人事のホンネ

コマツ

2018シーズン第1弾! 【第1回 コマツ】
「グローバル」かつ「堅実なモノづくり」の会社 探究心が大事

人事部採用センタ 守部宏美(もりべ・ひろみ)さん

2016年11月16日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。いよいよ2018シーズンがスタートします。
 初回は建設機械の世界的メーカー、コマツです。東京・赤坂の本社でじっくりお話を聞いてきました。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ──まず、2016年入社の採用実績、男女比を教えてください。
 技術系は145人(修士卒104人、学部・高専専攻科卒22人、高専本科・短大・専門学校卒19人)。事務系が37人(修士卒5人、学部卒・高専専攻科卒30人、高専本科・短大・専門学校卒2人の計37人)です。高卒52人を加え、合計234人が入社しました。
 男女比は、234人のうち男性187人、女性47人。技術系の男女比は男性128人、女性17人。事務系の内訳は男性22人、女性15人です。

 ──2017年卒の採用予定は何名でしょうか?
 前年とほぼ同水準です。ここ最近の建設・鉱山機械業界については好調とは言えませんが、景気については変動するものですので、慎重にウォッチしつつも、安定的・継続的な採用活動をしていきたいと考えています。

 ──「全社採用」と「事業所採用」のコース別採用をしていますね。どう違うのですか。
 「全社採用」は、国内外を含めたグローバルな育成ローテーションを通じて、幅広い視野を身に付け、新しい付加価値を創造していく人材として成長してもらうことを目指します。「事業所採用」は、粟津工場(石川県小松市)、大阪工場など各事業所での経験習熟を主とした育成を通じて、それぞれの事業所運営においてコアとなる人材へと成長してもらうというイメージです。

 ──「総合職」「一般職」に分ける企業が多いですよね。
 「全社採用」「事業所採用」とも全員「総合職」です。我々人事部のようないわゆる間接部門の社員については、管理職の手前になると、二つの人事制度は共通化されます。最初の入り口は違っても、役職が上の方になると同じになるんです。

 ──では「事業所採用」で入った社員も、東京本社の管理職になる可能性がありますか?
 はい。いわゆる上級職になると、職能資格は共通になります。

 ──双方の採用人数を教えてください。
 2016年は234人のうち、全社採用が151人、事業所採用が83人(うち大卒31人、高卒52人)でした。事業所採用の中には、技能系社員(加工や組み立てなどの生産に直接かかわる社員)の採用も含まれています。

 ──技術系の、学校推薦制度による入社の割合は?
 2016年卒では8割が推薦です。この比率は例年同じくらいです。

■エントリー数
 ──2017年卒採用のエントリー数(大卒相当)を教えてください。
 プレエントリー数は1万5000人程度。その後、弊社のウェブサイトにアクセスし、希望職種などのアンケートに回答した本エントリー数は1万人程度です。

 ──採用スケジュールが、3月企業広報・エントリー開始、6月から面接開始に変わりましたね。
 前年と比べ採用広報の期間はかなりタイトでした。前年は3月ごろに学内セミナーを行い、自社説明会は4月でしたが、今年は同じ時期に行いました。おそらく学生の皆さんのスケジュールも非常にタイトだったのではないでしょうか。

 ──日程が短くなり、学生のエントリー数が減った企業が多いようですが。
 プレエントリーなど最初の母集団形成の段階では減りましたが、最終的な選考への参加者数は減りませんでした。

 ──エントリー増の対策や工夫はしましたか。
 4~5月の広報イベントを昨年より多く行い、来てくれた学生の皆さんとしっかり関係をつくるようにしました。実際のモノづくりの現場を見てもらう「工場見学会」や、静岡県伊豆市の「テクノセンタ」(コマツの建設機械のショールーム、実機を使ったデモが見られる)の見学会、鉱山開発用の「無人ダンプトラック」や土木事業を効率的に進める「スマートコンストラクション」といった最新技術の紹介イベントなどを開きました。技術紹介イベントでは、開発現場のトップ技術者などを呼んで話をしてもらいました。
 今年は大橋徹二社長の講演会も初めて行いました。昨年までは、坂根正弘相談役(元コマツ社長、2001年に社長に就任、創業以来初の赤字となったが大規模な経営改革を行いV字回復を達成)の講演会をしていましたが、今年からは社長も行うようにしました。

 ──工場見学などの規模は?
 1回30~40人です。事務系の学生には車体を作っている工場を中心に見てもらいました。技術系の学生向けにはコンポーネント(部品)工場も加えて回数を多めに行いました。事務系向けに工場見学会を行う会社は珍しいようです。

「頑張りました」だけでなく、PDCAサイクル説明して

■選考スケジュール
 ──このほかに通常の会社説明会も開いたのですか。
 はい。3月中旬~5月に、東京、大阪で何度も開いたほか、札幌、仙台、名古屋、京都、金沢、福岡でも1回ずつ行いました。全部で27日程あったので、イベントとは違い、後半は比較的予約は取りやすかったと聞いています。また、説明会開催地は主要都市に限定されてしまうので、地方在住の方でも参加の機会を持てるようどこでも見られる「WEB説明会」もマイページ上で配信しました

 ──エントリーシート(ES)の締め切りはいつごろでしたか。
 4月初めから5月中旬まで、3回に分けて受け付けました。1行しか書いていないとか、文章があまりに雑な場合は別ですが、基本的にこの時点で大幅な絞り込みを行うことはしません。また、次のテストセンターでの筆記試験は一定のラインを設けており、半分以上の方が通過しています。

 ──その後の面接の回数は?
 事務系は3回。1次は学生2人対社員1人の面接です。2次以降は1対1の個人面接。2次面接は課長クラスが、3次が最終で採用センタの部長クラスがお会いします。
 技術系は自由応募と学校推薦、また部門によっても異なります。推薦の場合は、基本的には最終面接の1回だけ。技術系の役員、部長クラス、人事系の部長クラスによる個人面接です。
 自由応募の場合は、1次面接を各工場で行い、人事系の課長や技術系のチーム長がお会いします。その後、1次面接合格者については本社や各部門のメイン拠点で最終面接を行います。
 技術系の選考では「全社採用」の中にも、「全国配属選考」と「部門別配属選考」の2つの応募コースがあります。「全国配属選考」とは、入社時に配属部門や職種、勤務地が確定していないものです。入社後の配属面談の中で決まっていきます。一方「部門別配属選考」というのは、「エンジンの開発部門」など特定の部門に配属が決まる選考方法です。
 内々定は、6月1週目の後半から2週目にかけて出しました。

 ──2017年卒採用は就活短期化の影響で、「企業研究が浅い学生が多かった」と言われます。
 人によりますね。私の感覚では、学生たちは「企業研究が浅い」というより、「早い段階から研究する企業の数を絞り込んでいた」のではないでしょうか。「まだそれほど興味がない会社だけど、ちょっと見てみよう」という学生が減った印象です。
 最初から絞り込みすぎている学生を見ると、「もうちょっとほかの会社にも可能性を感じてほしい」と思いますね。就職活動をしていく中で、さまざまな会社を知るのも良いことです。コマツはBtoB(Business to Business=企業間取引)企業なので、最初は知らなくても就活中に目に止めてくれることに期待しているので。

■エントリーシート
 ──ESはWEB入力ですね。各項目何文字くらい書かなければならないのでしょう?
 項目によって200~400文字くらいです。限度いっぱいでなくても構いませんが、あまりに文字数が少ないとアピールとして弱いですね。

 ──「語学力」の欄がありますが、海外売上比率8割超のグローバル企業ですから基準があるのですか。
 語学はできるに越したことはありませんが、それで採用が決まるわけではありません。むしろ、今できなくても「入社してから頑張ります」でもよくて、点数の基準はありません。もちろん海外と仕事をする機会はあるので、勉強する意欲は持っていてほしいと思います。

 ──海外留学していると有利?
 特に事務系で留学経験者が増えていますが、それ自体で有利不利ということはありません。ただ、慣れない環境の中での苦労や工夫、学びなどはそれぞれ持っていると思いますので、そういった点はどんどんアピールしてもらえればと思います。

 ――技術系にも語学力は必要なんですか。
 職種によりますが、「サービスエンジニア」という職種は比較的海外で仕事をする機会も多い職種なので、そういった中で語学力が求められる場面もあると思います。サービスエンジニアは、お客様の機械が常に万全の状態で稼働できるようサポートする仕事です。海外では気温などの環境や国の規制が異なりますし、それによってメンテナンス方法も違います。サポート体制の企画から現地のサービスマンの育成まで行い、どんな環境でも機械が止まらないようにすることが彼らのミッションです。

 ──ESで「学生時代に取り組んだこと」に加えて、「その理由と目的」「工夫・実践したこと」と細かく聞いていますね。狙いは?
 そもそも人が何かをするときに、理由なく始めることはないですよね。なぜそれを始めたのか、何を目標にし、実現のためにどうしたのかを聞きたいと思っています。自分なりにどう考えて行動してきたかをしっかり伝えてほしいですね。

 ──論理的思考力ですね。「求める人材像」の大事な要素ですか。
 「求める人材像」の中にはっきり定義はしていませんが、仕事で当然求められる力だと思います。ESでも、ただ「私は○○を頑張りました」と書くだけでなく、なぜそれをして、どうPDCAサイクル(Plan計画→Do実行→Check評価→Action改善の順に行う業務管理手法)を回してきたのか、しっかり説明してほしいです。エピソード自体はどんなことでも構わないし、格好よくなくても大丈夫です。

 ──どんなエピソードを書く学生が多いのでしょう?
 部活動やサークル活動の話が多いですね。「自分の言葉で自分の思いをしっかり伝えられているか」が大切です。

 ──自己PRの中で「あなたのキャッチフレーズ」を聞く狙いは?
 自分の良いところを、自分なりの言葉で分かりやすく書いてほしいと思っています。「粘り強い」といった標準的な言葉で書く人もいるし、「おっ、珍しい言葉を選んできたな」という人もいます。たとえば「冷静と情熱のハイブリッド」というような面白い言葉ですね。言葉のセンスを問うてはいないので、どちらでも構いません。ただ、面接で「どうして、こう書いたの?」と聞きます。きれいな言葉を書いていても、いざ聞いてみると実体験が伴っていないこともある。ESは、人数を絞り込むだけでなく、面接で深く掘り下げて聞くためのものですから。

アンテナ張ってる? 興味ある分野のニュースは見てほしい

■面接
 ──面接で心がけていることは?
 その人の長所を聞き出せるように意識して面接しています。よく言われることですが、採用面接は学生・企業双方のマッチングの場です。単にこちらの聞きたいことを聞くだけではなく、学生にもしっかりと納得して帰ってもらえるような面接をしていく必要があると思っています。当然、そのためには面接担当者自身が真摯な姿勢で面接に臨むことが重要です。

 ──1次から最終の段階ごとに見るポイントはありますか。
 面接担当者にもよりますが、事務系の1次では人柄などを見て「一緒に働きたいと思えるかどうか」を見ることが多いです。2次、最終と進むにつれて、考えて行動してきた積極性や思考力、実際に入社したときのイメージが浮かぶかどうか、などを深堀りしていきます。
 技術系は、専攻分野を勉強してきたかもしっかり見ます。内定者は機械工学系の出身者が一番多いのですが、「専攻とは違うがこんなことをしてみたい」と希望するなら積極的にアピールしてほしいです。「専攻が違うからNG」ということはありません。

 ──技術系の学校推薦以外でも成績表を提出させますか。
 最終面接のときに出してもらいますが、今のところ参考程度です。成績の出し方や不合格科目を載せるかなど、大学によって異なるし、単に数字で判断はしません。

 ──「すごく人柄が良く受け答えも良かったけれど、この成績では……」というケースは?
 そのときは「勉強あんまりしなかったの?」と聞きます(笑)。きちんと説明できれば受かるでしょうし、本当に勉強以外でも何もしてこなかったなら難しいケースもあると思います。

 ──志望動機によく登場するキーワードは?
 事務系に多いのが「グローバルに活躍したい」ですね。
 当社としてもグローバル人材は強化したいのですが、実は国内の仕事も多いので、国内外問わずコマツのビジネス全体にきちんと目を向けられる人がいいです。「グローバル」という言葉だけだと格好よく華やかな感じですが、イメージだけでなくコマツの仕事に興味を持ち、モノづくりのプロセスにまで理解を広げてくれると非常にありがたく思います。

 ──とくに印象に残った学生は?
 「シベリアに留学していたので、どこでも生きていけます」と言った学生がいました。事務系志望の学生は世界各地に留学経験のある人が増えていて、優秀ですね。

■インターンシップ
 ──インターンシップは夏と冬?
 8月に技術系、2月に事務系を対象に開きます。技術系は「ディーゼルエンジンの性能検討・解析」など今年は38テーマを用意し、テーマごとに興味のある学生を募集しました。人数が多い場合は選考します。受入れ場所は各工場が中心となります。たとえば、茨城工場(茨城県ひたちなか市)では大型ダンプトラック等の製造、湘南工場(神奈川県平塚市)ではモーターやキャパシタ(蓄電池)などの主要コンポーネントの製造、開発本部の技術イノベーションセンタ(同市)では騒音や熱流体の研究というように、各拠点で業務内容が異なります。技術系の参加者はそれぞれ興味のある工場や拠点に行ってもらいます。基本的には1テーマに1人受入れをする体制です。

 ──えっ? インターンといえば数十人規模でグループワークを行うイメージですが……。1人だとかなり濃い内容なんでしょうね。
 はい。技術系は具体的なテーマのほうが達成感があると思い、中身の薄いインターンにならないように気をつけています。「建設機械の自動制御の研究」「大型ブルドーザーの構造物の強度解析」などのテーマを用意し、応募者には第3希望まで書いてもらって調整します。

 ──事務系のインターンは何人ですか。
 16人程度の予定です。技術系のインターンは長年行ってきましたが、事務系は今年度で3回目。前回は私が担当したのですが、いろいろ盛り込みすぎて7日間になってしまいました(笑)。今年度は参加のしやすさを考えて5日間にする予定です。グループワークのほか、「社員の話を聞きたい」という要望が多いので、若手社員との座談会、海外駐在経験者や営業担当の話を聞く機会も設けます。事務系については基本的なカリキュラムは本社で行うのですが、期間中の1日は工場見学をしてもらい、コマツのモノづくりの現場を見てもらっています。前回は実際の業務も体験してもらいました。

 ──インターン参加者から内定者は?
 嬉しいことにインターンに参加してくれた方のほとんどが、エントリーをしてくれます。そこから、「内定に繋がる方」となると、年度によって異なりますが、技術系では、参加者の半数ほどに内定を出すこともあります。

■ニュースへの関心
 ──コマツを受ける学生は他にはどんな会社を受けていますか。
 重工業や総合電機業界ですね。モノづくりの分野で、国内外で事業を展開し、インフラ整備に関わっている会社が多いです。自動車業界もよく聞きます。商社もたまにいますが、メーカーのほうが多いですね。

 ──面接でニュースや時事問題について聞きますか。
 必ず聞くわけではありませんが、「最近、自分の専攻以外の分野で気になるニュースはありますか」などと質問することがあります。特定のニュースを知っているかではなく、アンテナを張っていろんな分野に興味を持っているかを見ています。

 ──技術系でもアンテナは必要ですか。
 探求心が大事です。「技術に興味があります」と言ったあと、「どう興味があるの?」と聞かれて、パッと具体的なニュースを交えて話せると強い。事務系も同じです。新聞でもネットでも、すべてのニュースを見るのは大変ですが、自分の興味のある分野くらいは見るようにしてほしいですね。

 ──就活スーツについてどう思いますか。私服可の企業もありますが。
 テクノセンタ見学会などの一部イベントは「私服可」です。実際に建設機械に乗ったり、オペレーターの指示に従って泥だらけのところをよじ登ったりするので、汚れてもいい服装で来てもらっています。6月は暑い時期なので、本社や事業所でのイベントの際も学生にはノージャケット、ノーネクタイでいいと伝えています。クールビズの基準で大丈夫です。
 実際にはネクタイをしてくる学生は多い印象です。控え室で「本当にネクタイはずしても大丈夫だよ。そこは嘘をつかないから」と言います(笑)。外す学生もいれば「ネクタイがある方が気持ちが引き締まります」という人も。ジャケット、ネクタイを身に付けてこなかったから面接で落ちるということはありません。清潔感のある、常識的な服装であれば大丈夫です。

 ──コマツは3年連続で「なでしこ銘柄」(経済産業省と東京証券取引所が選ぶ女性活躍推進に優れた上場企業)に選ばれましたね。
 ダイバーシティ推進の中で、性別、国籍、年齢などにかかわらず、一人ひとりが活躍できる環境が会社として大切だと考えています。女性活躍推進に優れた企業ということで、なでしこ銘柄にも選定していただいていますが、出産や子育てなどのライフイベントの中でも、家庭と仕事を両立しながら、働き続けられる制度整備を進めてきました。2014年には、通常の年次有給休暇とは別に出産・育児・介護の際に使える年5日間の「ライフサポート休暇」を新設しました。育児休業は昨年89名が取得していますが、うち男性は9名。こちらはまだまだ取り組みの最中です。
 また、ワークライフバランス向上への取り組みとして、労使で年次有給休暇取得推進を進めてきました。私が入社した2009年と比べ、有給休暇取得の意識は向上しています。有休取得日数は平均18.4日。長く働くのではなくメリハリをつけて働くのが一番。「やるときはやる、帰るときは帰る」という考え方が浸透してきました。

 ──建設機械業界は男性社会というイメージがありますが、女性の登用は?
 世間的にはそういうイメージだと思いますが、女性もかなり活躍しています。人事部長も、採用の責任者も女性です。社員約1万人のうち女性は11.5%ですが、これから増えると思います。

「真面目」で「フラット」な会社 建設・鉱山機械、産業機械に集中、わかりやすい事業領域

■社風
 ──コマツってどんな会社ですか。
 ズバリ言うと「真面目」。また、派閥や学閥は非常に少なく、個人のパフォーマンスをしっかり見る「フラット」な会社ですね。体育会系も、コツコツタイプの文系もいます。共通点は「根は真面目な人」です。
 ルールやコンプライアンス(法令遵守)に真面目な会社だし、採用に関しても経団連の指針を真面目にとらえています。「ルールをしっかり守りましょう」という社風で、大きくいえば「お客様を含め多くのステークホルダー(株主、取引先、顧客、社員などの利害関係者)から信頼される会社でありましょう」ということだと思います。

 ──全社員で共有している?
 「コマツウェイ」という冊子に、企業理念や「ビジネス社会のルールを遵守すること」「現場・現物・現実をよく見よう」といった語録を載せ、全社員に配っています。「お客様に頼まれたとしてもしてはいけないこと」「法令からはみ出すことはしてはいけない」というコンプライアンスも書かれています。トップの言葉もあり、それぞれの社員が違う仕事をしつつも「会社としてのベクトルは合わせていこう」と意識しています。
 「コマツウェイ」は外国語に訳して現地法人にも配ります。グループ全体では、社員4万7000人のうち、約6割が外国籍社員。現地法人の社員たちも一丸となって意識を共有するようにしています。
 入社後の研修でも、「コマツウェイ」の講義でエッセンスをわかりやすく伝えています。たとえば「ナゼナゼを5回繰り返そう」という語録がありますが、何か問題が起こったとき、なぜ起きたかを考え、しっかり分析して次に生かそう、という意味です。

■海外勤務
 ──海外赴任は入社何年目くらいからですか。
 多いのは現地法人でマネジャーなどの役職につくケースです。判断力が求められるため、少なくとも5~6年は国内で経験を積んでほしい。一般的には10年目くらいで赴任して、さらにキャリアアップするケースが多くなっています。
 海外赴任希望者は多いのですが、やはり日本で実績を上げている人が行きます。学生には「英語ができないとダメですか?」と聞かれますが、「英語ができること」と「仕事ができること」は別問題です。どちらかというと、「仕事ができる人」が現地に行きます。赴任先はどこかに偏るわけではなく、世界中です。

■やりがい、地域とのつながり
 ──コマツの仕事の「理想と現実」って何ですか。
 学生の皆さんから見たコマツのイメージは「グローバル」「世界と仕事をしている」ことだと思います。一方で、国内でも石川県、栃木県、茨城県などで地域に根づいて仕事をしています。「華やかそうなグローバル企業のイメージ」と「日々の堅実なものづくりの現場」の間にギャップを持つ学生がいるかもしれないので、説明会でなるべく伝えるようにしています。
 コマツの長所の一つに「現場をちゃんと知りなさい」という考え方があります。人事の仕事でも、机でパソコンに向かってばかりで現場に行かないと、「現場を知らない人間に仕事を回せない」と言われる。技術系、事務系とも、新入社員のほとんどを工場に配属するのもその表れです。工場でどんな製品をつくっているか、日々のオペレーションの中で現場の課題を見て勉強します。すごく良い点だと思います。

 ──数年前、本社機能の一部を創業の地である石川県に移転しましたね。
 新入社員研修も小松市の「コマツウェイ総合研修センタ」で行うようになりました。研修センタには宿泊機能や食堂を作らず、研修参加者が周囲のホテルや旅館に泊まったり飲食したりして、地元経済活性化の地域貢献をしています。10月の内定式もここで開催し、会社発祥の地を見てもらっています。

■守部さんの就活と仕事
 ──守部さんご自身の就活について振り返ってください。
 メーカー中心に回っていました。「日本の強み」を考え、漠然と「モノづくり」だと思い、「業界のリーダー的な存在」である会社を選びたいと思いました。コマツは建設機械で世界2位、希望通りでした。ほかには重工業業界や総合電機を受けていましたが、コマツが早い段階で決まったので他社は途中でやめました。私は石川県出身なので、身近に感じたところもありました。先輩社員が格好つけず率直に話をしてくれた点も良かったですね。

 ――BtoC(Business to Consumer=消費者向けビジネス)の総合電機などと比べると目立ちません。決め手は?
 事業領域が明確で、働くことをイメージしやすかった点ですね。総合電機は組織が大きすぎて、「入社して何ができるか」の考えがまとまりませんでした。コマツは建設機械と産業機械などに集中していて分かりやすかった。一途に頑張っている会社だと思いました。
 私が就職活動を行っていた2007~2008年はコマツが注目された時期でもありました。業績がV字回復し、坂根正弘会長(当時)がテレビ東京系の「カンブリア宮殿」に出演したり、日本経済新聞の企業評価ランキングで2年連続1位をとったり。無人ダンプトラックのような先端技術にチャレンジし、モノづくりを世界に発信している点を魅力に感じました。

 ──入社後の経歴を教えてください。
 2009年に入社し、2カ月間の新入社員研修後は石川県の粟津工場の総務部総務課に配属されました。コマツの国内最大規模の工場で、ブルドーザーや油圧ショベル、トランスミッション(変速機)などをつくっています。もともと人事、経理、調達などを志望しました。コマツは一つの職種で社員を育てていくスタイルなので、最初が人事系だと、そのまま人事系でいく人が多いです。
 2014年に石川県の金沢工場に異動。プレス機械や、鉱山などで使う超大型油圧ショベルをつくる工場です。ここでは、同じ敷地にある「コマツ産機」というグループ会社の仕事も担いました。2015年の3月に本社の採用担当に異動しました。

 ──印象的な仕事は?
 金沢工場時代に、コマツ産機の独自の制度を作ったときですね。一番思い出深いのが「賞与設計」、つまりボーナスの支給の仕方です。机に向かっていろんなシミュレーションを行い、根をつめる作業でした。最後に会社の制度として取り入れられたときは達成感がありましたね。当時の上司が部下にいろんなチャレンジをさせる人で、難しい課題を与えるのですが、とても面倒見がよく、結果的には成長させてくれる人でした。

 ──若い社員に任せる社風なんですね。
 任せられました。たとえば上の人との打ち合わせにも若手社員が同席し、「お前が考えてやるんだぞ」と意識させられます。もちろんサポートはしてくれますが。

 ──若手の面倒見が良い?
 面倒を見ながら任せる、といった感じです。事務系の場合は実践で仕事を覚えるケースが多く、新入社員には先輩社員が指導員としてつきます。1年目は上司や指導員のサポートのもとで仕事を覚えます。「若いときにいろいろやらせてみよう」という雰囲気は大いにありますね。
 技術系の機械設計などでは、「今回は車のこの部分の設計」「次はこの部分」と担当させながら、30代くらいで総合的な設計ができる技術者に育てています。ある一部分だけを設計し続ける会社もありますが、コマツは広く経験させて総合的な力を身につけさせるスタイルです。最初から難しい仕事をやらされる場合もありますし、苦労もしますが、その中で得るものは大きいですね。

みなさんに一言!

 就活ではいろいろな会社を見た方がいい。社会人になると、なかなか他社の様子を聞くことはありません。就活は視野を広げるチャンスです。その中で自分が納得した会社を選んでほしい。
 コマツは、学生が迷っているときは納得するまで待ちます。皆さんも、自分なりに動いて、よく考えてください。
 限られた時間での活動なので後悔しないように。後で「あそこも受ければ良かったな」「あそこをもう少し調べておけば良かった」とならないよう、自分が納得するまでしっかり活動してほしいと思います。

コマツ

【機械】

 コマツは建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などを展開する総合機械メーカーです。1921年に石川県小松市から事業をスタートし、今や世界180ヶ国あまりにそのネットワークを広げるグローバル企業へと成長しました。これまでもダントツの技術力を武器に、自動制御機能を搭載したICT建機や、鉱山開発向けの無人ダンプトラックなど、今までに無かった機械を世に送り出してきました。「品質と信頼性」を第一に、業界のリーディングカンパニーとして、今後も新たな価値の創造(イノベーション)を進めていきます。