人事のホンネ

株式会社りそなホールディングス

2017シーズン 【第6回 りそなホールディングス】
お客さまの未来にアプローチ! 誠実さと幅広い好奇心が必要

人材サービス部人事グループ(採用担当)グループリーダー 俵聡一郎(たわら・そういちろう)さん

2016年02月23日

■2015年の就活
 ――2016年春入社予定の内定者数を教えてください。
 全部で785(男性323、女性462)人です。ほとんどが学部卒で、院生は10人(男性6、女性4)と全体の1%程度。理系の学生は全体の21%です。
 採用数はこの数年ほぼフラットです。2016卒の採用計画数は前年より50人くらい少なかったのですが、人物重視でいい学生を採用していった結果、前年とほぼ同じ数になりました。

 ――部門別採用をされていますが、内訳は?
 現在当社では「法人部門」「個人部門」「管理・サービス部門」の3部門で採用していて、それぞれ294人、298人、193人が内定しました。ただ、2017年卒採用からは募集コースを「ソリューション・フィールド」「カスタマーサービス・フィールド」の1コース2分野での募集に変更する予定です。

 ――なぜ部門別に採用しているのですか。
 多種多様な人材を迎え入れ、ダイバーシティーを実現するためです。給与体系は全員同じで、キャリアの終点、目指すプロフェッショナル像をどこに置くかという観点でコースを分けています。その間は本部と支店、または国内に限らずキャリアを積んでもらいます。同じ部署内で東京と大阪の間を「席替え」することもあります。

 ――他社とはどう違うのでしょう?
 メガバンクでも大企業取引、個人取引、事務といった業務ごとのカテゴリー分けはあります。違う点は二つ。一つは、みんな総合職なのでいろいろな経験ができることです。個人部門や管理サービス部門でも本社勤務になることがあります。他社だと、いわゆる特定職やアソシエイト職といわれる社員が本社でバリバリやることは少ないと思うので。
 もう一つは、最初の勤務地をエントリーシート(ES)の段階で選べる点です。「全国可能」「関東エリア」「関西エリア」の三つから選ぶ形です。入社後も基本的にそのエリアでキャリアを積んでいきますが、一度東京のマーケットを見たいとか、本社で経営管理を学びたいといった理由で一時的にエリアを移ることもあります。

 ――職種や勤務地にこだわる学生には魅力的ですね。
 他社だと事務職で入ったら一生事務ということが多いと思いますが、当社ではキャリアの途中でいろんなことにチャレンジできるので、前向きなキャリア志向でりそなを選ぶ学生も多いですね。

 ――来年からのコース変更はなぜ?
 法人、個人という枠組みをなくすためです。たとえば、企業を訪問して社長に会うと、社長自身は個人として株も資産も持っている。将来の事業展開や承継と自分の相続の問題は切り離せません。そんなとき、「自分は法人コースだから個人の営業はしない」とセクショナリズムに走ってしまうことがないように、コース分けを見直すことにしました。
 ソリューション・フィールドは高い専門性を持ち、法人・企業オーナーを中心とするお客さまのニーズ・課題に対して、オーダーメイドで様々なソリューションを提供していくコース。カスタマーサービス・フィールドは、窓口業務を中心に広範囲で多様な業務知識・スキルを組み合わせてアレンジメントして各種商品・サービスを提供するコースです。こちらは窓口にお客さまがいらっしゃったときに、資産運用、住宅ローン、相続の相談など、それぞれの人に応じたブースがあり、いろいろな取引のパートナーになっていくイメージです。

 ――リテール業務ということですか。
 リテールという言葉は「個人の取引」という意味でよく使われますが、当社では中小企業取引と個人取引の両方を総称してリテールといっています。当社のスローガンである「リテールNO.1」はそういう意味です。

「銀行はクリエーティブ」 成し遂げたこと、一貫してやってきたこと知りたい

■エントリー数とインターンシップ
 ――2016年卒採用は日程変更で大変だったのでは?
 私たちは想定していたので混乱はありませんでしたが、学生は混乱していましたね。面接解禁が4カ月後ろにずれたため疲れた感じがしてかわいそうでした。

 ――エントリー数が減った企業が多いようです。
 当社はプレエントリーが5万5000人、エントリーが2万人弱でほぼ前年と同じでした。減った企業が多かったのは、有効求人倍率が上がったことと、各社がインターンシップをやるようになって学生が会社を選別しやすくなったためだと思います。
 当社はインターンを本格的に実施したことで、「銀行って結構面白そう」とか「りそなグループは特徴がある」という認知度が広がり、横ばいをキープできたのではないかと考えています。

 ――インターンの規模は?
 2013年は試行的に東京で30人規模のインターンを開催し、2014年から本格的に始めました。夏は8月、秋は11月に東京、大阪、埼玉の3会場で開催。2015年2月は初参加の学生向けに加えて、過去2回のインターンに参加した学生を呼ぶ「アドバンスコース」も開きました。「りそなビジネスアカデミー」と称して5日間、参加人数は3回でおよそ1200人です。

 ――どんな内容ですか。
 他社では、「有価証券報告書を読んで会社の内容を分析する」とか「この会社には融資が可能か」といった業務に即した内容が多いと聞きます。当社の「りそなビジネスアカデミー」ではまず金融、銀行の業務や仕組みや社会的責任といった基本から学びます。その次にりそなグループはどんな特徴があるのかを知ってもらうことに力を入れています。
 グループのりそな銀行は信託を併営する国内唯一の商業銀行であることが特徴なので、りそなならではのビジネスモデルをグループワークで体感してもらいました。りそなグループの認知度を高める方法などを学生の柔軟な発想で考えてもらう。みなさん本社の近くの喫茶店で夜遅くまで考えていましたよ。
 インターンには1万人くらい応募があるので、面接などで選考します。学生には「インターンで選ばれなくても、選考で落ちたと思わないで」と強調しています。インターンに落ちたからといって本エントリーしてくれないのは大きな損失ですから。2015年の夏は選考と時期が重なってインターンができなかったので、秋は11月に実施し2016年1月にも開催しました。

 ――「アドバンス」の内容は?
 「りそなビジネスアカデミー」で全体の銀行業務、当社の特徴を知ってもらったことを踏まえ、当社の主力顧客である中小企業に対するソリューション提案ビジネスを体験してもらいました。
 中小企業のオーナーにとっては、自分の会社をどう大きくしていくかと、いつ誰にどう承継していくかの二つが悩みです。会社、オーナー、さらにその子どものことも考える私たちりそなにしかできないアプローチ手法を体験します。子どもが2人いる設定で、我々が社長役や副社長役をやり、中長期的なビジネス展開と事業承継プランを考えてもらいました。正解はないので、プロセスをしっかりと考えて、楽しんでほしいと思っています。
 内定者に占めるインターン経験者の割合は14%くらいです。

■選考フロー
 ――2016年卒採用の選考フローを振り返ってください。
 3月1日から4月くらいまで、自社セミナーのほか、就活ナビや大学キャリアセンター主催のセミナーに積極的に参加しました。自社セミナーはまず3月の頭に、りそなグループの特徴特色を伝えるセミナー「りそなファーストスクエア」をグループワークも交えて行い、約1万人が参加。4月には法人営業や本社の仕事などのブースを複数出して個別の仕事を紹介する「りそなソリューションワークショップ」を開き、こちらは1万2000人くらいに来てもらいました。
 そのあと学生12~13人に対し新入社員3人と中堅社員1人が質問に答える「りそなトークセッション」(9000人参加)、学生1人に新入社員1人、中堅社員1人が30分ずつしゃべる「りそなプレシャスラウンジ」(4000人参加)を実施。面接と誤解されないよう、社員は学生の資料は一切持ちません。「就活って何をすればいい?」といったことから相談に乗り、いろんな話をしてりそなグループの認知度を上げる活動です。7月には「りそなファイナルカンファレンス」というグループワークを実施しました。

 ――すぐ満員になってしまうのでしょうね。
 先着順ですぐ埋まってしまうので、一気にではなく、何日間かに分けて募集枠をオープンしました。当社のセミナーは、何度も参加したら選考に有利になるいわゆる「スタンプラリー」ではなく、選考にはまったくつなげていません。

 ――それでも、いずれかのセミナーには参加してほしいですねよ。
 それは当然ですね。当社をより知ってもらういい機会ですから。ただ、参加せずに内定した学生もいます。人物重視が基本ですし、一貫性があって納得できる理由があるなら問題ありません。留学したり他の業界を見ていたりすれば来られないのは当然。私自身も就活のとき、当初は銀行を回っていなかったので気持ちはわかります。

 ――秋採用もしたそうですね。
 採用計画は達成していたのですが、就活に乗り遅れたけれども優秀な人や留学帰りの人を対象に実施しました。10人ほど内定しました。

■求める人材像とES
 ――どんな人材を求めていますか。
 まず誠実であること。社長の言葉を借りれば「全人格でお客さまに向かっていける人」です。銀行にはものすごくたくさん仕事があります。たとえば、初対面の人と話すのが苦手という方もいると思いますが、「誠実」というベースがしっかりしていれば、適材適所の仕事が必ずあるはずです。銀行は形のあるものを売っているわけではなく、すべてはお客さまありきです。当社と取引すれば会社のためになるだろう、何か良い提案が出てくるだろうと思ってもらわなければいけない。だから誠実さは絶対に必要です。
 次に、何事にも情熱をもってチャレンジできる人。私たちはお客さまの未来や課題、ニーズに常にアプローチしていて、会社や社長の将来のために今何をしなければいけないかを考え提案する。そのプロセスがすべてビジネスになるのが銀行です。だから「銀行はクリエーティブなんだ」と学生に訴えています。

 ――ESにはどんな項目がありますか。
 WEBエントリーでオーソドックスな内容です。「自己PR」と「志望動機」が300~400字、さらに「私の誇れる実績」という欄を用意しています。あとはゼミの内容やサークルの内容などです。

 ――「学生時代に打ち込んだこと」が一般的ですが、「誇れる実績」という聞き方の狙いは?
 変わったことを聞こうとしているわけではありません。人間関係を築く中で培ってきたものや、成し遂げてきたこと、一貫してやってきたことを聞きたい。誇れることの裏に、いろいろな苦労や小さいころからの体験、積み上げてきたコミュニケーションが見えれば、面白そうだし会ってみたいと思います。よく「この程度のことで誇れる実績と言っていいのですか」と聞かれますが、全然構いません。自分が誇れると思ったら書いてください。
 正直に言うと、内容は選考の合否の判断材料にはあまり入れていません。書こうと思えばどんなことでも書けるし、自分の体験じゃないかもしれません。字数が少なすぎるのはできれば避けてほしいですが、なるべく会って判断したいと考えています。

 ――とはいえ、全員を面接には呼べませんよね。
 ESが自分の言葉で書けていて、適性検査をクリアした人は順次呼んでいます。適性検査はWEB検査とテストセンターでのSPIです。

ニュースの動きに敏感な学生は評価 時事問題から情報力や誠実さ見る

■面接
 ――面接は8月1日スタートでしたか。
 そうです。まずはグループディスカッション(GD)、そのあと個人面接を3回しました。
 GDは銀行業務のケーススタディーみたいな内容です。たとえば「銀行の窓口にお客さまが来店されましたが、その方にどうアプローチしていくか」といったシチュエーションで行ったりします。

 ――GDで見るポイントは?
 議論の進め方や協調性、リーダーシップですね。話し合いの前面に出ず補佐的な役割であっても構いません。グループをどうまとめているか、自分の意見をちゃんと言えているかといったところを見ています。誠実さも見ますが、6~7人のグループに面接官1人ではしっかり見られないので2~3割落とすようなことはしません。「銀行に合わない」と感じる人以外は面接に来てもらうようにしています。

 ――どんな人が銀行に合わないのでしょう?
 信託併営の商業銀行である当社には、信託機能のご提供や不動産業務の取扱いなど、より一層の専門知識とお客さまにとって非常に大切な情報を取り扱う仕事があります。そういうときは押し一辺倒ではお客さまに受け入れられません。一方で全くしゃべらない人や、他人の話に乗っかっているだけの人もお客さまには指名されませんよね。こういう学生は当社には合わないと判断します。

 ――面接はどんな形式ですか。
 すべて1対1の個人面接です。最初の面接は5年目から10年目くらいの社員が、次は中堅社員が、最終はグループリーダーという採用決定権を持つ社員が面接します。時間は1回目が30分くらいで、2回目は45分くらい、最終は45分~1時間でした。
 「人のりそな」を自負していますから、しっかり時間をとります。私は学生に「面接じゃないよ、お互い話し合う場だから、緊張しなくていいぞ」と言っています。福利厚生や処遇、残業のことも質問していい。逆にそこを聞かないでよく会社を選べるね、と思います。

 ――面接で見るポイントは?
 論理的思考、コミュニケーション能力や協調性、精神的強さ……いろいろな項目を見ます。項目ごとに何段階かで評価しますが、総合点を付けるわけではなくトータルで考えて採用レベルにあるかどうかで判断します。
 私はよく幼少期からの話を聞きます。どういう育ち方をしたのか、小学校や中学校でどんな人たちと関わってきたのかから、人となりがわかるので。

■情報力
 ――求める力の一つに「情報力」をあげていますが、どうチェックするのですか。
 今日の新聞のトップ記事はとか、軽減税率をどう思うかといった時事的な質問をします。ただ学生なのでその答えにはあまり左右されません。それよりもどう返してくるか。わからなかったら、取り繕って適当にしゃべるより、「わかりません、今度来るときまでに調べます」と返せるほうがいい。中途半端な知識で適当なことを語られると困ってしまいます。
 ただ、ニュースの動きには敏感になってほしいし、できている学生は評価します。ひたすらアルバイトをしていたので世の中の動きをまったく知らないという人もいます。よほど一貫性があって何かを生み出したのなら別ですが、基本的には厳しい。情報に接するだけでなく、どう取捨選択して自分の中に取り込んできたかというところまで聞きます。

 ――情報力は仕事にも通じる?
 仕事でも大事な力です。会社や個人のお客さまの情報を整理して提案するのが私たちの仕事ですが、守秘義務もあり個別の情報だけでは対応が難しい。ニュースから業界の流れを把握し、お客さまの潜在的なニーズを掘り起こさなければなりません。即戦力を求めているわけではありませんが、そういうことができる人かどうかの素地は見ます。だから学生には幅広い好奇心をもっていてほしい。アンテナをくるくる回して関心を広げているか、情報をどう整理しアウトプットしようとしているか、ポテンシャルを見ています。
 若いときは、お客さまからパンチをくらうことがいっぱいある。そんなときは「すみません、わかりません」とニコッと笑って帰って来て、一生懸命調べてペーパー1枚にまとめて次の日に持って行く。お客さまは、答えの中身より自分の言ったことを聞き流さなかった誠実さを評価してくれます。
 時事問題は、こうした情報力や誠実さを見るのに非常にわかりやすい質問なんですよ。

ボトムアップ型、IT企業でもサービス業でもある 「銀行こそ、すべてのインフラ」

■どんな会社?
 ――旧大和銀行や旧あさひ銀行が統合して生まれたりそな銀行ですが、2003年には経営不振に陥り公的資金が注入されました。公的資金は2015年に完済されましたが、この「りそなショック」の前と後でどう変わりましたか。
 りそなショックで経営陣が一掃されて社風が変わりました。昔とは全然違います。銀行は普通トップダウンで、本部が決めたことを支店にやれという組織ですが、今のりそな銀行はボトムアップ型の組織です。サービス改革に向けての支店運営、事務手続きに関する多くの改善提案は支店から本部に集まり実現されました。まず地域に伝播し、良ければ本部がピックアップして全社的に広がっていく。自分の考えを遠慮なく言える雰囲気もあります。

 ――他社と違うところは?
 学生には「私を豊かにしてくれる銀行」と言っています。銀行ですが、東和浩社長が「金融サービス企業」を目指すと言っているように、IT企業、サービス業でもあり、意思決定が非常に速い。銀行の中だけでは比べようのない会社です。一人ひとりが持てる権限や裁量が大きい一方、責任も求められます。それが私にとって大きなやりがいです。

 ――内定者が競合する会社は?
 メガバンクや商社、大手地銀が多いです。「メーカーに内定したのですが、金融ではりそな銀行だけ楽しそうなので来ました」という学生も結構いました。

 ――りそなで働くやりがいと厳しさを教えてください。
 日本経済を支えている全ての中堅・中小企業のパートナーであり、会社や個人の未来に対してアプローチするプロセスがすべて仕事になる点がやりがいです。経済の動向が日々直接影響するし、ヒト・モノ・カネ・情報の流れが明確にわかる。こんなにやりがいのある仕事はないと思います。
 楽しかったこと、つらかったこと、思い出に残っていること、学生からいろいろ聞かれますが、いつも「表裏一体」と答えます。つらかったからこそ楽しかった思い出もあるし、きつかったからこそお客さまから信頼していただき取引がどんどん大きくなったこともあります。

 ――ワーク・ライフ・バランスについて教えてください。
 当社は、仕事と休みのメリハリがきいている「ホワイト企業」だと思います。休みは絶対に取らなければいけないし、退社時間も守らないといけない。それができなければ仕事ができないという評価になります。
 支店はどんなに遅くても午後8時には退社しなければなりません。お客さまの事業計画や資料などをきれいに整頓し会社別に金庫に並べないと帰れないので、仕事ができるのは実質7時まで。だから、みんな出勤前に一日の流れを考えます。朝ミーティングがあって、支店長と話して、午前中に3社回って稟議書(りんぎしょ)を書いて、夕方ミーティングがあって……。一人ひとりが考えるからこそ生産性が上がり、よい循環を生み出すのです。本部は裁量労働制の社員が多いですが、役員や上司が率先して早帰りを推奨する雰囲気があります。
■俵さんの就活
 ――俵さんが就活したときは銀行以外も受けたのですか。
 学生時代はゼミとサークルを頑張っていたので、会社説明会には一つも行かず、ゼミとサークルの先輩経由で話を聞いていました。何かしら日本経済の役に立ちたいと思っていて、メーカーや商社のほか、エネルギーなどのインフラ系を見ていました。当時は金融危機でしたし、お金の絡む銀行という仕事にあまり良いイメージがなかった。しかし、あるとき銀行の先輩リクルーターから連絡があって、断り切れずに会いました。話を聞いた後、帰りの電車の中で汗がダラダラ流れたのを覚えています。「銀行こそ、すべてのインフラじゃないか」って。なぜ今まで何も見ていなかったんだろうと後悔しました。

 ――どういうことですか。
 私は部下に「常にお客さまの未来にアプローチしろ」と言っています。お客さまのやりたいこと、夢、課題を実現するには何が足りないのか。たとえば人の育成や海外の法律知識や民族性……様々な局面で銀行はコンサルティングできるスキルを持っています。さらに、やりたいことをかなえるにはお金が必要です。お金を使って工場を建て、従業員を雇う。商品の販売先も紹介したりして、利益が生まれると返済してくれる。つまり、お客さまの課題実現に向けてさまざまなサポートをする銀行の役割の中で、お金は最後の部分に過ぎないんだと知った。こんなに面白い仕事はないんじゃないかって気づいたんですね。それで慌てて銀行も視野に入れて就活を行い、社風が気に入ったあさひ銀行を選びました。
 
 ――あさひ銀行から、りそな銀行に変わりましたが、選択は間違っていませんでしたか。
 いま日本では新入社員の3割が3年で辞めると言われます。労働環境や処遇、社風を確認せずに入った結果、ミスマッチが起きているのだと思います。私は就活のとき採用人数などもチェックしたのですが、あさひ銀行は他社の2分の1、3分の1でした。財閥系の銀行は大企業への融資や海外事業が売りで、あさひは中小企業と個人のリテールに特化。社風と自分のやりたいことを考えてあさひ銀行を選びました。
 私は学生に「この銀行を選んだことについては自分で自分を褒めてあげたい」とよく言います。学生には、自分が一番目をキラキラさせて働ける会社を探すことにパワーを使ってほしい。そのための判断材料はいろいろあるので、1対1の話し合いや会社説明会で社風を感じ取って判断してほしいですね。

■俵さんの仕事
 ――これまでどんな仕事をしてきましたか。
 1998年入社で、最初は東京都町田市の支店で2年半、窓口業務や融資を担当しました。そのあと「一番の激戦区に行かせてくれ」と人事部にお願いして、都心の神田支店に異動しました。神田税務署は中小企業の法人申告数が日本で一番多いところで、メガバンクから地銀、信金、証券会社まですべてある。そこで4年3カ月勤めましたが、その間に「りそなショック」がありました。

 ――りそなに残った理由は?
 経営危機に陥り、3兆円という公的資金が投入された際には、辞めていく社員もいました。しかし、そのとき「3兆円いただいて健全な会社になったのだから、あとはどう返すかを必死で考えていけばいい」と上司に言われ、また、「りそなの常識は世間の非常識」という言葉に代表される、再生に向けた改革が次々と行われ、私も「これは楽しいぞ」と思ったんです。入社時に他の銀行と必死に比較して選んだ想いもあり、辞めずに残りました。同期の社員は6~7割残っていますが、みんな同じ思いだと思います。

 ――その後はどんな仕事を?
 神田支店からすぐ近くの秋葉原支店での勤務を経て、人材サービス部(人事部)に異動。人事は経営の真横にあるので、意思決定がどうなされるのかを見られて本当に勉強になりました。支店にいると、りそなグループの組織全体は見えにくいのですが、本部に来ると営業店以外のいろいろな組織で成り立っていることがわかり視野が広がりました。そのあと東京・八王子支店の営業責任者として、支店の施策や地域社会への貢献を立案して実践する仕事をしました。

 ――どんな地域貢献ですか。
 八王子は病院と大学が多い。病院がデイサービスや老人ホーム、サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)といった老健施設を建てると、地域の高齢者は施設に入れるし病院も潤います。そのための融資や、大学による高校のM&A(合併・買収)ビジネスを担当しました。
 「八王子まつり」という大きな祭りのとき、1階のフロアを開放して輪投げや駄菓子つかみ取りなどの露店を出し、女性社員は浴衣と下駄で接客しました。近所の小学生にも来てもらうと、「銀行が変わったことをやっている」と口コミで広がりました。昔なら勝手にはできませんでしたが、支店長の権限でできるようになったんです。
 2014年に再度人材サービス部に、今度は採用担当として異動しました。企業にとって最大のインベストメント(投資)である採用は極めて重責です。背筋が伸びる思いでやっています。

みなさんに一言!

 まず学生生活を楽しんでから会社に入ってきてください。学生生活をおろそかにしないでほしい。いろんな人と喜怒哀楽を見せ合いコミュニケーションをとって一つのベクトルに向かってやって来た人は、必ず人に対する思いやりと精神的強さを持っています。そういう人は社会に出ても、銀行に限らず、どんなお客さまにも信頼されるでしょう。自分の思いを伝えていけばいいパフォーマンスができると思います。だから、まずは学校生活をしっかり楽しむ。勉強なりプライベートなり部活・サークルなり、一生懸命やってきてほしいと思います。
 就活では、落ちたりして、へこむこともあるでしょう。でも、その会社には行かなければいいだけ。自分とは合わなかったんだと前向きになりましょう。縮こまらず、自分の良さを素直に出してほしい。口下手な人、全然構いません。一生懸命私に自分の言いたいことを訴えかけてくれる人、すばらしいし、こちらも一生懸命聞こうと思います。緊張するのも当たり前。飾らずに素直な自分を出すのが一番だと思います。

株式会社りそなホールディングス

【銀行・証券・保険】

 りそなグループ(りそな銀行・埼玉りそな銀行)は、5大銀行グループの中でも、中小企業・個人にとってNO.1、 リテールトップの金融サービス企業として進化を遂げてきました。  日本の商業銀行の中で唯一信託銀行の業務をフルラインで行うことができ、全国展開しながらも地域金融機関として地域を支えています。  「海外で事業を展開をしたい」「この子の将来のために何ができるだろう」「会社の将来を後継者に託したい」「豊かな老後生活を送りたい」  この国には、色々な「想い」がつまっています。そんな想いを受け止め、りそなは銀行の常識を変えてきました。  日本経済の成長を支えるために。人々の暮らしを豊かで幸せなものにするために。地域社会を発展させるために。 「想いをつなぐ、未来を形に。」  チャレンジ精神に溢れた皆さんとお会いできるのを楽しみにしております。