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2024年02月23日

医療・健康

お酒の健康リスクを初めてガイドライン化! 食品業界に与える影響考えよう【時事まとめ】

1月に飲酒ガイドラインが始めて策定される

 食品業界は私たちのいちばん身近にある商品を扱うこともあり、就活生にも人気の高い業界です。学情が調べた2025年卒の就活人気企業ランキングでも、食品業界は上位200社に26社がランクインしています。その食品業界でも売上上位を占めてきたのが、アサヒキリンサントリーサッポロの大手ビール会社4社でした 。

 しかし、近年は健康志向の高まりを受け、ビールをはじめとする酒類の売上は年々減少しています。特に若い人にとってはお酒は身近な存在ではなくなってきているのか、2001年卒対象の学情ランキングでは上位10社にサントリー、アサヒ、キリンとビール系3社が入っていましたが、2025年卒では最高位のサントリーでも40位に。かわってアサヒ系列で、お酒以外の飲料を売るアサヒ飲料が9位にランクインしています。そしてこの業界にさらに大きな影響を与えそうなのが、厚生労働省が今年1月に初めて策定した「飲酒ガイドライン」です。高血圧や男性の食道がんなどは、お酒を少しでも飲むと発症リスクが高まると指摘しました。

 科学が進歩し、食品と健康の結びつきはこれからより精密に明らかになっていくでしょう。いまあたりまえと思っている食生活も、10年、20年後には大きく変化しているかもしれません。食品業界をめざしている人はもちろん、そうでない人も近年の食品をめぐる動きを概観し、これからの動きにアンテナを張るようにしてください。(編集部・福井洋平)

(写真はPIXTA)

酒市場をひっぱってきた「ストロング系」

 まずは、アルコールをめぐる動きをおさらいします。

 国税庁「酒レポート」(令和5年6月)によると、国内に出回っている酒類の課税数量は1999年の約1000万キロリットルをピークに、2021年には約800万キロリットルまで減少しています。また、成人一人あたりの酒類消費数量も、ピーク時のだいたい4分の3まで落ち込んでいます。特に数量で落ち込みが激しいのはビールですが、これは値段の高いビールから安いチューハイなどのリキュール類に消費が移ったことが原因です。缶チューハイや缶ハイボールといったお酒は、特に炭酸などを用意しなくても缶をあけてすぐ飲めることからRTD(Ready To Drink)と呼ばれています。

 そのRTD市場をひっぱってきたのが、「ストロング系」と呼ばれる高アルコール濃度のチューハイです。国内で出回っているビール系飲料の多くはアルコール度数5%ですが、ストロング系は7~9%と高めです。10%を越えると酒税法上のカテゴリーがかわり、かかる税金が高くなるため、2008年ごろから上限に近い度数9%のストロング系チューハイが市場に登場。キリンの「氷結ストロング」や、サントリースピリッツの「-(マイナス)196℃ ストロングゼロ」がヒットしました。インテージの調査では、RTD市場はコロナ下で拡大し、2022年は約5000億円に。そのうち度数9%台の商品は販売金額ベースで4分の1程度を占めています。ただ 、このストロング系は、2017年にはRTD市場全体の4割程度を占めていました。

お酒を少しでも飲めば高血圧のリスク高まる

 一時はRTDの急成長を牽引したストロング系飲料ですが、専門家からはアルコール依存症との関係を指摘する声が噴出しました。2021年の朝日新聞の記事では、「安くて飲みやすいから、酒が苦手な人でも量を飲めてしまう。依存症になるまでの時間が、ほかのお酒よりも短い」という専門家のコメントが紹介されています。

 こうした流れをうけて、アサヒビールは2020年12月から、体質や気分に合わせてアルコール、ノンアルコールを含めた幅広いドリンクから選ぼう、と呼びかける「スマートドリンキング宣言」略して「スマドリ」を提唱。アルコール分3.5%以下の商品(ノンアルコール飲料を含む)の販売比率を引き上げる目標を掲げました。今年1月には、今後発売する缶チューハイのアルコール度数を8%未満に引き下げる方針と報じられています。

 そして2月、厚生労働省がはじめて「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を策定、公表しました。これまではアルコール度数や飲んだ量で飲酒量を把握することが一般的でしたが、酒に含まれる「純アルコール量」に注目すべきとして、純アルコール量に応じた健康リスクを明示したのです。アルコール度数5%のビールの場合、中びん1本500ミリリットルを飲むと純アルコール量は20グラム(500ml ×5%× 0.8<アルコールの比重> = 20g) になります。ガイドラインでは、生活習慣病のリスクを高める量を男性で1日あたり40グラム以上、女性で20グラム以上△高血圧は少しでも飲めばリスクが上昇△大腸がんは男女とも1日20グラムとればリスクが上昇などと例示。それ以上飲酒する人の割合を減らしていくことを目標としました。

 酒=アルコールの害は昔から指摘されてきましたが、厚生労働省が健康リスクをガイドラインという形で明示したことで、ストロング系をはじめとする酒類への風当たりは今後さらに強くなることが予想されます。

JTは多角化からたばこ事業に回帰

 アルコールと同じく、健康被害が指摘されてきた嗜好品といえば、たばこです。最近話題のドラマ「不適切にもほどがある!」でもとりあげられていますが、30年前までは街中でたばこを吸う風景はごく当たり前で、テレビでもたばこのCMが普通に放送されていました。しかしたばこが健康に害をあたえるということが世間に浸透してきたことで、たばこの宣伝は徐々に縮小され、1998年4月からテレビやラジオのCMが業界の自主規制によりなくなりました。様々な条例によりたばこを吸える場所も年々減少し、今春には新幹線での喫煙スペースもなくなります。たばこの販売本数(紙巻き)は1996年の約3500億本をピークに減少、2021年は937億本まで減っています。

 日本のたばこ産業は、かつての専売公社であるJT(日本たばこ産業)が担ってきました。たばこ市場の縮小傾向もあり、JTは「桃の天然水」などの飲料事業やトマト、マッシュルームの生産などたばこ以外の事業に進出をはかってきました。しかしたばこに代わる事業はなかなか育たず、いまは医薬事業と加工食品事業を残すのみです。かわってJTはたばこ事業に回帰し、世界のたばこ企業・事業の買収をすすめ、世界でもトップクラスのたばこ販売事業者となりました。現在、2兆7千億円近くある売上の9割をたばこ事業であげています。

(写真・ランチタイム禁煙のシールを入り口に貼ったレストラン=2019年、東京都/朝日新聞社)

大手ビール会社の事業のあり方も変わる?

 酒類についても今後、健康への影響がよりクローズアップされ、たばこのように広告規制といった動きが出てくることも考えられます。アサヒビールははやばやと「スマドリ」を打ち出しましたが、他の会社も広告戦略や商品構成を時代にあわせて切り替えてくるかもしれません。「むかしはテレビでお酒のCMをやってたんだって!」と言われる時代が来る可能性だってあるのです。一方、アサヒビールを含むアサヒグループホールディングスは2016年から2兆5千億円を投じて海外のビール事業を次々と 買収するなど、各社とも積極的に海外進出をすすめています。会社の事業のあり方が、大きく変わる可能性もあります。これから食品業界はどう変わっていくのか、ぜひニュースに高い関心をもって、考えてみてください。もちろん、自分が社会人になってからどうお酒とつきあっていくのかも、ガイドライン策定を機に真剣に考えることをおすすめします。

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