
■面談
――グラフから何を見るんですか。
苦しい時とそれをどう乗り越えたかは、面談で見る一つのポイントです。どういう時に落ち込むのか、どう立ち直るのか。まわりの環境によって改善されるケースもあれば、自分でもがくケースもあると思います。その時どういう行動をとったかは聞きますね。
――上沼さんが面談する時の他のポイントは?
自分のやりたいことが明確にあること、一方でやりたい仕事でなくても受け止められる度量があること。この両方を見ます。
また、どんな経験をしてきたか、ESやワークシートにない内容を引き出してその人のバイタリティーを見たい。学生はESにいいことばかり書くので、それ以外の話を発展させたい。あとはいろんな話をしながらコミュニケーション力を見ます。
――高校、大学での取り組み内容はかなり突っ込んで聞きますか。
それほど突っ込みません。学生は私と雑談したとしか思わない方が多いでしょうね。
――「やりたいことが明確」かどうか、どう判断しますか。
「やりたいこと」とその動機を論理的につなげて説明できるか。たとえば、「素材をやりたい」と言っているのに素材の中身も知らない、しっかり考えていない学生が入社するとあとで苦労する。それでうまくいった時代もありますが、今は結構早い時期にいろんなことを任せるので、どんな仕事もある程度学生に理解してもらわなければいけない。理解していないなら、一生懸命理解してもらうのが私の役割だと思って面談しています。
――学生は業務の詳しい内容まではわからないと思いますが、本気で入りたいならもっと調べてくるはず、ということですね。
すべての仕事の細部を知っている必要はありませんが、こういうことがしたいという自分なりのビジョンなり思いをちゃんと語れるかどうかはポイントだと思っています。
――でも、多くの学生は「自分は何をしたいのか、何に向いているのか」に悩んでいます。
そうですね。やりたいことは一つでなくてもいい。いっぱいあるうちの一つが当社ということでもいいと考えています。
――「やりたい仕事でなくても受け止められる度量」は、どう判断するんですか。
帝人には様々な仕事があります。「素材の営業がやりたい」という学生が多いのですが、実際にはヘルスケアの営業になる人や、私のようなスタッフになる人もいる。だから最終的には、どの仕事に就きたいというより帝人という会社を好きになって入ってほしい。帝人だったらどんな仕事でもやりたいという思いを持った人に来てもらいたいと思っています。
やりたい仕事以外に目が向かない学生には、他の事業や入社後幅広い仕事に就く可能性があるという話をします。この説明をちゃんと受け止めてくれる人なのかどうかを見ます。
――ほとんどの学生が「入社したらなんでもやります」と言うのでは?
言わない人もたくさんいますよ。それだけでは判断しませんが、「素材」という側面からだけ当社を見ているのか、他の様々なところを含めた「帝人株式会社」として見ているかは判断材料になります。
――採用が競合する業界は?
素材各社のほか、鉄鋼メーカーや商社とも重なることが多いです。
■求める人財
――どんな学生を求めていますか。
「変化を糧に成長できる人財」です。帝人は歴史的に、常に変化を繰り返しながら成長してきた会社です。加えて、今はまさにビジネスの変革期に置かれています。これまでのようにただ素材を売るだけというビジネスから、製品開発に近いところまで踏み込んで、顧客の課題を解決する「ソリューション提供型企業」になって成長・発展しようとしています。そのためには、様々な変化を会社の中で起こしていく必要があります。そういう変化の時に、受け身な行動しか取れない人や、しっかりコミュニケーションを取れない人が活躍するのは難しいと思います。変化を受け入れながら、新たなものを生み出していくような人財がほしいと思っています。
――歴史的に変化してきたが、ここ数年で特に大きな変化に直面しているということですね?
2012年に発表した「中長期経営ビジョン」に沿って変化していこうとしています。一つが、強みである素材、ヘルスケア、ITの三つの領域をつなげていく融合ビジネス。もう一つは、単なる素材から製品に近づきビジネスの範囲を広げていく変革。今いろんなチャレンジをしています。
――現役の社員にはどういう方が多いのですか。
総じて言うと「明るくまじめな人間」が多い。会社として何かやろうというとき、そこに向かって動く力を持っているのが当社の社員のいいところだと思っています。
――人事総務部長は採用HPで「やんちゃな学生がほしい」と言っていますね。
上から言われたことをハイハイと聞くだけでなく、自分のアイデアを一生懸命訴えて実現しようとする、既成概念にとらわれず、いろんなことにぶつかってみようとするのが「やんちゃ」ですね。そういう社員は当社では活躍するし、変化の原動力になってくれると期待しています。
――「やんちゃ」な学生を採用できていますか。
できていると思います。若手社員の中には面白い社員がいます。悪く言えば生意気ですが、相手を怒らせない程度に自分の持論をしっかり持ち、自分の仕事だけじゃなくてもっと大きな視点で会社を見ている社員がいます。
――「自分は会社をこう変えたい!」と主張するタイプですか。
そこまで偉そうではありませんが、入社後に「ぼくはこう思うんです。なかなかうまくいかないのですが自分が最後まで頑張って実現していきます」と言えるタイプですね。中には「社長になります!」というタイプも何人かいますけどね。やんちゃな人間を採りたいという思いは私も持って採用に臨んでいます。
■リクルートスーツ
――最近はインターンシップを活発にしているそうですね。
10年ほど前から様々な形でやっています。2015年度は、技術系はエンジニアリングと創薬が主体、事務系は薬学系の学生を中心にMR(医薬情報担当者)のインターンシップを行いました。2014年度は帝人グループ3社合同インターンシップも実施しました。東西50人弱ずつ約100人の学生を集めて1週間、当社の素材、ヘルスケアビジネスとインフォコムのIT、帝人フロンティアの商社機能を使い、新たなビジネスを提案してもらうという内容でした。
冬には「グローバルインターンシップ」という外国人留学生と海外留学経験のある日本人学生対象のインターンも開き、約20人集まりました。
――真夏の選考になりますが、学生の服装についてはどう考えますか。
今年から説明会の段階でリクルートスーツは着てこなくていいと言っていますが、みなさん着てくるみたいですね。これから暑くなるので、リクルートスーツの学生が減っていけばいいのですが。
――どんな服で行けばいいか悩む学生が多いようです。
初対面の人と会うにあたって、ビジネスパーソンとして常識的に不快感や失礼がない服装であれば十分です。