株式会社IHI
2017シーズン 【第12回 IHI】
社会貢献実感できるインフラ事業 求めるのは論理性と情熱
人事部採用グループ長 桑田知之(くわた・ともゆき)さん
2016年04月12日
――2015年度の新入社員数と2016年度の入社予定数を教えてください。
2015年度は、技術系が204(男性180、女性24)人で修士171人、博士7人。事務系が55(男性34、女性21)人で全員学士、合計259人です。
2016年度入社予定の内定者は、技術系227(男性208、女性19)人で修士188人、博士7人。事務系56(男性38、女性18)人で全員学部卒、合計283人です。少し増やしました。
――少しずつ採用数を増やしているのですか。
通常は220人程度だったのですが、2015年入社から増やしだし、2016年入社は2015年から比べ20人ほど増えました。2017年卒採用では、通常時に戻す可能性があります。(3月15日に大卒採用人数は250人と発表)
――女性の採用数に目標は?
技術系は10%、事務系は35%、トータルで15%は女性を採用するという目標値がありまして、社長がWEB上で公表しています。
リケジョの採用は年々競争が激しくなっています。理系でも化学系は半分くらいが女子ですが、IHIが多く採る機械や電気系はそもそも女子が10%程度しかいません。とはいえ、IHIは早くから女性採用に積極的で、これまで採用してきた大学に先輩後輩のネットワークができているので、そういう大学からの採用が多くなっています。女性が社内で活躍している姿を目の当たりにした学生が来てくれています。
ただ、同業他社も女性採用に力を入れ始めているので、どんどん難しくなっています。女子向けセミナーを開き、就職情報会社主催の理系女子セミナーにも参加して、ご縁ができたらフォローを密にして応募してもらえるよう一生懸命がんばっています。
■エントリー数
――エントリー数を教えてください。
2016年卒採用のプレエントリーは技術系が9661人、エントリーが678人です。技術系は「学校推薦制度」があるので事務系のように単純に年ごとの比較をするのは難しいのですが、我々がベンチマークにしている自由応募のエントリー数は428人でした。2015年卒採用はプレエントリー数はあまり変わりませんが自由応募が880人あったので、ほぼ半減しました。採用スケジュールの変更に伴い、学生が手堅く応募数を絞って就活を進めたのかなと思います。
一方の事務系は2016卒採用でプレエントリーが1万2544人、エントリーが3060人。2015はプレエントリーが1万930人でエントリー数が3472人だったので、あまり変化はありませんでした。
――技術系の学校推薦採用はどのくらいの割合ですか。
約90%です。自由応募の率を増やそうとしたこともありますが、辞退者が多く、例年80~90%程度です。
――多いですね。すると、技術系の自由応募は競争率が高いのでしょうね。
高いかどうかは別にして優秀な学生が来るのは事実です。一方で内定辞退者も多く、必要な数を採用するには、ある程度学校推薦制度が必要なわけです。
――どんな大学に推薦を依頼していますか。
過去の入社実績をもとに推薦してもらうので、お付き合いのある大学から採る形が多くなっています。新設の大学やお付き合いが途絶えた大学の学生は採用の可否を判断しづらいので、推薦状を出してもらったうえで学力確認のための試験も受けてもらうなど、フレキシブルに対応しています。その大学からの採用が2~3年続いて実績ができたら、大学側の意向を確認したうえで、正式に通常の学校推薦を適用する、という流れです。試験はSPIだけではなく、もっと専門的、技術的な内容です。
――技術系トップの東大、東工大クラスだと推薦枠は何人分ですか。
年によって変わりますが、年に10人以上は入社します。
――どんな学科からの採用が多いのでしょう?
電気、機械、航空、あと化学、物理、応用化学、応用物理、情報処理系は毎年います。
緻密なモノづくりの航空宇宙か、大きなものをつくるプラントか選んで
――技術系は職種別採用ですか。
職種別はキャリア採用だけで、新卒は一括採用です。プレエントリーしてエントリーシート(ES)をダウンロードすると、進みたい分野・部門を選ぶ欄があり、そこで仕分けしています。分野・部門は「資源・エネルギー・環境」「社会基盤・海洋」「産業システム・汎用機械」「航空・宇宙・防衛」「研究開発・IT」の五つに分けています。
技術系は内定までに「技術面接」と「配属面接」をします。当社はまず一括して技術力を見て、そのあとに細かなカテゴリーごとに面接官がいる「配属面接」を経て配属先を決めます。本人の希望も聞いてなるべく希望に添うように振り分け、そこがダメな場合はこちらの事業部はどうかと勧めます。内定時には配属先のイメージが持てるような形にしています。
――なぜその方法を?
最大の理由は学生の希望をなるべくかなえるためです。入社して研修終了後に配属先通知を出す会社が多いと思いますが、当社では納得して入社してもらいたいので、入社前に配属通知を連絡します。離職率が大きく改善したので、学生の評判もいいのではないでしょうか。
――事務系の面接は何回ですか。
ESとSPIの選考を通過後、グループ面接、1次、2次の計3回面接をして内々定です。どういうことをやりたいか面接で聞いて、10月1日の内定式の前に「配属先説明会」を開き、事務系職種を募集している部署から仕事内容や求める人材を説明してもらい、学生の希望をとる。それを人事部で見て配属先を決め、「配属先通知面談」をして内定式のときには配属先が決まっています。
内定式では配属先ごとに島を作り、そこに内定者を入れます。幹部も来て、半年後にこの仲間と一緒になるということがわかる形にしています。
■職種
――技術系で学生に人気がある分野は?
航空・宇宙分野ですね。ただ、資源・エネルギー・環境でのプラントエンジニアリング、EPC(建設工事プロジェクトの設計=Engineering、調達=Procurement、建設=Construction)事業をやりたい学生、海外建設事業でボイラーやLNG(液化天然ガス)のターミナルをつくって納める世界が好きな学生もいるので、全員が航空・宇宙分野を希望してくるわけではありません。
航空・宇宙分野とプラントエンジニアリングにはそれぞれ違う楽しさがあり、両者は交わらないと思っています。航空・宇宙は工場で緻密にものをつくりデリバリーしていく世界。プラントエンジニアリングは必要なものを必要な場所に全部集めて建設していく世界。毎日進捗が見えて大きなものがどんどん建っていく喜びがある。まったく別物なので、セミナーで学生には「航空宇宙のように工場でものを作ってお客様にお納めする世界と、現地で必要なものを必要な場所に集めて建設する世界の二つの領域のどちらに近い方を選ぶか先に決めてください」と説明しています。
――本人の志望と向いている分野が違って、志望を変えさせるケースも?
あります。希望する事業部門が求める技術と本人のスキルがマッチしないと、別の分野を勧めたりします。「技術面接」でそこを判断し、「配属面接」ではこちらが勧める分野での面接を受けてもらいます。このプロセスはセミナーでも説明しているので、面接に来る段階では学生も配属先について納得していると思います。
――5分野の希望者の比率はどのくらいですか。
航空宇宙分野が多いですが、資源・エネルギー・環境も研究開発・ITも大きくて、この三つで約7割を占めます。
――事務系の志望はどんな傾向がありますか。
社会インフラ系やエネルギー系で社会に貢献したい、という典型的な志望動機の学生は、海外営業を真っ先に希望する人が多い。もう一つ多いパターンは、小さいころから航空機が好きだったのでジェットエンジンをやりたいというもの。このどちらかで半分以上を占めます。
勉強で「やるべきこと」やってるかチェック 新聞読み世間見ている学生を評価
――「技術面接」はどんな形式ですか。
学生1人に対し、技術面接官と人事の面接官が2人で面接します。自由応募の学生はこの前に「技術試験」を受けてもらいます。これ以降は推薦の学生とプロセスは一緒です。
――「技術試験」の難易度は?
それほど難しくありません。大学の工学部で一通り勉強する内容から出題しています。機械、電気・電子・制御、航空・宇宙、材料、化学、情報にわけて、それぞれ専門分野で受けられるようにしています。
――「配属面接」はどんな形式ですか。
分野によって違います。2対1の分野もあれば、社員4~5人というケースも。本部長レベルも出てきて、時間は原則30分です。技術系はこの面接が最終となります。
配属先が決まった状態での面接なので、入社してこの分野で何をやりたいのか、どういうことをどれくらいやりたいのか、そこで自分の専門知識をどう生かせるのかといった話をすることが多いですね。熱意、やる気も見ます。
――何割くらいが内々定するのですか。
かつては推薦の学生は配属面接はほぼ通していましたし、今でも、技術面接での学力確認が前提となりますが、高い確率で通っています。技術面接で合格している場合は、最初の配属面接でダメだった場合、選考を続ける意思があれば、別の分野の選考を受けてもらうことが可能になっています。
――事務系の選考はどのように進みますか。
当社はリクルーター制をとっていて、リクルーターと自由応募に分かれます。リクルーターがいる大学の学生は選考前にリクルーターと面談してもらい、志望度を高めてもらう形にして応募してもらっています。リクルーターがいない大学の学生は自由応募のルートで、数回面接を実施します。リクルーター、自由応募とも、最後は人事部長面接となります。リクルーターがいる大学から自由応募してくる学生もいます。リクルーター面談の形式は大学ごとにまかせています。
――自由応募のグループ面接は?
面接官2人、学生6~7人で行い、時間は30~40分です。学生に発言のチャンスは公平に与えるようにしています。次の個人面接は学生1人に面接官2人で、時間は原則30分です。
――事務系の面接で見るポイントは?
志望度ですね。あと、ESにゼミを書く欄があり、大学で勉強しているかどうかはチェックします。ゼミや卒論のテーマが書いてあれば、その説明をしてもらいます。何を勉強しているのか、どういう問題意識を持ちそれに対してどういうソリューションを考えているのか。あと学生時代に頑張ったこと。その3点セットは聞くケースが多いです。
――勉強はかなり重視する?
「やるべきことをやっているかどうか」を見ます。事務系の場合、勉強ができることがすべてではないのは認識していますが、近年、文部科学省や経団連が言うように採用にあたって大学での勉強に重点を置くトレンドはあります。理系のように専攻分野を深く確認するわけではありませんが、一昔前のように「大学に入ったら、はい終わり」というのは違うと思うので。
大学の勉強テーマを説明してもらうと、論理的な説明能力があるかどうかがわかる。まだ研究結果が出ていなかったり、卒論が不要な学部だったりしても「これから研究を始めるところなので結果は出ていませんが、自分としてはこういう興味関心があって……」とか「こういう学部にいるので卒論のテーマは特にないのですが……」という説明を論理的にできればダメということにはなりません。ゼミ名や立派な研究テーマを書いてあっても、こうした説明ができなければ厳しい。
――桑田さんがよくする質問は?
最近よくする質問は、「この社会で何が問題なのか」ですね。経済や法律といった単科系なら質問を変えますが、特にリベラルアーツ系の学部生なら、こういう問題意識は持っているのではないかと。「この世の中の何が問題だと思っている?」と聞いて、社会に対する意識付けなどを聞きますね。
チェックしているのは問題意識の「有無」であって「正誤」ではありません。意識が間違っているとか、面接官と学生の考えが違うからダメということはまったくない。一方、何も考えていない学生はこういう質問をするととたんに口ごもる。何か問題意識を持って、ふだんから新聞を読んだり社会から情報をとったりしていれば、自ずときちんと回答できると思います。
――新聞を読んでいるかどうかわかりますか。
読んでいればわかります。世間を見ている学生はちゃんと評価します。
――体育会系の学生は多い?
応募は来ますが、体育会系だから採用するという時代ではなくなったと認識しています。事務系もエンジニアと一緒に仕事をすることが多くなり、エンジニア集団は強引に引っ張ってもついて来ない傾向が強く、こうだからこうしなきゃいけないというコミュニケーションをとる機会が増えたので、論理性の有無を重視するようになったのだと思います。
ESは空欄も書きすぎもNG 「営業ならなんでも」は志望度低いと判断
――書類選考について教えてください。
まずテストセンターで受検するSPIのスコアをチェックします。そのあとESを見ますが、ちゃんと人に伝える気持ちを持って文章を書いているか、論理性や協調性があるかなどを一通り見て、合否を判断します。
ESの項目は「志望動機」「心がけていること・注力していること」など、比較的オーソドックスです。それほど分量はありませんが、手書きにこだわっています。
――メーカーでは珍しいのでは?
手書きのESからは、字の雰囲気、読み手のことを考えているかなど様々な情報が読み取れます。そもそも手で書くのが面倒なら来なくていいよという思いもあります。手書きの手間をIHIのためにかけられない学生が最終選考に来ても困るので、いい振り分けになると認識しています。
――印象が悪いESは?
半分くらい空欄、逆にすごく小さい字でいろいろなことを書き込んでいると印象は良くないですね。伝えたいことを絞りきれず何でもかんでも伝えようとすると相手に伝わらない、というのはプレゼン教育でもよく言われること。10の問題意識があったら一つに絞り、起承転結をつけて伝えてほしい。書かなさ過ぎも、書き過ぎも良くないということです。
事務系はこれ以外に、小論文を書いてもらい、面接結果と両方を見て選考しています。テーマは公表していませんが、IHIのホームページに載っているテーマに沿ったお題が多いですね。ここでも論理性と、ポンと出したテーマに対して展開できる力を見ています。
――ポイントは?
面接でもES、小論文でも問うことは同じです。論理性を持ってちゃんと説明できるかと情熱を感じ取れるかどうか。頭はいいけどエモーションやパッションがない学生は、会話の筋道は通っているけど志望度が低く見えます。例えば、ある会社に入りたいとき、その会社について調べていなければ最低条件をクリアしていませんよね。
――学生にどの程度の企業研究を求めますか。
IHIという会社全体を知る必要は全然ありません。理念や事業分野を見て、自分がこの会社で何をやりたいか、何を自己実現したいかをちゃんとイメージして来たほうがいい。だから「営業ならなんでもやりたいです」と言われてしまうと、「えっ?」と思ってしまう。財務や法務のようなスペシャリスト志望ならわかるが、営業志望なのにこちらから「営業の中で何をやりたいの?」と聞かなければいけないケースが多い。こちらから聞かなければいけない面接は、あまり印象が良くありません。第一声で学生のやりたいことがこちらに伝わり、「でもこういうこともできるよ」とこちらが投げかけて会話が転がるのが面接。そもそもこちら側が「どの営業がいい? この営業?」と聞くようでは、会話が成立していないですよね。
――企業研究をしっかりしておかないといけませんね。
自分の行きたい分野については、ですね。ただ、事務系で「プラント以外やりません」とか、IHIが作っていない製品をやりたいと言ってきたりすると、「あれ?」となる。特にIHIの子会社がつくっている製品の場合、混乱するのかもしれません。グループ会社の製品をIHI本社としてこうバックアップしたいという説明なら「ああ、わかっているんだ」となるけど、「私はこれがやりたい」と一生懸命言っている商品が子会社のものだったりすると……。自分のやりたいことと、会社の組織構造をちゃんと理解できている学生はIHIを研究しているわけで、志望度が高いと判断します。
なぜこういう判断基準を持っているかというと、リクルーターに何回か会ったり説明会をきちんと聞いていたりすれば自ずと理解できるはずだからです。自分が携わりたい商品や事業について質問されれば、私たち人事担当もリクルーターも「それは今は子会社がやっている」と必ず説明する。そこが面接に来るまでに整理されていなければ、志望度が低いという判断につながります。
――企業研究が深いと熱意を感じる?
感じますね。たとえば、インフラといっても橋、ボイラー、LNG、原動機、ガスタービンと系統によって内容が全然違うし、その中でどれがやりたいのかは調べればわかる話。そこで志望度や熱意の有無を判断します。本当にやりたいことがあって熱意がある子はOBを通して質問したり、ガンガン調べたりしますから。
■スケジュール
――2016卒採用のスケジュールを振り返ってください。
事務系は、3月に広報を始め、会社説明会、セミナーを開きつつリクルーターが走り、母集団形成をしました。8月1日の面接スタート後速やかに選考をこなし、終わらせる予定でしたが、内定式のある10月までに辞退者が発生し、その後も選考を続けてようやく10月1日に確定できました。
大学に聞くと、学生は二極化しているといいます。意識の高い学生は冬のインターンに参加して、企業とずっとつながりを持って早々に内定をもらい、やりきった感を出して就活を終える。一方、選考開始の8月1日の直前まで動かなかった学生もいました。昨年は大企業が選考をなかなか終わらせず、いろいろなチャンスがあったので辞退率が上がった印象があります。同業他社のほか大手銀行等でも同じような傾向だと聞いており、結果的に就活が長期化した印象がありますね。
――2017年卒採用は6月選考開始になります。
広報期間が短すぎるという企業もありますが、伸ばしてもきりがないですから、3カ月なら3カ月でやりきるしかない。素直に6月1日に選考スタートできるようなスケジュールでいけると思います。
■インターンシップ
――インターンシップの規模を教えてください。
2015年は2月に開催し、事務系30人、技術系19人が参加しました。技術系は従来夏にインターンシップをやっていて、こちらは80~90人規模です。冬のインターンは広報開始直前が効果的と思い昨年からスタートしました。
――効果はどうでしたか。
技術系の場合は、修士までだと内定者の16%強がインターン参加者でした。博士は先に職場でインターンを経験してもらい適性を見て採用する方法をとっています。事務系は内定者の7%がインターン経験者で、それ以外に数人がインターンに落ちたけど再チャレンジで内定しました。前回のインターンは急ごしらえで全国に宣伝に行けなかったのでこのくらいの人数でしたが、2017年卒採用では幅広く各大学を回って宣伝しているので、もっと比率は増えると思います。
――期間はどれくらいですか。
事務系は5日間、技術系は2週間ですね。
――IHIはどんな会社ですか。
伝統ある古い会社ですが、意外と風通しがよくて好きなことが言える社風です。その一環として、積極的に人材の流動化をはかっています。職場ローテーションの一つの手法として、社内公募や自己申告など、働きやすさや本人の希望をかなえる手段をたくさん用意しています。
ローテーションでは、事務系は異なる部門を何部門か経験します。社内公募は年に2回、100件くらい社内に求人票が出て、そこに応募して成立すると現職場の意向にかかわらず強制異動となる仕組みです。自己申告は毎年1回あり、異動希望欄をチェックすると希望の時期が選べて、1年以内という希望が出ると人事部から職場に面談の指示を出し、合理的な理由があれば異動させます。若い世代が働きやすさや自分のやりたいことに近づける制度がたくさんあり、人の流動化を積極的に行っている会社です。エネルギー分野からジェットエンジンを開発する部隊に移るといったことが日常茶飯事なので、配属されたところを一生の職場と思う必要はありません。いたい人はいていいし技術系は専門職もありますが、事務系の場合は3職場くらい回るのが前提となっています。
――IHIで働く「理想と現実」を教えてください。
インフラ系の事業が多いので、製品が完成したとき、納品したときに「社会に貢献した」というやりがいを感じます。お客様が喜んでいるところも見られますが、逆に私は若いころ、結果が直接目に見えないとも感じていました。食品などのメーカーだと、ある新商品を開発してすぐにマーケットに出して、結果次第では半年で製造中止という世界がある。一方、我々はプランニングに半年、1年かけ、そこから受注して完成まで3~4年は平気でかかるプロジェクトばかりなので、すぐに結果が出ない。若い人はそういう悩みを持つと思います。ただ大きいので、完成したときには社会貢献度をすごく感じられますね。
――学生にそうしたやりがいは伝わっていますか。
伝わっていると思います。志望理由に多いのが、「技術をもって社会の発展に貢献したい」という言葉。この業界ならそういう社会貢献ができると思って来る学生が多いんだと思います。
■桑田さんの経歴
――桑田さんの就活と入社してからの経歴を教えてください。
大学院修士からエンジニアとして大学推薦で他のプラント会社に3年間勤め、1989年にIHIに入社しました。宇宙開発に15年いた後、突然エネルギーの海外営業に異動しプロジェクトマネジメントも兼ねて4年間やりました。そのあとアメリカの原発メーカー、ウェスチングハウス(WH)を東芝と買収したので、原子力分野に7年間在籍し、新しい案件をどういう配置でどうやれば現実化するかという仕事をこなしました。人事部は2年前からです。
――一番印象に残っている仕事は?
一番長い時間をかけたのは、今打ち上がっている宇宙ステーションに搭載されている実験装置。31歳のころから8年くらいかけて開発したので、一番大変でしたが、いろいろなことを経験できました。私は機械屋でしたが、このとき電気も制御も全部やり、幅が広がったと思います。
セカンドステップはエネルギーの海外営業に突然異動したときですね。一番面食らったのが契約です。契約がここまで大事なものだと知り、文系脳が成長したと思います。論理性が大事と繰り返しているのも、このときの経験によるのかもしれません。会社の中で生き延びるためには説明責任が絶対に必要で、説明能力に長けていない学生を採ってしまうと結局本人が苦労する。物事を一つひとつ検証して積み上げていく技術分野の仕事を経験し、そのあとに契約を中心とした世界を経験したので特にそう思いますし、事務系の採用は特にそういう観点で見ています。
みなさんに一言!
学生にはよく「イマジネーション(想像力)とクリエーション(創造力)、両方を考えろ」と言っています。君たちが何かをしなければいけないとき、必ずインプットとアウトプットがある。両方考えずにやる人間は一番ダメ。次に「アウトプットは何ですか」と聞いて作業する人間は言われたことをやっているだけ。インプットのことを考え、なぜこのインプットをしなければいけないか(why)、どういうアウトプットが望まれているのかを想像し、だからこういう道を通るのが最善だということを(how)ちゃんと考えなさい、と学生に伝えています。そのためには少なくとも想像力が必要。ESひとつ見てもこれはなぜ手書きなのか、どうしてこういうマスが設定されているのか、1枚数分で目を通す社員のことを想像すればどういうESにしなければいけないかわかるはずです。内定式でよく「まず君たちは想像力を身につけてください。それがクリエーションにつながります」と話しています。ぜひ意識してください。
株式会社IHI
【機械・プラントエンジニアリング】
IHIは「技術をもって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」の経営理念に基づき、21世紀の環境、エネルギー、産業・社会基盤における諸問題を、「資源・エネルギー・環境」「社会基盤・海洋」「産業システム・汎用機械」「航空・宇宙・防衛」の4つの事業領域を中心としたIHIのものづくり技術を中核とするエンジニアリング力によって解決し、地球と人類に豊かさと安全・安心を提供するグローバルな企業グループを目指しています。
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2024/11/23 更新
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