カゴメ株式会社
2017シーズン 【第5回 カゴメ】
多様な個性の集まり 「食への関心」「仕事のイメージ」は必須
カゴメ 経営企画本部人事部人事グループ 堀江建一(ほりえ・けんいち)さん
2016年01月19日
――採用実績を教えてください。
2015年度入社の総合職は31人でした。2016年度入社予定の総合職内定者は28人で、うち研究職8人、工場職9人、営業職11人です。男女比はだいたい3:2、技術系は男性の比率が高いですね。
総合職は「事務系総合職」と「研究技術系総合職」の二つに分かれています。さらに研究技術系は、研究の現場でキャリアを積んでスキルアップする職種と、工場の現場でキャリアを積んでいく職種に分かれます。
――それ以外に、「業務職コース」もありますね。
こちらは短大、高専卒以上が対象です。総合職と違って転居を伴う異動がなく、日常継続的な業務や定型業務を主に担当します。採用活動を行う年としない年があって、2016年度には大卒女性2人が入社予定です。
――ここ数年、総合職採用の数が徐々に減っていますね。
会社の現在の人員規模や今後の事業内容に応じておおよそ何人という計画を立て、今年は30人弱になったということです。次の採用も大きく減ったり増えたりすることはないと考えています。
――今年は採用を増やした企業が多いようですが。
自動車や電機メーカーなど輸出に強い企業は業績もいいし、設備投資に力を入れている会社も多いので採用計画を増やしていると聞きます。当社は海外展開にも力を入れていますが、まだまだ比率は低く円安がプラスの業績に反映しにくい面はあります。
■職種
――技術系の研究開発職と工場職の違いは?
研究開発職は修士卒以上が対象です。栃木県那須塩原市にあるイノベーション本部からキャリアをスタートします。ずっと研究・開発畑を歩む人もいれば、生産系の仕事に転じる人もいて、その後のキャリアは様々です。マーケティングや人事等の経営管理の仕事をする人もいます。
工場職は最初に製造現場の商品ができる製造ラインの中に入り、日々の改善業務やトラブル発見などの経験を積んでもらいます。その後は、工場の中で品質管理課や生産計画をつくる生産管理課などを経験する人もいれば、本社に来て世界中のトマトや野菜の原料調達をする仕事に転じる人もいます。
――出身学部は農学部や工学部ですか。
いえ、農学部や工学部の人だけではありません。応募段階の学部は不問です。
――なぜ研究開発職と工場職に分けているのですか。
研究開発職の場合、大学院での研究活動を通じて得る知識やスキルが求められる場面が多いため、修士卒以上を対象にしています。
――工場職は4大卒限定?
いえ、修士卒も2割~3割います。併願はできませんが、最初は研究がいいと思っていたけど仕事内容を聞く中で工場のほうが自分に合っていると感じた場合は、要件を満たせば選考途中で職種変更も可能です。
――理系の推薦枠での採用は?
今は推薦による採用はしていません。
――女性の採用は増えていると思いますが、社員の男女比は?
だいたい7:3です。女性が活躍するフィールドが広がり、男性しかいないという職場は少なくなりました。今まで女性が少なかった工場職でも、採用が増えてきています。生産現場における経験を通じて、ゆくゆくは技術者として世界で活躍する姿をイメージした採用を始めています。2015年春には、工場職として女性3名が入社しました。
選考では考え方、経験、何学んだか聞く
――2016年卒採用のエントリー数を教えてください。
本エントリーは、前年は1万を超えていましたが今年は7000程度と少し減りました。他の食品メーカーの話を聞くと、業界全体で減ったようです。プレエントリーは本エントリーの3倍くらいですが、数は重視していません。
――本エントリーが減った要因はどう分析していますか。
他業種の採用が増えたことが大きいと思います。特に金融業界など何百人、何千人と採る会社は採用数を1割増やしても相当な数になるので、応募者が流れたことが考えられます。食品業界は安定した業種に見られがちで、景気が悪いときは応募数が増え、景気が回復すると減る傾向があるという説もあります。
■採用フロー
――2016年卒の採用は経団連指針で面接などの選考が「大学4年生の8月から」に後ろ倒しされました。
理系学生の研究時期や教育実習、留学など学生側の事情を考慮して、多様な選考機会を設ける為のスケジュール立案が大変でした。
――どんな採用スケジュールでしたか。
まずエントリーシート(ES)で書類選考、そのあと企業セミナー・筆記テスト、個人面談・適性検査、グループワーク、人事部長面談、最終面談と続きました。
職種でいうと、まず研究技術系総合職から始め、5月上旬に本エントリーを締め切って内々定は7月上旬ごろ。事務系総合職と工場系総合職の募集は同じタイミングで、5月下旬にESを締め切り、7月下旬に内々定を出しました。多様な選考機会を設けることを目的に、9月の中旬まで選考を行っていました。
――ESによる選考では何割くらいに絞りますか。
4割程度に絞り、通過者にはテストセンターでSPIを受けてもらいました。会える学生数は物理的に限られているので、ここでもある程度絞ります。いわゆる基礎能力と適性が当社とマッチングするか。この二つを見て総合的に判断します。
――そのあと企業セミナーに呼ぶんですね。
当社は、大学や就職情報会社が開催する合同説明会には出ますが、会社主催の説明会は事前には実施していません。何万人も申し込みがあると一部の学生しか参加できない。その不公平を避けるためです。その代わりに、ESと筆記テストを通過した人だけを呼ぶセミナーを開いています。
できるだけ多くの説明会に足を運びたいと考えていますが、いま採用担当者は2人だけなので、参加できる説明会も限られてしまいます。
――企業セミナーではどんな話をするのですか。
カゴメがどんな会社でどんな商品を扱っているか、カゴメがどんなことにこだわりをもっているかといった話を2時間ほどします。キャリアの話や皆さんが気になる仕事内容を具体的に話し、質疑応答も含めてカゴメで働くイメージを鮮明にし、社風も感じ取ってもらいたい。現場の社員を呼んで話してもらうこともあります。東京、大阪、名古屋では50~100人くらいを対象に1日1~2回。北海道、九州、東北でも開きました。
■面接
――その後の個人面談はどんな形式ですか。
企業セミナーと個人面談は同じ日にやりました。面談は1対1で10分くらいです。会社側は人事部のほか、現場の社員にも入ってもらい選考しました。
――重視するポイントは?
カゴメの面談は個性を大切にしています。学生がどんなことに対してどういう考え方をしてどんな生き方をしてきたのか、どんな経験から何を学んできたのかを聞きながら、その人らしさ、個性を知るようにしています。様々な軸で総合的に見ますが、カゴメで働くイメージが浮かぶか、カゴメに合いそうかという点は一つの基準ですね。最初の配属は現場なので、営業ならこういう得意先とうまくいきそうとか、こういう現場で活躍できそうとか、イメージが湧くかどうかが大切です。現場だけでなく、そのあと本社やスタッフ部門で働くイメージが湧く人も採用します
――次のグループワークは?
食に関わるワークを出して、チームごとに議論してプレゼンしてもらいました。個々人の知識量で差が出ないよう、食品メーカーを志している人なら誰でも意見を言えるようなテーマを設定しました。戦略や細かな戦術を問うのではなく、正解がないような大きなテーマについて議論してもらいました。
――どこを見ますか。
ここでも個性を見ます。集団の中でどんな役割を果たし、どんな個性が光っているのか、個人面談では見られなかった点を見るようにしています。
――人事部長面談と最終面談は?
人事部長クラスが1対1で面談します。ESを見ながらそれまでの面接官の印象もふまえて個性を見ます。最終面談は学生1人に対して、会社側は会長、社長、経営企画本部長、人事部長がいて、あとは生産部門・研究開発部門のトップが出てきます。時間は10分くらいですね。
トマト嫌いでも価値語れればOK カゴメのことをよく調べてES書いて
――ESの特徴は?
項目は職種ごとに違いますが、みな手書きで郵送してもらいました。エントリーした学生の思いや熱意は、手書きだからこそ伝わるものがある。字のうまい下手ではなく、カゴメに対してどんな思い、どんな熱意をもって書いているかが伝わってくる気がします。
――「マイブーム」や「カラオケの持ち歌」を尋ねる欄がありますね。
ESではその人らしさを見たいので、幅広い項目を聞くように意識しています。手書きで書くにはパワーがいるので、リラックスして楽しみながら書いてほしいという意図もあります。私はハスキーな声なので、就活のときカラオケの持ち歌欄に「ブルーハーツ」と書きました。面接では結局聞かれませんでしたが(笑)。
――面接でネタにすることもありますか。
もちろんです。僕らもそういう意識をもってESを見ています。ですが、奇をてらった答えを求めている訳ではありません。
――「好きな食べ物、嫌いな食べ物」という欄は食品メーカーならではですね。印象に残った答えは?
「生トマトが嫌い」と書いてきた学生がいます。味は嫌いでも栄養価などの価値をちゃんと把握してお客様に提案できれば営業はできるのでマイナス評価にはなりません。好き嫌いではなく、自分が仕事とするものに価値を見いだせる、付加価値をつけられれば大丈夫です。面接で「生トマトは苦手だが加工すると食べられます。トマトケチャップは特に好きです」と言った学生もいました。実は私も学生時代は生トマトが苦手でしたが、トマトの価値は十分認識していて今はトマトジュースを毎日飲んでいます(笑)。
――どのような人か自由に表現して、という大きな自由記述欄もありますね。
学生にとっては工夫しがいがある一方、スペースが大きいので書きづらいという人もいます。それでも個性を見るには、自由に発想してもらったほうがいいと考えてこの欄を作りました。
――どんなものが多いのでしょう?
文字で埋める人もいれば、絵で視覚的に訴える人もいます。大切なのはデザインが優れている、完成度が高いものが評価されるわけではない、自分がどんな人間かが伝わらなければ意味がない、ということ。伝わるなら体裁はなんでもOKです。
――印象に残った記述はありますか。
読み手の視点に立って書かれたESは頭にすっと入ってきて、印象に残りますね。
ESを書くうえで大切な事は、対策本やノウハウ本から転用したような言葉より、自分でしっかり考え、不器用でも自分の言葉で語る事です。そういうESは光って見えます。
――「自分の持ち味、勉強してきたことや培ってきた経験をいかしてどのような仕事をしたいですか」という欄の狙いは?
よくある「大学で頑張ってきたこと」と「会社でしたいこと」の二つを聞いているので難しいですよね。書き方は様々ですが、自分の持ち味や経験と、どう仕事に生かすかがちゃんと文章に入っているか、質問の答えがしっかり書かれているかを見ます。
――カゴメの仕事を具体的にイメージしていると有利ですか。
カゴメのことをよく調べずに書いたESか、実際に社員に会って質問を重ねるなどして、カゴメのことをよく調べて書いたESかは中身に差があるのでわかります。この段階で仕事について具体的に書けている人は、入社後のミスマッチが少ないのではないかと思います。具体的でないとダメなわけではありませんが、書けているとよく考えているなという印象は持ちます。
「カゴメでないといけない理由」の欄は志望動機ですが、それだと書く側もつまらないと思い、熱が入りやすくなる聞き方をしています。
――「最近の関心事と、それに関してとった行動」の欄は?
世の中のことに関心を持って行動してほしいというメッセージです。情報に触れて終わりではなく、自分の学校ではどうか、自分の家族はどうかとか、自分の周りに落とし込んで考え、それをきっかけにチャレンジしたことはないか。そこを知りたくて設けています。
――ニュースを引用する学生が多いのでしょうか。
そうですね。新聞やテレビ、ネットをはじめいろんな情報ツールを使って書いてきます。食品メーカーは消費者に身近な商品を扱うので、例えば消費税が上がったらどういう影響があるかとか、そういった関心事を仕事につなげていくことが大事です。視野をどんどん広げてほしいと考えています。
ニュース以外にも、最近体重が増えてはやりのダイエット法を実行したと書いた人もいます。好奇心とそれにともなう行動の両方を聞いているということです。
世の中のことを知ってほしいので、好奇心は大事ですね。引き出しが多いということは人間の魅力にもつながると思います。
――採用担当者は2人だそうですが、ESは何人で読みましたか。
人事部のメンバーや現場の社員にも入ってもらい、分担して見ました。何千通とあるので1枚あたり数分間。読み手の視点に立っていないESは見づらいですね。文字数が決まっていないので、米粒くらいの文字で埋められたりすると見にくい。見出しが付いていたり、伝えたいことを強調したり、簡潔に書かれていると見やすいしパッと目につきます。もちろん内容が大事で、見やすいからプラスというわけではありませんが。
――今年はインターンシップも実施しましたね。
2015年2月、理系対象に5日間のインターンを初めてやりました。学生に食品業界の仕事を理解してもらう、カゴメのことを理解してもらうなど目的はいろいろありますが、一番良かったのは選考より長く接することで私たちは学生をしっかり見られますし、学生も仕事内容やカゴメのことをよく理解することができて、ミスマッチを防げることですね。インターン生から内定者も出ました。ただ、経験しないとカゴメに入れないということはありませんし優遇されることもありません。
――2017年卒採用では面接などの選考が「4年生の6月から」に前倒しになります。どんな採用フローを予定していますか。
学生の視点に立って、スケジュールを立てる予定です。時期が変わったからといってこの方針に大きな変更はありません。
■求める人材
――求める人物像を教えてください。
当社は個性を大事にしていて、いろいろな個性が集まった多様性のある会社にしたいと思っています。様々な環境で育った様々な価値観を持った人が集まり、様々な強みを持った会社のほうが強いし、世の中の変化に柔軟に対応できる。だから、「こういう人材がほしい」ではなく、いろんな人に来てほしいというメッセージを発信しています。
ただ、それだけでは学生もピンとこないと思うので、一つ言っているのは「食に関心があること」です。「食べることが好き」でも、「こんな食べ物、食べ方をお薦めしたい」でも、「食を通じて世の中に貢献したい」でもいい。そもそも食に興味がない人は難しいと思います。
もう一つ、多様性や個性を大事にする中で「わいわいがやがや」議論するのが好きな人、という人物像を挙げています。いろいろな価値観や個性を持った人が重なり合い、いろいろな意見があるからこそチームとしてよい成果、よい結論を導ける。その際には、人の意見を頭から否定するより、相手の意見を受け入れ、組み合わせて最終的にチームとしての成果を出せるような議論が好きな人がいいですね。
――個性的な人を採るために心がけていることは?
「個性的な人」を採用したいのではなく、一人一人の個性を活かした、多様な組織を作っていきたいということです。一人ひとりの良さを知るために、それぞれが経験してきたエピソードの中でどんなことを経験し学んできたかをしっかり見るようにしています。
もう一つ、役員面接を除き、選考には私服で来ても良いことにしています。カゴメらしい選考活動として十数年前から取り入れているのですが、リクルートスーツを着たら緊張してしまい、自分らしさを見せられないということなら、「私服で来てリラックスした状態であなたらしさを教え下さい」と会社説明会で話をしています。その人の個性を「より見える化」するための手段として、私服、普段着はいい。素を見るのに効果的です。
――私服率はどれくらいですか。
最初は悩む学生も多くてスーツが多いのですが、選考が進んで周りに私服が増え、私服の人が自分らしく振る舞っているのを見ると、切り替える人が増えてきます。私自身もかつてジーパンにパーカーで面接を受けました。スーツよりリラックスできて相手との距離も近くなった気がするし、背伸びしたり着飾ったりする必要を感じませんでした。
種から生産・販売までグローバルに展開 社内にオムライス検定も
――採用ではどんな会社と競合しますか。
やはり食品メーカーとの競合が多いですね。、あとは金融、電機メーカーなど様々です。
――知名度が高く就活生の人気ランキングでも常に上位ですが、それだけに困ることってありますか。
当社はBtoC(消費者向けビジネス)がメインの会社なので、学生の認知度は高い。ただ、そのまま具体的な仕事内容を考えずに入ってくるとミスマッチが起こります。私たちも自社の魅力的な部分だけでなく、ここは大変だよ、泥臭い部分があるよとセットで伝えてミスマッチが起こらないように気をつけています。個人面談など選考中にも仕事内容をイメージできているかどうか話しますし、社員と会う機会も設けるので、最終面接に進む段階ではミスマッチは解消できていると思います。
――カゴメって、どんな会社ですか。
一つは食に関心が高い、食に対するこだわりや、食を通してこうしたいという思いを持った人が多い会社です。二つめは真面目な社員が多い。与えられた仕事や自分がやらなければいけない仕事に対して責任感を持ってやりきる社員が多いと感じます。三つめは、人とコミュニケーションをとりながら仕事するのが好きな人が多いですね。一人で仕事を抱え込んだり、ライバルを蹴落としたりするよりは、いろいろな人と協力しながらお客様に貢献していこうという考え方を持った社員が多い気がします。
――食品メーカーの中でもカゴメならではの特徴は?
国内外において、種子・苗、栽培、製品加工、販売と、一連の機能を垂直統合して展開している事です。2013年に米国を始めとして他数カ国で種子開発・生産・販売を手掛けている会社を買収したので、グローバルな展開が可能になりました。特にトマトでこういう会社は世界でも当社くらいだし、世界でも原料からお客様まで一本でつながっている会社は、片手で数えられるくらいしかないと思います。仕事内容も一本のバリューチェーンの中で多種多様に分かれていて仕事の幅が広いのも特徴です。
――外食産業と一番違うのはどういう点でしょうか。
食品メーカーは、より多くのお客様に商品を提供できる、また健康価値を届けられるという点で影響力が大きい。もっとも、カゴメは2014年秋にJR名古屋駅コンコース内に出店したイタリアンレストランでは、オリジナルレシピや食材の提供などを通じてトマトメニューのプロデュースもやっています。通販を通じてお客様からダイレクトに意見や要望をうかがう機会も増えています。ブランドステートメントである「自然を、おいしく、楽しく。」という軸をぶらさない限り、様々な業態でやっていきたいと考えています。
――新入社員が配属される「現場」とは?
営業職はスーパーや百貨店のような小売店や、その商品を卸している卸店の担当など、様々です。外食企業を担当する人もいます。基本的には国内各地の支店、事業所に散らばります。
■仕事の理想と現実
――カゴメの仕事のやりがいは?
私は入社8年目で、営業6年、人事2年です。それぞれにやりがいと苦労がありました。私がカゴメに入ったのは「食を通じて世界中の人に笑顔を届けたい」という思いがあったからです。営業職のときは、お客様が自社の商品を手に取って「おいしいなあ」と思ってくれている瞬間にすごくやりがい、喜びを感じました。でもそれだけではありません。スーパーの担当もしましたが、直接やりとりするのはスーパーで商品の買い付けをするバイヤーさん。彼らが困っていることに対してうまく提案できて感謝されたときにもやりがいを感じました。
――逆に大変さや泥臭さを感じたのは?
新入社員として初めて現場に配属されたときや、営業時代に得意先が変わったときは、新しい取引先と信頼関係を一から築かなければいけないので苦労しましたね。社会人になると学生時代以上に信頼関係が大事です。信頼関係を作るうえで重要なのは、納期を守る、遅刻しない、あいさつをしっかりするといった基本の積み重ね。これらを意識せずにできるようになるまでは大変でした。
私は営業の最初の3年間は大阪で、あとの3年は鹿児島でした。仕事の基本は変わりませんが、大きな支店だと仕事を狭く深く、小さなところだと広く浅くやる必要がある。ですから鹿児島転勤当初は業務量がたくさんある中で優先順位の決め方や時間の使い方に苦労しました。鹿児島では総合職3~4人で鹿児島、熊本、宮崎の3県をカバーしていましたから。丸一日内勤していることもあれば、一日に担当のスーパー7~8軒を車で回ることもありました。
大阪では百貨店などのギフト担当でしたが、そこから鹿児島に転勤しスーパー担当に。商品や得意先もガラッと変わり、新しい発見がある一方、新たなことを覚えなければいけない時期でした。
カゴメには「部門横断型企画」というものがあります。私が扱っていたトマトジュースやケチャップを加工食品売り場だけでなく、野菜やお肉と組み合わせたレシピの提案などを通じて、生鮮野菜売場や精肉売場にまで広げて、取引先の売上に貢献する企画です。転勤した6月はトマトの旬。そこで、スーパーの加工食品・生鮮野菜・精肉売場などをトマトメニュー一色にする「トマト祭り」を提案し、バイヤーさんも面白そうだと賛同してくれました。ところが、ふたを開けると全然うまくいかなかった。加工食品以外の青果や精肉、鮮魚のバイヤーさんにきちんと話を通せていなかったんです。
そこで次に8月31日の「野菜の日」企画を提案しました。8月は生鮮野菜の摂取量がもっとも下がる時期なので、その日に合わせて野菜を取ろうと全部門のバイヤーに話を通し、スーパーの店長会議や社長にも話をもっていき、当社商品以外の肉や野菜、魚の売り上げも上がったとすごく喜んでいただきました。20店舗くらいのチェーンでしたが、すべての店舗に趣旨を理解していただいたおかげで売上増につながりました。
――プライベートブランド(PB)が増えています。やりづらいことはありますか。
ナショナルブランドは価格が高い分の価値が伝わらないと売れません。ですから提案力というか、POPやチラシで商品の良さを伝える工夫が必要です。
■堀江さんの就活
――堀江さんは、就活のとき食品メーカーだけを受けたのですか。
いえ、電機メーカーや金融、ブライダルなど幅広く見ていました。ブライダルに気持ちが傾いた時期もありましたが内定につながらず、また幅広く業界を見て考えたのが、「食べることが好き」という軸です。そこから一気に食品メーカーに軸足を移して就活に本腰を入れました。
――食べることは多くの人が好きですが、カゴメ社員はレベルが違う?
この食べ物はなんだろうとか、これ最近はやっているけどおいしいのかとか、そんなことを考えるのが好きな人は多いかもしれませんね。
社内に「オムライス検定」があります。1級から3級まであり、私は2級を持っています。カゴメはトマトが強みで、ケチャップが基幹商品。それを使った代表的料理のオムライスくらいは社員として語れるようになろうよ、ということで2010年に始まりました。実技と座学がセットで、個人差が出ないよう検定専用のフライパンもあります。審査は、管理栄養士の資格を持っているカゴメ社員などが担当します。
――堀江さんの食へのこだわりは?
行ったお店の味やコストパフォーマンスなどを自分なりにまとめています。最近は「食べる順番」に気をつけています。カゴメでも「ベジタブルジュースファースト」を提案していますが、炭水化物を食べる前にトマトジュースを摂取すると糖の吸収を抑えられる。だから私も昼食を食べる前に野菜ジュースを飲むようにしています。
みなさんに一言!
就職活動には等身大の自分で臨んでもらいたいと思っています。就職活動を進めるなかで、自分のPRしたいことはなんだろうと悩むことがたくさんあるでしょうが、悩んでもいい。その悩み抜いて出した答え、自分がどういう人かということをぜひ、ありのままにぶつけてもらいたい。
着飾った自分で内定が出てもあまり意味がありません。就職活動のゴールは内定じゃなくて、会社に入ってからどんなことを実現したいか、どんなことをやりたいか、やっていくかです。着飾って内定をもらっても、入社してずっと着飾るわけにはいかない。自分にとってつらいでしょうし、企業にとってもあまりいいことじゃありません。だから自分なりに考え、自分の経験を自分の言葉で話しながらありのままに就職活動に臨んでほしいし、私たちもそれを全力で受け止めたいですね。
カゴメ株式会社
【食品・飲料】
「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」~これは、お客様とカゴメのお約束事です。 カゴメは、110年以上もの間、トマトをはじめとした野菜・フルーツなど、たくさんの自然の恵みを利用して、商品づくりを続けてきました。自然のいのちの力を活かした商品やサービスをお届けすることで、世界の人々の健康長寿に貢献したい、それがカゴメの願いです。カゴメの強みは、品種開発から栽培、商品開発、販売に至るまで、食の事業をトータルに手掛けてきたノウハウを持っている点です。近年は、その強みを活かしつつ、活動の領域を日本国外にまで広げ、様々な野菜や果実を世界中から調達、野菜飲料やトマト調味料などを製造しています。
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