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2025年02月14日

経済

日産自動車とホンダ「破談」何が起きた? 今後の展開は?【時事まとめ】

昨年末に交渉公表するも

 昨年末にスタートした、自動車大手の日産自動車ホンダの統合交渉が、2月13日に正式に破談となりました。統合が実現すれば世界販売台数がトップ3に入る自動車グループが誕生するはずだったのですが、いったいなぜ破談となってしまったのでしょうか。電気自動車(EV)や人工知能(AI)の進化にともない、自動車業界は地殻変動が起きています。統合破談は、こうした大きな動きに乗り遅れる結果にもつながりかねません。両社の統合の動きをおさらいし、今後の展開について関心をもってチェックしていけるようにしましょう。(編集部・福井洋平)
(写真・日産自動車とホンダのロゴ/写真はすべて朝日新聞社)

自動車業界の変革期乗り切るため統合

 日産もホンダも読者のみなさんにとって非常になじみのある、日本を代表する自動車メーカーです。2024年12月に両社と、日産が筆頭株主になっている三菱自動車が会見し、経営統合に向けて協議に入ると公表しました。

 なぜ3社が経営統合をめざしたのか、理由は大きく2つあります。

 ・ひとつは、自動車業界が「100年に1度」の変革期にあることです。いまは環境意識の高まりを背景に、自動車市場のEVシフトが進んでいます。また、AIの進化で通信技術や自動運転が高度になり「知能化」も加速中。車載用電池やソフトウェアの開発をすすめるためには多額の投資が必要となり、小さい規模の自動車会社では世界の競争に太刀打ちできません。ホンダの三部敏宏社長はつねづね「自動車会社には規模が必要だ」「これからの時代は(世界販売台数が)400万台では戦えない」と語っていたそうです。2024年の自動車メーカーの世界販売台数をみるとホンダは377万台、日産は310万台で、いずれも400万台には届きません。

台湾の鴻海も日産に興味

 ・もうひとつは、日産の業績悪化です。長年日本メーカーではトヨタに次ぐ規模を誇っていた日産ですが、カルロス・ゴーン前会長の下で拡大路線を続け、過剰投資から収益が悪化、さらにコロナ禍で業績悪化に拍車がかかり、2020年には政府系金融機関から1800億円の融資を受けています。その後も業績は伸びず、2024年11月に発表した中間決算では本業のもうけを示す営業利益が前年同期比90%減の大幅減益。自動車事業だけでみると1430億円の営業赤字となり、9千人の人員削減も打ち出していました。

 この日産の買収に関心を示しているとみられるのが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業です。ITや電子機器の受託生産として世界的な大手で、2016年には電機大手のシャープを傘下に収めたことでも知られています。「iPhone」などスマホの受託生産が収益の柱となっていますが、その次の収益源として期待をかけているのがEVといいます。日産の大株主であるフランスの自動車メーカー、ルノーから株を買い取る可能性も浮上しており、ホンダが日産との統合協議をスタートするきっかけになったともされています。
(写真・鴻海精密工業の電気自動車「モデルC」。=2024年9月17日)

「対等」と「スピード感」で両社に違い

 それでは、なぜ今回の協議は破談となったのでしょうか。

 朝日新聞の記事によれば、両社のすれちがいは協議開始の発表時から始まっていたといいます。ひとつは、「対等」をめぐる認識の違いです。

 さきほど述べたように、統合協議のきっかけのひとつは日産の業績不振です。この点からすれば今回の統合は、ホンダが日産を「救済する」という構図ともとれます。しかし日産側はあくまで「対等」にこだわり、会見で日産の内田誠社長は「どちらが上、どちらが下ではない」と強調しています。ホンダからすればいまは自動車の販売台数も上で、稼ぎ頭の二輪事業も保有しており、統合をホンダがリードすることは明らか、と考えていたようです。この温度差が、破談につながったというのです。

 もうひとつ指摘されているのが、「スピード感」の違いです。これもさきほど述べたように、統合の大きな目的は規模を拡大して世界のトップメーカーと戦うことで、そのためにはスピード感が大事とホンダ側は考えていたようです。
(写真・会見後のフォトセッションに臨む(左から)日産の内田誠社長、ホンダの三部敏宏社長、三菱自動車の加藤隆雄社長=2024年12月23日)

最後は子会社化を提案されて

 ホンダ側は日産と統合する絶対条件としてリストラ内容を1月末までに決めるよう求めたそうですが、日産側で調整が難航し、ホンダ側はいらだっていたといいます。日産側はすでに9千人のリストラ案も出しており、「ホンダ側は上から目線だ」という声も社内から出ていたともいいます。

 そんななか2月初旬、ホンダ側は統合協議がうまく進まない場合、代替案として日産の子会社化を打診する方針と報じられました。もともとは持ち株会社をつくって両社が子会社としてぶらさがる形を検討しており、子会社化は関係が「対等」から「親子」にかわるという大きな方針転換となります。ホンダは親会社として、日産のリストラを強力にすすめて統合を加速させる狙いがあったとみられています。

 「対等」にこだわっていた日産にとって、これは受け入れることが難しい提案でした。結果として、両社の経営統合は破談となった、という流れです。13日の会見でホンダの三部社長は、「(日産を子会社化するための)株式交換による統合を提案したが、枠組みで合意できなかった」と述べました。また、日産の内田社長は同日の会見でホンダの完全子会社になった場合「我々にとって実勢はどこまで守られるか、日産が持つポテンシャルを本当に最大限引き出せるか最後まで確信に至ることができず、提案を受け入れることはできなかった」と語っています。経緯を追っていくと、両社の統合に向けた目的意識や社風はかなり違っていて、統合しても果たして本当にうまくいっただろうか……というようにも感じます。

今後の日本経済にも影響する破談

  経営統合は白紙になりましたが、今後の両社はどうなっていくのでしょうか。

 日産は、単独で経営悪化からの脱出をはからなければいけません。リストラ計画は立てているものの、今後さらに大規模なリストラが必要となることは十分考えられます。台湾の通信社は、鴻海の幹部が日産幹部と接触して連携の可能性をさぐっていると報じています。会社の行く末も見通せない状況となりました。

 ホンダはスケールメリットを追って仕掛けた経営統合が破談となり、改めて世界と戦うための方策を考える必要に迫られています。日本国内ではトヨタがスバルマツダスズキなどと資本提携の関係を築いており、ホンダは日産に逃げられたいま国内で組める有力な相手はいないのが実情です。新しい協業先を探すのか、独立路線でがんばるのか、非常に難しい決断を迫られることになりそうです。

 朝日新聞の記事では、ホンダ幹部が今回の統合破談を受け「このままだと家電の繰り返しだ」と述べたと紹介しています。日本の電機産業はかつて世界を席巻しましたが、世界の市場構造の変化についていけず、海外の新興企業に次々と市場を明け渡していきました。日本の主力産業である自動車産業が、その二の舞にならないとも限りません。今回の経営統合破談は単なる会社間の問題ではなく、日本経済の今後にも大きく影響を及ぼす可能性もあると考えて、これからのニュースもぜひチェックしてみてください。
(写真・日産自動車の追浜工場=2024年12月18日)

過去にも大型合併が破談になったケースも

 大企業同士が生き残りをかけて合併に踏み切るケースはこれまでもたくさんあります。都市銀行はかつて10行以上ありましたが、合併をくりかえして現在は3大メガバンクりそなの4グループに集約されました。いま話題の日本製鉄も、新日本製鉄と住友金属工業が合併した会社です。2021年にLINEヤフーが経営統合したニュースも記憶に新しいところです。

 一方で今回のように、大型統合が破談になったケースもあります。2009年には酒類大手のキリンホールディングス(HD)サントリーHDが統合に向けて交渉していると報じられましたが、翌年破談となりました。統合比率をめぐって意見が食い違ったとされています。自分が進もうとしている会社も過去には統合を経てきたり、統合が破談になったりしたことがあったかもしれません。調べてみると、企業研究がより深まると思います。

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