人で40~50分です。

 ──グループ面接で見るポイントは?
 ESにも書いてもらいますが、本人がどんなことに関わってきたか、どんな取り組みをしてきたかを中心に聞きます。そこから行動力、思考力、こちらの質問の意図をとらえているかを見させてもらっています。

 ──最終面接ではどこを見ますか。
 ESに書いてもらったゼミ活動や部活動、サークル活動などのほか、それまでのタイミングで時間の関係上、深く聞けなかった内容や、どうしてそれをしたのか、本人のキャラクター、これからやってみたいことなども聞くことで、トータルでパーソナリティーを確認します。

 ──適性検査は?
 総合職はテストセンター、エキスパート職はテストセンターとは別の筆記試験を受けてもらいます。どちらも基礎的な学力を確認することを目的としています。このほか、鉄道系の職種に関しては適性検査なども実施しています。

■求める人材
 ──総合職とエキスパート職では、求める人材、素養、能力が異なるのでしょうね。
 「安全」「お客さまの日常を支える」「チームで進める仕事」といったベースは共通していますが、職種ごとに役割は変わってきます。
 総合職は常にさまざまなことにアンテナを張って、どんな分野に関わることでも適応しながら、幅広い視野を養うことでキャリアを積んでいくことが求められます。イメージとしては「ゼネラリスト」といったところでしょうか。一方、エキスパート職は、その道の「スペシャリスト」を目指して、特定分野において技能や知識を高めていくことが求められています。

 ──エントリーする学生のカラーも違いますか。
 おおまかな傾向としては、違いがあると思います。エキスパート職志望は、やりたいことが明確な人が多い。総合職志望は、ある程度「観光の仕事がしたい」「鉄道の計画策定に関わりたい」といった軸を持ちつつも、キャリアステップの一つととらえている人が多いと思います。

 ──学生時代にしてきたことも違う?
 内定者については、けっこう違いが出ているかなと。一概には言えませんが、総合職に内定した人は、組織やチームの中で人と関わり、周囲を巻きこんで何かを成し遂げてきた人が多く、エキスパート職は一つのことにじっくり取り組んできた人が多い気がしますね。

 ──就活で競合する会社は?
 同業他社は多いですね。他の業界ではディベロッパー、インフラ関係で電力、ガス、道路会社などです。

 ──志望者は沿線で育った人が多い?
 昔は多かったそうですが、今は半分もいかないくらいかなというイメージです。ただ、関東以外で説明会を開いていないので、全国から多くの人が受けに来る感じではありません。関東の大学に来ている地方出身者は一定数います。

 ──業界関連のニュースについて聞きますか。
 話の流れにもよりますが、とくにエキスパート職の鉄道職種を志望する人には聞く場合があります。安全に関することや他社で起きた事例、重大なインシデントについて、常にアンテナを張ってもらえたらという思いも込めています。

「混んでいて遅い」から「快適でスピーディー」な小田急へ

■やりがいと厳しさ
 ──小田急ってどんな会社ですか。
 鉄道会社に対しては「堅くて保守的」なイメージを持つ人が多いように思われますが、実は逆で「明るく和気あいあい」とした雰囲気です。役職や年齢に限らず、社員同士の距離感が近いと思います。基本的には真面目な人が多いので、当たり前ですが、業務時間中はかっちりと仕事に取り組んでいます。
 一方で、仕事が終われば、もちろん強制ではありませんが、飲み会が好きな人も多いですし、社内レクリエーションも盛んです。2年に一度、役員も含めて家族も参加できる運動会のようなイベントも開催しています。一時期途絶えていましたが、8年前に復活しました。任意のクラブ活動も盛んですね。部署によっては旅行会などもあります。

 ──仕事のやりがいと厳しさについて教えてください。
 特に鉄道では、「安全・安心」の観点からお客さまの移動を支えることで、「公共交通の一翼を担っている」という重大な使命感と責任感を意識して業務に当たっており、そういった部分は社員のやりがいに繋がっていると思います。
 また、ショッピングセンターなどさまざまなサービスは、沿線地域のお客さまの生活に密接に関わっているので、日々そういった実感が得られやすい点はやりがいに繋がります。   
 一方で、たとえば鉄道に関しては、定時運行を実現して「当たり前」という観点から、異常時などの際は厳しいご意見をいただく場合もあります。

 ──日本の鉄道は「時間通りに来て当たり前」ですからね。
 もちろん「安定輸送」を前提に業務に当たっていますが、やりがいと厳しさが表裏一体となっている部分はあると思います。

 ──学童、スポーツクラブなどの分野にも事業を広げていますね。
 もともと、沿線にお住まいのお客さまにとっての暮らしやすさを高めることが、「沿線価値の向上に繋がっていく」という考えから各種の事業展開を行っており、その一環でこれらの事業も生まれた経緯があります。

 ──昨年は創業90周年を迎え、今年はついに複々線化が完成しますね。
 構想段階から含めると50年来の悲願達成です。複々線という他社にはない武器を使って沿線の魅力向上を図り、ダイヤの利便性によって住んでいただけるお客さまや来ていただけるお客さまが増えることを期待しています。
 これまでの「混んでいて遅い」という小田急のイメージを「快適でスピーディー」なイメージに変えることで、「小田急は便利だな」と認識してもらえたらと思っています。
 同時に新型特急(新型ロマンスカーGSE 70000形)を導入し、今まで以上に箱根にも快適にお出かけいただけるようになります。
 また、下北沢や海老名など、中核駅周辺の開発によるまちづくりも進めています。今はまだ、本格的な人口減少には至っていませんが、ゆくゆくは本格化することが見込まれるので、将来への種蒔きとして「沿線外」での積極的な事業展開も進めています。

 ──「沿線外」というと?
 3年ほど前にUDSというリノベーションを強みとする会社をグループに迎えて、ホテル業の強化を進めています。京都や沖縄の宮古島、都内だと日本橋、今年2月に新たに開業したところもあります。2019年には御殿場のアウトレット敷地内にも、別のグループ会社を通じてホテルを開業します。

 ──観光地をたくさん抱えているので、インバウンドの影響も大きいと思います。
 1999年に案内所と各種乗車券等の発売所を兼ねた「外国人旅行センター」を新宿に開設するなど、インバウンド対応は同業他社に先駆けている自負があります。海外への展開も進めており、2016年にタイのバンコクに駐在員事務所を構え、今年2月にはフランスのパリにも開設しました。

 ──すると、採用で英語は重視していますか。
 将来はわかりませんが、現状ではしていません。大丈夫です(笑)。ESに英語の欄はなく、資格欄にTOEICの点数を書けるくらいです。

■万代さんの就活と仕事
 ──ご自身の就活について教えてください。
 2003年の新卒のときには物流会社に入社しました。人事部やコンテナターミナルの現場で、船の荷役作業の計画策定、現場作業員の手配や船会社との折衝などの業務に就いていました。その後2008年に転職し、小田急に入社しました。

 ──なぜ小田急に?
 若気の至りもありますが、前の会社がBtoB(企業間取引)の会社で、自分の仕事の先にあるものがなかなか実感として見えづらく感じるようになっていました。そんな時期に、たまたま小田急の求人に出会い、自分のやりたいことを見つめなおした結果、さまざまな事業を展開し、人々の「衣食住」に直接関わることができるチャンスがあるところに魅力を感じ、思い切って転職に踏み切りました。  

 ──「鉄道」ではなく「衣食住」ですか。
 はい。前の会社もそうですが、広く生活に関わることがやりたかったんです。ただ、関わり方については「直接関わりたい」と視点が変わりました。

 ──小田急ではどんな仕事を?
 最初は鉄道の企画部門に配属され、鉄道とバスの連携施策に携わりました。グループ会社との連携による「鉄道・バス運行情報システム」というものですが、鉄道のダイヤとバスのダイヤを一緒に検索できるシステムを導入し、さらなる展開を進めている時期でした。その後、株式事務業務を管轄する総務部に異動し、主に株主総会の事務局業務や社内の各種意思決定手続きに関する業務を担当。その後はIR室に異動して機関投資家対応などを担当しました。人事部には2016年の7月に異動しました。

 ──「衣食住」とはあまり近くないお仕事ですが……。
 現状はそうですね(笑)。ただやっている仕事の先にはお客さまがいらして、どこかで「衣食住」に繋がっているイメージが持てる。採用でいうと、私が採用に関わった社員が実際に現場に立ってお客さまの対応やサービスに携わる。間接的には関わっている自負があります。

 ──一番印象的な仕事は?
 IR室にいたとき、複々線化のダイヤが出る前に概略の公表に携わったことがあります。多くの方に早い段階で「小田急が良くなる」と知ってもらう必要があり、どうやって公表するか、数カ月間かけて関係部門が連携して方策を練り、最適な形で公表できるよう検討を重ねました。最終的には主要駅までどのくらい早くなるか、混雑率がどのくらい減るかといった概略を公表し、IRの観点では、投資家から一定の評価をいただけたと思っています。当社の醍醐味でもある「チームワーク」で物事を進め、形にしていくという観点では、今でも大きな印象に残っている経験の一つです。

みなさんに一言!

 業種や会社のイメージにとらわれず「その会社が何をやっているか」をよく調べていただくといいと思います。当社も、鉄道会社ではありますが、いろんな事業をしているという部分では、そういった良い例だといえます。最初から決めつけず、いろんな側面から多くの会社を見てください。
 そんな中で当社を見ていただけるのであれば、今まさに複々線化で大きく変わるタイミングにあり、今まで以上にチャレンジングな会社に変わっていこうとしているところです。小田急は「真摯(しんし)・進取・融和」を行動指針に掲げ、社長も「新たな小田急の未来を皆でつくっていこう」というメッセージを発信しています。一方で、働き方改革やダイバーシティの推進といった、働きやすい環境の整備も進んできています。ぜひ、そんな環境に身をおいて、「新しい小田急の未来を一緒につくっていく」ことに共感してもらい、多くの方に門戸をたたいてほしいですね。

小田急電鉄株式会社

【鉄道】

 『お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献する』を小田急グループの経営理念とし、 基幹事業である鉄道事業を中心に、不動産業やその他事業を展開し、沿線価値の向上に努めています。この経営理念を実現するために、 鉄道の安全・安心をベースに、グループのさまざまな経営資源を活用しながらサービスの質を高めるとともに、外部との連携強化による まちづくりの推進や外部環境の変化に対応した施策の展開などによって沿線の暮らしやすさを高めることにより、小田急沿線を 「日本一暮らしやすい沿線」にすることを目指しています。