人事のホンネ

株式会社セブン-イレブン・ジャパン

2017シーズン 【第11回 セブン-イレブン・ジャパン】
加盟店バックアップするOFCが根幹 本気で人と向き合う仕事

人事部採用担当マネジャー 中田智史(なかだ・さとし)さん

2016年04月04日

■採用数とスケジュール
 ――2015年4月の新入社員数と、2016年度入社予定の内定者数を教えてください。
 2015年は大卒が約450人で、男女比は6対4です。2016年度入社予定は350~360人。理系の学生は1~2割ですが、特に理系文系、あるいは学部卒と大学院修了で差はつけていません。
 例年350~400人が平均的ですが、2015年春入社が特に多かったということです。

 ――2016年卒採用のプレエントリー数はどれくらいでしたか。
 広報解禁日の3月1日以降、自社ホームページ(HP)や就活ナビからのものを合わせるとプレエントリーが3万くらい。実際にエントリーしたのは6000人くらいですね。就活スケジュールが大幅に変更されたことと、各企業が採用数を増やしたこともあり、若干減ったのだと思います。

 ――採用スケジュールを振り返ってください。
 2015年3月から会社説明会を開き、その後も先輩社員に会えるイベントを開催し、8月1日以降に本格的な選考を実施しました。選考まで期間を使い、学生に会社の魅力を伝えたり、大学を回って会社情報を提供したりすることにも力を入れました。

 ――イベントはどんな内容ですか。
 インターンシップ参加者を対象にした先輩社員との質問会やビジネスのコミュニケーションをシミュレーションできるグループワークのセミナー、仕事を体感できるセミナーも開きました。
 2016卒採用では東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡の全国7地区で選考を実施しました。セミナーも基本的には選考を行う都市を中心に主要な大学を回りました。

 ――全国で選考する理由は?
 最大の理由は学事日程への配慮です。交通費がかかるうえに、授業も休むとになると学生にとっては負担が大きいので、なるべく自分の大学に近いところで選考を受けられるようにしました。各地区で最終選考まで行いますが、採用は地区別ではなく全国一括です。

 ――リクルーター制度はとっていますか。
 社内にOBがいない学生にとって不公平なのではという観点から、実施していません。

■インターンシップ
 ――2016年卒生向けインターンシップについて教えてください。
 時期は3年生の夏冬の休みに合わせています。当社のインターンシップはまず「1DAY」で行い、その参加者がエントリーシート(ES)を出して5日間のインターンに参加してもらう形です。1DAYの参加者が全部で約2000人、そのうち5日間のインターン参加が800~900人ですね。場所は東京、名古屋、大阪、福岡の4カ所でした。

 ――1DAY参加者も選考で選ぶのですか。
 申し込めば全員受けられます。セブン-イレブン・ジャパンの基本的なビジネスの仕組みを理解してもらってから、5日間のプログラムに進んでもらいます。

 ――2017年卒採用向けのインターンは?
 2015年夏は採用時期と重なり、前年ほどの規模、エリアではできませんでしたので、秋口から冬にかけて実施しました。
 2年前からインターンを実施していますが、インターンに向き合う学生の意識は変化しているように感じます。以前は早い段階で自己成長意欲が高い学生が参加していましたが、今や参加するのが当たり前になりつつある。採用直結型ではないので学生に伝える情報の内容は一緒ですが、かつてと比べて学生の意識には差があるのが実態です。インターンに参加することで安心してしまっている学生もいるのではと感じることもあります。

7~8店担当し毎日オーナーさんにカウンセリング 全員に1次面接

■職種
 ――採用HPにあるOFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)職とは?
 基本的には総合職採用なのですが、最初にやってもらう仕事はOFCが基本です。当社のビジネスの根幹がOFCで、ここを経験した社員がいろいろな部署で活躍しています。
 専門職の募集は高校生対象の事務採用だけで、大卒以上の採用は総合職との位置づけで、まずOFCを目指します。

 ――OFCの仕事をわかりやすく教えてください。
 いま全国でセブン-イレブンは1万8000店舗ありますが、経営しているのはほとんどがセブン-イレブン・ジャパンではなく、加盟されているオーナーさん。セブン-イレブン・ジャパンのミッションは、その加盟店オーナーさんに対するバックアップです。オーナーさんは自分自身の生活費や利益を求め、ヒト・モノ・カネのマネジメントを行っている。加盟店さんに経営の「カウンセリング」ができるのはOFCだけです。それぞれのお店の問題、課題、ビジョンがどこにあるかを見つけ、店にあわせた「個店カウンセリング」をするのがOFCの仕事です。
 他社だとよく「SV(スーパーバイザー)」と呼んでいますが、当社では一般的にはレギュラーチェーン(直営店)で使う言葉で、本部の指示を現場に落とし込む仕事を指します。当社は本部の政策を現場で具現化するプロセスは似ていますが、商品の品ぞろえや発注の判断はすべて加盟店さんがしており、我々がどんなにすばらしい商品を推奨し販売促進策を実施してもオーナーさんが納得しなければその商品は店に並びません。オーナーさんにとって我々の施策、商品がどんな武器になり、売上、利益につながるのかをカウンセリングしていくのがOFCなんです。指示、命令系統ではない分、難しさももちろんあります。
 
 ――直営店は少ないのですか。
 「トレーニングストア」という直営店が一部あります。OFCになる前の若手社員が約3カ月の座学で基本的なことを身につけた後、実際に副店長、店長を1年ずつ経験する店です。ヒト・モノ・カネを実際に自分で動かし、オーナーさんの立場に立って疑似体験をする場です。全国どの直営店にも配属の可能性があり、だいたい2~3年でOFCとして独り立ちします。

 ――OFCは1人で何店舗くらい担当しますか。
 平均7~8店で、毎日店舗を回ってオーナーさんと話をしていきます。セブン-イレブンは創業以来、「ドミナント(集中出店)方式」といって一つの地域に集中して出店することが多い。配送効率や広告宣伝効果、またOFCがカウンセリングをするうえでの効率も考えての施策で、8店舗といっても地域的には近い場所を回ることが多いですね。

 ――ドミナント方式は地域のシェアを一気に奪うためとの見方もあります。
 そういう側面もありますが、当社には「ライバルは同業他社ではない」という考えがあり、シェアトップを重視しているわけではありません。たとえば、4車線道路を隔てただけで客層や売れ筋の商品が全然違います。集中的に出店しても、採算性を重視して出店しており、それぞれの店舗に潜在的なニーズがあるわけです。この点を考えても、個店ごとに向かい合えるOFCの役割は重要と考えています。

 ――OFCは新規店舗の開拓もするんですか。
 店舗開店までは店舗開発部隊(RFC、リクルート・フィールド・カウンセラー)が担います。昔ながらの酒店や加盟を希望される方などにオーナーさんとして加盟するように誘い、立地を選定し、あとはRFC、OFCと建築担当などの部隊が開店まで一緒にやっていきます。

 ――ずっとOFCを続ける社員もいるんですか。
 中にはいますが、様々な職種に行く人が多いですね。人事、社員教育の部署、地区のマネジャー(ディストリクトマネジャー)、商品部や建築担当、RFCなどいろいろな仕事があります。短いとOFC2~3年で他部署に移る人もいますが、平均何年間OFCをするという決まりはありません。

 ――地区マネジャーが担当するのはどのくらいのエリアですか。
 大きく分けると一つの区、市というイメージなので、店舗数でいうと80から100店舗くらいです。

■スケジュール
 ――2017年卒生の採用スケジュールを教えてください。
 3月からの説明会に参加してもらった後にOFCの仕事を体感するセミナーを全国で開きます。仕事に対する正しい理解、やりがいをもってもらうため、実際にOFCが使っている資料を使いながら、こういう状況のときはオーナーさんにどうアドバイスするか、といったことを体験するグループワークの機会を多く設ける予定です。そのあとの1次面接のタイミングでESを出してもらいます。

 ――体感セミナーはいつごろ開催しますか。
 3月初旬は大学内のセミナーや合同企業説明会があるので、3月後半から4月、5月にかけて会社説明会と並行して体感セミナーを実施し、6月から面接をスタートする予定です。
 1次面接はESで審査せず全員受けてもらおうと思っています。2016年卒採用ではES提出後に1対1の面接をしました。今年は広報開始から選考開始までの期間が短いので、1次面接は6~7人参加のグループディスカッション(GD)方式を考えています。そこで当社の基本を理解してもらってから、面接終了後にESを出してもらって2次面接という形に変えようと考えています。

 ――SPIなどでの足切りは?
 基本的にはしませんが、計算能力で1割程度しか点数が取れないような場合は不合格となるケースがあります。入社後の加盟店のカウンセリングに基礎的な数値計算は不可欠ですので。

 ――GDのテーマは?
 内容は申し上げられませんが、限られた時間、テーマの中で一つの結論をチームで出してもらうものにする予定です。お互い違う価値観の中で意見を言い合い、それを踏まえてどんな結論を出すかを見ます。伝えられないことを周りのせいにする、周りに流されて話ができない、周りの話を一切聞かないといった人は評価が低くなりますね。

成功体験に行き着くまでのプロセス聞く フランチャイズビジネス理解して

■面接
 ――その後の面接は何回ですか。
 例年は1次面接を含めて3~4回です。GD以降は30分から1時間弱の1対1の面接を予定しています。

 ――面接で特に着目するポイントは?
 学生時代の経験談を深掘りすることが多いですね。一つひとつの物事にどれだけ失敗をして、原因は何だったのかをちゃんと振り返り、新たに挑戦していく……というサイクルができているかどうかを知りたい。どういう目的意識で行動してきたかもしっかり聞きます。

 ――中田さんが重視する質問は?
 学生は、自分がやりたいと思ってやってきたことはいきいきと話をします。でも社会に出ると、自分のやりたい仕事ができることは非常に少ないと思います。「やりたい」仕事をやるために「やらなければいけない」ことが出てきて、そこが大きな壁になったりする。「やらなければいけないこと」に対してどう自分の中で納得して行動に移してきたか。そこを聞きたいと思っています。

 ――学生時代に「やらなければいけないこと」とは。
 勉強でも部活でも、得たい成果がありますね。そのために何をやらなければいけないのかと日々考え、目標を定めたうえでどんな努力をしてきたか、というプロセスが知りたいですね。

 ――印象に残っている学生は?
 やはり部活の話が多いですね。たとえば野球をしていた学生で、ケガで野球を続けられなくなり一度は挫折したものの、プレイヤーでない自分が組織の中で何ができるか考え、チームのモチベーションを上げるために、もがきながら提案したり行動したりしてきたという話をしてくれた人がいます。非常によかったですね。

 ――「失敗をいかに語れるか」が大事?
 就活では「うまくいったこと」だけを話してしまう傾向があります。ただ、うまくいった過程で大変だったのはどこか、そのポイントで何を考えどう行動したかを深掘りすることで本人の価値観が見えてくる。アルバイトで頑張って感謝されたという成功体験の部分ではなく、そこに行き着くまでの具体的なプロセスを聞くようにしています。ESにはそこまで深いことは書かれていないことが多いので、ESですべてを判断しようとは考えていません。ESはよく書こうと思えばいくらでも書けてしまうので、あくまで面接のきっかけ。そこから掘り起こす、引き出すように聞いていきます。

 ――引き出し方は社員間で共有されているのですか。
 当然共有をしていきますが、我々はOFCのころからオーナーさんの抱えている課題を日々引き出すことを意識していました。ただ「この商品が売れているから入れましょう」と言うだけではオーナーさんの行動は変わらない。そういう仕事を積み重ねているので、対応できると考えています。

■ES
 ――ESの項目を教えてください。
 基本的には履歴書と同じ形でシンプルです。個人情報や大学時代に力を入れたことなどの基本的な情報。アルバイト、ゼミや研究内容、半年以上の留学経験、あとは志望動機と自己PRだけですね。
 それから、セブン-イレブン・ジャパンのどの部分が魅力と感じたのかが400字以内。ここからは本人の価値観が出てくると思います。なぜOFCの仕事に興味を持ったのかも400字以内。インターンに参加した学生も多いので、どこに成長を感じたのかも聞いています。

 ――セブン-イレブンの魅力の欄では、自分の身近なセブン-イレブン体験を書く人が多いのですか。
 そうですね。「商品力が魅力」という人も「新しいことに挑戦しているところが魅力」だという人もいますが、会社説明会では私たちの信念を伝えているので、そこに共感しているかどうかを確認したいです。

 ――採用HPにある「日本の、世界No.1ブランド」「安定こそリスク」といった理念への共感が必要?
 そうですが、ESだけで判断するのは学生にも失礼だと思います。あくまでESは面接の一つの資料です。一つの項目に2行程度しか書いてこないようなESは、意思や意欲があるのかと疑いますが、これはセブンーイレブン・ジャパンに限らず、就職活動で企業と向き合うにあたり基本的な事項ですよね。

 ――同業他社との違いを認識していることは大事ですか。
 そこは「理解していただいてありがとうございます」としか言えない部分ですね。我々は他社のことはわからないし、当社には他社と比べて考える文化がありません。それよりも、当社の理念にどう共感しているかが大切です。

 ――セブン-イレブンの価値観の中で一番重視しているのは?
 我々はフランチャイズビジネスです。オーナーさんが「加盟してよかった」「夢が実現できてよかった」と思ってくださらない限り、私たちのビジネスは成り立たない。加盟店の満足度が向上していけば、オーナーさんも自然とお客様としっかり向き合えるようになる。我々が向き合っているのはオーナーさんであり、お客様と最前線で向き合っているのはオーナーさんである、という部分を理解しているかはすごく見ますね。

■求める人材
 ――フランチャイズビジネスを展開するうえで、求める人材とは?
 本当にオーナーさんと向き合えるかどうかですね。よく「人と向き合う仕事が好き」と言う学生がいます。人と向き合う仕事は世の中にたくさんありますが、我々が向き合うのは、自分の家族の人生もかけて経営されている方です。そういう相手に、どれだけ自分の思いをぶつけていけるか。
 「成長していきたい」という学生もよくいます。良いことですが、単に「自分が成長したいからこうしたい」だけだとベクトルが自分に向いている。自分のことしか考えられないOFCにあなたなら自分の店を担当してほしいと思うだろうか、という話を学生にはします。ベクトルをオーナーさんに向け、オーナーさんに対して何ができるかを考え、やり続けて、うまくいかないことも経験し、結果として成長してほしい。
 当社の鈴木敏文会長はよく「脱チェーンストア」という言葉を使います。発注の権限をすべて持っているオーナーさんと個別に向き合ってアドバイスしない限り店の売り上げは伸びない。今後、この部分に対する要求がさらに求められると思います。

 ――フランチャイズビジネスに対する学生の理解度は?
 なかなかわかってもらえないのですが、我々の信念はそこにあるので、繰り返し伝えていくことはすごく大事だと思います。ここの理解がないと厳しいし、お店の数値も自分自身も変えられない。未知の新たな商圏を開拓して売り上げをどんどん上げていきたいというタイプや、何とかしようと自分だけで一人で頑張ろうというタイプの人は苦労すると思います。なぜなら、OFCは自分だけが動くのではなく、オーナーさんの意識、行動を変えないといけないからです。
 OFCが一つの店を担当するのは平均3年くらいですが、担当から外れた後に店舗の体制や数値が元に戻ってしまったら、OFCとして失格だと学生に言います。自分がいなくなっても、オーナーさんと一緒につくってきた組織の考え方や仕組みが残ることで恒久的に売り上げが上がるようにするのが良いOFC。私は、OFCがいなくなった時がOFCの存在意義を示す指標になると考えています。

 ――採用HPからは、新しいことにチャレンジできる人材を求めている印象を受けましたが。
 その要素ももちろんあります。新しいことに挑戦するというのは、仕事の「仕方」に関してのことで、人間関係を構築することとは別です。同じことを繰り返すだけではオーナーさんの意識は変わらないし店も変わらない。だから、新しいことに臆せず挑戦したり提案したりする必要がある。オーナーさんはその土地で20年も30年も商売をやってきて実績も自信もあるから簡単には変わらない。でも、変わらなければ店舗は衰退してしまう。そんなときに新しい仕事のやり方や挑戦を提案できるのは、OFCだけなんです。
 「挑戦」というと奇抜なことをするイメージがありますが、セブン-イレブンで毎年発表するスローガンの中に必ずあるのは「変化への対応と基本の徹底」という言葉です。変化に対応し新しいことに挑戦するのは大切ですが、基本も忘れてはいけない。そこを間違うと、奇抜なもの、新しいもの、その場限りのものになってしまいます。

 ――ありがちな志望動機ってありますか。
 「地域貢献ができる」というものが多いですね。これも貢献をするのはセブン-イレブン・ジャパンではなくオーナーさん。オーナーさんが地元に根ざした商売をするから地域貢献できるわけで、OFCとしてオーナーさんの意識、行動を変えていくことの重要性はここにもあります。

 ――内定が競合するのは?
 昨年だと銀行、商社、メーカーが多かったですね。

営業との違いは迎合しないところ 2年がかりでオーナーさん説得

■社風
 ――社員にはどういう人が多いですか。
 人と本気で向き合うという点で強い信念を持った人、自分がこうだと思ったことをはっきり言う人が多いですね。オーナーさんの話をまずしっかり聞くスタンスは必要ですが、しっかり向き合うべきときは向き合います。
 そこが営業職と一番違うところかもしれません。営業は相手に同調し、気に入られてモノを買ってもらいますが、OFCは人当たりの良さだけではなれない。店の課題点を見つけたとしても、迎合してしまったらOFCの存在意義はありません。オーナーさんがプライドを持っていようと、自分自身がそこを変えるべきだと判断すれば戦います。営業職で取引先とケンカする人はあまりいないと思います。
 社内でも、相手に対して自分の意思をしっかり伝える文化があります。ものを言いやすい社風かもしれませんね。

 ――オーナーと経営方針がぶつかって訴訟になったケースもありますね。
 悪い情報ほど広がるし、情報に振り回されてしまうこともあるので、いろいろな感じ方をする人がいると思います。学生から不安の声を聞くこともありますが、私たちのスタンスはここにある、ということははっきり伝えます。

 ――入社3年後の離職率はどれくらいですか。
 直近だと15%くらいです。
■中田さんの就活
 ――ご自身の就活を振り返ってください。
 私は2001年にゼネコンに入社して営業をやり、2005年にセブン-イレブン・ジャパンに転職しました。就活では、自分がやったことを形に残したいという思いや、ダイナミックなイメージで選びました。
 退職したのは、営業の仕事は本気で相手と向き合えないと感じたからです。なぜなら人間関係で仕事が決まってしまったり、最終的にはコストの安いところが仕事を持っていったりする。本音で相手と話したい、信念を持って話したいと考えても言えないことが多く、数字を背負っているから頭を下げざるを得ない。だから人と向き合って本音で話し合える仕事を探して、転職活動では「パートナーシップ」といわれる仕事をたくさん見ました。その中で、セブン-イレブン・ジャパンに出会ってOFCという仕事を知り、これは営業職とはちょっと違うなと感じたのがきっかけですね。

 ――転職していかがでしたか?
 私の親も自営業ですが、休みが正月しかないくらい大変な仕事です。そんな人たちに本気で向き合わないといけないわけで、入社してしばらくは営業のほうが楽だとすら思いましたね。営業はクライアントと飲みに行きますが、OFCはオーナーさんと個人的に飲むのは他のオーナーさんとの信頼関係を傷つけ公平感を損なうことから「厳禁」です。フランチャイズの原則は公平・平等で、どの店とも同じように向き合わなければなりません。オーナーさんと人間関係を作るだけではダメでオーナーさんの意識行動が変わり数字を上げなければいけない。「OFCに話を聞いてもらってスッキリしたよ」だけではダメなんです。
 OFCは7~8店舗ほど担当し、1週間に1店舗あたり2回は訪問しますが、1回あたり2時間ほどしかない。スケジュールを管理し、自分自身の課題をちゃんと整理して伝えないといけないので、訪店前における事前の準備も大事になります。

 ――セブン-イレブン入社後の経歴を教えてください。
 直営店で副店長、店長をやり、商売の難しさを肌で感じるとともに多くのことを経験から学びました。2007年からOFCになり、約6年間で25店舗くらい担当し、2012年から採用担当です。
 自分の中の原点はOFCです。この経験がなければ私は学生にこの会社のDNAを語ることはできないし、会社を変えていくこともできないと思います。

 ――印象に残っているオーナーさんは?
 アルバイトに権限を委ねられず、発注も含めてすべて自分でやっているオーナーさんがいました。商品が売れず廃棄になると店の経費になるので、従業員には任せられないと言う。私は、このままでは店は絶対ダメになると思いました。なぜなら研修のとき自分で発注をすべてやったことがあったんです。しかし結果として仕事量が増えて一つひとつの商品をちゃんと見られず発注の精度も下がる。さらに、従業員が主体的に店のことを考えないから働くモチベーションが下がるんですね。たとえば洗剤や食品の売れ行きは主婦のアルバイトが私より詳しいし、お酒が好きな人がお酒売り場を作り、デザート好きな女子大生がデザートの発注を実施したほうがよい店ができる。店のことを一番知っているのは従業員です。この時間帯にこういうお客様が来て、いつもこういう商品を買っていくと把握していたり、お客様からの要望やクレーム、喜びの声などに日々接したりしているからです。
 こうした経験から私には従業員の力にもっと頼るべきだという信念があったので、このオーナーさんと何度もぶつかりました。複数の店舗を持ちたいというオーナーさんの目標がある中で「2店目、3店目も自分ですべて発注をするんですか」という話をしました。最終的には、新店舗でアルバイト中心の店作りをすることになり、そのオーナーさんはいま3店舗目を出店されるまでになりました。

 ――説得にどれくらい時間がかかりましたか。
 2年はかかりましたが、足跡を残せたと思っています。この店にはこの時間におにぎりがない、パンの品ぞろえが弱いからもっと増やした方が良いと「指示」をするのは簡単です。そんなことはオーナーさんもわかっていて、でも対応できない「理由」があるんですよ。あれがダメこれがダメという指摘は誰でもできるが、個々の店に合わせて何が課題なのか、何ができるのかを考えられるのはOFCしかいません。

 ――コンビニでのアルバイト経験はプラスになりそうですね。
 そういう面もあるかもしれませんが、過去の成功体験に縛られることもあるので善し悪しです。

■やりがい
 ――海外にも進出していますが、勤務の可能性は?
 非常に狭いと思います。我々の海外ビジネスは現地で売り場を作ったり現地でOFCをしたりするのではなく、現地法人に日本のノウハウや考え方をアドバイスする仕事です。日本のやり方をそのまま持っていってもうまくいかないので、OFCや地区マネジャー、商品開発などの仕事を経験した人が赴任します。実際に今行っているのは約30~40人。セブン-イレブン・ジャパンの子会社にアメリカのセブン-イレブンもあるので、ハワイや中国、上海、ベトナムやドバイなどにも行っています。

 ――この会社で働くやりがいと現実は?
 OFCの仕事に代表されますね。相手の行為を変える、モチベーションを変える、意識を変えるのはすごく難しいが、できる人はすごく強い。商品開発志望の人もいますが、各メーカーにはそれぞれ思惑があり、我々にも思惑があります。そこを妥協したら品質も保証もないという思いでぶつかりあう。セブン-イレブン・ジャパンの基本はすべてOFCにあると思いますね。

みなさんに一言!

 情報に振り回されないでほしいですね。自分自身で判断して自分自 情報に振り回されないでほしいですね。自分自身で判断して自分自身が挑戦する、ということができるかどうかが大切です。
 よく、「自分がやりたいことができるかどうか」という軸で会社を見る学生がいます。もちろん自分のキャリアに対するビジョンは大切ですが、会社で自分の「やりたいこと」はできないと考えた方がいい。日本経済新聞に連載されている「私の履歴書」に一番よく出てくる言葉が「たまたま」だそうです。思いもよらないことをきっかけにその人のキャリアもゴールも大きく変わってくるわけです。そこを意識して、自分のビジョンに近づくために挑戦できるフィールドがそこにあるのか、という視点で会社を選んでほしいですね。いいことを言って入社させることではなく、10年、20年、30年後もこのフィールドで常に自分を変えていけるのかを見極めるのが私たちの仕事。私たちは選考の中で厳しい話をするのは、そのためなんです。

株式会社セブン-イレブン・ジャパン

【流通】

 日本のセブン‐イレブンは1974年から今日に至るまで、社会や人々の生活の移り変わりに寄り添い、常に変化し続けてきました。現在もまた、人々に喜ばれる「近くて便利」な店を具現化するため、変革の道を走り続けています。国内消費が「売り手市場」から「買い手市場」に大きくシフトする中、苦境に立たされていた中小小売店の経営を近代化し、高い生産性と成長を実現することを目指して誕生しました。以来、加盟店様との信頼関係に基づいた独自のフランチャイズシステムや優れた商品開発力、世界最大規模の情報ネットワークなどで、常に変革への挑戦を続けています。