就活体験レポート

放送局 内定者の就活体験

OB訪問56人、インターン17社受け6社内定! 自己分析は「夢・目標」決めること

S.S.先輩

放送局 内定 人間科学部 男性

2019年04月02日

「ダンス」テーマにいろいろな活動

 小さい頃は恥ずかしがり屋で泣き虫。人の目を気にしてしまう子でした。それが中学での劇団、高校でのダンスとの出会いで自分を出す楽しさの虜に。大学では総勢456人のダンスサークルの振付師をしたり、介護施設でダンスを教えるボランティアをしたり、韓国単身留学で世界的ダンサーに弟子入りしビザの滞在期限ギリギリまで交渉して日本に招待してイベントを開いたり。「ダンス」をテーマにいろいろな活動を行なってきました。

尊敬するダンスの先輩がみな就活に失敗!不安に…

 就職活動を始めたのは2017年6月ごろ(大学3年の夏)でした。結構早いねと周りからは言われました。「何かやらないと」という思いが強くありました。理由は三つあります。
 一つ目は、尊敬していたサークルの先輩がことごとく就活に失敗していたことです。サークルにはダンスができるだけでなく、頭の回転が早い、みんなを即座にまとめる力があるなど、自分にはない才能を持った人がたくさんいました。そんな先輩方がいざ就活を始めると全滅。どの先輩にも「ダンスやサークルは就活には不利。差別化が必要」と口をそろえて言われました。先輩より「ダンス」しかやっていない自分は……。不安感に襲われたのを覚えています。

 二つ目は、ダンスの師匠から言われた言葉です。先生はpoppingというジャンルで何回も世界一になっている第一線のダンサーでした。努力すればかなうこと、自分の個性を信じること、相手に向き合うのを面倒くさがらないことなど、人として大切にすべきことを全て彼から学びました。教えてくれたことの一つが、「二兎を追えない人は一兎すら追えない」というもの。大学受験に落ちて浪人するかダンサーになるか考えた時に教わった言葉ですが、心の中に残っていて、就活という挑戦もやってみようと思ったのです。

 三つ目は、ダンスをやりすぎていたので、違う世界も見てみたいと思ったことです。このままダンス一筋でいった場合、仕事としてダンスをしてしまうのではないか、楽しいはずのダンスが嫌いになってしまうのではないかと思いました。ならば社会人として、知らない世界に飛び出してみようと考えました。

 具体的に始めたのは、とにかくインターンシップに申し込むことでした。よくある「the就活生」って感じです。「やり方がわからないなら手探りでも始めてみよう。周りより要領が悪いのだから失敗できる時間を持てればいい。なら早めに動こう」という感じです。人気企業のインターンは倍率が高くなかなか受からないとどこにも書いてあったので、受からなくても練習になるだろうと軽くみていました。聞いたことのある企業に片っ端からエントリーしました。このころはダンスの深夜練の連続で死ぬかと思いましたが、「とりあえずやってみよう」の精神でESを書いていました。するとなんと10社に受かったんです。ここから「あれ? もしかしたら他の学生と差はない? ダンスがすごいことを証明できるかな」と思い、就活を本格的に始めました。

インターンに申し込み「受かるES」「落ちるES」わかるように

 インターンは結局、広告会社、テレビ局、IT、生保、損保、百貨店、電機メーカー、食品メーカー計17社に参加しました。就活が全くわからなかったので、要領をつかむために行っていました。本来インターンは、自己分析で「軸」を決めた後に、業界の雰囲気や同業他社との違い、自分の夢や目標を達成できる場所か――を知るために行くものです。しかし、日本の就活はインターンが早く始まるため、自己分析をする前にインターンに行くことになります。そこで、就活の要領をつかむため、社会人と自分の差を知るため、など軽い気持ちで受けることをお勧めします。自分の場合、インターンに「軸」はありませんでした。

 インターンに申し込むことでESや面接の要領を知ることができました。大量にESを書いていたので、落ちるES、受かるES、受けの良いエピソードと受けの悪いエピソードなどが感覚的にわかるようになりました。
 本来なら、「自己分析→軸(夢・目標を決める)→それを解決するためにはどうすればいいか→会社選び→会社の中身を知るためにOB訪問やインターンに参加」が適切な流れだと思います。

自己分析は①今どんな人?②憧れの人間像は?③将来何してる?

 自己分析は、最も難しく最も大切で、やり込むべきものだと思います。
 「自己分析」というと就活ワードに聞こえるかもしれませんが、自分のキャリアを考えるうえでこれからずっとやっていかなければならないことだと思っています。自己分析は、現時点での「夢・目標」を決めることです。夢・目標を達成するにはどんな手段があるか、自分には何が足りないかを考えます。その手段として業界、企業が存在するのだと思います。ここで大事なのは、夢や目標は「テレビ番組を作りたい」とか「イベントを企画したい」といった具体的な仕事内容ではなく、もっと大きな抽象的なもの、「面倒くさがらず向き合える人を増やしたい」といった、やりたいことの共通点みたいなものだということです。それが決まると、夢を実現するために、この業界、企業ならどんなことができるかを考えられるので、自分だけの色の志望動機やESが書けると思います。

 自己分析は三つのフェーズで考えることが大事だと思います。「自分は今現在どんな人?」「憧れの人間像は?」「自分がその憧れの人間像になった暁には何をしている?」です。
 一つ目の「今どんな人?」では、日々感じていること、好きなこと、嫌いなこと、思ったことを、とにかくメモ帳に書き出しました(写真)。「顔の丸い女の子はかわいいと思う」「相手に合わせず、きちんと意見を言うのは相手に親切だと思う」「ダンスが好き」「ダンサーより野球をやっている人の方が実はなよなよしてる」など、何でもいいから書きます。書き出したら600個近くになりました。次に全ての項目に対して「なぜ」を10回以上繰り返します。たとえば、「顔の丸い女の子はなんで可愛い?→安心するから→自分の話を聞いてくれそうだから→自分のことを受け入れてくれそうだから→寂しいのが嫌いだから……」といった具合です。「なぜ?」を繰り返して、その都度「そのきっかけは?」と問いかけます。すると、600個近くが一つにまとまりました。僕の場合は「自分から寂しさと孤独を無くしたい」でした。ここまでわかると、「寂しいのが嫌いだから自分のことを見てもらいたい→努力して力をつける→諦めが悪い」「寂しいのが嫌いだから相手と関わりたい→人見知りせず自分から人に声をかける」など自己PRや行動基準が出てきます。

 次に、将来どんな人間になりたいかを考えます。材料はもうメモ帳に書いてあります。その材料から自分はどんな人になりたいのか、どんな性質、生き方をする人になりたいのかを考えます。これに関しては、自分にはもとから憧れの人間像がありました。小中学生のときいじめから救ってくれた男の子とダンスの師匠です。小中学生でいじめられて、周りがどんどん離れていった時、「冗談通じないからいじめられるんだよ(笑)」と、どストレートにグサッと言ってくる人がいました。当時の自分は「全く悪くない!」と聞き入れませんでしたが、ふと振り返ると自分にもみんなから嫌われる要素があったなと思い直し、欠点を見直すきっかけをくれました。ダンスの師匠は、いくら練習してもできるようにならず落ち込んでいると、「お前は努力していない、血ヘドを吐くまで努力したことはあるか? 我慢は誰でもできることなのにしてないぞ」と言われました。その後師匠は自分が練習するとき同じメニューを3倍もやってから自分の練習をするようになったのです。その励みもあってメニューをこなせるようになり、ついに弱点を克服することができました。できたとき師匠から「信じてたぞ、できるって」と言われて努力の正しさを知ることができました。

 その影響で、「嫌がられても相手と最後まで向き合い続けることができる人間」になりたいと思うようになりました。これがわかると、どんな力をつければいいか、どんな価値観があるかがわかり、方向性が決まります。
 憧れの人間像はどんなことを社会で実現しているのだろうと想像したところ、「みんなが自分の可能性を信じて挑戦できるように世の中を変えたい」でした。人が挑戦できない理由には、他人の目を気にすることで、周りの人の思い込みがその人自身に強く影響を与えてしまうケースがあります。「メディアから情報を与えて根本から印象を変えてあげることで挑戦を支える」「百貨店などの空間デザインで自然と誰もが話しやすい空間を作って挑戦を支える」「ITの力で企業の手助けをすれば結果的に余暇が増えて人の挑戦を支えられる」など、できることが見えてきました。さらにどのような方法でそれを行うかを各業界、各企業で考えていきました。こうして、論理的かつ自分の色のある提案を企業にできたので、どんな質問がきても一貫した答えをできるようになりました。

 自己分析は、とにかく書いて考えての繰り返しでした。自分で納得感を得るまで考え込んでようやく出した答えは、どんなに緊張していても話すことができます。しっかりやったほうが後悔しないと思います。

会社のロビーで毎朝「出待ちOB訪問」 人脈総動員して会う!

 OB訪問はめちゃくちゃしました。人数は計56人にのぼります。就活でもっとも大切なことだと思います。最初は「OBに話を聞くなんて怖い」「評価に関わる」と漠然とした不安がありました。でもOBの人はとんでもなく優しく、自分が社会のどの位置にいるのかを知る上でかなり役立ちました。自然と「今のままではだめだ!」と感じると思います。選考に有利とか表面的なことではなく、人として成長する場、考え方を深められる場として、かなり刺激になるからです。学生と社会人には経験値や能力の面で雲泥の差があります。ですから、自分の能力の浅いところや志望理由の納得感を確認したり、自分に足りないところを知ったりできます。よく「他己分析」がいいとか身近な人に聞けと言いますが、自分で考え抜かなければ答えは出ません。しかも最後は自分のことを何もわからない相手に説明しなければいけないので、すごく練習になると思います。ぜひ、というか必ずやってください。

 具体的な方法は、とにかく人脈を総動員していろんな人に会い、つなげてもらうことです。意識したのは、どのOBとも1回の関係では終わらせず、「人生の先輩」として付き合ってもらうことです。何回も同じ人に会う、ご飯に誘ってみる、OB訪問とは関係ない理由で質問しに行くなど、とにかく信頼してもらい、可愛がってもらうこと。本当に相手に興味を持つことも大切です。多くの就活生は、OB訪問の相手を「手段」として扱っている気がします。

 一つ、僕なりの変わったやり方を紹介します。それは「出待ちOB訪問」です。大手広告会社でOB訪問をしていくうちに、部長クラスや役員クラスの人と話したいと思うようになりました。でも、役員の紹介を頼むハードルが高く、「自分そっちのけで上の人に会いたいだけなのか」と思われてしまったら元の子もありません。12月ごろから毎朝、会社のロビーに行って「OB訪問をさせてくれませんか」とお願いしまくりました。みなさん仕事があるので相手にしてくれなかったのですが、毎日出待ちしているうちに、ある社員が「今日、家でパーティーがあるからそこに来なよ。そこで少しだけ話すから」と言ってくれました。チャンスを逃すまいとパーティーに出向き、いろいろ話を聞きました。緊張してあたふたしていましたが、パーティーの終わりに「どんなやつかと思っていたけど、普通に好青年だな。またちゃんと話聞いてあげるよ」と言ってもらい、多くの社員を紹介してもらえました。後で知ったのですが、この方がクリエイティブの幹部で執行役員だったようです。かなり失礼なやり方だったと今では思っていますが、今でも仲良くさせていただいているので、人とのつながりって大切だなと思います。

 OB訪問に決まったやり方などなく、とにかく相手に会おうとトライしてください。多くのOBは快く受け入れてくれます。学生同士では不安から就活の話をよくしていました。しかし学生の話で、合っていることはほとんどありません。社会人に聞いたほうがいいです。
 会社説明会は、企業を知るための「接点」として捉えていました。その会社が自分の軸、夢を達成する手段になり得るかどうか、自分が知らなかった一面があるかどうか、をみるために話を聞きに行きました。行きたい企業の接点はOB訪問だったので、会社説明会では自分の幅を広げるようにしていました。

早めに絞りすぎ、見ていない業界への不安が…

 スケジュールを振り返ると、3年生の12月にOB訪問を始め、2月まではとにかくいろんな人に会いました。
 2月から3月には、自己分析の甘さと業界を早めに絞り過ぎてしまったことに気づき始めました。「この業界でいいのだろうか」「この職業でいいのだろうか」「知らないだけでいろんな業界を見て見たい」という思いが出てきました。モヤモヤしたまま、面接もぼちぼち始まりました。
 4月から6月には、会社説明会は少なくなり、OB訪問で全く違う業界、職業の人に会い始めました。この間に内定ももらいましたが、不安がぬぐえませんでした。自己分析はある程度できていたのですが、見ていない業界への不安が強くありました。
 6月には、面接をたくさん受けました。興味のある業界には夏採用、2次採用にも出しました。
 7月には内定企業が出そろったので、OB訪問で、率直にどう思うか聞いて回っていました。
 8月には、受けていなかった新聞社を受けてみましたが、すぐ落ちました。

ESに書いたのは「目標」とwhy、how

 ESについて言うと、どのESにも全く企業のことは書きませんでした。自分の「目標」と「実現したいこと」をメインに、「why」と「how」を書きました。「御社は~の事業をしており」みたいな文章はみんな書いているし、文字数の無駄かなと。その事業をどう使って夢をどう実現するかを書きました。自己分析の軸通りに全部書いたので、志望動機はどの企業も同じ感じでした。
 ESを書いたらOB訪問の際に必ず見てもらっていました。

面接では緊張…プレゼン前のように毎日準備

 僕はすごく緊張してしまうタイプで、面接ではリラックスしてしゃべれませんでした。
 だから、異常なほど準備しました。自己分析ノートをもとに、志望動機、自己PR、ガクチカ、その業界の未来など、とにかく頭やノートにあることを短い時間で伝えられるように練習しました。毎日プレゼン前みたいでした。
 予想外の質問はその場で考えればいいと思っていました。質問がわからなければ「わからない」と言うし、答える時間がほしければ「待ってください」といえばいいと思います。

OB訪問で人間的に成長 憧れていない仕事、憧れの仕事の共通点は?

 就活でやっておいてよかったのは、OB訪問と自己分析です。社会人は自分ら学生ととんでもなく実力差があります。会ってみて自分との差は何かを考えてみてください。就活に受かるかどうかということより、人間的に自分を成長させてくれると思います。

 反省点は、自分のことを知る前にインターンに受かってしまったことです。そのおかげでこの業界(特にマスコミ)が自分に向いていると決めつけて受けることになってしまいました。途中で自己分析をしたのでなんとかなりましたが、めちゃくちゃバクチだったと思います。インターンなどしないでもっと自己分析をしていればよかったなと考えています。

 自己分析で後輩に一つ言いたいことがあります。「やりたいことが決まった」「実現したいことが決まった」と同期や後輩に言われることがあります。でも、よく聞くと「広告をやりたい」「記者になりたい」「テレビ番組を作りたい」など、具体的すぎることをやりたいことと言っている気がします。それは「自己分析不足」だと思います。例えば、記者志望者で新聞社やテレビしか受けない人がよくいます。でも彼が記者にひかれる理由を深掘りしてみると、もっと本質的なその人にしか感じられないワクワクするものがあるはずです。それを見つけてください。すると、記者やマスコミという仕事にこだわらなくていいとわかると思います。記者を目指すなと言っているのではなく、他の仕事や職種を見た上で、「自分の夢を実現する一手段として記者という仕事をするんだ!」という理由で行かないと、相手に自分の色を伝えられないのではないかと思うからです。だから、憧れていない職業を見て、自分の憧れの職業との共通点を考えてみてください。それを理解していれば、相手に媚びることなく、自分だけの言葉で相手に伝えることができるのではないかと思っています。

親は口出さず助かる

 親は就活に関しては何もしてこなかったので本当に助かりました。就活では自分と向き合うことになるので、頭で理解していても納得できずに心がもやもやすることが多くあります。実際僕はモヤモヤしすぎて自分のPCを地面に叩きつけてしまいました。そのくらい苦しい時があります。親にはそこを突かないでほしい。就活は、社会に出たら当たり前の「答えのないもの」に立ち向かう最初の関門です。初めてなものに立ち向かっているときに「こうしたほうがいいよ」「しっかりしなさい」とか言わないでほしいです。頭の納得と心の納得にはかなり時間がかかるので、どうか見守ってください。

■目指した志望業界 マスコミ、IT、百貨店、PR
■説明会に行った企業数 20社
■プレエントリーした企業数 50社
■ESを提出した企業数 30社
■面接を受けた企業数 25社
■内定(内々定)した企業数 6社
(内定以外は概数)