人事のホンネ

東海旅客鉄道株式会社

2016シーズン 【第11回 JR東海】
安全・安定輸送担う「使命感」 未来へ「挑戦」する気持ちを!

JR東海人事部人事課 課長代理 小峰宏夫(こみね・ひろお)さん

2015年03月06日

■採用実績
 ――2014年の新入社員と2015年春入社予定の内定者数を教えてください。
 2015年4月入社は男女含めて計595人です。男性は525人、女性は70人。職種別ですと、「総合職」(大学・大学院卒)が71人(男性64、女性7)、「アソシエイト職」(大学卒)が27人(男性3、女性24)、「プロフェッショナル職」が497人(男性458、女性39)です。
 ちなみに2014年度の採用実績は694人(男性620、女性74)で、「総合職」は80人(男性74、女性6)でした。

 ――2015年入社は前年比で100人近く減ったんですね。なぜですか。
 主な理由としては、数年前まで定年退職者の数が多かったことから、1000人程度の採用が必要でしたが、そのピークを越えて退職者数が減少していることによります。今後の採用数は、中長期的には2015年入社とほぼ同程度の水準で推移すると思います。

 ――大量退職は、旧国鉄時代に入った方々が定年を迎えたからですか。
 そうですね。定年退職は2009年がピークで、採用のピークは2010年。そのころは1,000人以上採用していました。今は数は減っていますが、必要な人材は安定的に採用してきています。

 ――一般的にはこの1~2年は業績が上向いて採用数を増やす会社が多いのですが、JR東海はあまり景気に左右されないのですか。
基本的には鉄道を運営するのに必要な人員を逆算して採用するので、景気が良くなったから採用数を一気に増やすという性質のものではありません。

■女性社員
 ――鉄道好きの女性が増えている印象がありますが、女性の採用はあまり多くないですね?
 2015年度入社だと595人中70人ですから約12%ですね。女性の採用を絞っているわけではないのですが、鉄道業界は一般的には女性が働くことをイメージしづらいのかも知れません。男女問わず鉄道に興味ある方はいますが、それでもまだ女性は応募者自体が少ない。男女問わず優秀な人材を採用するために、より多くの方に、当社で働くことの魅力を知っていただくことが必要だと思っています。

 ――安倍政権下で女性の活用を推進する流れが生まれていますが。
今後説明会やセミナーで女性の先輩社員に登場してもらって、女性も活躍する職場がある、働きやすい会社だと目に見える形でアピールすることで、女性の応募もより増やしたいと思っています。

 ―一最近は車内のアナウンスで女性車掌の声をよく聞くようになりました。
 平成ひと桁の時代は法律もあって、原則として女性は夜勤ができなかったので鉄道業の現場では仕事ができない状況でした。平成ふた桁時代以降は少しずつ労働条件が緩和され、夜勤も可能になったので、安定的に採用してきています。

ESはあえて手書きに 自分の言葉で熱い思いを

■職種とエントリー数
 ――職種がいろいろありますね。教えていただけますか。
 職種は、「総合職」「プロフェッショナル職」「アソシエイト職」の3種類。専門分野は、「事務」「運輸」「車両・機械」「施設」「電気・システム」の5系統あり、職種との組合せで、全部で10の採用区分があります。

 ――文系・理系や学部学科ごとに応募できるところは決まっているんですか。
 応募の時点で、総合職、プロフェッショナル職などの職種と系統も選んでもらいます。事務は総合職だけで、主な採用実績としては文系の学生です。その他の運輸、車両・機械、施設、電気・システムの総合職は理系の仕事です。プロフェッショナル職では、運輸系だけは特別な専攻は必要なく文理問わずいろいろな学部から採用していますが、車両・機械、施設、電気・システムの各系統は、大学で関係する分野を専攻していた理系の学生が採用される場合が多いです。

 ――複雑ですが、採用ホームページの一覧表を見ると分かりやすいですね。プロフェッショナル職とは?
 主に、鉄道の現場に軸足を置いて、高い技術力や専門性を発揮しながら働く人たちです。運輸系統には駅員、車掌、運転士といった職種が含まれます。その他もそれぞれの系統で鉄道の第一線で活躍する仕事です。

 ――アソシエイト職は地域限定ということですか。
 はい、地域限定で、主にオフィス部門で専門性を高めて、実務の中心として活躍する社員です。配属当初は主にサポート業務を行いますが、能力や意欲に応じて企画・計画業務等にも幅広く携わります。

 ――応募の状況を教えてください。
 2015新卒採用では、大卒生トータルで、エントリーシート(ES)を出していただいたのが1万5000人くらいでした。この数年大きくは変わりませんが、採用数が一時期より減っているので、相当たくさんの方が応募してくれているという認識です。

 ――いわゆる鉄道好きの方の応募は多いんですか。
 よく「鉄道マニアは入社できないんじゃないか」と言われますが、鉄道好きだから不合格ということは全くありません。ただ、「鉄道のことしかわかりません」という方は困る。鉄道が嫌いではできない仕事なので鉄道好きを隠す必要はありませんが、それ以外のことにも関心をもつ幅広い視野は必要です。鉄道以外の事業もやっていますし、鉄道業も広い視野をもって進めていく力がないと運営自体難しいですから。

 ――職場にも、鉄道マニアはいらっしゃるんでしょうね。
 いることはいますが、鉄道好きだけでなく人間的にも非常に魅力的な幅広い視野を持った人が多いですよ。

■会社説明会
 ――2015新卒採用がどんなスケジュールだったかを教えてください。
 2013年12月にサイトをオープンしてプレエントリーを始めました。それから説明会やセミナー、先輩社員が学生の質疑応答を受けたり少人数でディスカッションしたりできる社員懇談会を開き、当社の魅力を理解してもらいました。その後は職種・系統によってバラバラなので一概には言えませんが、2月の終わりから3月の上旬にかけ順次、職種・系統ごとにESを集めました。4月以降は面接などを複数回行い、4月の中旬から下旬にかけて内々定を出しました。

 ――人気企業ですから、説明会はすぐ満員になるのでしょうね?
 そうですね。おかげさまで結構人気が高く、いろいろな地区で数多く説明会などを開くようにはしていますが、早い時期にいっぱいになることも多いですね。ただ、少しでも多くの学生にお会いしたいと思っていますし、一旦満席となっても定員を増やす工夫をしたり、直前でキャンセルが出ることもあるので、こまめに予約状況をチェックしてほしいと思います。

 ――どういう都市で開くのですか。
 主に、名古屋、東京・関東地区、関西地区では大阪や京都でやっています。当社の事業エリアである、東京から大阪の間での開催が多いですね。採用は全国からしているので、北海道や九州の大学のキャリアセンターからご連絡をいただいて、大学主催のセミナーに参加することはあります。

■ES
 ――ESは結構シンプルですね。手書きですか。
 ウェブで出力して印刷した紙に手書きしてもらいます。字がうまい下手というより、丁寧か雑かで本人の熱意、志望度がよくわかるので、あえて手書きにしています。学生にとっては大変かもしれませんね。

 ――履歴的な項目のほかは、学んだ内容、志望理由、打ち込んだ内容、自己PR。典型的なESですね。
 そうですね。これに尽きると思います。これ以上のことは面接で聞けばいいと思っているので。なぜ志望するのかと、本人の人となりを知るための学生時代に打ち込んだ内容が、二本柱だと思います。理系の学生については、研究内容は参考になる部分が当然あります。文系の学生も、面接ではゼミや研究のテーマについて聞くこともあります。知識を問うというより、どんなことに興味をもっているかを知るためです。

 ――書類選考のポイントは?
 志望動機に関しては、会社の採用パンフレットに書いてあるキーワード、たとえば「日本の大動脈」や「社会への貢献」といった言葉をたくさん書いてあるものが多い。もちろん大切ですがそれだけではなく、自分の言葉でJR東海に対する熱い思いを書いてあるかが一番重要です。単に「日本の大動脈である新幹線を……」みたいな誰でも書ける、採用パンフを丸写ししているような文章だと、どこまで当社に入りたいのかわかりません。自分の経験を書いたり、自分の言葉で表現したりしているESがやはり魅力的です。

 ――どんなESが心に響きますか。
 たとえば、自分の子ども時代からの経験を踏まえたものでしょうか。育った環境はすごく狭い世界だったので、広い世界で人と人を結びつける仕事がしたい、だから鉄道に興味があります……みたいな。自分が過去にどんなことを考え、何に一番価値を置いているのか、それらを踏まえたうえで「だから鉄道業に興味がある」ということがわかると、当社への真剣な思いを感じます。
 内容はどのようなものでもいいですが、何よりも、自分の経験を踏まえて自分の言葉でどれだけ書いているかが重要です。

 ――「JR東日本や西日本ではなく、JR東海でなければいけない……」という点は重視しますか。
 もちろんありますね。最後に気になるのは志望度。本当に当社に来るのかというところになるので、なぜ「JR東海」なのかは表現してほしいですね。ありきたりな言葉かもしれませんが、たとえば日本社会、経済全体を支えているスケールの大きさに触れるとか。超電導リニアによる中央新幹線についてはみなさん書きますが、日本経済に大きなインパクトを与えるのみならず、世界にも影響を与える大きなプロジェクトです。そのスケールの大きさを自分の言葉で書いてくれると、これは他社とは違うJR東海に対する志望動機だな、と感じると思います。

 ――JR東日本と併願する学生は多いのでしょうね。
 多いと思いますが、最後の内定場面で当社とJR東日本で迷うケースはあまり多くないように感じます。むしろ「もともと鉄道業界に興味はなかったけれど、説明会を聞いてすごく夢がある企業だという思いが強まり、鉄道会社はJR東海だけ受けている」という学生もいます。鉄道会社との併願ばかりということは全くありません。

 ――鉄道以外だとどんな業種との併願が多いのでしょう?
 系統によってまちまちですが、文系だと商社やディベロッパーなど。鉄道は駅を中心に街の発展に寄与している面もあるので、ディベロッパーとの併願があるのだと思います。
 鉄道業は「安定産業」と思われがちで、つぶれないだろうという理由で志望する方がいますが、それだけでは厳しい。日々愚直に鉄道輸送の安全・安定を守ることも大切ですが、それに満足せず、リニアや海外、そして新しい日本の未来をつくることに挑戦していく気持ちがどこかにないとダメ。そういう面で商社とも共通点があるのかなと思います。「安定」だけではなく、「挑戦」というキーワードに共感する学生に来てほしいですね。

 ――「安定」と「挑戦」はどちらがより大切ですか。
 一番大事なのは安全・安定輸送であり、いくら挑戦しようが大きな事故を起こしてはいけません。愚直で地味な日々の仕事を繰り返して安全・安定輸送を守ることに共感できなければ全然ダメです。そのうえでプラスアルファとして、挑戦する気持ちもないと。もちろん、挑戦とか成長とか華やかな面だけに目がいっている人もNG。両方の目をもっているバランスのいい方に一番来てほしい。面接でも、当社が大事にしている両方の価値観にどれだけ共感してくれているかを見ます。

一人でできる仕事はない チームワークと協調性に共感できるか

■面接
 ――その先は面接ですが、2015新卒採用では何回面接をしましたか。
 職種によってバラバラですが、必ず複数回面接します。多い場合で5~6回。きちんと人物を見るのが一番大切だと思っているので、基本的には1対1で話を聞きます。これも職種によりますが、最初の面接官は、中堅クラスの入社5~6年以上の社員のこともあります。徐々に課長や部長クラスに上がっていきます。最終面接も、事務系は人事部長、技術系は責任者の部長が1対1で面接します。
 30分は話さないとその人のことがわからないので、最低でもそれくらいは時間をかけています。ESをもとに話を聞く感じですね。

 ――面接の段階ごとに見るポイントはありますか。
 特にありません。ただ1次面接では鉄道業のことを知って志望度を高めてもらうことも大切なので、志望度が不十分な学生に対しては、面接時間の中で私どもから業務紹介をすることもあります。

 ――小峰さんご自身が面接に入る際、見るポイントはどこですか。
 一般常識を全然知らないのでは困りますが、ゼミの専攻や鉄道に関する難しい知識を持っているかどうかはあまり気にしません。それよりも、普通のコミュニケーションがとれるかどうか。こちらから質問した趣旨を理解して端的に答える――という言葉のキャッチボールが円滑にできることが一番大事だし、それが仕事の基本だと思います。

 ――コミュニケーションがとれない学生は多いのですか。
 中にはいます。言葉のキャッチボールができなかったり、質問の趣旨とまったく違う答えが返ってきたり、一つの話を延々5分10分話し続けてしまったり。逆に何を聞いても答えが一問一答で返ってくる学生もいます。能力が高くても、まずは自然なコミュニケーションがとれることが一番ですね。あとは、安全・安定輸送と挑戦・成長という当社が大事にしている価値観にどれだけ共感できるかがすごく大切です。

■求める資質
 ――JR東海の社員に絶対に必要な資質ってありますか。
 鉄道業には一人でできる仕事は一つもないので、チームワークと協調性が非常に重要です。東海道新幹線を例にあげると、車掌や運転士は花形で人気職種ですが、それだけではなく車両を整備する人、駅で切符を売る人、夜勤で線路の補修をする土木の人、電気関係の人、本当にいろいろな人の協力がないと新幹線は走りません。
 さらに長い時間をかけてやる仕事も多い。超電導リニアによる中央新幹線も、国鉄時代から計画していたものがようやく着工して、これから様々な社員が協力をしながら推進して、2027年に東京から名古屋まで、2045年に大阪まで開業の予定です。みんなそれが肌に染みてわかっている会社なので、チームワークの大切さを感じられるかどうかはとても大事です。

 ――チームワークと協調性はどう判断するのですか。
 学生時代に集団生活みたいなことはしていたほうがいい。一人でバックパッカーをしていたとか、とてつもない大きなことをやってきたという人と、地味だけれどアルバイトやサークルなどのグループで活動していた人がいたとします。一見派手な経験をしてきた人が良さそうですが、仮に地味だったとしても、何かグループの中でチームワークの大切さを知ったという学生にも魅力を感じます。

 ――面接でそこを確認するのですね。
 私が面接をする時は、大学に限らず中学・高校でもいいんですが、一匹狼でやってきたことよりグループで何をやってきたのかを聞くことが多いですね。大きなことをやってきたとアピールする学生もいますし、もちろんそういう行動力、瞬発力も大切ですが、それだけで友だちの話が一切聞こえてこなかったりすると「大丈夫かな?」とやや心配になります。鉄道業をみんなで支えているという使命感や誇りに共感できる学生は、どこかでチームワークを大切にする生活をしてきたと思うので。

 ――逆に、向かない学生は?
 中央新幹線や海外事業展開、京都キャンペーンなど華やかなところだけに注目していて、「地道で愚直な仕事もあるよ」という話をすると少し抵抗感を持つような学生は難しいと思います。
 一人だけの力で、短期間で成果を出し、それをすぐに報酬にも反映させてほしいというような希望をもっている人には、少し面白くない会社かもしれません。逆に、一人でできることは限られているけれど、長い時間をかけてみんなで仕事をして、達成の喜びをみんなで分かち合えたらうれしいというような価値観を大切だと思える人にとっては、こんなにいい会社はないと思います。

 ――「安全・安心」は、チームワークと協調性に支えられているのですね。加えて、挑戦する気持ちも必要だと?
 口には出さなくても「安定的な会社に入りたい」という学生もいます。前例踏襲とか、積極的に自分の道を切り開くようなところが感じられない人は、これもまた心配です。難しいんですが、どちらかだけでは困ります。

 ――職種によって求める資質が異なる点はありますか。
 総合職は、将来の幹部候補として短い期間でジョブローテーションをして経験を積んでいきます。だからチームワークに加え、課題を見つけて解決する力や、主体的に自分でリーダーシップをとって周りを巻き込んで組織をけん引していく力強さも必要です。
 一方でプロフェッショナル職は、鉄道の現場の最前線で安全・安定を守っていく面が強い職種なので、決められたことをきちんと愚直に守るプロ意識を持っているかどうかが重要、といった違いはあります。
 また、アソシエイト職は、オフィス部門を中心に専門性を高めながら実務の柱となる存在なので、基本となるチームワークや協調性はとても大切ですし、前向きに目の前の仕事に取り組み、また自分のスキルや能力を磨く意欲なども必要ですね。

 ――JR東海を受ける学生に、事前に考えてきてほしいこと、やってきてほしいことはありますか。
 ありきたりですが、いろいろな経験をして広い視野を持つことが大事。勉強でもサークルでも部活動でも何でもいいので、いろいろな経験をし、その中で具体的にどんなことを考えて、どう行動して、そこから何を身につけたかを意識してほしい。常に誰かに言われて流されるのではなく、自分自身で物事を考えてきちんと行動すること。つまり、いろいろな経験をして自分でしっかりものを考える癖をつけることが大事です。

■大学名と2016採用スケジュール
 ――採用時に大学名は意識しますか。
 オープンエントリーですべての大学を受け付けているので、大学名は特に関係ありません。

 ――内定者の結果をみるとやはり有名、一流大学出身者が多いイメージですが。
 コミュニケーション力や基礎的な能力も含めて面接すると、やはりそういった大学の方々が結果的に多く内定をとるという傾向はあるかも知れません。ですが、この大学からしか採らないということは決してありません。採用実績のある大学にはキャリアセンターなどから話があって学内セミナーに呼ばれることもありますが、それ以外の説明会は広く門戸を開いています。

 ――理系の学生には、研究室推薦などがあるのでしょうか。
 研究室から推薦を受けてというルートはなくて、技術系もESを提出し面接を受けてもらいます。採用実績校であれば、出身の研究室から呼んでいただいてOB社員が話をさせていただくような機会はありますが、最終的にはESも面接も他の学生と同じように受けてもらいます。

 ――東海地区出身の大学や学生を優先することは?
 一切ありません。東海地区出身者は少なくありませんが、特別多いというイメージはないですね。東京や大阪の方も結構いますし、北海道出身など全然縁もゆかりもない方もいます。東京、名古屋、大阪が同数くらいのイメージですね。

 ――2016新卒採用のスケジュールについて教えてください。
 基本的には経団連指針を遵守します。3月1日の採用広報オープン以降にプレエントリーや選考にかかわるセミナーをやっていきます。具体的な選考については未定ですが、6~7月初旬ぐらいにESを締め切り、8月からの選考に入る書類選考をするという流れになると思います。

目に見えるインフラ事業 当社以外はできないリニア新幹線

■現場
 ――新幹線の運転士には子どものころみんな憧れますが、大卒の方もいるんですね。
 両方います。昔はいわゆる現場で働く人は高校卒をメインで採用していましたが、高学歴化、少子化が進んだ関係で2005年からプロフェッショナル職の大卒を新たに採用しはじめ、数が一気に増えました。運輸系統で入社した社員は、主に、駅員、車掌、運転士という三つの職種を人事異動で経験します。

 ――総合職の社員が運転士を経験することもあるのですか。
 一部の系統では現場研修という位置づけで、入社してしばらくの期間は運転士として勤務する機会があります。将来会社をけん引する立場になったときに現場でどんなことが行われているか、現場の社員が何を考えて仕事をしているのかわからないと会社をうまく導けないので、勉強の意味も含めてそういう仕事を経験するんです。

 ――小峰さんも、現場を経験したのですか。
 私は入社して1年半ぐらいの間、駅員と車掌と運転士をそれぞれやりました。新幹線の運転も数カ月間1人でしました。新幹線の運転をするためには学科研修4カ月、実技研修6カ月を受けて、国から定められた資格をもらうことが必要です。運転士の経験を積むことで安全面でも正確性という面でも非常に責任の重い仕事だということを肌で実感できました。新幹線はATC(自動列車制御装置)もありますが、駅に入って最後に停止するところはマニュアルなんです。また、駅員として現場で働いて、すべての利用客のサービスを向上させるために大変な苦労があると感じました。
 東海道新幹線は安全性ももちろんですが、これだけの頻度でかつ定時で走っている高速鉄道は類がなく、世界一のシステムだと思います。これは50年間の歴史で築き上げたノウハウによるもので、すべての社員が、それに対する誇り、使命感を持って働いています。

■どんな会社
 ――JR東海はどんな会社ですか。
 何でしょうね……。「プロ意識」であったり、自分が日本経済を支えているという「誇り」、「使命感」は社員全員が持っていると思います。それがなくなったら新幹線の安全・安定輸送もなくなってしまうでしょう。現場に出ている社員もそうでない社員も、全員が使命感を持って働いている会社だと思います。

 ――入社時の研修で安全意識や誇りの意識を徹底するのでしょうね。
 そうですね。新入社員研修やそのあとの現場研修も含め、現場で一緒に働くことで社員の仕事に対する熱い思いや使命感、誇りやプロ意識を肌で実感する機会がたくさんあります。私の入社時を思い出しても、いい意味で「予想以上の社員」がたくさんいました。

 ――「予想以上の社員」とは、たとえば?
 プロ意識という点でいうと、運転士でいえばブレーキをかけるタイミングですね。安全、正確なのはもちろんですが、どのタイミングでどういうブレーキをかけるかによってお客様の乗り心地も変わるので、「そこまでこだわって運転をしている」と先輩から聞いて感銘を受けました。

 ――超電導リニアによる中央新幹線がいよいよ着工しましたが、今後JR東海はどうなっていくのでしょうか。
 東海道新幹線の老朽化への対応や、災害時のバイパスといった意味も含めて中央新幹線を建設しています。これだけの大きなプロジェクトを自己負担でやるのは、それこそ日本の大動脈を担っているという使命感であり、誇りです。東海道新幹線があるからいいということではなく、日本経済をもっと活性化する、将来起こってしまうかもしれない災害に備えて東京と大阪のつながりを密にし、大量輸送を担うことができるのはJR東海以外にないという強い使命感、誇りをもって中央新幹線プロジェクトを進めています。そこを理解し、「安定」だけでなく「挑戦」もきちんとしてもらえるような学生に来てもらいたいですね。

 ――仕事の理想と現実、やりがいと厳しさについて教えてください。
 車掌、運転士などお客様から目立つ仕事は注目も高い一方、日々の地道な仕事もたくさんある。できてほめられることは決してないが、できなかったときに周りにかなりの影響を与えてしまう事業なので、そこに理想と現実のギャップもあると思います。
 やりがいという面でいうと、我々はインフラ事業の会社ですが、電力やガスなど目に見えない部分が多い事業と違って、目に見える形で人の役に立っていることがすごく実感できる。出張などで新幹線に乗ると、ホームで遠距離恋愛のカップルや単身赴任のお父さんや、夏休みはおじいちゃん、おばあちゃんに会いに行くお孫さんを目にします。もし東海道新幹線がなくなってしまったら、みんなすごく困ってしまうだろうな、絶対に守らなければいけないな……と肌で感じられる瞬間がたくさんあります。
■小峰さんの就活
 ――小峰さんご自身の就活について教えてください。
 1998年に入社して、いま入社17年目です。入社当時は品川駅も名古屋のセントラルタワーズもまだできておらず、リニアも計画はあるがまったく形になっていない時代。旧国鉄が民営化されて、JR東海発足からまだ11年目だったこともあって、まだまだ発展途上の会社で、そういう会社でできることはたくさんあるんじゃないかと感じていました。
 私は旅行が好きで、人と人との出会いを創る仕事をしたいという思いがありました。それに加えて、目に見える形で社会に貢献したいという思いもあり、公共交通機関に興味をもちました。

 ――鉄道会社は他にも受けたのですか。
 JR東日本さんにもエントリーはしたんですが、就職活動を進めるうちに、JR東海の魅力を強く感じるようになりました。JR東海は官僚っぽいお堅い会社かなと思っていましたが全くそんなことはなく、JRになってから採用した若い社員がすごく活躍している、フレンドリーでアットホームな雰囲気を感じました。「一緒に働きたい」と思える社員が一番多くいたのがJR東海という会社でした。

 ――ほかの業界は? JR東海に決めた決め手は何でしたか。
 経済学部だったので金融系や商社なども受けましたが、決め手になったのは一番目に見える形で社会に貢献できる、肌で実感できるという点でした。
 今も「社会貢献をしたい」と言う学生は多いのですが、私は「社会に貢献していない会社は一つもない、していなければ倒産している」とよく言います。どういう形で貢献しているのかの違いだけです。ただ、目に見える形で貢献していると感じられる点では、鉄道業は一番だと思いますし、中でも、日本経済全体を支えるというスケールの大きさを感じたのがJR東海でした。

■印象的な仕事
 ――入社してからの経歴を教えて下さい。
 最初は現場研修ということで駅(新大阪駅)、車掌、運転士を全部で1年半やりました。あとはざっくり言うと半分は人事、半分は鉄道以外の関連事業の仕事です。百貨店やホテル、駅ビルなどの経営管理や経営の分析といった関連事業と人事を行ったり来たりしていました。2014年7月まではジェイアール東海高島屋に出向し、3年間くらい人事を担当していました。こんなふうに仕事の幅が広いのも当社の一つの特徴だと思います。
 勤務地は、大阪に2年間、あとは東京と名古屋が半々ですね。

 ――一番印象に残っている仕事は?
 入社3年目ぐらいのとき、新入社員研修のインストラクターとして、高校卒の若い新入社員二十数名を1クラス担当し、担任の先生として研修センターに泊まり込みで教育をする仕事をしました。高校から社会に出てきた子はいい意味で真っ白な状態で入ってくるんですが、学生と社会人との違いを教えたり、鉄道業の価値観を教えたりしていく過程で、みるみるうちに生徒たちが成長していく姿を見ることができたのが一番のやりがいでしたね。

 ――どのくらいの期間ですか。
 まるまる2ヶ月です。研修センターに泊まり込みで睡眠時間も毎日2~3時間、朝から晩まで授業をして、夜は日誌を添削し、次の日の予習をして朝6時から課外活動をして……みたいな生活。新入社員だけでなく教育係である若手社員の教育という面もあるんです。鉄道業は人に支えられている会社なので、当社の教育制度は他社に比べてすごく充実していると思います。
 何よりうれしいのは、最近新幹線に乗ると当時の私の生徒が運転士や車掌として活躍している。あれだけ何もわからなかった子たちが立派に成長して東海道新幹線を守って社会に役立っている姿を見ると、すごくやりがいが大きくてうれしいなと思いますね。

 ――もともと人事の仕事に興味があったんですか。
 たまたまですが、どんな仕事にも面白みは絶対にあると思います。学生からよく「配属の希望ってかないますか」と質問されます。もちろん希望は聞きますが、全員の希望がかなうわけではありません。ただ、学生時代に思っている仕事に対するイメージって本当にわずかです。JR東海に対する熱い思いがあり、当社が大切にしている価値観に共感できている方なら、どのポジションで仕事をしてもJR東海を支える仕事であり、ひいては日本の経済、社会を支える仕事なので、絶対に面白みを感じることができると思います。私も人事を希望していたわけではありませんが、やってみるとすごくやりがいをもてる仕事でした。だから、学生には「もっといろんなことにチャレンジしたほうがいい」とよく言っています。

みなさんに一言!

 JR東海は、安全・安定輸送を守りつつ、挑戦・成長を大事にしています。会社が大事にしている価値観、チームワークや協調性、使命感や誇りに強く共感してくれる方にぜひ来てほしいと思っています。
 鉄道業はなかなかイメージしづらい業界ですが、説明会やセミナーに来てイメージが変わったと言う学生は多い。ぜひたくさんの学生に来ていただきたいと思います。一方で、当社も含め、興味がないと思っていた業界が意外にすごく面白かったり、ふだん聞けない話を聞けたりすることもあるので、できる限りいろいろな会社を回って自分の人間性を磨く機会にしてください。一生の中でもこの数カ月は貴重な期間です。社会人になると他社や違う業界の話を聞くことはなかなかできません。さまざまな会社を回っていろいろなことを考えるうちに、本命の企業の志望動機も固まったりする。
 大変だと思いますが、この期間に頑張れない人はこれから社会人になっても、いざというとき頑張れないんじゃないかと思ってしまいます。妥協せず、自分が納得いくまで一生懸命頑張ることが大事です。

東海旅客鉄道株式会社

【運輸】

DEAR JAPAN ~次なる日本の創造~  JR東海は、日本の大動脈である東京~名古屋~大阪の新幹線輸送、名古屋・静岡を中心とした東海地域の在来線輸送を担うとともに、鉄道事業との相乗効果が期待できる分野を中心に関連事業を展開しています。また、超電導リニアによる中央新幹線計画、高速鉄道システムの海外展開など、常に挑戦し続けながら世の中に貢献しています。  その中でJR東海の社員は、使命感と熱意、そして誇りを持ち、多岐にわたるフィールドで活躍しています。自らの手で日本経済を支え、未来を創造する仕事に興味のある方、是非お待ちしています!