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2023年07月05日

経済

コロナ禍を超えて日本の土地がまた上昇中、地価の「基本」をおさえよう【時事まとめ】

路線価が2年連続で上昇

 日本の土地の価格が上がっています。このほど公表された「路線価」によると、全国平均は前年から1.5%増え、2年連続で上昇。新型コロナウイルスの感染拡大前の水準に地価が戻りつつあります。「自分は家なんか買わないから、地価なんて関係ないし」と思う人もいるかもしれませんが、地価は不動産業界だけでなく会社のオフィスや工場、店舗の立地条件、会社の資産価値などに深くかかわっています。これから社会に出て行くうえで、地価のトレンドを押さえておいて損することはありません。人生計画を立てる上でも、きっと役にたちます。(編集長・福井洋平)

(写真・最高路線価が38年連続で全国1位となった東京・銀座の文具店「鳩居堂(きゅうきょどう)」前)

地価には「路線価」「公示地価」「基準地価」がある

 今回公表された「路線価」とはそもそもなんでしょう。

 路線といっても道路の価格ではなく、主要な道路に面した1平方メートルあたりの土地の評価額のことを「路線価」といいます。国税庁が不動産鑑定士の意見や売買の事例をもとにして、毎年1月1日現在の路線価を算出。毎年夏に公表しています。路線価は、土地を相続したり贈与したりしたときにかかる「相続税」「贈与税」を計算するときに使われます。

 公表される「地価」はこのほかにも、国土交通省が1月1日時点の地価を発表する「公示地価」、都道府県が7月1日時点の地価を調べて国交省がまとめて発表する「基準地価」などがあります。公示地価と基準地価は、ともに土地の売り買いをする際の価格の指標となります。ただ、実際に土地が売買される際の値段(実勢価格)はその土地の需要と供給によって大きく上下しますので、人気のある土地は公示地価や基準地価よりもずっと高くなります。

路線価は公示地価より安い

 路線価は、公示価格のだいたい8割程度がめやすとなっています。また、相続税などを決める指標であることから、調査対象となる地点は全国30万カ所以上(今回は約32万2千地点)あり、公示地価や基準地価の約10倍です。いろいろ用語が出てきてややこしいですが、下記のようにざっくり理解してもよいでしょう。

1 実勢地価=実際に土地が売買される際の値段。人気のある土地は、公示地価よりも高くなることが多い。
2 公示地価=1月1日現在の地価が春ごろ公表される。土地取引のめやすとなる。
3 基準地価=7月1日現在の地価が秋ごろ公表される。公示地価同様、土地取引のめやすとなる。
4 路線価=1月1日の地価をもとに国税庁が夏ごろ公表する。全国30万カ所以上が調査対象。相続税や贈与税をおさめる際の基準となり、公示価格の約8割がめやすとなる。

 税金をおさめる際に使用される路線価は、公示価格よりも安いということを知っておきましょう。

札幌圏、東京の再開発地域が人気

 路線価の全国平均は2020年まで5年連続で上昇していました。2021年はコロナ禍で0.5%落ちましたが、2022年は0.5%上昇。今年は上昇率が拡大しています。都道府県平均を見ると25都道府県で上昇しており、特に北海道(6.8%増)は札幌市中心部のマンション価格が高騰、割安感のあった隣接市などでも住宅需要が高まり、地価を押し上げています。

 東京は、平均3.2%上昇しました。上昇率が一番高かったのはJRや東武線、東京メトロ線が集中するターミナル駅、北千住駅の西口駅前(足立区千住3丁目)で8.8%。北千住は再開発の影響で街の注目度が年々上がっており、コロナ禍でも路線価は上昇していました。その他、上昇率が高い地点は再開発が進む地域が多く見られています。もともと地価が割安だったところ、再開発によって人気があがり地価が大きく上昇しているのです。また、職住近接のニーズが高まっており、小規模なオフィスの開設が増えていることも人気を押し上げる要因となっています。

(写真・JR札幌駅。右はJRタワー=2021年)

オフィスビルは余り気味だが……

 一方で、都心のオフィス街はおおむね上昇率が低くでています。コロナ禍でテレワークが普及したことで、オフィス需要がまだ戻りきっていないことが一因です。空室率もまだ高い状態ですが、続々と都心に大規模オフィスビルが完成予定のため、当面は地価があがる要素はないともみられています。

 ただ、朝日新聞の記事によると、東京都港区でこの秋に開業する「麻布台ヒルズ」(約330メートル)に入居を検討しているある弁護士は「高い物件に事務所を構えることは、お客さんの信用につながる。将来のビジネス機会になるのなら、倍の賃料でもいい」と語っています。完成すれば高さ日本一となる東京駅日本橋口近くの「トーチタワー」(約390メートル)の担当者は「スタートアップ企業のように、スピードや発想を重視する企業で『オフィス回帰』の動きがある」とも分析しています。現状は供給過剰とも思える都心のオフィスビルですが、いい立地のオフィスについては引き続き需要が高そうです。自分の志望する会社はどこにオフィスを構えているか、地価とともにチェックしてみると会社の姿勢が見えてくるかもしれません。

(写真・完成すれば日本一の高さとなる「トーチタワー」の建設現場。左のビルは「常盤橋タワー」=東京都千代田区)

地価は生活にもビジネスにも密接な関係

 それにしても、日本全体で人口が減っているのに地価が上昇傾向を続けているのは不思議ですね。アベノミクス以降の金融緩和政策で資金が土地に流れ込んだこと、円安の追い風もあり海外投資家も日本の土地に投資するようになったことなど、さまざまな要因がからまって地価上昇が続いています。とりわけマンションは、資材費や人件費があがったこともあり価格はうなぎのぼり。いったい誰が買えるんだろう……という状況になりつつあります。

 どこに住むにしても、どこのオフィスにつとめるにしても、地価はわたしたちの生活に密接にかかわってきます。ぜひ興味をもって、ニュースをチェックしてみてください。


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