人事のホンネ

株式会社KADOKAWA

2019シーズン【第4回 KADOKAWA】
世界のエンタメビジネス意識!独自の「軸」持つ人に会いたい!

人事局人事部人事課課長 鈴木寛子(すずき・ひろこ)さん

2017年12月19日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2019シーズン第4弾は、出版業界に常に新風を吹き込むKADOKAWAです。「ニコニコ動画」のドワンゴとの経営統合から3年。出版にとどまらず、映像、ゲームなど多彩なエンターテインメントビジネスを展開しています。個性的な「オタク」が求められていますよ。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ──採用実績を教えてください。
 2017年入社が20人、2018年卒の内定者が48人です。

 ──一気に倍以上に! なぜですか。
 機構改革やレーベル、ブランドコンセプトもより明確になりましたので人事制度を統一し、新人・若手の採用をより一層強化することにしました。

 ──大手出版社の中では採用数が飛び抜けて多いですね。業務内容が「書籍」「文芸」「ゲーム」「映像」と幅広いからでしょうか。
 はい。幅も広く、商品点数も多いです。また、若い人向けのコンテンツも多く、若い時期に「編集者としての旬」をむかえることができるのではないかと考えています。

 ──2014年に経営統合したドワンゴとは採用は別ですか。
 現時点ではそれぞれ別に採用しています。

 ──男女比は?
 ほぼ半々です。半々にこだわっているわけではなく、性別にもこだわっていません。偶然半々になっています。

 ──理系は?
 もちろん、大歓迎です。実績としては、内定者の16%くらいでしょうか。論理的思考力、追究力が高い人材と期待して積極採用しています。

 ──理系の配属先はIT・技術系ですか。
 特にプログラマーや技術職に限っているわけではありません。理系の編集者もいますし、文系でデジタル戦略部署に配属される人もいます。若い人たちは理系・文系にかかわらず、「本をすごく読むし、動画も配信するし、アプリのプログラミングもする」という方が結構います。また、今は本(紙)の仕事だけをやりたいと思っても、デジタルにも関わらざるを得ない時代です。

 ──理系出身者の特徴ってありますか。
 理系の人は一つのことに没頭して深くまで分析します。自分の軸を持って、他の研究者とは違うことを進めるポジショニングが上手なので、編集者やプロデューサーに向いているとも考えています。ぜひ多くの理系学生に受けてもらいたいですね。弊社でも理系出身の社員は多く、優秀な編集者、プロデューサー、マーケティング担当として活躍しています。

 ──幅広い職種がありますが、「総合職」での一括採用ですね。配属はどのように決めるのですか。
 編集希望の人がいきなり人事に行った例はありません(笑)。やはり「自分の得意分野でチャレンジしたい」という学生が多いので、なるべく希望に沿うように考えています。
 総合職といってもアニメが好きな人はアニメ市場に近く、コミックが好きな人はコミック市場に近い部署、海外志向が強い人は海外事業など、本人の希望やこだわり領域に近いところへの配属を最優先します。3年に一度くらいの割合で異動し、10年くらいの間に総合プロデューサーや編集長のように何でもアレンジできるビジネスを生める人材に育ってもらいたいと考えています。
 「KADOKAWAはどこに配属されるか分からない」と心配する学生も多いようですが、なるべく本人のこだわりがある領域に近い部署からスタートしてもらう予定です。

 ──どの分野が人気ですか。
 ヒット作が出ると、その分野の応募が一時的に増えることもありますが、応募者の興味は「文芸」「実用」「ライトノベル」「コミック」「映画」「アニメ」など、ほぼ同じくらいの割合です。2018年卒生はインターンシップの影響か文芸志望が多かった印象ですね。

言葉選び、斬新さ、バランス、時流を読む…ESはセンスも見る

■インターンシップ
 ──インターンシップについて教えてください。
 2017年2月に文芸とコミックのインターンを初めて行いました。企画を持って来て「本物の編集長にたたかれてみよう」という試みです。ハードかな?とも思ったのですが、意外と「自分の力を試してみたい!」という前向きな方が多かったですね。
 参加者数は文芸が50人くらい、コミックは30人くらいです。応募が多かったのでエントリーシート(ES)による選考をしましたが、そんなに難しいものではありません。

 ――どんな内容ですか。
 たとえば文芸インターンは1日で、課題はある書籍の販促の企画を考えてもらう実践的な内容です。事前課題で持ち寄った企画に対して、当日のグループワークで5~6人の学生で議論してブラッシュアップしたり、編集長から個別に細かい講評を受けたりするものです。編集をめざす学生同士なので刺激になったと思います。

 ──かなりたたくのですか。
 たたくこともしますが、ほめることもします。学生も真剣に取り組んでいるので、こちらも真剣に返します。編集長たちも面白かったようで、「次回もぜひやりたい」と。最後は立食での懇親会を開催したのですが、私たちと同じ興味を持っている者同士なのでとても楽しい時間でした。
 私たちにとっても新鮮で、学生もいろんな角度でものを考えていることが分かりました。活字離れが進んでいると思っていましたが、熱心な学生が多く、文芸だけでなくコミックもアニメも好きという方が多かったですね。その点もよかったです(2018年2月にはインターンの種類を増やして実施しました)。

 ──インターン参加者から内定者は出ましたか。
 インターンによって弊社に興味をもってくれて本選考に進んだ学生が多く、うれしく思っています。内定した人もいます。

■会社説明会
 ──2018年卒採用では、会社説明会は開きましたか。
 しばらく実施していなかったのですが、2018年度は「50人採用」ということもあり、少しでも弊社を理解してほしく、こちらの熱意もお伝えしたかったので、2日間で4回開催し、計1200名が参加してくれました。2018年度は東京のみの開催だったので、今後は他都市での開催も検討しています(2019年卒採用の説明会は実施済み)。

 ──説明会の内容は?
 社長、役員からビジネス全体の戦略、PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)の状況、海外事業の展望と差別化などの話をし、メディアミックス、デジタル戦略について説明しました。話題になった作品の編集者やプロデューサーの取り組みや想い、IP(知的財産)戦略に関してはビデオで紹介し、2~3年目の先輩社員のパネルディスカッションも実施しました。
 社長は今年も皆さんに会いたいと楽しみにしているようです。

 ──大学での学内説明会は?
 できる限りうかがっています。デジタルを手がける私たちが言うのも何ですが、働いている人と同じ空気を感じてもらうのも大事だと考え、大学に出向いています。近い距離でお話しできることもあるので、「一緒に目指すものを思い描いてもらいたい」という気持ちまで伝わればいいなと考えています。来てくれた学生がどう感じているのか気になるところです(笑)。

■エントリーシート
 ──応募数の増減は?
 出版業界、映像業界単体を目指す学生だけではなく、世界のエンターテインメントビジネス全体を意識して募集しました。合併前の出版業界単体で募集していたときの限界を超える数の人が応募してくれたように感じています。多くの方に興味を持っていただいたことは大変うれしく思っています。領域の枠を超えて考えられる人がたくさんいるということで、業界全体の可能性を広げていけるとも思いました。

 ──ESは手書きですか。
 手書き部分もあるので郵送してもらいます。文字数の制限はなく、罫線も引いていないので自由に書けます。枠いっぱいに細かく書く人も、イラストを描いたり、何かを貼ったりする人もいます。後の面接で企画書などを提出してもらうので、そこで工夫する学生もいます。しかし、ギミック(仕掛け)がすごいことより内容が大事ですので、さっと書いたものでも内容が良ければ選考を通過します。気軽に応募してほしいです。

 ──項目数は多い?
 A3サイズの見開き1枚なので、それほどでもありません。他の出版社さんよりは楽だと思います。

 ──出版社のESは、ちょっと毛色の変わったものが多い印象があります。
 それほど変わったものではありませんが、「自分が夢中になっているもの」については書いてもらいます。「はまっているもの」ですね。自分の「オタク自慢」をキャッチコピー風に書いてもらったりすることもありました。
 ほかには「自分の行動力」「視野の広さ」などがアピールできることを書いてもらいます。

 ──「オタク自慢」でユニークなものは?
 縄跳び、昆虫、筋肉、「美坊主」のオタクがいました。たとえば「アニメが好き」という一般的なジャンルではなく、○○なスポーツものだけ、「魔法×○○」という「2軸」の掛け合わせのような独自の軸を持っている学生と会うのは楽しみです。

 ──「2軸」あると有利なんですか。
 そうですね。2軸にこだわってはいませんが、コアなファン向けの商品を扱うので掛け合わせがあったほうが、よりこだわりがわかるような気がします。しかし、「それだけしか受け入れない人」ではなく「そのこだわりがあるから、他ジャンルでもこだわりのあるマーケットがわかる、興味を持てる」方を探しています。

 ──出版は「好き」を仕事にする業界ですが、好きなだけでは受かりませんよね。どんな人が受かるのでしょう?
 「自分なりの好きの軸を明文化できる人」「差別化が上手な人」「人真似ではない人」といったところでしょうか。またその能力がアイデア立案の場面だけではなく、実行の戦略の上でも役立てることができる方がいいですね。

 ──ESで大事なポイントは?
 丁寧に書くといった基本的なことはもちろんですが、言葉の選び方、斬新さ、全体的なバランス、時流を読んでいるといった内容とセンスも見ます。
 ESを選考するのは、百数十名の編集長やメインプロデューサーなど課長職以上の現場の人間です。

 ──学生の志望ジャンルの編集長が読むんですか。
 そうとは限りません。文芸志望者のESをコミックの編集長が読む場合もあります。編集長は幅広いジャンルで情報を持っていますので、ご安心ください(笑)。

面接では事前課題も 戦略的に考えられる人が編集者、経営者として伸びる

■面接
 ――その後の選考スケジュールを教えてください。
 2018年度は、4月下旬にESを締め切って適性検査を受けてもらい、5月中旬から面接を始め、最終面接は6月でした。

 ──面接は何回ですか。
 4回実施しました。1次面接は若手が担当します。グループ面接で、社員1人に対し学生3人で実施しました。なるべく多くの方とお会いしたかったので。面接時間は30分程度です。

 ──2次以降は?
 2次面接は部長クラスで1対1、3次は局長クラスで社員2人に対し学生1人です。最終は役員面接です。あくまでも2018年卒の実績です。

 ──面接で大事なポイントは?
 いろいろありますが、特徴的なことで言いますと、「自然体」かどうかですね。「自然体」とは、いつもの自分で勝負できるかってことです。「変わったことを考えている人に見せよう」とか「斜めから発言して頭が良さそうに見せよう」とかではなく、自然体でぶつかってくることができる人は強いと感じます。無理して自分の思いとは違う働き方をしたり、価値観を押しつけられて働いたりするより長続きすると思います。「好き嫌い」や「価値観」に触れる仕事なので、無理をするのは良くありません。ぜひ自然体で面接に臨んでください。

 ──自然体でない学生も多い?
 焦ったり、緊張したりしてしまうのかもしれませんが、背伸びしすぎている人もいます。こちらもいつもの自分で面接できるように努力します。たとえば、3次面接以降はいろんな角度から矛盾点を消していく質問をします。課題を持ってきてもらう場合は、良い点をほめながら、「ビジネスにはこうした視点が必要」といった助言も、真剣にいつも通りアドバイスします。

 ──面接ではどんな課題を出すのですか。
 課題は2次面接からで、2次は嗜好性を問い、3次では戦略を聞き、キャッチコピーやプラン、自分の考えをまとめる作業などをしてもらいました。いずれも事前に課題を出し、面接当日に持って来てもらいました。

 ──「嗜好性」とは?
 秘密です(笑)。普通の質問ですよ。たとえば自分が好きなこと、最近行ったイベントのこと、自分の人生をマッピングして、行ったところと使ったお金を書いてくるといったお題ですが、内容は毎年変えています。形式も自由なので絵でも文字でもかまいません。折り紙の人はいませんでしたが、飛び出す仕掛けの学生がいて、事務方がコピーするときに困っていました(笑)。

 ──学生は大変ですねえ。
 でも、学生にとっては課題があった方が楽だと思います。課題をもとに話せば、自分の言いたいことを半分くらいはアピールできます。そして、自分で面接の流れをコントロールできます。「何を聞かれるか」と緊張せず、自分の好きな分野について話せますから。

 ──課題から人となりが分かる?
 課題からこちらの意図した選考項目がわかるように努力をしています。「本当に自分で考えてきたのかな」「誰か友だちに手伝ってもらったのかな」という点を見極めるのもこちらの責任ですね。

■求める人材
 ──「求める人物」を五つ挙げていますね。「創り出せる人」「とことん好きがある人」などは出版社らしいと思いますが、「戦略的に物事を考えられる人」とは?
 社内で共通言語化するために五つの項目を挙げています。「戦略的に物事を考えられる」こともビジネスとしては必要です。
 編集者としての感覚も大事ですが、感覚だけではノウハウが蓄積できずビジネスにしづらいのです。同じ商品化するのでも成功か失敗かを見極めるポイントを明確にし、仮説を立て、戦略を持って商品化にチャレンジしたり、売り出したりできる人を求めています。そうすることで、よりノウハウが本人と組織に蓄積されると考えます。戦略的に考えられる人が編集者としても経営者としても伸びていくと考えて、あえて掲げています。

 ──戦略的思考をどうやって見極めるのですか。
 たとえば、学園祭について「どうしてそのテーマにしたの?」「そこから何を学んだの?」「失敗したの?」などと聞きます。友だちが部長で手伝ったというなら「何を助けて相手と自分にどんな利益があったか」「どんな得があったのか」を聞きます。どれだけ詳しく自分のことを話せるかによって、自分の意志で行動、選択したかが分かります。次に、真剣に悩んで二者択一の選択をした人は、その選択方法を聞くことで戦略的な選択ができていたかを確認します。
 理系の研究をしていた学生にも、「どうしてそのテーマにしたか」と聞きます。「このテーマだったら自分がトップを取れそうだったから選んだ」といった絞り込む過程を聞くと、「戦略的な視点」を持っていると感じます。

 ──「戦略的」で印象に残る学生は?
 やはり理系の学生が多いです。アリや深海生物、火山の研究をしていたといった人の話は面白かったですよ。学会誌に載った方もいました。「物の重心」の研究をしている学生で、「世の中にはたくさんライバルがいるけれども、自分は他の人とは違ってこういうことを目指している」という話を分かりやすくしてくれた方もいました。
 理系の学生は、テーマの選び方、数字の使い方、見せ方も上手ですね。

 ──「とことん好きがある」で印象的な人は?
 石原裕次郎あたりの昭和の不良が好きな女子学生、法隆寺にある聖徳太子像の胎内仏を研究している学生がいましたね。「百合」が好きで、ずーっと話している男子学生もいました。お花ではなく女の子同士の恋愛のほうです。これらは全てコンテンツにつながってきます。そんな印象的な人の中で、いま編集者になっている社員もいます。

ESも面接もニュース聞く ドワンゴとの統合で強まったデジタル志向

■ニュース
 ──就活や面接でニュースや時事問題を知っていることは大事ですか。
 もちろん必要です。ESや面接でも聞きます。たとえば、他社の新しい取り組みによって弊社が危機に陥りそうだという業界ニュースについて考察してもらうこともあります。書店の経営状況やロボット、流通業界の働き方改革などのニュースをもとに、回り回って「弊社のビジネスをどう変えていくべきか」という考察をしてもらうこともあります。視野の広さや、弊社のビジネスに対する理解度が分かります。

 ──面接でも聞きますか。
 はい。もちろん質問します。

 ──「出版不況」といわれていますが、学生にはどう説明していますか。
 弊社では出版はコンテンツの一つです。マルチメディアによって全部をお客様に楽しんでもらうことで業界を変え、支えていこうという説明をしています。

 ──他の出版社とは違う志向の学生も応募してくるのでしょうね。
 競合他社は幅広いですね。IT系の会社、新聞社、放送局、映画配給会社、コンサルという人も。以前より幅が広がっています。

■社風
 ──ドワンゴと一緒になって変わったことは?
 デジタル志向がより強まりました。また、ドワンゴが運営する「ニコニコ動画」のように、ユーザー同士がコミュニケーションを楽しむ場になり、そこから文化が生まれるというDNAを、KADOKAWAにも取り込みたいと考えています。

 ──実際の仕事ではどう関わるのですか。
 ニコニコ動画にはアニメ・ゲーム・将棋など多岐にわたったジャンルと、「歌ってみた」や「踊ってみた」に代表される文化が存在しています。そこにKADOKAWAが持つ販促の力を組み合わせて「ニコニコ書店会議」というイベントを全国10カ所の書店で開催したり、KADOKAWAのアニメのチャンネルをニコニコ内に開設したりするなど、お互いに協力してプロジェクトを行っています。他には、角川ドワンゴ学園(カドカワ株式会社運営)の「N高等学校」(通信制高校)の講師、教材にも協力しています。

 ──人事交流は?
 新入社員の内定式や入社式はカドカワグループ合同で行い、新入社員の交流の場としています。また、新人研修も一部合同で実施し、入社企業の枠組みを超えて相互理解を深められるような研修プログラムを用意しています。そのほか、ドワンゴによるプログラミング研修があり、ITリテラシーやプログラミングの基礎を学ぶこともできます。配属後には、グループ共同プロジェクトへの参加の可能性などがあります。

 ──社風は違うのでは?
 意外と近いと思います。弊社も10社が合併した会社で、多様性があるので。

 ──KADOKAWAはどんな会社ですか。
 いいアイデアを育てることに一丸となれる会社です。経営者が「これをやるぞ」と言うよりも、みんなが「このアイデア、作品、クリエーターがいい」と思ったときに、より一丸となりますね。

 ──「働き方」は?
 「個人が楽しくないと良いものはつくれない」という考えなので、ワーク・ライフ・バランスを大事にしています。オーバーワークは社長が一切許しません。実態調査をし、どうしたらみんなが楽しく働ける環境になるか試行錯誤しています。以前とは意識がガラッと変わりました。テレワークの導入など、働き方改革にも積極的に取り組んでいます。

 ──オフィスは一斉消灯ですか。
 追い出すための一斉消灯的なものはありません。そもそも、遅い時間に残っている人は少ないですね。時間の感覚をわかってもらうために19時、22時、23時45分にはチャイムを鳴らして時刻を知らせることはしています。
 イベント前や校了前など忙しさの山はありますが、代休取得は必須です。「もし残業があっても、ひとりぼっちでさせないし、常に誰かがフォローする」と学生に約束しています。

■鈴木さんの就活と仕事
 ──鈴木さんの就活を教えてください。
 おっ、さかのぼりますね……。バブル期でしたが、女子学生が総合職の受付に行くと、「一般職はあちらです」と言われる時代でした。珍しく女性の総合職募集があったリクルートに入社しました。
 リクルートで営業や人事を担当した後、リクルートとあるゲーム会社がつくったゲーム会社に出向しました。自分はコンシューマーゲーム好きでしたが、エンターテインメントの世界に入ったのはそこからですね。その後、「メディアファクトリー」という会社に転職し、合併があり、今はKADOKAWAの一員です。

 ──印象的な仕事について教えてください。
 ゲームの仕事をしたことがあって、あるデザイナーと一緒に仕事をしていたとき、いろいろな会社から仕事をもらっていたことがありました。ある会社のTシャツやグッズをつくって納品に行ったところ、「あー、ありがとうございました。もう結構ですよ!」と軽くあしらわれたんです。そのとき「クリエーターとその作品をないがしろにするのは許せない」と憤慨し、「クリエーターを大事にして、ちゃんと利益を得てもらわなくては」という気持ちが芽生えました。今は人事ですが、クリエーターを大事にできる会社でありたいと思っています。

みなさんに一言!

 今の学生さんはまじめで優秀な方が多く、会っていて気持ちがいいです。だから、自分を信じて「自然体」でいることが大切ではないでしょうか。情報量が多いので、些細な情報に惑わされたり、友だちと比較して焦ったりする必要はないと思います。ビジネスパーソンとしての人生は長いし、これからは80歳まで働く時代になるかもしれません。目先の1年、2年で一喜一憂せず、ぶれずに「自分の大事にしているもの」を大切にしてほしいと思います。

株式会社KADOKAWA

【出版】

 株式会社KADOKAWAは1945年に創業。書籍出版から始まり、時代の変化に合わせて事業領域を拡大してきました。2013年に10社合併、2014年にドワンゴとの経営統合を実施。現在は年間約5000冊の新刊から創出されるIP(知的財産)を中核に、出版、映像、ゲーム、グッズ、広告など幅広い事業を営み、メディアミックス・クロスメディア展開を行っています。デジタル戦略や海外事業も強力に推進しているほか、2020年には所沢エリアに複合施設の開業も予定。更なる進化を求め、リアルとデジタルの良さを生かしたビジネスモデルの構築に挑戦しています。