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2024年05月15日

科学技術

玄海町「核のごみ」文献調査受け入れ 日本が避けて通れない「原発問題」を考える【時事まとめ】

原発立地自治体がはじめて名乗り

 佐賀県 玄海町の脇山伸太郎町長は5月10日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場の選定をめぐり、選定プロセスの第一段階にあたる「文献調査」について、国からの実施の申し入れを受けいれると表明しました。受け入れを表明したのは3自治体となります。玄海町には九州電力 玄海原発があり、原発の立地自治体では初めてです。

 原発を動かすと、かならず強い放射能を出す「核のごみ」が出ます。現状ではこれは地下深くに埋めて処分するしかないと考えられていますが、日本ではその場所が決まっておらず、ごみはたまる一方です。政府は脱炭素を進めるため、原発を最大限活用するべく運転期間ルールの緩和などをすすめてきました。石炭などの化石燃料に比べて燃料を比較的安定して手に入れられる原発は日本のエネルギー政策にとって重要な存在ですが、ごみの処理方法も決まっていない状態で原発活用を進めることは、果たしてこの国にとってよいことなのでしょうか。すべての産業をささえるエネルギー問題の核となる原発問題について、今回のニュースを機にぜひ関心を深めて下さい。(編集部・福井洋平)

(写真・玄海原発3号機(左)と4号機(右)=2022年6月7日、佐賀県玄海町、朝日新聞社ヘリから/写真はすべて朝日新聞社)

日本ではまだ核のごみの最終処分場決まらず

 「核のごみ」問題について整理します。

 原子力発電所(原発)では、ウラン核分裂させて熱を発生させ、その熱で水蒸気をつくってタービンをまわし電気をつくっています。このとき、強い放射線も発生します。使い終わった「使用済み核燃料」のなかには、まだ使用することができるウランやプルトニウムが95%程度残っているのですが、それを取り除いたあとの廃液からも強い放射線が出ます。廃液を溶かしたガラスと混ぜて固めた「ガラス固化体」のことを、核のごみと称しています。長さ約1.3メートル、重さ約500キロの円筒状で、人が近づけば約20秒で死んでしまうほどの強い放射線が出ているそうです。放射線を出す能力である「放射能」が天然ウラン並みになるまでは、数万年かかります。

 そんな危険なものを地上に置いておくと、災害や紛争の危険にさらされかねません。OECD(経済協力開発機構)は1977年に、安定な地層のなかに閉じ込める「地層処分」が適切という報告書を出しました。しかし現在でも、日本はその最終処分を行う場所が決まっていません。核のごみは青森県六ケ所村などに一時貯蔵されています。

「トイレなきマンション」60年以上

 日本では1960年代から次々に原発がつくられてきましたが、最終処分場の行き先は決めておらず、長らく「トイレなきマンション」と批判されてきました。

 原発は石油や天然ガスなどの化石燃料に比べて圧倒的に少ない燃料で発電ができます。燃料のもとになるウランは輸入に頼っていますが、発電のコストに比べて燃料費用がしめる割合は2割程度と低く、資源のない日本にとっては「夢のエネルギー」でした。輸入元も石油を多く産出する中東に比べオーストラリアカナダなど比較的政情が安定した国で、エネルギーの安定供給という点でも原発はメリットがあるとされ、積極的に原発が推進されてきたのです。核のごみをどうするかという問題も建設当初からありましたが、ほとんどの廃棄物は海に捨てればいいと考えていたようです。しかし、1975年に発効したロンドン条約で、高レベル放射性廃棄物は海への投棄が禁じられました。

 そこから日本では地層処分の研究が始まり、1999年に国の研究機関が地層処分は技術的にできると結論づけました。ただし、厚さ約20センチの金属容器に入れたうえで、厚さ約70センチの粘土で包み、300メートル以上の深さの岩盤に閉じ込める必要があります。2000年には地層処分を進めるための組織「NUMO」(原子力発電環境整備機構)が発足し、2002年からは国が最終処分場を選ぶための調査を受け入れる自治体を募集。2017年には「科学的特性マップ」を公表し、好ましい地域を地図で示すなどして応募を促してきました。選定プロセスは3段階で約20年かかりますが、自治体には最初のプロセスである文献調査の段階で最大20億円、次のプロセスである概要調査では最大70億円の交付金が出ます。

「原発立地自治体としての責任」

 しかし、文献調査を受け入れたのは今回の佐賀県玄海町でようやく3自治体目です。2020年に最初に文献調査を受け入れた北海道寿都(すっつ)町の片岡春雄町長は受け入れの理由として交付金のほか、国内で原発が運転を始めてから半世紀以上経っても処分場が決まらない現状に「寿都が一石を投じる」という思いもあったと朝日新聞の取材に対し語っていましたが、追随する自治体はわずかです。 長崎県対馬市では、2023年9月に議会が調査受け入れの請願を採択しましたが市長が拒否しています。

 そんななか今回手をあげた玄海町は、すでに原発をかかえ、核のリスクと向き合っている自治体です。一方で原発を持つことで町は交付金を国から受け、近くの自治体に比べて豊かな財政となっています。「原発立地自治体として、責任を果たさないといけない」(町議)という声もあり、今年4月に議会で文献調査を求める請願が採択された際、賛成派の町議は調査受け入れを「国任せでは進まない現状を打開する『(世論喚起の)ツール』」と表現しています。脇山伸太郎町長はこれを受け、調査実施の受け入れを表明したのです。

 玄海町の受け入れ表明をきっかけに、ほかの原発がある自治体でも文献調査受け入れを検討する動きが出てくるかもしれません。すでに原発というリスクをかかえている分、最終処分場についても話をすすめやすいとも考えられるのです。なお玄海町は、地下に石炭があるため科学的特性マップではほぼ 全域が「好ましくない」地域とされています。それでも文献調査に応じれば、交付金を手に入れることができます。

(写真・会見する脇山伸太郎・玄海町長=2024年5月10日)

原発のリスクは誰が負うべきか考える

 電力の消費量が多いのは東京圏などの大都市です。一方で、リスクの高い原発は都市部から離れた地方に置かれています。東日本大震災の福島第一原発事故では、原発を抱えることのリスクがあらわになりました。この状況で、場合によっては10万年以上もリスクが続くと考えられる最終処分場まで、地方に背負わせるのは妥当でしょうか。簡単には答えが出ないですが、社会に出るにあたってはぜひ一度しっかり考えてみてほしいテーマです。

 原発には前述のように脱炭素に役立つ、化石燃料よりも安定的に供給されコストも安いといったメリットもあります。AIが発展すれば電力需要はいま以上に高まるとされ、資源がない日本では原発の重要性も増す可能性があります。大都市部にも最終処分場を分散してリスクを国全体で分かち合うか、交付金などと引き換えに特定の地方にリスクを集中させるのか、そもそも原発依存をなんとしても脱却する方向にすすむのか――。電力と無縁のビジネスはありませんので、インフラ系をめざす人以外もぜひ今回のニュースをきっかけに日本と原発のかかわりについて関心を深めてほしいと思います。

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