人事のホンネ

帝人株式会社

★2017シーズンスタート!★ 【第1回 帝人】
素材・ヘルスケアで課題を解決 変化を糧に成長できる人求む

帝人 人事総務部採用・人財開発グループ長 上沼敏博(かみぬま・としひろ)さん

2015年07月17日

■採用実績
 ――2015年春の新入社員数を教えてください。
 61人(男性41、女性20)です。四大卒が22人で、大学院の修士課程修了者が33人、博士が6人です。四大卒全員と修士の一部が事務系で、残りは技術系。全体の5割強が技術系です。

 ――採用ホームページ(HP)に載っている採用数を見ると、2011年入社の52人から、65人(12年)、78人(13年)、52人(14年)ときて、2015年入社は61人と、年によって増減がありますね。
 今年は少し増やしました。極力安定的に採用したいのですが、その時期の事業ニーズによって多少のブレが出てきます。

 ――2016年卒の採用予定数は?
 2015年のほぼ2倍です。バブル期のころに比べれば半分以下ですが、近年にない数字ですね。人員不足の事業もありますし、将来に向けた発展戦略に備えるためにも人財を増やしていきます。大変な時期に採用課長になりました(笑)。まさに、攻めにいこうというのが会社の姿勢です。

――女性の採用数に目標はありますか。
 3割以上は女性とする目標です。

■エントリー数
 ――2015年卒採用のプレエントリー、本エントリー数を教えてください。
 約3万4000人で前年から1割程度増えました。本エントリーはその3分の1くらいです。

 ――エントリー数はどう推移していますか。
 2015年卒採用ではプレエントリーは微増したのですが、本エントリーは十数%減りました。プレエントリーが増えたのはいわゆる「一括エントリー」の影響と考えていますが、本エントリーについては会社の収益状況があまりよくなかったことが影響しているのかなと思っています。また、若年層の当社の認知度が少しずつ下がっているのも要因だと思います。

 ――なぜ認知度が下がっているのでしょう?
 7~8年前まで、フランス人の女の子が登場する「だけじゃない、テイジン」というキャッチコピーのテレビCMを流して話題になりました。いま就活している世代の少し前くらいまでは、このCMを覚えていたんですが、その効果が薄れているのかなと。CMを打たなくなったわけではありませんが、以前のほうが印象が強かったんでしょう。最近はむしろ事業内容について深い知識をもった学生が多くなってきていますね。CMのイメージだけでエントリーしてくる学生は減った印象です。

 ――「一括エントリー」をどう評価しますか。
 正直、志望度の低い人も含めてプレエントリーしてくるので、数字だけ見てぬか喜びしてはいけないと思っています。重視するのは本エントリーの数ですね。

 ――いま実施している2016年卒採用のエントリーの状況は?
 現時点では、プレエントリーも本エントリーも、昨年と比べておおよそ2割減。採用数を増やす中で深刻な状態です。

7月は面談、8月に内々定 ESは論理性とやる気見る、8割は書いて

■採用スケジュール
 ――経団連指針で大幅に後ろ倒しされた2016年卒採用のスケジュールを教えてください。
 2015年6月現在で、事務系も技術系もエントリーを受け付け、順次説明会に呼び込んでいる段階です。
 会社説明会解禁の3月から4月上旬までは、大学や業者主催の合同企業説明会に出ました。4月には毎年、帝人に加えて、商社系機能を担う「帝人フロンティア」、IT事業を担う「インフォコム」という帝人グループ合同で、東京、大阪、博多でセミナーを開きました。5月下旬にエントリーを締め切り、説明会に順次来てもらっています。
 エントリーシート(ES)は何次かに分けて募集し、毎月1回ずつ締め切りを設定する予定です。

 ――説明会はどんな形式ですか。
 事務系の説明会は100人規模で集めて約1時間半。会社説明のほか、WEB提出のESとは別にワークシートをその場で書いてもらいます。
 事務系は、「素材営業」「医薬営業」「在宅医療営業」「スタッフ」という四つの職種を「事務系総合職」として一括で採用していますが、技術系は「医薬品研究開発職」「臨床開発職」「素材材料系研究開発職」「エンジニアリング系研究開発職」と四つの職種別に採用しています。説明会も分野ごとに学生を集めて、各分野の社員が帝人の仕事について説明します。

 ――ワークシートもESのようなものですよね。どこで活用するんですか。
 人事との面談で参考にします。

 ――説明会は何回くらい開きますか。
 技術系は東京と大阪がほとんどで、各分野2~3回。事務系は東西で何十回と実施します。
 次のステップではグループディスカッション(GD)もします。

 ――GDは選考の一環ですか。
 そうではありません。帝人が未来に向かって発展する戦略を立てるにあたり、どういう会社になるべきかを6~7人で議論し、楽しみながら会社を理解してもらうことが狙いです。

 ――事務系には、少人数での説明会はないのですか。
 GDと社員の座談会をセットにした最大30人程度の小規模な説明会を開いています。事務系の場合、「会社の概要はわかったけど実際どんな仕事をしているか細かく知りたい」という学生もいます。素材の営業とヘルスケアの営業では仕事の内容が大きく異なるので、両方を知ることができるように現役社員を呼び、様々な職種の話を聞ける場を用意しています。
 案内は、各々のマイページに出します。埋まるときはあっという間に埋まってしまいます。

 ――その後は?
 7月ごろに面談を行います。選考要素はありませんが、人事が担当して1対1、約30分間です。8月に入って面接をして内々定を出す流れです。
 当社はもともと、事務系は役員面接がなかったんですが、最近は役員2人に人事総務部長の3人で、3対1で面接を行います。時間は15~20分くらいです。技術系は系列によって異なります。

 ――大手各社の内々定は8月第1週に集中しそうです。帝人も8月第1週で決まりそうですか。
 ヨーイドンで内々定を出して当社に必ず来てもらえればいいが、そうではない人もいるでしょうから、8月中は順次内々定を出すことになるでしょう。今年は我々の夏休みはないと思っています。

 ――技術系では、かつては大学の研究室推薦による採用が多くありましたが、現状は?
 当社は推薦の比率は少ないですね。採用人数がかなり減ったころに推薦してもらってもお断りせざるをえないケースがあり、積極的にはお願いしない時期が続いたためです。ただ、最近は主要大学に、推薦をお願いするように変わってきています。2015年春の推薦入社は技術系採用のうち2~3割でした。

 ――就活スケジュールの「後ろ倒し」についてはどう見ていますか。
 ネガティブにとらえています。経団連指針に従う会社と従わない会社があるため、採用活動開始の時期に大きなずれが生じています。それでも8月選考で十分な採用ができる会社はいいですが、当社は強気ではないので……。学生がいつまでリクルートスーツを着ているのか、就活を続けてくれるのか、という危惧を持っています。

■ES
 ――ESの項目を教えてください。
 学校名や研究テーマ、海外在住歴やTOEICスコア、所属クラブなどの基本的情報、そして「学業と学業以外の力の入れ具合の割合」という欄と、その具体的な中身、就活において大切にしていることや企業選びのポイントを聞いています。

 ――志望動機欄がないですね。
 ここにはありませんが、説明会で書いてもらうワークシートに記入欄を設けています。

 ――ESのポイントはどこですか。
 ESでは、論理的にちゃんとした文章を書けているかと、自分を伝えるために必要な一定の分量を書いているかどうかでやる気の有無を見ます。自分のアピールの場ですから、最低限8割は埋めてほしいですね。あとは、うまくいかなかったとき、壁にぶつかったときに、どう乗り越えたか、ちゃんとしたストーリーを書けているかを見ます。

 ――説明会で書いてもらう内容は?
 志望動機のほか、高校から今日までをグラフに表してもらいます。自分の人生の絶頂期、低迷期を示してその間を波線グラフにし、それぞれ何が起こったか15~20分で書いてもらいます。これは面談で使いますね。

「やりたい仕事」も大事だが、「帝人ならどんな仕事でも」という人来て

■面談
 ――グラフから何を見るんですか。
 苦しい時とそれをどう乗り越えたかは、面談で見る一つのポイントです。どういう時に落ち込むのか、どう立ち直るのか。まわりの環境によって改善されるケースもあれば、自分でもがくケースもあると思います。その時どういう行動をとったかは聞きますね。

 ――上沼さんが面談する時の他のポイントは?
 自分のやりたいことが明確にあること、一方でやりたい仕事でなくても受け止められる度量があること。この両方を見ます。
 また、どんな経験をしてきたか、ESやワークシートにない内容を引き出してその人のバイタリティーを見たい。学生はESにいいことばかり書くので、それ以外の話を発展させたい。あとはいろんな話をしながらコミュニケーション力を見ます。

 ――高校、大学での取り組み内容はかなり突っ込んで聞きますか。
 それほど突っ込みません。学生は私と雑談したとしか思わない方が多いでしょうね。

 ――「やりたいことが明確」かどうか、どう判断しますか。
 「やりたいこと」とその動機を論理的につなげて説明できるか。たとえば、「素材をやりたい」と言っているのに素材の中身も知らない、しっかり考えていない学生が入社するとあとで苦労する。それでうまくいった時代もありますが、今は結構早い時期にいろんなことを任せるので、どんな仕事もある程度学生に理解してもらわなければいけない。理解していないなら、一生懸命理解してもらうのが私の役割だと思って面談しています。

 ――学生は業務の詳しい内容まではわからないと思いますが、本気で入りたいならもっと調べてくるはず、ということですね。
 すべての仕事の細部を知っている必要はありませんが、こういうことがしたいという自分なりのビジョンなり思いをちゃんと語れるかどうかはポイントだと思っています。

 ――でも、多くの学生は「自分は何をしたいのか、何に向いているのか」に悩んでいます。
 そうですね。やりたいことは一つでなくてもいい。いっぱいあるうちの一つが当社ということでもいいと考えています。

 ――「やりたい仕事でなくても受け止められる度量」は、どう判断するんですか。
 帝人には様々な仕事があります。「素材の営業がやりたい」という学生が多いのですが、実際にはヘルスケアの営業になる人や、私のようなスタッフになる人もいる。だから最終的には、どの仕事に就きたいというより帝人という会社を好きになって入ってほしい。帝人だったらどんな仕事でもやりたいという思いを持った人に来てもらいたいと思っています。
 やりたい仕事以外に目が向かない学生には、他の事業や入社後幅広い仕事に就く可能性があるという話をします。この説明をちゃんと受け止めてくれる人なのかどうかを見ます。

 ――ほとんどの学生が「入社したらなんでもやります」と言うのでは?
 言わない人もたくさんいますよ。それだけでは判断しませんが、「素材」という側面からだけ当社を見ているのか、他の様々なところを含めた「帝人株式会社」として見ているかは判断材料になります。

 ――採用が競合する業界は?
 素材各社のほか、鉄鋼メーカーや商社とも重なることが多いです。

■求める人財
 ――どんな学生を求めていますか。
 「変化を糧に成長できる人財」です。帝人は歴史的に、常に変化を繰り返しながら成長してきた会社です。加えて、今はまさにビジネスの変革期に置かれています。これまでのようにただ素材を売るだけというビジネスから、製品開発に近いところまで踏み込んで、顧客の課題を解決する「ソリューション提供型企業」になって成長・発展しようとしています。そのためには、様々な変化を会社の中で起こしていく必要があります。そういう変化の時に、受け身な行動しか取れない人や、しっかりコミュニケーションを取れない人が活躍するのは難しいと思います。変化を受け入れながら、新たなものを生み出していくような人財がほしいと思っています。

 ――歴史的に変化してきたが、ここ数年で特に大きな変化に直面しているということですね?
 2012年に発表した「中長期経営ビジョン」に沿って変化していこうとしています。一つが、強みである素材、ヘルスケア、ITの三つの領域をつなげていく融合ビジネス。もう一つは、単なる素材から製品に近づきビジネスの範囲を広げていく変革。今いろんなチャレンジをしています。

 ――現役の社員にはどういう方が多いのですか。
 総じて言うと「明るくまじめな人間」が多い。会社として何かやろうというとき、そこに向かって動く力を持っているのが当社の社員のいいところだと思っています。

 ――人事総務部長は採用HPで「やんちゃな学生がほしい」と言っていますね。
 上から言われたことをハイハイと聞くだけでなく、自分のアイデアを一生懸命訴えて実現しようとする、既成概念にとらわれず、いろんなことにぶつかってみようとするのが「やんちゃ」ですね。そういう社員は当社では活躍するし、変化の原動力になってくれると期待しています。

 ――「やんちゃ」な学生を採用できていますか。
 できていると思います。若手社員の中には面白い社員がいます。悪く言えば生意気ですが、相手を怒らせない程度に自分の持論をしっかり持ち、自分の仕事だけじゃなくてもっと大きな視点で会社を見ている社員がいます。

 ――「自分は会社をこう変えたい!」と主張するタイプですか。
 そこまで偉そうではありませんが、入社後に「ぼくはこう思うんです。なかなかうまくいかないのですが自分が最後まで頑張って実現していきます」と言えるタイプですね。中には「社長になります!」というタイプも何人かいますけどね。やんちゃな人間を採りたいという思いは私も持って採用に臨んでいます。

■リクルートスーツ
 ――最近はインターンシップを活発にしているそうですね。
 10年ほど前から様々な形でやっています。2015年度は、技術系はエンジニアリングと創薬が主体、事務系は薬学系の学生を中心にMR(医薬情報担当者)のインターンシップを行いました。2014年度は帝人グループ3社合同インターンシップも実施しました。東西50人弱ずつ約100人の学生を集めて1週間、当社の素材、ヘルスケアビジネスとインフォコムのIT、帝人フロンティアの商社機能を使い、新たなビジネスを提案してもらうという内容でした。
 冬には「グローバルインターンシップ」という外国人留学生と海外留学経験のある日本人学生対象のインターンも開き、約20人集まりました。

 ――真夏の選考になりますが、学生の服装についてはどう考えますか。
 今年から説明会の段階でリクルートスーツは着てこなくていいと言っていますが、みなさん着てくるみたいですね。これから暑くなるので、リクルートスーツの学生が減っていけばいいのですが。

 ――どんな服で行けばいいか悩む学生が多いようです。
 初対面の人と会うにあたって、ビジネスパーソンとして常識的に不快感や失礼がない服装であれば十分です。

様々なモノに関わる幅の広さ 挑戦し失敗もする「アホな会社」

■何の会社?
 ――帝人グループの事業の構成を教えてください。
 主要な事業は5分野です。そのうち、ヘルスケア事業グループと高機能繊維・複合材料グループ、電子材料・化成品事業グループは帝人が採用し、製品事業グループ(帝人フロンティア)とIT事業グループ(インフォコム)は別の採用です。

 ――事業が幅広いのであえてお聞きしますが、帝人は何の会社ですか? 素材メーカー? 化学メーカー? 繊維メーカー?
 化学の技術を生かして社会にソリューションを提供する企業です。採用では「ケミストリーカンパニー」と説明しています。ケミストリーに繊維などを含めた広い意味での「素材」と「ヘルスケア」、この二つが大きな軸です。これに「IT」というテクノロジーを合わせ、三つを使って社会の様々な課題を解決していく会社、と学生にはいつも言っています。

 ――我々が子どものころ帝人は繊維、洋服の会社というわかりやすいイメージでした。今は伝え方が難しいのでは?
 そうですね。私も帝人は繊維の会社と考えて入った世代ですが、かなり変わりました。学生には、帝人グループの事業分野は「素材」「ヘルスケア」「製品」「IT」で、「帝人で採用するのは素材とヘルスケア」という言い方をしています。説明会でも事業内容は素材とヘルスケアの話しかしません。学生側も「繊維」ではなく、より幅広い「素材」という言い方をしますね。

 ――炭素繊維が世界で注目されていますが、世界シェア上位3位まで日本の会社ですね。炭素繊維をやりたいという学生は多いですか。
 理系も文系も多いですね。営業職で一番人気なのが炭素繊維。技術系では炭素繊維も多いし、まったく新しい事業の研究をしたいという人も結構います。炭素繊維はグループ会社の「東邦テナックス」が手がけていますが、将来統合する予定なので、現在は帝人で採用し、入社直後に東邦テナックスに出向することもあります。

■配属と英語
 ――新入社員の配属先は?
 登記上の本社は大阪ですが、現在、本社機能はほとんど東京です。事務系の配属は東京か大阪がメインで、素材部門やスタッフは東京、大阪が多いですね。一方、ヘルスケアは全国の営業所に行きますし、人事担当は地方工場への配属もあり得ます。

 ――グローバル化が進んでいますが、海外勤務の割合は?
 常駐しているのは150人くらいですが、海外へ出張する社員はとても多いですね。市場はワールドワイドなので、若いうちから何度も海外出張します。

 ――場所は全世界?
 ビジネスが成り立っているところはどこでも、です。ですから英語力は必要です。ワールドワイドに仕事していくのは避けられないので、英語ができることにこしたことはないし、今できない人もできるようになってほしいと思います。ただし採用に英語力は関係ありません。若い人は鍛えればなんとかなると思っているので。
■上沼さんの就活
 ――上沼さんは何年入社ですか。
 1992年です。就活的には最もいい時期だったと思いますね。

 ――どんな就活でしたか。
 今とまったく違いますよね。当時はWEBもなく企業あてのハガキを一生懸命書きました。中には書いてないのに電話がかかってくる企業もたくさんありましたけど。
 最初は自分探しの旅のような、自分に向いていることは何だろうと探しながら就活をしていました。今、昔の自分を面接したら多分落とすだろうと思います(笑)。ただ昔はたくさんOB訪問をしたので、そこで仕事のことを一生懸命聞いて理解しながら、やりたいと思う仕事を見つけていきました。
 メーカーにこだわらず金融も商社も幅広くまわりましたが、素材を扱う帝人の仕事のスタイルを見て、文系でこれだけ世の中にいろいろなものを提供できる、モノづくりに貢献できるのは素晴らしいと感じました。私はもともと「働くこと=社会に貢献すること」という思いが強くあり、素材の仕事を知って、「あるじゃないか!」と。

 ――素材業界のどこに魅力を感じたのですか。
 世の中には様々な製品がありますが、そのほとんどのものに関わっているという幅の広さですね。当時は繊維、フィルム、樹脂と大きく三つありましたが、そのすべてが社会のいろいろなものに関わっていると思ったんです。

 ――素材メーカーの中で、なぜ帝人に?
 繊維会社としてスタートしながら様々な事業にチャレンジし、失敗と成功を繰り返しながら大きくなってきた長い歴史があり、どの先輩も「うちの会社はこんなことをしてきたんだぜ」といろいろ言ってくれました。聞くたびに、「こんなにいろんなことにチャレンジしてきた会社って、アホな会社だなあ。でも面白そうだ!」と思いまして。私もこの会社に入ればチャレンジングで波瀾万丈な人生が送れて自分自身の成長にもつながると思い、帝人を選びました。

 ――「アホな会社」とは?
 1970年代、未来事業本部という組織で積極的に多角化を進めていました。油田開発、食品加工、化粧品、自動車の輸入販売など本当にいろいろな事業にチャレンジして多くの失敗をし、損失を出したこともあったと聞いたので当時はそう思いました。でも、その中から、現在の大きな柱となっているヘルスケア事業を成功させ大きくなった会社でもあります。一つの事業だけで成長する会社も多いと思いますが、帝人は将来の布石のために新しい事業を一生懸命考えてやってきた会社です。
 あとは「日本初」「世界初」という言葉が大好きな会社ですね。

 ――上沼さんは波瀾万丈が好きなんですか。
 というよりも、自分を成長させてくれる会社がいいと思っていました。学生時代は、自分を堅すぎる人間と思っていたので、もっと社会の荒波にもまれていくべきと考えました。

■やりがいと厳しさ
 ――入社後はどんなお仕事を?
 「営業」希望とはまったく違う人事部門に配属されました。最初が山口県岩国市で工場の労務管理を3年、東京で採用や海外出向者管理を2年、管理職の処遇企画運営の人事を1年。その後「人財部」が誕生し、東京と大阪本社で労働組合との交渉や制度改定業務を4年担当し、2004年から愛媛県松山市の工場事務室を2年半。また大阪に移って人事の仕事を3年、その後人事課長を4年やって、2014年6月から採用課長に。入社以来23年人事担当一筋です。

 ――営業希望で入ったのに、不満はなかったのですか。
 はじめは腐っていましたね(笑)。事務系の同期が100人いて人事は3人。正直「なぜ俺なんだ」という思いがありました。でも半年くらい過ぎて、このままではいけないと思い二つ考えました。一つは、自分自身が帝人という会社を選んだということ。好きで選んだ会社が人事をやれというんだからちゃんとやってみよう。まず人事の仕事をわかってから文句を言うべきだ。とりあえず3年間黙って何でもやって、本当にダメだと思ったら言おうと思いました。

 ――もう一つは?
 配属を決めるのは人事部だから、自分の部門に嫌な人は持ってこないだろう、俺は気に入られたんだと考え、自分を奮い立たせました(笑)。前を向くようになると仕事はうまくいくし、人も寄ってくる。最初は何をやってもうまくいかず孤立していましたが、だんだん人事の仕事にやりがいを感じ、面白くなっていきました。人間はモチベーションで生きているんだなあと痛感しましたね。

 ――もっとも印象に残っている仕事は?
 2004年に帝人の年金制度を改定したことです。労働組合との交渉が暗礁に乗り上げ、1年半ほどうまく進みませんでした。年金資産は巨額だし、会社の収益に直結するのでプレッシャーが大きかったです。でも、自分の進め方が悪いのではと気づきました。それまではA案、B案のメリット、デメリットを示し、どっちにしますかと提案していました。ただ年金は複雑で理解しにくいから関係者もなかなか決断しにくい。だからこそ一番制度を理解している担当として「こうしましょう」と信念を持って強く提示する必要があったんです。もちろん一生懸命勉強したし、自分が一番知っているというつもりで関係者と必死に対話してやり遂げました。本当につらかったですがそれが自信になり、それ以来、たいていの仕事はなんとかなると思えるようになりました。

 ――帝人で働くやりがいと厳しさとは何ですか。
 社会人一般の話ですが、学生時代は嫌なことはやらなくて済むと思います。社会人は嫌なことでも絶対やらなければいけない。嫌なことをやってそこから何を得て、次の道、仕事にちゃんと生かす、糧にできるかがポイントだと思うので、若いうちは何でもやることが大事だと思います。
 やりがいという点では、若いうちに裁量のある仕事を任せてくれる会社です。なおかつそれをちゃんと見守る先輩、上司がいる。人を育てる文化がある会社です。私も入社直後のつらい時期に先輩が助けてくれ、上司も仕事を教えてくれて、つらい時期を乗り切れました。だから自分も下に対して同じ意識を持ちますよね。その伝統がしっかりつながっている会社だと思います。

みなさんに一言!

 学生は誰もが就職活動は初めての経験ですよね。こんなに色々な会社のことを知ることができる機会は就活しかないので、自分で納得いくまで思いっきり活動してほしいです。それと自分の可能性をあまり絞りすぎないでください。みなさん色々な可能性を持っているので、選択の可能性は常に残しながら仕事を選んだほうがいいと思います。志望業界を決めた瞬間にほかの可能性を消してしまい、そこでうまくいかなかったときに就職活動のやり直しを余儀なくされる学生が大勢います。だから可能性の枠を広げたままで多くのことを学び、最後に自分とマッチするいい企業に巡り合ってほしいと思います。

帝人株式会社

【素材】

 帝人は、日本初のレーヨンメーカーとして創業以来、ベンチャー精神と化学技術の研究開発を通じて、事業の拡大と多角化に挑戦してきました。現在は、高機能繊維・複合材料、電子材料・化成品、ヘルスケア、製品、ITなどの事業をグローバルに展開しています。  今後予想される、世界の人口のさらなる増加とそれに伴う食糧や水資源の不足、化石燃料資源の需要増大とCO2排出量の増加、そして、高齢化の進展による医療や社会保障のニーズの増大などの課題に対し、私たちが強みとする高機能素材・ヘルスケア・IT事業、また、これらを融合させた新事業によって、帝人グループならではの価値を創造、提供していきます。そして、社会やお客様が必要とするソリューションの提供を通じて、企業理念である「Quality of Life」の向上に貢献していきます。