人事のホンネ

日産自動車

2018シーズン【第2回 日産自動車】
ダイバーシティの最先端企業 リーダーシップを重視

人事本部日本タレントマネジメント部 日本タレントマネジメントグループ主担 品川裕祐(しながわ・ゆうすけ)さん

2016年12月12日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2018シーズンの第2回は、世界的な自動車メーカー、日産自動車です。(編集長・木之本敬介)

 日本を代表するグローバル企業である日産は2016年、三菱自動車を傘下に収めました。日産・仏ルノー連合は、世界の年間販売台数でトヨタ自動車、独フォルクスワーゲン、米ゼネラル・モーターズのトップ3に迫り、注目を集めています。

■採用人数
 ――2016卒の新入社員数と2017年入社予定の内定者数を教えてください。
 2016年度の新入社員数は約530名で、事務系約70名、技術系約280名、技能系約180名という内訳です。2017年度入社予定の内定者は約550名を予定しています。

 ――プレエントリー、エントリー数はどのくらいですか。
 数は外部に公表していませんが、プレエントリーは万単位、エントリーは数千という単位です。前年と比べて数はあまり変わっていません。

■採用選考の流れ
 ――採用の流れを教えてください。
 2017年度採用においては、3月以降、会社・職種説明会を行いました。説明会では、日産の仕事の仕方を体験してもらうために、ワークショップを行っています。そこでは、実際に日産が抱えている課題に対し、社内で実際に使っている「V-up」という問題解決手法を活用し、取り組んでもらいます。4月以降、「キャリアディスカッション」を行います。キャリアディスカッションは、学生の希望職種と弊社の部門担当の人事が面談し、その部門や仕事についてより詳細に説明をしたり、先輩と懇談をしたり、双方のマッチ度を確認します。6月以降、面接を複数回行い、合格に至ります。

 ――説明会は何人規模ですか。
 各回30名程度です。

 ――理系の採用プロセスはどうなっていますか。
 基本的なプロセスは上記の通りです。弊社は、リクルーター制を採用しているので、6月の面接までにリクルーターが学生と複数回会い、会社や職種等についてよりリアルな情報を提供しています。

 ――学校推薦は多いのですか。
 具体的な比率は申し上げられませんが、結果として毎年一定割合に達しています。

 ――技術系だけでなく事務系も職種別採用をしていますね。日本の企業では珍しいと思いますが、どんな狙いがあるのでしょう?
 私たちには「NISSAN WAY」というグローバルで共有している価値観があります。そのキーワードの一つに「すべては一人ひとりの意欲から始まる」というものがあります。職種別採用は、こういった個を重視する日産の採用における考えの一つです。

なぜ日産か、なぜこの仕事か、自分は何者か、書いて語って

■エントリーシート
 ――エントリーシート(ES)にはどんな項目がありますか。
 志望職種のほか、志望理由(600文字以内)、日産自動車に入って最初にやりたい仕事内容とその理由(600字以内)、リーダーシップ(300字以内)、学業(300字以内)についても小論文を書いてもらいます。すべてWEB上で記入、提出です。

 ――項目が多く、文字数も多いですね。
 自身の経験や考えを、きちんと論理立てて相手に分かりやすく説明できるかを見ています。また、主張を補足するためのデータ、数値等の根拠も重要視しています。

 ――「リーダーシップ」について書かせる狙いは?
 私たちは、世界中のお客様に価値を提供するために、グローバルな組織を構築し、他部門や、アライアンスパートナーと協働しています。また、数多くのサプライヤーとも取引をしております。こういったメンバーを、戦略立案、実行の面からリードしていくことが求められていますので、リーダーシップを見ています。

 ――品川さんが見た中で「これはよかった」というESはありますか?
 学生の皆さんは興味深い経験をたくさんされています。留学、バックパック旅行、部活、事業立ち上げ、ボランティア等々。最近印象に残ったのは、勉強について説明した文系の学生です。彼は、移民、異文化の融和に関心があり、カナダのケベックに交換留学しました。帰国後、卒論を書いたのですが、ケベックについて書かずに、より複雑な状況であるマレーシアをテーマに取り上げました。好奇心を持ち、幅広く深く調べ、難しいことに挑戦し、最後までやり切るというのは、仕事でも必ず役に立ちます。

 ――「志望動機」はどのようなところを見るのですか。
 なぜ日産なのかを見ます。日産について調べることは当然ですが、自動車業界、同業他社、社会情勢等も把握しておくことは重要です。

 ――車好きかどうかは選考に関係がありますか。
 好きなほうが多少はいいでしょうが、選考にはあまり関係ありません。なぜ日産か、なぜ自分はこの仕事をしたいのか、自分は何者かということを自分の言葉で書けて、話せることのほうが重要です。

 ――日産は日本を代表するグローバル企業ですが、英語の能力はどの程度必要ですか。
 TOEIC730点を応募の基準(技術系リクルーター採用は600点)にしています。TOEICイコール英語力ではありませんが、730点あれば基礎力はあると言えますので、入社後英語を使った業務にもスムーズに入っていけると思いますし、より実践的な英語力も早期に身に着けることが出来ます。

求めるのは、リーダーシップがある「和魂多才」人財

■面接
 ――面接はどんな形式ですか。
 面接は、部門毎に実施されるため、回数、スタイルともに、部門毎に異なります。一般的には、2~3回で、部門人事担当、部門の役員、管理職が行います。

 ――面接で見るポイントはどこですか。
 ESを参考にし、質問しています。重視している点は、自分の経験、学び等を自分の言葉で話せているか、ES、会話等に整合性があるか等です。

 ――どういう人材を求めているのでしょう?
 リーダーシップを有する「和魂多才」型の人財です。和魂多才型人財の「和魂」とは、日本人、日本企業の強みとして言われている主体的に仕事をしながらもチーム間連携を図り仕事を最後までやり切ることです。「多才」とは、グローバルに仕事を行うために、データや事実ベースで論理的に議論、会話をすることや、オープンマインドでダイバーシティを許容することです。

 ――ダイバーシティへの許容度はどこで見るのですか。
 他者とのやり取りで困った経験等を具体的に聞きます。そこでどのように考え言動したのかなどを深掘りしていきます。もちろん、適切な言動ができていればベストですが、そこまでできていなくても、現時点ではしっかりした考えを持っていれば問題ないと思います。

 ――2018年卒の採用は、選考が4年生の6月解禁です。日産の採用スケジュールはどうなりますか。
 12月以降業界セミナー等に参加し、3月以降会社説明会・ワークショップを行います。4月以降キャリアディスカッションを行い、6月から面接となります。

 ――前年に続いて、3月の広報解禁から面接スタートまでの期間が3カ月での「短期決戦」となります。何か工夫されますか。
 日産は職種別採用ですので、業界、会社の理解はもちろんですが、職種の理解はしっかりしてもらいたいと思います。そのために、職種紹介動画掲載や先輩との面談、キャリアディスカッション等を行います。

販売台数の9割が海外 人種、国籍、働き方も多様

■品川さんの経歴
 ――品川さんのご経歴を教えてください。
 2002年に電機メーカーに入社しました。本当は自動車業界を志望していたものの、当時海外留学中で、一時帰国時に面接を受けていたのですが、自動車会社とは面接のタイミングが合わず、結局受験できませんでした。その後、化学メーカーに転職、海外留学を経て、2013年10月に念願かない日産に入社しました。

 ――なぜ日産に?
 留学中に「グローバル」「ビジネス」「人事」という観点で、外資系、コンサルティング、日系企業を調べておりました。調べていく中で、外資系、コンサルティングにおいては、この三つを満たすのは、難しいのではないかと思いました。外資系の場合、日本法人は、基本的な役割は日本市場になり、また、コンサルティングは、クライアントの課題解決サポートをしますが、最終責任は事業会社です。そういったことから、グローバルに事業展開している日本企業の人事、特に、組織もグローバルかつダイバーシティが進んでいる日産に就職することとしました。

 ――日産と他のグローバル企業との違いは何ですか。
 ビジネス、組織・人の観点で異なります。おそらく、他の日本企業は主な市場が日本で、人の異動も日本人が海外に行くという形かと思います。しかし、日産は非常に複雑です。海外での販売台数比率はなんと約90%で、お客様の多様なニーズにタイムリーに的確に答えるために、組織も多様化し、現地に権限移譲しています。本社、日本人が介在せずに意思決定が行われるケースもあります。人の異動も、日本から海外に行くこともありますが、海外から日本に来ることや、日本を介在せず海外拠点同士で人の異動も多々あります。

 ――そういう環境は、社員にとっては働きやすいのでしょうか、それとも大変ですか。
 日本人同士ですと阿吽(あうん)の呼吸等がありコミュニケーションはとりやすいですが、外国人、アライアンスパートナーと仕事をする場合、それは通じません。英語で分かりやすく説明しなければなりません。それに慣れるまでは大変かと思いますが、慣れればそれも日常になります。

 ――外資系企業はよく成果主義でドライだと言われますが、グローバルだが日本企業である日産の場合はどうですか。
 成果を出すことは求められます。目標を立て、行動し、成果を刈り取る。振り返りも行います。このサイクルです。ただこれは、日産に限ったことではなく、グローバルにビジネスを行っている企業はどこもやっていることだと思います。私は過去2社経験していますが、これらの会社も同様でした。

 ――どんな社員が多いですか。
 一言では言えません。なぜなら日産はダイバーシティだからです。人種、国籍も多様です。働き方も多様です。ダイバーシティの最先端だと思います。

――品川さんご自身の将来の夢や目標について教えてください。
 現場と理論をベースとした人事領域の専門家であることはもちろんのこと、経営と技術も分かるグローバルに活躍できる人事のリーダーになっていきたいと思っています。そのために、できるだけ多くの仕事を経験し、最新人事理論、経営・技術情報の習得のためにセミナー参加、他社の方との勉強会、読書等を行っています。グローバルコミュニケーションツールである、英語、中国語のブラッシュアップも行っています。

みなさんに一言!

 自動車業界は、100年に一度の大きな変化の時期を迎えています。市場は拡大していますが、直面すべき課題もあり、また、ITやその他の業界との融合も始まっています。この大きな変化の中で、勝ち残り、またその変化をリードできる会社は、世界に数社しかありません。その条件は、規模、最先端技術、変化への柔軟な対応だと思います。日産は、その一社だと言えます。
 私たちのアライアンスに三菱自動車様も加わりました。これで世界総販売台数は1000万台規模を見込み、世界トップ3に迫るグローバル自動車グループとなり、これまで以上に規模のメリットを享受できます。また、テレビCMで流れている電気自動車、自動運転技術に代表される世界最先端技術。これらの技術、製品は、現に世界をリードしています。業界の変化、規模、技術の追求、私たちはすべてを追っています。また、変化に柔軟に対応するための土壌が日産にはあります。ダイバーシティです。
 これから変わっていく自動車業界をリードし、社会をよりよくしていきませんか? 日産ならそれができます。一緒に世界を引っ張りましょう!

日産自動車

【自動車】

 日産自動車はニッサン、インフィニティ、ダットサンの3つのブランドを持ち、グローバルにフルラインナップを展開する自動車メーカーです。2015年度には、世界中で540万台以上を販売し、売上高は12兆2000億円に達しました。日産は、歴史上世界で最も販売されている電気自動車「リーフ」を開発し販売しています。  日産は、1933年に神奈川県横浜市に設立され、現在、日本を含む世界20の国や地域に生産拠点を持っています。そして160以上の国や地域で商品やサービスを提供しています。  日産は1999年に、ルノーと、幅広い分野で戦略的に協力する独自のパートナーシップであるアライアンス(提携)を締結しました。また2016年には、ルノー・日産アライアンスを拡大する形で、三菱自動車と戦略的アライアンスを締結しました。