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2021年07月28日

社会

東京五輪で学ぶ「ダイバーシティ&インクルージョン」 企業の姿勢調べよう【時事まとめ】

「インクルージョン」って?

 新型コロナのため無観客で開幕した東京オリンピックは、日本勢のメダルラッシュもあって盛り上がりをみせています。その東京五輪は、大会理念に「ダイバーシティインクルージョン(D&I)」を掲げています。「多様性」を指すダイバーシティはよく耳にすると思いますが、インクルージョンは聞き慣れない人もいると思います。インクルージョンは「包括包含」「受け入れる・いかす」を意味します。東京五輪では日本語で「多様性と調和」という表現でした。多様性を大切にして、D&Iはすべての人が生き生きと活動できる社会をめざす考え方で、同性愛者や体と心の性が一致しないトランスジェンダーなどを指すLGBT(性的少数者)を尊重することも大事な要素です。近年、日本企業も積極的に取り組み始めました。日本を代表する大企業でつくる経団連も「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現」を目指しています。みなさんの企業選びでも重要なポイントになってきました。東京五輪を機に、D&Iとは何か、理解を深めておきましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、開会式で聖火台に点火した大坂なおみ選手=2021年7月23日午後11時48分、国立競技場、林敏行撮影)

大坂なおみ選手はD&Iの象徴

 「ダイバーシティ&インクルージョン」は、東京五輪開会式でもメインテーマでした。各選手団の旗手は史上初めて男女各1人が共同で務め、米国、フィンランド、アルゼンチンなど、性的少数者であることをカミングアウトしている旗手もいました。性的少数者のアスリートの情報を発信している米メディア・アウトスポーツは、少なくとも163人の性的少数者が東京五輪に出場し、ロンドン五輪の23人、リオデジャネイロ五輪の56人を超えて史上最多となったと報じました。聖火の最終点火者に選ばれたテニス女子の大坂なおみ選手はD&Iの象徴です。ハイチ出身の父と日本人の母をもち、大阪市で生まれ3歳のときに米国へ移住。「私はアスリートである前に、一人の黒人の女性です」などと、差別問題の撤廃に向けて自らのSNSで意見を積極的に発信しています。

(写真は、開会式で入場するアルゼンチン選手団。旗手のセーリング選手セシリア・カランザサロリはレズビアンであることを公表している=2021年7月23日、国立競技場)

理念に反し、相次いだ辞任・解任

 東京五輪大会組織委員会の公式ホームページでは、こう説明されています。
「多様性は、年齢、人種や国籍、心身機能、性別、性的指向、性自認、宗教・信条や価値観だけでなく、キャリアや経験、働き方、企業文化、ライフスタイルなど多岐に渡ります。多様な人々が互いに影響し合い、異なる価値観や能力を活かし合うからこそイノベーションを生み出し、価値創造につなげることができます。『ちがいを知り、ちがいを示す』、つまり、互いを理解し、多様性を尊重するからこそ、個々の人材が力を発揮できる。それが、私たちの実現していく東京2020大会の姿です。そして、すべての選手、観客および大会関係者等にもD&Iの考え方を共有することで、大会後には、一人ひとりが東京2020大会で得たD&Iの意識を新たなフィールドで実践しつづけることにより、日本社会にD&Iの考え方をレガシーとして根付かせていくことを目指しています」

 ところが、開幕直前までその理念に反する出来事が相次いで起こりました。
・2021年2月 五輪組織委会長だった森喜朗元首相が女性蔑視発言で辞任
・3月 開閉会式の統括責任者、佐々木宏氏が女性タレントの容姿を侮辱する言動で辞任
・7月 開会式の楽曲を作曲していた小山田圭吾氏が、過去に同級生や障害者をいじめた経験をインタビューで語っていた問題で辞任
・同 開閉会式ディレクターの小林賢太郎氏が過去に出演したコントでナチスユダヤ人虐殺揶揄(やゆ)していたとして組織委が解任

組織委員会の対応が批判を浴びたのは当然ですが、一連の出来事は、まだまだ理念にはほど遠い日本社会の現実を表しているともいえそうです。

D&Iで企業の活力向上

 もちろん五輪だけではありません。企業もD&Iに取り組まなければ生き残れない時代になりました。経団連の提言「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」にはこうあります。
「企業の組織活性化、イノベーションの促進、競争力の向上に向けて、まずは女性、若者や高齢者、LGBT、外国人、障がい者等、あらゆる人材を組織に迎え入れる『ダイバーシティ』が求められる。その上で、あらゆる人材がその能力を最大限発揮でき、やりがいを感じられるようにする包摂、『インクルージョン』が求められる。ダイバーシティとインクルージョンの双方があいまって、企業活動の活力向上を図ることができる。また、ダイバーシティ・インクルージョンの実現は、全ての従業員が自己実現に向けて精力的に働くことのできる環境を生み、従業員一人ひとりのQOLの向上にもつながっていく」

 具体的な取り組みとしては、①女性の活躍推進 ②若者・高齢者の活躍支援 ③働き方改革 ④高度外国人材の受け入れ促進 ⑤バリアフリー社会の実現――を挙げ、各企業が人事・福利厚生制度、社内セミナー、社内相談窓口設置などを進めていることを紹介しています。
(写真は、「2030年までに女性役員30%以上」を呼びかけた経団連ダイバーシティー推進委員会の委員長を務める柄沢康喜・三井住友海上火災保険会長〈右〉と魚谷雅彦・資生堂社長=2021年3月15日、東京都内)

採用でもLGBT配慮

 経団連の提言は、みなさんの就活にかかわる採用活動におけるLGBTへの配慮にも触れています。具体例としては、
・新卒採用活動におけるエントリーシートから性別記入欄を廃止
・新卒採用面接担当者向けのガイダンスに、LGBTの差別を禁止する内容を盛り込み、応募者がLGBT当事者の場合でも差別せず、本人の能力や人となりで評価することを指導  が挙げられています。

 D&Iへの姿勢が企業の評価に影響し、企業の業績、将来性をも左右する時代です。志望企業が具体的にどんな取り組みをしているのか、しっかり調べてみましょう。大事な企業研究ですよ。

(写真は、コクヨがつくった性別欄のない履歴書の記入例=同社提供)

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