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2024年08月02日

スポーツ

パリ五輪 熱戦の裏で考えてみたいことがある【時事まとめ】

「平和の祭典」といわれるが……

 7月26日(日本時間27日)に開幕したパリオリンピック。連日、トップアスリートがしのぎをけずる様子が世界を沸かせています。

 「平和の祭典」といわれるオリンピックですが、いまもロシアウクライナ侵攻や、イスラエルとイスラム組織ハマスパレスチナ自治区ガザでの戦闘は続き、選手の間にも暗い影を落としています。また、開会式では、性的少数者らを起用した演出が物議を呼び、出演者が脅迫や中傷を受ける騒動にもなっています。ビッグイベントであるオリンピックは、世界をとりまく最先端の課題に直面する場ともなっています。アスリートたちの戦い以外にも幅広く目を向けて、ビジネスの世界で必要な感覚を養うきっかけにしてみてください。(編集部・福井洋平)
(写真・開会式であいさつするIOCのバッハ会長=2024年7月26日、パリ/写真はすべて朝日新聞社)

イスラエル選手団にはブーイングも

 開会にあわせ、朝日新聞ヨーロッパ総局長の杉山正記者がウクライナを訪問したルポが掲載されました。記事によると、ミサイル攻撃などで破壊されたスポーツ施設がウクライナには500以上あり、アスリートは487人が殺されたそうです。今回のオリンピックではロシアと同盟国のベラルーシは選手個人が「中立」の立場で参加を許されていますが、それに対して「ウクライナの人たちは強い反感を抱いています」と記事にはあります。

 一方、パレスチナ自治区ガザではイスラエルの攻撃により10カ月で4万人弱の命が奪われましたが、イスラエルは開会式参加が許されました。ロシア・ベラルーシとの対応の違いに「二重基準」という批判もつきまとっています。開会式でイスラエルの選手団が登場したとき、パリ市内で行われていたパブリックビューイング会場ではブーイングも飛んだそうです。フランスの検察当局は、イスラエル選手に殺害予告メールが送られたとして捜査を始めました。
(写真・開会式で、船に乗ってセーヌ川を下るウクライナの選手団=2024年7月26日、パリ)

五輪休戦決議は守られず

 オリンピック期間中に休戦を求める「五輪休戦決議」は、1993年のリレハンメル冬季五輪以降毎回国連で決議されるようになりましたが、ロシアもイスラエルも攻撃をやめる気配はありません。今回のパリオリンピックは「平和の祭典」の意義が強く問われるイベントになっていると感じます。

 経済思想家の斎藤幸平さんはニュース番組で、今回の五輪を「スポーツウォッシュに加担したくない」として観戦をボイコットしていると発言しました。政治や社会のゆがみをスポーツを利用して覆い隠す行為をスポーツウォッシング/スポーツウォッシュといいますが、イスラエルの問題がオリンピックで忘れられるようなことがあれば、まさにこれこそスポーツウォッシングとなります。スポーツと政治はできるだけ切り離して考えたいのですが、国際情勢が緊迫化するいま、自分なりの意見を考えてみてもいい機会と感じます。

(写真・レピュブリック広場で行われた五輪反対を訴える集会には、パレスチナへの連帯を呼びかける人たちが大勢集まった=2024年7月25日午後5時36分、パリ)

メッセージ強く打ち出し物議かもした開会式

 パリオリンピックの開会式は、セーヌ川を舞台に行われ、選手団は船で川をパレードしました。フランスの国是である「自由・平等・博愛」や多様性、女性の権利などをテーマとした演出が際立つイベントでした。レディー・ガガセリーヌ・ディオンといったトップアーティストもすばらしいパフォーマンスを見せ、組織委員会の委託した調査会社による世論調査では、フランス国内の回答者の86%が開会式を肯定的にとらえているそうです。

 その開会式の後半、派手な衣装やメイクで女装した「ドラァグクイーン」や性的マイノリティーの歌手、DJが歌やダンスを披露した場面が、フランス国内外で物議をかもしています。出演者たちが並んで長いテーブルにつくように見える様子などが、キリストと弟子を描いたレオナルド・ダビンチの「最後の晩餐」をモチーフにしており、キリスト教を揶揄したなどと受け止められたからです。開会式の芸術監督はその場面についてキリスト教との関係を否定、大会組織委員会の会長は「フランスでの五輪のためのフランスの式典だ。フランスには表現の自由があり、我々はそれを守りたい」と記者会見で述べましたが、のちに委員会は「不快になった方がいたとしたら当然、本当に申し訳なく思う」として謝罪しています。

 2021年の東京オリンピックの開会式は、演出担当者が次々に辞任し、直前まで混乱が続くなかで行われました。パントマイムによるピクトグラムの表現など随所に印象に残るシーンはあったものの、全体としてどういうメッセージを伝えようとしているのか、見た人が理解できたとは言いがたいイベントでした。今回の開会式は批判もありましたが、それだけ「自由・平等・博愛」という国是、リベラリズムに寄り添う覚悟が演出に表れていたと感じます。開会式は毎回、世界中が注目するイベントですので、これについても自分なりの考えをまとめてみてもいいかもしれません。
(写真・開会式で、セーヌ川を下る船上で国旗を振る日本選手団=2024年7月26日、パリ)

メダルラッシュはうれしいが……

 パリオリンピックではこれまで、体操男子団体が大逆転で金メダルを獲得、スケードボードでは男子、女子のストリートを両方制するなど、日本はメダルラッシュとなっています。研鑽を重ねて大舞台で結果に結びつけたアスリートの方々には、心から尊敬の念を抱きます。

 今回のパリオリンピックでは、日本オリンピック委員会(JOC)は金メダル20個、メダル総数55個の目標を掲げています。実は前回の東京オリンピック後、JOCは大規模国際スポーツ大会での目標を「メダルだけではない、スポーツの価値を高めること」とし、2023年のアジア大会ではメダル目標を設定しませんでした。今回は「注目を集めるには選手団の活躍が必要」(尾県専務理事)という理由で、メダルの数値目標の公表を決めたそうです。

 国際オリンピック委員会(IOC)によると、トップ選手の34%が不安やうつ病などの精神的な症状を持っているとの研究結果があるそうです。今回も、メダルを期待されていた女子柔道選手が序盤で敗退し、号泣したシーンが物議をかもしました。エースと目されていた女子体操選手が「プレッシャー」を理由に喫煙、飲酒し、代表を辞退するというニュースもありました。スポーツは勝利をめざすからこそ面白いという側面もありますが、選手の心身を壊すようなプレッシャーはあってはいけないと思います。メダルラッシュの裏側にそういった問題が潜んでいないかも、今後チェックしていくべき観点と思います。
(写真・体操男子団体で金メダルを獲得し喜ぶ選手たち=2024年7月29日)

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