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2026年01月23日

社会

安倍元首相銃撃、被告に無期懲役判決 事件の影響は? 改めて考えよう【時事まとめ】

奈良地裁が無期懲役判決

 2022年7月に安倍晋三元首相が応援演説中に銃撃され、死亡した事件。現行犯逮捕された被告の男性(45)に対し、奈良地方裁判所は1月21日、無期懲役の判決を言い渡しました。日本だけでなく世界にも衝撃を与えた重大な事件でしたが、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に多額の献金をしたことなど、被告男性の境遇にも焦点があてられました。事件を機に、旧統一教会をめぐる問題も改めてクローズアップされています。地裁判決を機に事件とその影響をまとめます。(編集部・福井洋平)
(写真・事件直前、近鉄大和西大寺駅の北口で演説する安倍晋三元首相=2022年、奈良市/写真、図版はすべて朝日新聞社)

【事件の概要】手製の銃で元首相を銃撃、背景に母親の多額献金

 まずは事件について、裁判を取材した朝日新聞の記事などをもとに振り返ります。

 2022年7月、安倍元首相は参院選の応援演説のため、奈良市の近鉄大和西大寺駅前に降り立ちました。その情報を前日に把握していた被告の男性Y(45)は、手製の銃で演説中の安倍氏を背後から撃ち、その場で現行犯逮捕されました。安倍氏はその日のうちに、死亡が確認されました。

 Y被告が安倍氏を銃撃した理由が、安倍氏と旧統一教会の関係性です。安倍氏は小泉内閣の官房長官時代に教団の友好団体に祝電を送り、2021年には同じ友好団体に「韓鶴子(ハンハクチャ)総裁をはじめ皆さまに敬意を表します。家庭の価値を強調する点を高く評価します」という友好的なメッセージを出していました。

 Y被告の母親は、1991年ごろ旧統一教会に入信しました。夫が亡くなるなど家族のことで悩みをかかえていたあるとき、家を訪ねてきた若い女性に教団施設に誘われたといいます。問題は「先祖が恨まれている」から起きていることで、「浄財」を捧げることで流れはよくなる――。入信から半年後には、夫の生命保険金5千万円を献金していたといいます。1994年には、Y被告の祖父が経営する会社の事務所を、献金のため無断で売ろうとしました。Y被告ら兄弟を守ってくれていた祖父も母と激しく対立するようになり、Y被告の「人生観は根本的に変わってしまった」そうです。母は家まで売って献金を続け、Y被告は進学校に進んだものの大学進学を断念。2015年には、信仰のことで母に怒りをあらわにしつづけてきた兄が自殺します。母親の献金額は1億円にのぼるといい、Y被告はやがて旧統一教会に「一矢を報いる」べく、韓鶴子総裁ら幹部に危害を加えることを考え、2020年には銃の自作をはじめました。
(写真・Y被告を乗せた車列が奈良地方裁判所に入っていった=2026年1月21日)

【狙撃の理由】教団に打撃を与えるためだった

 2022年には職場でトラブルが増え仕事も失い、追い詰められるなかで襲撃対象として浮上したのが、「教団と関係が深い」と被告が考えた安倍氏でした。Y被告は法廷で、「(教団に対して)道徳感情は超えてしまった。ただ元首相に向かったことに関して、亡くならなければならなかったのは、間違いだったと思っています」と語っています。目的はあくまで教団幹部の襲撃で、教団に打撃を与えるために「統一教会に賛意を示す最も著名な政治家」を襲ったのです。

 今回の裁判で、Y被告の弁護側は被告は「宗教が関わった虐待の被害者だ」とし、安倍氏を狙ったのは教団の友好団体に支援のメッセージ動画を送ったことに絶望したためだと説明して、重くても懲役20年にするよう訴えました。一方の検察側は、不遇な生い立ちは「否定しない」としつつ、教団と直接関係のない安倍氏を狙った動機に「酌量の余地はない」と批判し、無期懲役を求刑。判決では、不遇な生い立ちはあっても犯行の経緯には「飛躍がある」と指摘し、事件の悪質性、危険性は重大として、求刑通り無期懲役を言い渡しました。今後、弁護側は控訴するかどうか検討するとのことです。
(写真・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の本部=2025年3月25日、東京都渋谷区)

【旧統一教会と宗教2世問題】東京地裁が解散決定を出す

 今回の事件でクローズアップされたのが、Y被告を追い込んだ旧統一教会という存在です。1954年、創始者の文鮮明氏が「世界基督教統一神霊協会」として立ち上げたのがはじまりで、現在のトップである韓鶴子氏は文氏の妻です。教団をめぐってはすでに1980年代ごろから、不安をあおってつぼや印鑑などを買わせる「霊感商法」が社会問題化していました。教団は2009年、信者らに法令順守を徹底させるとした「コンプライアンス宣言」を公表しています。

 しかし事件後、教団の高額献金問題に改めて注目が集まりました。文部科学省は被害を訴える170人超から経緯や被害状況を聞き取ったうえで、2023年10月に教団の解散命令を東京地裁に請求。地裁は2025年3月、宗教法人法に基づいて教団に解散を命じる決定を出しています。決定では遅くとも1980年代以降、教団側が生活を維持できなくなるほどの献金をさせ、2023年までに献金被害者は1559人、金額は約204億円にのぼると認定しました。教団は「承服できない」として、東京高裁に即時抗告しています。

 また、旧統一教会問題とともにクローズアップされたのが、いわゆる「宗教2世」問題です。多額の献金をする信者の子ども、いわゆる宗教2世は、金銭的にも精神的にも厳しい環境に置かれることが多く、以前からその被害を訴える声がありました。今回の事件を機に厚生労働省は宗教の信仰を背景にした親から子どもへの虐待について初のガイドラインをまとめました。「地獄に落ちる」などといって脅すなどの心理的虐待、体罰などで宗教活動への参加を強制する身体的虐待、宗教活動を強制することで児童の発育、養育に不適切な状態となるネグレクトなどの例をあげています。

【政治との関係】自民党議員と「持ちつ持たれつ」の関係

 旧統一教会について見逃せないのは、日本の政界との結びつきです。韓国で誕生した旧統一教会は日本での伝道を1958年から始め、政界との結びつきを強めるため安倍氏の祖父である元首相の岸信介氏、父である元自民党幹事長の安倍晋太郎氏、そして安倍氏という3代の政治家を重視したことが、教団の資料や証言から明らかになっているのです。安倍氏に関しては、国政選挙で教団票の差配をしていたという証言もあります。

 先に述べたように旧統一教会は1980年代にはすでに霊感商法などで問題視されていましたが、今回の事件後に自民党の国会議員の多くがパーティー券の購入やイベント出席などで「持ちつ持たれつ」の関係だったことが明らかになりました。さらに、教団側が掲げる政策への賛同を求める推薦確認書の存在も明らかになっています。自民党が2022年9月に公表した党所属国会議員と教団側との関係についての点検結果によると、379人中179人(のちに180人に)が選挙支援や教団関連団体の会合への出席など教団との接点を認めています。
(写真・自民党本部=2025年5月20日、東京・永田町)

【事件の教訓】なぜ被害は見過ごされたのか メディアも自戒を

 この事件をきっかけに旧統一教会に解散命令が出され、宗教2世の問題が大きくクローズアップされ、さらに政治と旧統一教会の関係にも厳しい目が注がれるようになりました。しかしどういった背景があるにせよ、人ひとりの命が奪われた重大性に変わりはありません。

 そして、安倍氏狙撃という事件があるまで、旧統一教会関連問題がここまで大きく取り上げられなかったことにもしっかり注意を払う必要があると感じます。繰り返しになりますが、旧統一教会をめぐる霊感商法問題はすでに1980年代から指摘されており、また宗教2世についても旧統一教会に限らず、その被害を訴えるルポや書籍は事件前から多く世に出ていました。しかし、被害の実態が社会全体で共有され、被害者の救済に向けた努力がなされてきたかというと疑問が残ります。私たちメディアももちろん、自戒すべき問題です。メディアを志す就活生は、ぜひ自分事として深く考えていってほしいと願います。

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