
■ハッカソン採用、海外採用
――ほかにもありますか。
「ハッカソン採用」もあります。内定した学生に「どんな採用をしてほしかったか」のアイデアを出してもらったら1位がこれでした。ペッパーを使ったハッカソン(「ペッパソン」)を3日間で実施し、その後「面接に進める方を発表します」となります。優勝しても面接に進めるとは限りません。
通常の面接は30分から1時間くらいですが、3日間見ていると、どんなリーダーシップを取るのか、困ったときや時間がないときにどんな行動を取るか、どんな風に計画を立てチームを引っ張るか、広い視野があるのか、などがわかります。それらを人事がチェックしているんです。
――面接に進む学生をその場で発表するというのは、かなり露骨ですねえ。
僕は「ちょっとやりすぎでは」と言ったのですが、学生は「これでいいんです」と。「ハッカソン」という手法より、学生に採用手法を考えてもらったところが画期的だと思っています。初めて実施した2017年度の参加者は15人程度でした。
――「攻めの採用」、まだありますか。
最後は「海外採用」で、年間20~30人採用しています。アメリカやイギリスなどでは日本人留学生を、アジアなどでは現地の人を主なターゲットにしています。アメリカ、イギリス、韓国、台湾、シンガポール、インド、ベトナム、インドネシアなどでアプローチをかけています。
――390人中、「攻めの採用」はどのくらい?
2018年卒の実績は、採用直結型インターンで約100人、「ツレテク」が10人くらい、「ナンバーワン採用」6人、海外採用が30人。ペッパソン(ハッカソン)採用は若干名です。
ほかにも大学の研究室、学生団体、逆求人、高専の推薦枠など個別にアプローチしたり、こちらから会いに行ったりしているので、計200人ほどが「攻めの採用」です。
――母集団からの採用はいずれなくすのですか。
例年、採用直結型インターン参加者の3割くらいが入社するので、インターン参加者を500人程度にすれば、それだけで150人くらい入ってくるでしょう。他の「攻めの採用」で100人近く、それでもう250人。ですが、母集団からの採用においてもソフトバンクがほしい人材を採用できているので、現時点でこちらをなくすことは考えていません。
■通年採用
――採用HPにある「ユニバーサル採用」とは?
従来の新卒一括採用とは違って、広く門戸を開き、自由な時期に自分の意思で就活できるようにするというものです。新卒採用の募集対象は「入社時30歳未満の新卒/既卒/就業者」としているので、一度他社に就職した人も再挑戦できます。
学生にもいろんな事情があって、「好きな時期に好きなように就活したい」人がいます。たとえば「学会のため3~6月は論文発表の準備をしなきゃいけない」「実家の家業が忙しい」「ビジコンの国際大会がある」とか。海外で6月に卒業して日本に帰ったら、日本の就活スケジュールに出遅れるということもあります。就職せずに卒業して「第二新卒」になると就職先が極端に限られます。
僕らはいつでも門を開けているので、「6月は論文発表があったけど9月には落ち着いた」人、「家業を継ごうと思ったけれど、やはり一度就職しようとしたらもう10月だった」人もOKです。いい人材を青田買いしようという嫌らしい考えは全くありません。
――いわゆる「通年採用」ですね。
はい、応募は年中できます。入社時30歳未満なら誰でもできます。ただし、現役の学生の場合、今は「大学3年生以上」にしています。
――「3年生になったら、いつでも応募可能」ということですね。
そうですね。いつでも受け入れています。通年採用なので締め切りはありません。
――ある程度応募者が集まった段階で選考を始めるのですか。
1人でもある程度進めます。ただ、現実には3月に集中します。僕らの動きというよりは、世の中の学生側の動きなので。
■ESと面接
――選考の流れを教えてください。
まずはプレエントリー、エントリーシート(ES)提出。書類選考通過者はSPI(適性検査)を受けてもらい、面接に進みます。
――ESの評価にAIを導入したことが大きなニュースになりました。
ESの課題二つのうちの一つ、「ソフトバンクバリューの中で、あなたの強みと合致する項目を教えてください。また、その強みを発揮して成し遂げたエピソードを教えてください」をAIに評価させました。200字以上書いてもらいます。
――学生から不安や不満の声は?
非常に好評でした。「ソフトバンクはESをちゃんと見ていないじゃないか」という学生からの批判の可能性を懸念していましたが、なかったですね。人が過去に採点した「教師データ」をベースに、IBMのAI「ワトソン」がジャッジします。人の判断との誤差は非常に小さい。導入前の検証では、ワトソンでの合否を知らせずに同じESを採用担当者にチェックさせたら、合否判断は人とほぼ同じでした。体調にも左右されないし、ワトソンのほうが精度が高く公平かもしれません。
――AIにはどう教えているのですか。
実は、過去に合格したESと不合格だったESを「教師データ」として読み込ませているだけで、どこをどう判断しているかはわかりません。工夫したのは、しっかり判断ができる採用担当者のものを「教師データ」としたことと教師データの件数で、何パターンか検証して一番精度が高いものにしました。
――面接のポイントを教えてください。
面接は複数回。1次は集団面接で、その後は個人面接です。
1次の集団面接は社員1人対学生3~5人程度。学生同士のグループディスカッションに近い形でやります。
面接の一つの役割は「ソフトバンクという会社を学生に対してきちんと伝えられるか」だと思います。「ソフトバンクはこういう会社」と伝えれば伝えるほど、学生の志望度が上がる傾向があります。
――面接で、時事的な知識や世の中への関心、業界ニュースに対する感度は重視しますか。
データは簡単に集められる時代になりましたが、自分なりの考察を持っているかどうかは大事なポイントです。自分の世界にしか興味がない人より、世の中のいろいろなことに関心があり、広く俯瞰(ふかん)的に見られる人の方が楽しいですよね。
面接では、技術分野の人に「こういうことについてどう思う?」と時事的なことを聞くケースはあります。ソフトバンクに関するニュースについては「なぜソフトバンクを希望したの?」と聞くと、自然と学生の話の中に出てくることもあります。ただ、ソフトバンクについて詳しく知っているほどいいというわけでもありません。知っていることとソフトバンクで活躍できるか、会社にフィットするかは別。「ソフトバンクを知らない=ダメ」ということはありません。