人事のホンネ

双日株式会社

2016シーズン 【第15回 双日】
歴史ある「若い会社」で共に成長を 当事者意識もつ人材来たれ

双日人事総務部 採用課 課長 相澤 司(あいざわ・つかさ)さん

2015年05月25日

■採用実績
 ――2014年度は何人入社しましたか。
 総合職63人、事務職12人。女性は総合職の2割ほどで、事務職は全員女性です。
 総合職には、海外の大学から採用する「グローバル採用」の社員6人も入っています。日本語が母国語ではない学生が対象で、2014年4月から10月に入社し約半年間日本語研修を受けて、2015年4月入社の新入社員と一緒に新人研修を受けて本配属になります。中国、香港、シンガポールが多いですが、他にもマレーシア、インドネシアなどアジア系外国人が中心となっています。

 ――2015年度の入社予定人数は?
 総合職70人、事務職12人です。6~10月入社のグローバル採用は6人の予定です。

 ――2013年度の総合職採用は48人でしたね。この数年でかなり増やしていますが、景気の良さを反映しているんですか。
 弊社は2004年に前身の日商岩井とニチメンが統合したときに採用を減らしました。10年間の足場固めの時期が過ぎ、ようやく増やしているところです。総合職の2016年度入社は80人の予定です。

 ――理系の学生数は?
 だいたい2割ですね。女性も理系もプレエントリーの段階で全体の2割程度で、採用も同じくらいの割合です。

 ――大学名にはこだわらない?
 弊社の役員にはいろいろな大学の出身者がいます。学閥がなく、採用も特定の大学に偏ることはありません。少しずつでもたくさんの大学から採用しています。
 特定大学にこだわると、限られた学生を他の企業と取り合うことになりますから、幅広い大学から採用するのが我々の戦略です。地方で開くセミナーの回数も増やそうと考えています。

■商社・ビジネス体感セミナー
 ――プレエントリー数を教えてください。
 ざっくり2万5000くらいで、本エントリーが1万弱くらいですね。ここ数年それほど変化はありません。「記念エントリー」がかなり減っていると言われているので、本気で選考を受けたい学生がプレエントリーする年になればいいと思います。

 ――2015年4月入社の採用スケジュールを教えてください。
 2013年12月から広報活動を始め、12月前半は合同企業説明会に集中的に出て、後半から徐々に自社セミナーを開催。1回80~90人規模で50~60回はやりました。東京、大阪がメインですが、北海道、東北、名古屋、九州でも開きました。

 ――自社セミナーは特徴ある内容だそうですね。
 タイトルは「商社ビジネス体感セミナー」。7~8人のチームに分かれて、事業投資やトレーディング機能をどのように発揮して仕事をしていくのか、約2時間半のゲーム形式で商社のビジネスを理解してもらいます。簡単に言うと、エネルギー資源に投資しながら一方で顧客ニーズをつかみ、販売力、収益力を高め企業価値、すなわちその企業が将来に渡って稼ぐことが可能なお金の合計をどれだけ増やせるかを競うゲームです。チームによって与えられた前提条件が違ったり、チーム間での協業や情報収集が戦略的に重要だったりしますが、最終的には数字で結果がはっきり出ます。夢中になって取り組む学生が多く、結構受け入れられていると思います。
 わかりにくい商社ビジネスを、ゲーム感覚で楽しみながら仕事のイメージをつかんでもらい、あとは社員の座談会でリアルケースを紹介したり、会社説明などを付け加える、というセミナーです。

 ――成績優秀だと選考で有利になるとか?
 参考にはなりますね。ゲームの中でも動きがいい学生、夢中に楽しそうにやっている学生は目立ちます。周りのチームの視察役、資金計算をする役など役割分担をきちっとやり、話し合って合意にもとづいて一つの方向に物事を進めていく。そういうことが得意な人と不得意な人が分かります。

 ――その後のスケジュールは?
 このセミナーを12月から2月前半くらいまで行い、2月下旬から3月20日ごろまで本エントリーを受け付け、選考解禁の4月1日から面接をしました。内々定は4月上旬に出しはじめ、第3週までには総合職はほぼ内々定を出しました。事務職の選考は4月末から5月初旬に別途セミナーを開催して5月前半に筆記試験、中旬に面接を行い、5月下旬に内々定を出しました。

 ――後ろ倒しされた2016卒採用はどんな予定ですか。
 3月から就職支援会社主催の合同企業説明会に広く参加し、3月中旬から4月末まで「商社ビジネス体感セミナー」を昨年並みに開催します。今年は事業投資案件を題材にしたセミナーも開きます。その後は6月上中旬から本エントリー、7月までに締め切り、8月に面接を始めたいと思っています。

 ――セミナーはすぐ満員になってしまうのでしょうね。
 そうですね。プレエントリーしてもらえれば、セミナー募集告知のメールを送ります。それを見てすぐアクセスしてくる学生が多いですね。

 ――今年は8月頭に各社の面接が集中しそうですね。
 8月に面接に呼んだとき、本当に来てもらえるのかどうかはフタを開けてみないとわかりません。これまでリクルーターは組織的にはやっていなかったのですが、今年は一部取り入れようと思っています。OB・OG社員が後輩の相談に乗る程度のものですが。

「当事者意識」が大事 ESは早めに出して!

■インターンシップ
 ――インターンシップはどんな日程ですか。
 2014年度は1日程5日間で3回開き、計約170人が参加しました。応募数はかなり多く、納得して参加して欲しかったので説明会を任意参加で開催、面接をして参加者を決定しました。志望動機を聞くというよりインターンで何を学びたいかなどを、社員1人に学生5人くらいのフランクな感じで聞く面接です。

 ――インターンと採用の関係は?
 直結はしません。ただ、色々な社員が参加して仕事の仕方や働く目的、夢などを話しますし、学生にとっても参加社員は初めて一緒に濃密な時間を過ごす社会人というケースが多いと思います。そこで私どもに憧れや「こういう人になりたい」と思ってもらえたら、様々な選択肢の中から弊社を選んでもらう軸になると考えています。

 ――インターンはどんな内容ですか。
 会社説明よりも「自分が何をしたいか」を真剣に考えてもらうキャリア教育に近い内容です。ブランドイメージとか、親が薦めるからとか、人気企業ランキングに載っているからではなく、自分がどう育てられ、どんな生き方をし、どんなことに喜びを感じるのかを突き詰めて自己分析をしつつ、自分が就職する業界・会社を選んでほしいという気持ちがあります。

 ――ワーク中心ですか。
 そうですね。前半の3日間は自分が何をしたいのかについて考えるグループワーク。メンバーから信頼を得て、いろんなフィードバックを受ける中で、自分に足りないものに気づくような機会を与えています。

■ES
 ――ESの形式と主な項目を教えてください。
 昨年はWEB入力でした。学歴やゼミ、研究内容、サークルでもアルバイトでも、力を入れて活動したことを何でも書いてもらう「各種活動内容1、2」の欄。あとは「これまでの人生の中で、主体的に何かに挑戦した経験」「モチベーションの源泉」「あなたは双日でどのように成長し、どんな夢を実現したいですか」といった項目でした。

 ――「主体的に何かに挑戦した経験」という項目はどんな狙いで設けたのですか。
 多様な人材を採用したいので、求める人物像をかちっと定めるつもりはないのですが、「当事者意識」をしっかり持った学生にエントリーしてほしいため設けています。たとえば、双日は他の総合商社に比べて規模が小さいからとか社員数が少ないからやりたいことができないといった「他責思考」ではなく、主体的に周りの人を巻き込んで事業を作り上げていく強い意志を持っている学生に来てほしい。

 ――「モチベーションの源泉」の項目は?
 自分は何に心を動かされるのかという、人間性の根幹部分を赤裸々に書いてほしいと思っています。

 ――どんな答えが多いですか。
 学生時代の経験、たとえば留学や部活動での経験が多い。両親の影響、尊敬する人のようになりたい、といったものもあります。海外に留学して日本のプレゼンスの低下に気づき、日本を力強く復活させたいと考えた……という学生も結構いますね。

 ――総合商社は留学経験のある学生が多いのでしょうね。
 そうですね。エントリーしてくる方の中の海外留学経験比率は高いと思います。だから、留学しただけでは「すごいね」とはならない。留学してどんなことを考え、具体的にどう行動したかが重要です。

 ――商社には、体育会出身者が多いイメージがあります。
 体育会系の学生は一つのことに一途に邁進(まいしん)し、チームワークの大切さなど社会人として生活していくうえで大事な経験をしていると思います。ただ、体育会系というだけでOKという時代ではありません。多様性を求めて採用しているので、体育会系というところだけをアピールされても厳しい。キャプテンなどを一生懸命務め、かつ海外留学経験もある……となると、よく見えるのは確かだと思います。

 ――ESを見るポイントは?
 自分の思いがきちんと表現されているかどうかです。選考用に取り繕って書いたのではなく、書きたいことを一生懸命に書いたESからは訴えかけてくるものがあります。

 ――評価できないのはどんなESですか。
 空白が多いESからはあまり思いが伝わってきません。文章の構成もよく見ます。どこかで見たようなステレオタイプの内容、コピペのようなESは評価できません。
 たとえば、最近よく見るのは「地方を活性化したい」。それ自体はいいことですが、よく見かける内容なので「どこかで誰かが言っていることを真似しているのでは?」と感じてしまう。本心からそう思っているかどうかは、面接で聞いていくことになります。

 ――逆に評価できるのは?
 説得力があるのは、やはり自分の体験にひもづけた話ですね。部活でもゼミでもアルバイトでも、そこで何かを真剣に考え、活動していることが大切です。会社で働く上で必要なエッセンスがちりばめられていて、「この学生は大事なことを理解できている」ことが伝わってきます。

 ――ESの書類選考でどのくらい絞りますか。
 半分以下に絞ります。

 ――何人で評価するのですか。
 私を含めて採用課の担当者6人ですべてのESを見るので、直前に提出されると本当に苦しい。

 ――ESは早めに提出したほうが有利と聞きますが。
 有利か不利かはわかりませんが、締め切りギリギリに大量のESが届く傾向があります。ぎりぎりに提出されたものは、どうしても限られた時間で必死に読むことになります。できれば早めに出してもらい、余裕のあるタイミングで読ませてほしいですね。

 ――WEBテストは足切りに使うのですか。
 著しく点数が低いかどうかのチェックはしますが、一律に足切りすることはありません。

選考は多様性重視 商社は世界が舞台、ニュースに関心を!

■面接
 ――総合職の面接は何回ですか。
 2015年卒採用までは最初にグループディスカッション(GD)をし、1次面接、2次面接、最終面接と計4回やっていました。今年は選考開始が後ろ倒しになるので、1回減らすことも考えています。

 ――GDはどのように進めるんですか。
 グループは7人程度で、テーマは年によってまちまち。身近なテーマのこともあるし、資料を読み込んでもらい、その内容を理解しないと議論できないテーマにして、結論を出すプロセスを見るというときもあります。時間は簡単なテーマのときは40分、複雑なテーマならもう少し長くとります。発表内容よりも過程を評価するようにしています。

 ――GDでは何を見ますか。
 いろいろなポイントがあります。リーダーシップをとって議論を進められるかとか、周りに気を遣って独りよがりにならずに議論を進められるかとか。基本的な論理構成力も重要ですし、難しい内容でもあきらめず最後まで粘り強く取り組めるかも見ます。多様性を重視しているので、あえて自分は引いて議論を円滑に進めていくような立ち回りができる学生にも注目したい。1グループで2~3人が次の選考に進みますね。

 ――その後の面接の形式は?
 1次は社員1~2人対学生2~3人で30~40分。2次は1対1で30分間です。
 昨年の最終面接は、4営業部門の部門長、職能の担当役員、社長も2日間参加しました。学生1人に役員2人で面接します。

 ――面接で見るポイントは?
 1次面接は細かいところより、一緒に働きたいかどうかという観点で見ます。2次は1対1で時間もあるので、いろいろな観点から見ます。最終面接がおそらく一番厳しい。真剣に相思相愛になれる学生を見極めます。

■ワーク・ライフ・バランス
 ――女性が働きやすいようにする制度上の工夫はありますか。
 キャリア形成のために、入社4~5年目、8~9年目で研修を実施しています、将来どんな仕事をしたいか、結婚や出産などのライフイベントを抱えながらどんな働き方をするべきなのかなど、悩むタイミングをとらえて自分のキャリアプランをどう作るか考えてもらいます。課長研修や、女性総合職を部下に持つ課長を対象にした個別面談などで女性部下の育成について指導しています。

 ――育休取得率はどのくらいですか。
 女性社員の産休・育休取得率は、ほぼ100%で、その後の復職率もほぼ100%です。産休取得前の個人面談や、育児休暇取得の前後で人事担当者が所属長と面談。育休をとりやすく戻りやすい制度設計、運営をしています。

■新聞
 ――就活に新聞は必要でしょうか。
 入社式で社長が「世界の動向に敏感であること」が重要だと伝えていました。商社は世界を舞台に仕事をする業種です。リーマン・ショック以降とくに対岸の火事と言っていられない世界のニュースが増えています。
 新聞でもスマホでもいいが、関心を持って読むことが大事だと思います。

 ――世の中にアンテナを張るのも大事ですね。
「電車の中でスマホをいじっていて目の前にご高齢の方が立っていることにも気づかないようでは、今後変わっていくビジネスに対応できる人間になれるはずがない」と、当社の役員がよく言います。世の中を意識し関心を持ち、面白いと感じ、実際に行動に移す。そのためにも自分の意見を持ちつつ新聞を読みなさいと言っています。

 ――内定者や新入社員には読んでいない人も多い?
 かなり多いですね。新聞に双日の広告を出した後「見た?」と聞くとほとんど見ていない。一方でSNSは、ほぼ100%の学生がやっている。だから内定後には「もう君たちは社会人に片足を踏み入れた状態なのだから、軽はずみな書き込み、言動は会社にも迷惑をかけかねないんだよ」と研修で諭しています。

 ――時事問題を面接で聞くことは?
 ありますが、知識の有無を問うというより、わからない難しい問題を聞かれたとき、とっさにどう対応するのかを見るためです。

 ――選考で印象に残っている学生はいますか。
 私たちに面と向かって「双日には素晴らしい社員がたくさんいるのに、なぜ業界でこの程度のポジションに留まっているのか理解できない」と言った学生がいました。生意気だと思いましたが、惹かれるところが確かにありました。この学生は当社も含めて総合商社4社の内定を採って、うちともう1社でギリギリまで悩んだ。僕らは「悩め。じっくり考えろ。君の出した結論を受け入れる」と言って待ちましたが、最後は晴れやかな顔で「部活の先輩に一緒に働こうと言われたので、もう1社にします」と断りに来ました。僕らも「ああ、それならしょうがないな」と。

 ――内定が競合するのは?
 メーカーやコンサル会社、広告代理店などいろいろありますが、やっぱり総合商社が圧倒的に多いですね。

20代にチャンス大 「うちの会社は」より「私は」で話す社員たち

■合併と社風
 ――総合商社では最下位の7番手ですが、学生にどうアピールしていますか。
 会社の成長と自分の成長をともに感じられる、ということです。双日は2004年に大手総合商社の日商岩井とニチメンが合併して誕生しました。前身の会社はともに歴史がありますが、双日としての歴史、社風はまだ確立されていないし、明確な強みがあるわけでもない。そういう中で特によく言うのは、20代の社員に対する期待が大きいことです。統合前後は採用人数が少なかったこともあり30代の社員が少なめです。20代の社員にチャンスを多く与え、活躍してほしい状況がある。当事者意識を持って仕事がしたい人にとってはチャンスが多い会社です。

 ――そこは他の総合商社と違うと。
 仕事で他社とのミーティングに参加すると、当社の社員は年次が若かった、という話は頻繁に耳にします。入社3年目で中東駐在員として派遣された社員もいますが、他の商社ではあまりないと思います。40歳代前半の部長もどんどん誕生しています。
 会社が未成熟だからこそやりがいがあるフィールドが多い。だから、自分で物事をつくっていきたい、変えていきたいと考えている学生にはすごく響く。逆にそこに響かない学生はブランドや知名度を優先しているのかも知れません。
 さらに、10年前と比べて財政基盤がすごく良くなっています。収益規模は他の商社と開きはあるものの、財務内容は遜色なくなり、できることがかなり広がっています。だからこそ、これから会社をともに作り上げていく仲間にならないか、という話もしています。

 ――合併して社風は変わりしましたか。
 私はニチメン出身ですが、日商岩井は航空機や鉄鋼など強い事業領域を持ち、大きな視点でものを語れる社員がたくさんいた印象があります。ニチメンは、財務内容は良かったが、業容はこぢんまりとしていた。でも統合後はどっちがどうという話もなくなりました。すでに統合後入社した社員が4分の1弱までになり、双日の社風は旧2社のどちらとも違うものになっていると思います。

 ――新たな社風は?
 当事者意識を持って仕事をしている社員が圧倒的に多い。組織で仕事をするというよりは、自分がマネジメントして仕事を動かしているという意識を持った若手社員が多いですね。セミナーに若手社員を呼ぶと、「うちの会社は~」ではなく「私は~」と一人称で話す。前に出てマイクを持たせると、何か笑いを取ろうとするタイプも多いです。OB・OG訪問では、丁寧だが自分の話を熱く語る社員が多いと学生から聞かされます。
 学生から、当社の社員は「他社に比べて楽しそうに仕事の話をしてくれる」という話もよく聞きます。上位商社の場合、1000億円規模の大きな投資を担当しても、実際には管理業務など、パソコンに向かって行う仕事も多く、「取引先に足繁く通い、泥臭く信頼関係を築きあげていく」商社パーソンのイメージと合わないのかもしれませんね。

 ――一匹狼が多い、ということでしょうか。
 違いますね。1人で闘っているということではなく、組織の中で自分の存在意義を出そうとする、「君がいないとダメだ」と言われるような仕事の仕方をする若手が多いということです。

 ――歯車になりたくない、ということでしょうか。
 弊社には150の課があって、営業ならざっくり100の課というところ。1つの課は10人程度の社員で構成されているのが一般的なイメージです。売上はグループ会社合わせて約4兆円ですから、営業の課ひとつ、10人程度で約400億円の売上を扱っている計算になります。だから、組織の歯車になっている場合じゃないんですね(笑)。

 ――「New Way, New value」というグループスローガンはどういう意味ですか。
 これは合併当初からのスローガンです。「新しい方法で新しい価値を世界中に生み出す会社」という意味で、セミナーではよく、うちの会社をひとことで言えばこういう会社だと説明しています。
■相澤さんの就活と仕事
 ――相澤さんご自身は、どんな就活をしたのですか。
 大学時代は空手部で部活ばかりやっていた体育会系人間だったのですが、まったく別世界のすごく知的で尊敬する先輩がある総合商社に入社し、帰省時に目を輝かせて仕事の話をしてくれたんです。それで商社が面白そうと思ったのがきっかけです。当時はインターネットもなく、ダイレクトメールの中から希望の会社を選んでエントリーする仕組みでしたが、友人が「ここも商社だよ」といくつか選んでくれた会社の中にニチメンがありました。実は総合商社しか受けませんでした。

 ――海外志向ではなかったんですか。
 海外の「か」の字もなかったですね。父親が会社を経営していたので経営には興味がありましたが、一番大きかったのは先輩の影響です。

 ――他にも内定を?
 実は他の有名大手商社も内定寸前まで行きました。ニチメンとどちらにするか悩んでいると言うと5日連続で面接に呼ばれ、「君は大きいことがしたいんだろう? そのためには組織力、資金力が必要だ。会社の1人や2人に会ったって会社のことなんかわかるわけない。もっと大きい視点で物事を見なさい」と問い詰められました。それに納得がいかず、なぜ自分の感覚で選んじゃだめなんだろうと思って、結局ニチメンを選びました。ニチメンの面接はもう終わっていたようなのですが、担当者の人が強く推してくれたそうです。
 親からも友人からも「なんで有名大手商社のほうにしないんだ」と言われましたが、ニチメン入社後に配属されたのは当時社内で最も勢いがあり、他社を圧倒していた北米材を輸入する木材部署でした。「俺たちが一番だ。自分たちが世の中を変えるんだ」という意識の部署だったこともあり、あまり小さい商社ということを感じずに仕事をしていました。

 ――ニチメンを選んだ決め手は?
 会った先輩がフランクに親身に自分の話を聞いてくれたことです。たまたま部活の先輩でもあったので。縁というか、出会いだと思いますね。

 ――入社後はどんな仕事を?
 最初は「船の運行管理」の仕事です。船を自社でチャーターして材木を輸送していたのですが、情報を集めて他の商社と競争しながら、荷を下ろす港を1日に何十カ所も確保していました。
 そのあとは大阪で営業の仕事。東京でも営業を経験し、2001年からロシア材を担当。冬はマイナス40度になるシベリアに何度も出張しました。冬になる前に山で切り出した丸太をアムール川のほとりに積み上げておき、春に氷が溶けるとその木をいかだにして河口に運ぶ。そういう仕入れも担当していました。たぶん日本人は10人も行ったことのないような奥地ですが、面白かったですよ。
 2007年からは中国で従業員450人くらいの製材工場を立ち上げる仕事に関わり、2011年から人事部に来て研修担当、2013年から採用を担当しています。

 ――今までで一番印象に残っている仕事は?
 中国の新設合板工場への融資案件を担当した際、社内で説明しても全く事業が進まない時期があり、無力感を感じたことがありました。部長も半分諦めていたんですが、先輩社員が「もう1回がんばろうよ」と励ましてくれて、そこから関係者に懸命に働きかけて壁を破った経験があります。あきらめず努力することが大事だと学びましたね。

みなさんに一言!

 自分は何をしたいのか。とことん突き詰め考え抜いて就活に臨んでほしい。ともすれば、仕事は義務で、働くのは生活のため、収入を得るためと思いがちです。でも、いろんな人と関わりながら社会に大きな影響を与える仕事はたくさんあります。働いている大人は疲れて見えるかもしれませんが、楽しみながら仕事をしている大人もたくさんいます。私も耐え難いくらいのプレッシャーを経験しましたが、それを乗り越えたときの喜び、やりがいの大きさを実感してきました。みなさんも面白さ、楽しさを感じながら仕事する社会人になってほしいですね。いろんな大人に会い、何にやりがいを感じるのか聞いてみてください。これだけ多種多様な業界の人と話ができる機会は二度とありません。日々楽しみながら、就活をやり切ってください。

双日株式会社

【商社】

 双日株式会社は、総合商社として、国内および海外と物流取引、事業投融資、事業運営等を行っており、機械、エネルギー・金属、化学・機能素材、生活産業などの多岐にわたる分野でグローバルに事業を展開しています。  私たちは、それぞれ長い歴史を持つニチメン株式会社、日商岩井株式会社をルーツに持ち、120年以上にわたって多くの国と地域の発展を、ビジネスという側面からサポートしてきました。  世の中やお客様のニーズの「一歩先」を常に考え、新しい価値や機能の創造にチャレンジすることが双日における働き方です。