大成建設株式会社
2016シーズン 【第9回 大成建設】
差がつく「なぜインフラ志望?」 仕事は1年目からドンと任せる
大成建設 管理本部人事部人事室課長代理 河野耕作(こうの こうさく)さん
2015年02月02日
――2015年入社の新卒採用の内定者は何人ですか。
2015年の入社予定者数は総合職と専任職あわせて300人です。内訳は全国転勤のある総合職が267人、地域限定の専任職が33人です。
職種は、建築・土木・事務の3つに大きく分かれます。建築・土木は理系出身者対象、事務は文理問わず、全学部出身者が対象となります。
――2014年入社の新入社員数は?
総合職197人、専任職25人の計222人です。
――今年は採用人数が急増したんですね。
弊社の中長期的な業績予想をベースとして、必要要員数を算出し、採用人数を設定しています。2015年は昨年よりも増員しました。
――男女比はどうでしょう?
2015年入社の女性は54人、総合職が26人で専任職が28人です。専任職は33人中28人が女性です。入社後のワーク・ライフ・バランスを考えて専任職を選ぶ女性が多いですね。
2014年入社の女性は全部で29人、総合職が12人で専任職が17人です。
――建築・土木の仕事に携わる女性を「けんせつ小町」と呼ぶネーミングを最近、業界が発表しましたね。女性社員の数は増えているんですか。
増えていますね。積極的に採用しようという意識もあります。子どもの数が減るなか女性の活躍は会社の成長には不可欠。男性、女性をフラットに見て、いい人にはどんどん来てもらおうというのが今の大成建設の考え方です。
ちなみに、私が入社した2004年は同期が110人いましたが、女性社員は1名のみでした。この10年で様変わりしました。
――11年前は1名だけだったんですか⁉ では、専任職や総合職で女性の採用を始めたのはいつからですか。
2000年以降ですと、総合職が2003年入社、専任職が2004年入社からです。弊社では、2007年に「女性活躍推進室」という専門の部署をつくり、女性社員の活性化対策に取り組んできました。その後室名を「人材いきいき推進室」へと変更し、現在、ダイバーシティーに関する様々な活動に取り組んでいます。
――会社の雰囲気もかなり変わったんでしょうね?
変わっていますね。もう女性がいて当たり前という文化になってきたと思います。外国籍の方も毎年5人前後入るようになりました。
――地域限定の専任職ですが、地域はいくつに分かれていますか。
専任職の採用エリアは、北海道、東北、首都圏、北信越、名古屋、関西、中国、四国、九州の9地域です。
――専任職を志望する男子学生もいるんですね。
います。地域によっては地元志向が強く、地元に残って貢献したいから地域限定職という意識の方もいます。ただ女性のほうが多いですね。
――技術系は大学院修了者が多いのですか。
そんなことはありません。職種によって異なりますが、全体では、学部卒のほうが院卒より多いですね。設計職などは結果として院卒が多く面接に残るということはありますが、院卒を優先して多く採ろうという意図はありません。
――学部学科でいうと、やはり建築と土木が中心なんでしょうね。
技術系の職種ですと、そうなります。たとえば、建築施工職の場合、会社に入ってから「一級建築士」を取らなければなりません。現場トップの「作業所長」になるには基礎知識の習得が大切です。建築士は、建築学科もしくは土木学科を出ていないと受験資格がないんです。休日に学校に行くなどしてみんな必死で取っています。
土木施工職に関しても「一級土木施工管理技士」という土木専門の資格を取る必要があって、これも土木の勉強をしていないと難しい。だから基本的には、土木学科、建築学科を出た方がほとんどです。
――理系でも建築・土木以外は難しい?
そんなことはありません。たとえば、建築の中に「エンジニアリング」という職種があります。弊社は人工で真水を海水にする技術を持っていて内陸部の水族館などで活用されています。そういったところを担当する社員は建築学だけではなく、機械工学などの知識が必要です。建築学科・土木学科以外の理系出身社員も多く活躍していますよ。
――技術職の採用は、学部学科を応募の条件にしているんですか。
ええ。募集要項に応募条件のマトリックスがあります。横に職種の一覧、縦に出身学科系統の一覧があって、該当するところが着色されています。たとえば建築施工なら建築系、土木系、その他技術系の学科が対象となり、事務なら全学科学科が対象となります。
今は仕事も異動も男女同じ 学生時代の経験で「伸びしろ」見極める
――エントリーの状況を教えてください。
正確な数字は公表していませんが、エントリーシート(ES)を出す本エントリーは数千人規模です。プレエントリーは、ウェブでのエントリーが普及した2000年代後半に一気に増えた時期がありますが、ここ4~5年はほぼ横ばいです。
――女性のエントリーは増えていますか。
増えています。自分の人生や将来をよく考えている、まじめな方が多い印象があります。建築や土木を学んでいる方は「先輩も周りもみんなゼネコンを受けるから自分も受ける」という人が結構多く、それが志望のきっかけになっています。ただ女性の場合は「結婚して子どもができたとき、仕事もやりたいけど家庭も大事にしたいので地域限定の専任職がいい」と、一歩先のライフプランまで考えて受ける方が多いです。
――入社後の配属は男女で分けますか。
一切区分けはしていません。仕事は同じですし、異動も普通にあります。
――海外赴任もありますか。
基本的に、入社間もない時期に、海外に行くことはありません。建築など現場の管理は海外も国内もやることは変わらないので、まずは国内で基礎を学び資格をとって、それを生かして海外で活躍してほしいと考えています。
■採用スケジュール
――2015年新卒採用はどんなスケジュールでしたか。
12月1日にプレエントリーを始めましたが、技術系と事務系で選考フローは違います。技術系はプレエントリー後にウェブテストを受験してもらい、合格したらESの提出が可能になります。ウェブテストでは数学や国語、行動特性などについて出題し、数理系に限らず複合的に見ます。通過率は、60~70%です。2~3月にかけてESを提出してもらい、そのあと筆記試験をしました。
――筆記試験はどんな内容ですか。
建築と土木で内容は違いますが、専門問題と一般問題(英語、国語、数学、時事問題など)に分けています。専門問題はかなり専門性が高いので勉強していないと難しいと思います。
■面接
――4月に入ってからの面接はどんな形式でしたか。
これも職種によって違いますが、回数は2~3回。基本的には、学生1人対複数の面接官という形の個人面接です。面接官の人数は面接によって違いますが、最終面接は5人前後です。時間は、最終面接で15分から30分ぐらい。その前は部門によって違いますが、かなり時間をかけています。
――面接は「本部」別に実施するのですか。
設計、エンジニアリング、施工など様々な職種があり、職種毎に異なるフローで選考を進めています。
――面接で見るポイントを教えてください。
いくつかありますが、たとえば事務の面接で重視しているのは「本人の伸びしろ」です。実は、いい大学とか部活で日本一になったとか、現時点での立ち位置はあまり関係なくて、会社に入ってからどれだけ成長できるかの可能性を見るようにしているんです。
――将来の可能性をどう見極めるのですか。
会社に入ると「壁」の連続で大変だと思いますが、それを自分なりに消化してステップアップしていってほしい。そのためには、今までの人生で何を考え、どう行動して困難を乗り越え、どういう結果を得てきたかという「過程」が大切です。そういう過程をちゃんと経験していれば、入社後どんな壁もそれなりに越えて、自分なりに成長していけるだろうと思うんですね。ですから、学生時代をどう過ごしてきたかを聞きます。
――みんな面接できちんと学生時代を語れますか。
海外で何かに挑戦したり部活を頑張ったり、いい経験をしている方はとても多いのですが、それを自分でうまく振り返ることができていない方が多い。海外に行った、部活を頑張ったという事実はあまり重要ではありません。なぜ海外に行き、そこでどんな困難があって、どう自分なりに考え、どう行動したのかを知りたいんです。でも、そこを突っ込んで聞くと、自分の中で整理できていず「そう言われると、ちょっとわかりません」という回答になることが結構多い。非常にもったいない。逆にそこをちゃんと答えられる方には説得力を感じます。自分のこと、自分が社会に出てからのことをよく考えている方がいいですね。
――今年、そんな学生はいましたか。
今年の内定者の中に「学生時代に頑張ったのはコーヒーショップでのアルバイト」という人がいます。世間によくいる普通の大学生ですが、なぜコーヒーショップのアルバイトをやって、どんなことを考えて、どう行動してというストーリーを言えるんですよ。
――どんなストーリーがあったのでしょう?
東日本大震災の時、混乱する中でコーヒーショップの店員が「みなさん落ち着いてください」とコーヒーを無料で配っていた。それに感動してアルバイトを始めたそうです。仲間や先輩もいい人で、自分も社会に貢献できる仕事に就きたいと考えた。そこで震災のことをいろいろ調べていたら大成建設は震災復興のためにいろいろやっていることを知り、それで受けた……という話でした。できすぎたストーリーなんですが、うまく自分なりに考え、「ああ、この学生は社会でこういうことをやりたいんだな」というイメージを湧かせてくれた。こういう学生に出会うと、いいなと思います。でも、そういうストーリーはみんな持っていると思います。
人付き合い苦手な人は向かない 新聞・本で自分から情報を取りにいけ
――事務職のESには「あなた自身の学生時代の重大ニュース3つ」という項目があります。どんな狙いですか。
本人の個性を見てみたい。堅い質問ばかりだと構えた文章になるので、「私にはこういう面白い面もある」というのを知りたい。三つ考えてもらうと、だいたい一つ目、二つ目は堅いニュース。でも三つ目は、なかなかニュースがないので、プライベートな話題が出たりする。そこを面接で聞くと結構面白いんですよね。
――「文系社員として建設の仕事に携わる魅力」という欄もあります。
当社もTV等で企業広告CMを流していますが、就職活動中の方は、企業の良い部分に意識が偏りがちになると思います。でも、そういういいイメージだけを持って入ってくると入社してからギャップを感じる可能性もある。だから、建設会社で働くことをどれだけ理解しているかを知りたいと考えています。
――この質問は優劣がはっきり出そうですね。
OB訪問や企業研究を重ねて勉強してくる方と、とりあえずESを出した方の差が出ますね。実際に社員に会って話を聞いているかどうかは大きなポイントです。
――「あなたの夢を聞かせてください」という項目は、文理共通ですね。回答に傾向はありますか。
まちまちですね。ただ、当社に応募する方は「インフラで社会を支えたい」という意欲を持っている人が多い。たとえば海外に行ってインフラも整備されていない貧しい環境を見て、こういうところでインフラ事業に携わって社会基盤を支えたいというような志望動機が最近多いと感じています。
――みんなが書くとすると、どこで差がつくのでしょう?
要はそれなりの背景、理由づけができているかどうかですね。建設業界の何がいいのかと聞くと「大きいものをつくりたい」「ダイナミックな仕事をしたい」という答えが多いのですが、何で大きいものに興味があるか、何でダイナミックなものに携わりたいか、その理由は人それぞれ違うはずです。それをきちんと考えて、ESや面接での回答に落とし込めているかどうか。結論は同じような答えになったとしても、そこに至るまでの過程を自分で分かったうえで落とし込めているかどうかで、違いは一目瞭然です。
――ESを読むと素晴らしいのに、会うとがっかりというケースはありますか。
結構あります。結論から言うと、人はESだけでなく、会ってみないと本質的にはわかりません。ですから、なるべく多くの方と面接するようにしています。建設会社は現場で職人さんやお客様と一緒に仕事しながら、共に闘っていく仕事です。だから人とコミュニケーションを取るのが好きじゃないというタイプの方は、この仕事にはあまり向いていません。
――逆に、会ってみたらよかったという例は?
ESは適当に書いてきて、いま一つだけど、一応会ってみたら「なんだ、いいじゃないか」という方もいる。たまたま面接に進めましたが、なんでもっと力を入れてESを書かないのか。もったいないですね。
――大学名は重視しますか。
選考上の絶対的な条件にはしていません。出身大学の幅はかなり広いと思います。上位大学だけではなく、地方を含めた様々な大学の方に来て欲しい。私たちも入社したら大学はあまり関係ないことがよくわかっているので、幅広い大学から採ろうとしています。
――2016年新卒採用のスケジュールはどうなりますか。
現在検討しているところですが、ESは、3月1日にプレエントリーが始まったらすぐにでも提出してもらえるようにして、締め切りは5月頃かなと考えています。その後の面談や面接については、状況を見ながら決めていく予定です。
■新聞と教養
――事務系には、専門的な筆記試験はないのですか。
事務は筆記試験がない代わりにテストセンター試験を受けてもらいます。ES提出後、テストセンターで受験、その後リクルーター面談というフローです。事務系は時事問題のテストはありません。
――技術系に時事問題を入れている理由は?
建設業界はかなり仕事が忙しく、仕事以外の情報は自分で取りにいかないとなかなか入ってこない。学生時代にそれすらできていなかったら、社会に出てからも情報は取りにいけない。ゼネコンマンだからって建設の仕事だけやっていればいいわけではないので、自分から情報を取りに行く感覚を持っている人に来て欲しいんです。当然ですが、これは事務系でも言えます。
――新聞を読んでいる学生と読んでいない学生の違いを感じることはありますか。
ありますね。時事ネタを振ったときにちゃんと返してくれる方と、全然返ってこない方がいます。新聞と本を読んでいるかどうかは気にします。たまに全く本を読んでいない方も来ます。新聞や本は教養ですよね。「施工管理は体力仕事だから頭を使わない」のではなく、ちゃんとそういう教養も持って活躍してほしいというのが会社としての考えです。
■ゼネコンの採用
――理系の就職というと、かつては研究室や教授の推薦が当たり前でしたが、今はどうですか。
職種によって異なりますが、基本は一般公募ですね。リクルーターが母校の研究室に行って誰か推薦してください、応募させてくださいという形式はあります。しかし、その場合も普通にウェブ試験も筆記試験も面接も受けてもらいます。
――複数社に内定して、他のゼネコンに行ってしまうケースもありますか。
あります。学生もいろいろな建設会社を受けて、リクルーターを見ながらどこへ行くかを決めるのが一般的だと思います。同規模のゼネコンから複数内定をもらった場合、何が会社選びの決め手かを学生に聞くと、「最後はリクルーターの人柄」だと言います。だから我々もそこの手厚さで他社と差別化していくしかないと思っています。
――ゼネコンや設計会社以外に、技術系の学生の内定が競合する業界はどこですか。
プラント会社や鉄道会社、不動産会社等のインフラ業界が多いですね。事務も同じ傾向です。
■インターンシップ
――インターンシップについて教えてください。
技術系は基本的に現場のインターンシップです。日程は5日間で、現場で施工管理を学んでもらいます。工事管理者の一員として、工事が進捗表通り進んでいるか、安全性はどうかなどを現場を見ながらチェックする仕事を体験してもらいます。全国で募集をかけて、北海道の人は北海道、首都圏なら東京の現場を見てもらう。一般公募で2014年夏から秋にかけて受け入れたのが50人、2015年2月にも実施する予定です。
――事務系のインターンシップもありますか。
はい。例年実施してきましたが、今年は趣向を変えました。5日間のプログラムを三つのタームに分けて、最初の3日間は「大成建設をPRする映像をつくる」というテーマでグループワークをしてもらう。自分たちで建設業界ってどういうところなのか考えたり、社員の話を聞いたりしてPRポイントを探してもらい、最終プレゼンする流れです。次のタームは現場見学会で、首都圏の大きな現場に足を運んでもらい「ああ、現場ってこんなところなんだな」と実感してもらう。最後は社員との座談会で、具体的な仕事の話を間近で聞いてもらいます。こちらは30~40人×3回で100人くらいですね。
――いずれもかなり人気なんでしょうね。
文系はこういう形でやるのは初めてだったのでどのくらい集まるかなと思っていましたが、約300人応募してくれました。
――インターンシップの狙いはなんでしょう?
建設業界は学生にとってなかなかイメージが良くありません。私も2004年に入社する前は、いわゆる3Kのイメージが強く、あまり良い印象を持っていませんでした。入社して会社や仕事内容を理解するようになってから、イメージが大きく変わりました。もともとスーパーゼネコンには、文系対象のインターンシップをやっている会社はありませんでした。まずやってみて、当社に限らず建設業界全体のイメージが少しでも向上してくれればというのがもともとの始まり。少しでも「建設業界って面白そうだよ」みたいな話が広がればいいと思っています。
また、採用につなげようとは思っていません。結果的に来てくれた方が当社に応募してくれればいいとは思いますが、インターンから採用につなげる特別ルートはありません。
風通しがいい分、仕事はハード まじめで熱い社員たち
――大成建設って、どんな会社ですか。
簡単に言うと、ものづくりの会社です。建築事業と土木事業を中心にして「人がいきいきとする環境を創造する」というのが当社のグループ理念。人の見えないところで社会を支えているということが我々の仕事の根幹にあります。
――「地図に残る仕事。」というキャッチコピーも印象的ですね。
学生のみなさんがイメージしやすいので、採用の時には前面に出すようにしています。ただ、たとえば地下で穴を掘る仕事等は地図には残らない。実は、「地図に残る」ということより、「人がいきいきとする環境を創造する」ということに意識が強い社員も結構いるんですよ。
――どんな社員が多いのでしょう?
当社のいいところは、社員のタイプに偏りがないところです。学生さんからよく「ほかのゼネコンと何が違うんですか」と質問されます。私たちはいろいろなタイプの人間がいるのが特徴だと思っていますし、それを実現するように採用もしています。
ゼネコンですから「ザ・体育会」な人物も一定数はいますが、そんなに多くない。頭のいい社員ばかりでも、遊んでいる社員ばかりでも偏りができてしまう。いろんなタイプの人間が違う発想で意見を出し合いながら、新しい価値を創造したいと考えています。
――社風は?
他社の方からは「大成さんって、結構意見言い合いますね」と言われることがあります。タイプが違う人間がいるからこそ、そういう社風も生まれたのかなと思います。
スーパーゼネコンの中で唯一の「非同族会社」というのも大きな特徴ですね。誰でも社長になれる可能性があるので、みんな意見を出し合いながら自分たちで会社を支えていこうという意識がある。弊社ももともとは同族会社でしたが、戦後の財閥解体のとき、社員自身が会社の株を買い取って非同族会社になった。そこから社員が自分たちで会社を支える意識が生まれ、下の世代に伝わる一方でいろいろなタイプの社員がいて新しい発想が生まれるDNAがあるのだと感じます。
――同業他社との違いを感じることはありますか。
学生に聞くと「堅くない」とか、「人がいい」と言われることが多いですね。そういう雰囲気が伝わっているといいですね。
あとは、新しいもの好き、常に新しいことにチャレンジする社風もあります。先ほどの水族館の海水化事業もそうですが、「日本初」が好きな会社なんです。昔だと日本初の迎賓館である「鹿鳴館」や、初の洋式ホテルである帝国ホテル、初の地下鉄銀座線、初の超高層ホテル「ホテルニューオータニ本館」など。こういうのを「やろうぜ!」という気風が昔からあったようです。昨年、トルコのボスポラス海峡の鉄道トンネルが開通したのですが、非常に難しい工事でした。こういうプロジェクトを我々でやってみようという社風があります。
――東京都内で進行中の代表的なプロジェクトは?
六本木の再開発です。また、今回新聞記事にも掲載されているとおり、新国立競技場の技術協力業務という形で参画することになりました。工事施行者となれるよう、全社をあげて取り組んでいます。いまの国立競技場も元施工は弊社です。
――東京五輪は建設業界には追い風ですから、学生にアピールしそうですね。
そうですね。一生に一回あるかないかの大イベントです。ビッグプロジェクトなどを手がけたら、自分の心の中に一生残ると思います。こうした世界的なイベントに携わることができるかもしれないのも、ゼネコンの魅力だと思います。
■やりがいと厳しさ
――理想と現実のギャップもあると思います。建設業界や大成建設の仕事のやりがいと厳しさについて教えてください。
仕事は非常に厳しい。当社は風通しがいいと言われますが、民主的に物事を決めてどんどん意見が言える反面、若いうちから責任を任される会社でもあります。その分仕事はハード。特に若いうちは右も左もわからないうちから仕事をドンと任されるので、本当にハードだと思います。
もちろん任せきりにするわけじゃなくて、失敗しそうになったら周りが助けます。ただ会社としては一つひとつ手ほどきしながら育てていくというより、ある程度任せて本人がもがき苦しみながら、失敗しそうになったら周りが助け、また新しい仕事を与えて、だんだん成長させていく環境を与えている。だから、心が折れそうになる場面も人それぞれあると思います。
ところが、人間って不思議なもので、自分で苦労してできたときにこそ、しっかりとその仕事が身について、達成感も生まれる。苦労した分だけやりがいがあるし、工事が完成した時は感動を仲間と共有できる。大成建設の社員だけじゃなくて、お客様や職人さんとも共有できるのです。
私も2年目に初めて札幌で大きなビル建設を担当し、最後に完成したとき所長以下全員で職人さんとみんなで万歳をしました。そんな経験、それまでの人生ではありませんでした。ふだん怖い所長も、そのときは優しいんですよ。5年、10年たってそのメンバーで会って、「あのときはよかったね」と言える経験ができたことは本当にすばらしいと思います。
札幌は雪が降るので冬は工事がとても厳しいのですが、そんな中で3年かけてビルを造った。お客様の会社も、本来我々が「仕事をいただいてありがとうございました」と報告するところ、最後は東京本社から上の人たちが来て我々のために慰労会をしてくださった。そんな風に仲間ができ、目に見えて自分の手がけた仕事が残るので、やりがいを感じやすい業界だと思います。
――事務系の仕事を、わかりやすく教えてください。
事務の仕事は非常に幅広く、ざっくりした言い方をすると「技術以外の全部」なんです。プロジェクトは予算規模が数十億~数百億円という非常に大きなものが多く、よく一つの会社に例えられます。会社を運営するとき技術力は当然必要ですが、それ以外に経理・会計の仕事、法律の仕事、近隣住民との調整といった総務的な仕事、労務管理などの人事的な仕事を進めていかなくてはなりません。現場の規模によりますが、基本的には、それらを全部1人でやるんです。
――えっ、1人でですか⁉
あ、事務補助の女性社員や派遣社員の方々と連携しながら、ですが。それを2年生位で、とりあえずやれって言われるんです。当社は技術系も事務系も「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)指導員」というのがいるんですが、私の時は上司だったその人から「お前がやれ」と言われ、現場にいるのは私と事務補助の女性の2人だけ。困ったら電話してこいって言う。本当に困るので、毎回電話しっぱなしで、失敗しそうになるとその人が来て助けてくれて、終わったらいなくなるんです。技術系トップの所長からは怒られるし、どうにかしなければいけない。お客様からの要望も、窓口は私なので分からないながらも夜中まで1人でがんばってやっていく。これはハードでした。ただ、教育の仕方はOJT指導によって異なります。若手社員と常に一緒に行動する指導員もいますね。
――一つの現場に事務系社員は1人なんですか。
1人で一つの現場に常駐というケースは少なくて、基本的には1人の事務の社員が複数の現場を兼務しています。大きな現場だと1現場に2~3人つくこともあります。
――河野さん自身の就活を振り返ってください。
私は理学部で8割くらいは大学院に進むような学部だったんですが、あまり大学院で勉強しようという気がなくて……。大学時代にアメリカンフットボールをやっていて、尊敬する先輩がマスコミ業界に行かれたのですが、なんとなく自分も行きたいなというところから就活を始めました。その先輩に相談したら「なんでこの業界なのか考えろ」と言われて、業界や企業について一生懸命考え始めました。私は大学ではケガをしがちで、周りに助けられてどうにか4年間やってきたので、社会に出たら今度は人の役に立つ仕事がしたいと思うようになりました。建設会社は社会の基盤を支えているから、非常に人の役に立つと知った。特にスーパーゼネコンは国内外で大きな仕事をしているので、より多くの人の役に立てると考えました。
――社会基盤をつくる業界は他にもあります。建設会社に行き着いたきっかけは?
たまたま読んでいた本で大成建設を知って、ネットでプレエントリーしたら全然知らない大学の先輩から「ちょっと話聞きませんか」とか言われ、聞いてみたら非常に面白そうだった。それで選考に進んで内定をもらいました。建設会社はここしか受けていません。選考段階で多くの社員と会いましたが、「この方々となら自分らしく働ける」と感じたことも入社の決め手の一つです。あとは単純な話ですけど、大手5社の名前で一番かっこいいのは大成建設かなと。今でも入ってよかったと思っています。
――入社後はどんな仕事をしてきたのですか。
最初は、北海道で現場の仕事をしていました。札幌、稚内、旭川、室蘭、苫小牧と、概ね1年ごとに引っ越ししながら約5年間。稚内ではホテルや温泉商業施設のプロジェクトを担当しました。現場事務所に当時社員が8人ぐらい。稚内市内にマンションを借りて、みんなそこから通う生活でした。
そのあと半年間、カタールのドーハで空港建設のプロジェクトあって、研修という形で行きました。帰国後は人脈作りも兼ねて、国土交通省の外郭団体である「建設経済研究所」という研究機関に2年間出向しました。2011年の11月から本社の人事部です。
ドーハですね。カタールって、夏場の気温が50℃以上で、湿度は100%あります。大変な環境のところに日本人社員と、職人さんらが100人弱。全員英語が堪能なわけではないのですが、インド人やフィリピン人など5000人くらいいるワーカーたちと、過酷な環境の中で片言の英語で必死にコミュニケーションをとりながら働く社員の姿を間近で見ました。こういう人たちの会社っていい会社だなと、すごく感動しました。もともと建設物自体に興味があって入社したわけではありませんが、まじめで熱い想いを持った人がたくさんいて、そういう人たちと仕事ができる、一緒にいられることがモチベーションにつながっている。やる気がある人がいるとこっちも燃えてくるし、ましてやそれが50歳とか60歳の自分の父親やもっと上の世代の人なんですよ。30歳ぐらいの若者がこんなことでヒーヒー言っていられないなと感じて、モチベーションが上がりました。
(写真は大成建設のポスター)
みなさんに一言!
最近、学生に「大手志向」が強まっていると言われ、「大手に入れば安心」という言葉も耳にします。でも、就職はゴールじゃなくて、入ってからが重要。会社に入って安心するのではなく、自分自身が会社を変えてやるという気持ち、熱い思い、志を持った人にぜひ来てもらいたい。
仕事が厳しいという話をすると、「自分はここまでしかできません」という方がよくいますが、みなさんの可能性は未知数。だから、「何ができるか」じゃなくて、「何をやりたいか」を考えて飛び込んできてほしい。自分で限界を定めてしまって、「私はこういう大学だから、こういう企業でいい」と考えている方がいます。でも学力レベルなんて本当に関係ないし、やる気があればいくらでも可能性はある。自分で限界を設けず、可能性を信じて、社会でやりたいことをよく考え、積極的にチャレンジしてください。それが自分にとってもプラスだと思います。社会に出ても、自分の可能性を信じてください。
大成建設株式会社
【建設】
大成建設は140年に及ぶ歴史の中で、日本全国・世界各地で数々の国家的プロジェクトやランドマークの建設に携わり、人々が豊かで安心して暮らせる社会基盤整備の一端を担ってきました。ただ、わたしたちが造っているものは単なるハコモノではありません。家族と行った水族館やスタジアム、友達とスキーに行くたびに通るトンネル、幾度も徹夜で課題をこなした大学の図書館等、建造物は人々の思い出を生み出すステージです。わたしたちの仕事は、人々の何気ない生活を支え、思い出と共に記憶に残り続ける舞台造りなのかもしれません。一人ひとりの人生の舞台を想像する。それが大成建設の「地図に残る仕事。」です。
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