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2020年04月22日

国際

原油価格が初のマイナス!どうなってるの?【時事まとめ】

コロナショックで需要激減

 原油の価格が急落しています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、航空機や自動車による移動が減り、工場も生産を停止するなど、世界中でエネルギー需要が激減しているためです。原油価格は世界の政治・経済の情勢次第で急騰したり急落したりします。日本は原油などの資源を輸入に頼っていますから、その価格は企業の業績を大きく左右します。なおエネルギーの中心にある世界の原油事情を押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)

(写真は、米国ではガソリン価格が急落し1ガロン〈約3.8リットル〉あたり1.5ドルを切る給油所も=2020年4月19日、米バージニア州)

史上初のマイナス価格

 原油価格の指標となる米国産WTI原油の先物価格(5月物)が4月20日、史上初めてマイナス価格(1バレル=マイナス37.63ドル)になりました。マイナス価格は、原油の売り手が買い手にお金を払って引き取ってもらうことを意味します。新型コロナによる世界経済の停滞で需要が急減。原油が余って貯蔵タンクが満杯に近づき、買っても保管場所に困るため異例の事態となりました。先物は、将来受け渡す原油の量と価格を決めておく取引です。翌21日には10.01ドルに持ち直しましたが、6月物も一時6ドル台で売られました。今年初めには約60ドルでしたから10分の1です。コロナショックで世界の原油需要は3割落ち込んだといわれています。

そもそも「原油」って?

 そもそも「原油」って何だか説明できますか。地下から採取されたままの天然の油のことです。この油を石油精製会社が重さによって分解し、ガソリンナフサ灯油軽油重油などの燃料油や、潤滑油アスファルトなどの石油製品を生産します。いま問題になっているプラスチック製品は主にナフサなどを原料としてつくられます。

 原油の取引で使われる「バレル」は、約159リットルです。

(写真は、大阪湾沿いに集積する石油タンク=2016年、大阪府)

「シェール革命」で米国が世界一

 2018年の世界の産油量の国別ランキングを見てみましょう(英石油大手BPのエネルギー統計)。

①米国
②サウジアラビア
③ロシア
④カナダ
⑤イラン
⑥イラク
⑦アラブ首長国連邦(UAE)
⑧中国
⑨クウェート
⑩ブラジル

 広大な国土を持つ資源大国と、世界の原油埋蔵量の半分以上を有する中東諸国が並びます。米国は1970年代から長く原油生産が落ち込んでいましたが、2000年代になってシェール(頁岩〈けつがん〉)という硬い岩盤から原油や天然ガスを取り出す技術が発達。この「シェール革命」で2014年にトップに返り咲きました。統計処理が異なる米エネルギー情報局(EIA)のデータでも2018年に首位になりました。シェールオイルが世界のエネルギー地図を塗り替えました。

米国、サウジ、ロシアの駆け引き

 原油の生産や価格をめぐっては、国際的な駆け引きが繰り広げられています。今回の歴史的な原油安は、米国の産油量が増えて原油がだぶついているところにコロナショックが直撃したために起こりました。サウジアラビアを中心とする石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の国でつくる「OPECプラス」は3月上旬に減産について協議したものの決裂。ここでサウジアラビアは増産に動き価格下落が加速します。シェールオイル企業の倒産が出始めた米国のトランプ大統領がサウジアラビアとロシアを仲介する形で減産を促しました。これを受けOPECプラスは4月12日、世界全体で日量970万バレルと過去最大レベルの減産で合意しました。それでも焼け石に水の状態で下落は止まっていません。

 サウジアラビアの石油会社の場合、生産にかかる費用が安く、原油価格が1バレル=20ドル台でももうけが出ます。これに対し、米国のシェールオイルは地下深くの地層を水圧破砕して取り出すため、生産コストが高く、1バレル=30ドル前後といわれています。原油安が長期化すると、「シェールオイル企業の経営破綻(はたん)が相次ぐ→多額の投資や融資をしている米国の金融業界に波及→世界的な金融危機に」という事態になるのではないかと心配されています。

日本企業への影響

 日本企業への影響はどうでしょう。日本が輸入する原油は8~9割が中東産なのでWTI価格が直接影響するわけでありませんが、中東産も下がっています。原油を輸入して高値の在庫を持っている商社や石油元売り企業の業績にはマイナスです。石油元売りでは、最大手のJXTGホールディングス出光興産が2020年3月期の純損益見通しが赤字になると発表しました。

 一方、火力発電や都市ガスの原料になる液化天然ガス(LNG)の価格は原油価格に連動するため、調達コストが下がる電気・ガス業界の業績にはプラスに働きます。石油からプラスチック、合成繊維、合成洗剤、タイヤなどをつくる化学やゴム、ガラス業界、燃料を大量に使う航空、海運、物流などの業界にも、本来ならコスト減でプラスのはずです。ただ、今はコロナショックで需要が急減しているため、それどころではないというのが実情でしょう。

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