日本航空株式会社
2015シーズン【第14回 日本航空】
なぜJALか明確に 求めるのは感謝の心を持ち、自己成長できる人
日本航空 人財本部人事部 採用・育成計画グループ長 山本和則 (やまもと・かずのり)さん
2014年02月01日
――採用人数について教えてください。
2014年度入社予定は、業務企画職(総合職)事務系が約65名、技術系が約15名、客室乗務職(CA)が約270名。女性は事務系が約4割、技術系は約3割。客室乗務職は全員女性です。技術系は全員理工系で院卒が約6割ですね。事務系や客室乗務職にも院卒はいますが1割~2割程度でしょうか。
――エントリー数は?
プレエントリーは、職種に関係なく全体で5万~6万とほぼ経営破綻(はたん)の前の水準に戻りました。職種別の本エントリーは業務企画職がその半分程度。客室乗務職は1万~2万くらいですね。2010年に経営破綻し2011年度と12年度は新卒採用0人でしたが、13年度入社から復活し、14年度入社で2年目になります。
――募集職種について説明してください。
業務企画職は、いわゆる総合職にあたる職種なので領域はとても広いですが、ひと言で言うと、JALグループ全体のパフォーマンスが最大化するような仕組みづくりや、フライトに携わる部門を最大限サポートする仕事です。
具体的には、座席や貨物スペースを販売する営業や需要を喚起する施策を立案し実行する営業企画、お客様のニーズを分析しながら商品を作る商品サービス企画、路線・便数計画や路線収支管理、企業運営に必要な財務、調達、人事、広報、総務など多岐にわたります。
――営業職という感じではないんですね。
営業部門にいるものもいますが、けっして営業職ではありません。もちろんお客様と直接接する最前線の空港や予約部門で働いている者もいますが、割合としては、一般管理部門や現場のスタッフをサポートする間接部門が多いですね。
――技術系の仕事は?
ひと言で言うと、安全で高品質な航空機を、採算性を意識しながら提供する、技術的見地から経営をサポートする仕事です。
具体的には、航空機整備の技術管理、品質保証、整備部品の管理、工場での生産計画。航空機はメーカーから買いますが、使用していると車の車検と同じで定期的に整備しなければいけません。簡単な整備点検から、何年かに一度、航空機を分解して裏までチェックする詳細な整備点検まで、保有する全機を計画的に実施します。不具合や改修が発生すると、航空機や部品のメーカーと技術系が調整、検討しながら、整備方法や改修方法を現場に提供します。
――空港の整備工場でつなぎ服で仕事をしていらっしゃる方たちですか。
現場で整備作業をしているのは、主にグループ会社のJALエンジニアリングの社員です。日本航空の技術系社員は、彼らとともに、まず整備の現場で経験を積み、安全とは何か、整備の基礎、技術の基礎を徹底的に学びます。
その後、技術管理、品質保証などを担当することになります。昔は機械系、電気系が多かったのですが、最近は理工系の幅広い分野の人が多いですね。技術的なことは入社してからの訓練、研修で学びますので。
――パイロットは全く別の採用ですか。
パイロットは別です。しばらく採用していませんでしたが、2015年度入社の新卒から5年ぶりに再開します。
――エントリーする学生を見て、男女の差を感じることはありますか。
最近は女性のエントリーが増え、内定率も上昇する傾向にあります。女性は業界や企業研究などよく準備していて、どういう業界で、どんな課題を抱え、その企業がどんな取り組みをしているか、よく知っている人が多いですね。企業選択の軸が明確な印象があります。男女で優劣はないと思いますが、よく言われるように女性の方が芯が強くしっかりしている印象はありますね。
――「企業選択の軸」というと、たとえば?
「サービス業やインフラ業界志望で社会貢献している企業を回っています」とか、「サービスという切り口でお客様との接点の中で自己実現をしていきたい」であるとか……。
――客室乗務職の内定者は全員女性とのことですが、受けに来る男性はどれくらいいるんですか。
かなり少ないですね。実際のエントリーは、全体の1割もいない感じです。男性の内定者がいないのは結果論で、たまたま男性には選考基準を満たす人がいなかった。JALの客室乗務員(CA)として、こういうサービスがしたいというビジョンや熱意が足りなかったのかもしれません。
CAはサービス業、大切なのは豊かで美しい「心」
――2015年度新卒採用の流れを教えてください。
12月から広報、プレエントリーの受け付けを始めました。会社説明会は、合同企業説明会に出て行くケースと、大学の学内説明会に参加するケースがあります。大学は30校程度でしょうか。自社開催説明会が1~2月。定員40~240人の講演を1日3~4回、業務企画職、客室乗務職など職種別に開きます。
去年までは東京地区だけでしたが、2015年新卒向けは東京以外に4都市で開く予定です。説明はわれわれ採用グループでやりますが、その後の質疑や学生との接点は現場の若い社員、CAが対応します。最初に会社側から具体的な仕事内容や仕事のやりがい、醍醐味などありのままのJALをご説明し、その後、全体質疑、そして個別に参加社員とのフリーでの質疑を行います。
その後の流れですが、既に職種別エントリーを開始しており、2月上旬からエントリーシートを受け付ける予定です。
――申し込みが殺到するんでしょうね。
大変ありがたいことなのですが、数十秒で予約が埋まってしまう。予約が取れないという不満の声も受けました。
――熱意があるのに参加できない学生も多いと思います。説明会参加の有無で優劣はつくのですか。
説明会に参加した方がいいですかという質問を受けますが、全く関係ありません。WEBでの説明会もあるのでインターネット上で聞いてください。チャット式で質問もできます。ただ、これも参加可能人数があります。何人かが同じ部屋で聞いてもらえるといいんですが。
■ES、面接
――書類選考は、適性検査とエントリーシート(ES)ですか。
まずはESで書類選考をします。適性検査は4月に入ってから選考の中で行います。これまではテストセンター形式のSPIです。1次もしくは2次合格者が対象です。
――面接にはどのくらいの人が進めるのですか。
数は言い難いのですが、ある程度は絞ります。ただし、客室乗務職は実際に会ってみないとわからないところがあるので、なるべく多くの方に会いたいと思っています。業務企画職に比べると通過率は高いかもしれません。
――大量のESをどうやって見るのですか。
基本的には人事部のメンバーが中心になって見ます。何千通とありますが、全て目を通します。1通あたり2~3分、もっと読んでいるかな。しっかり読み込むので相当時間はかかります。そこに思いがこもっているかどうか、JALに本当に入りたいと思っているか、求める人財の素養や本気度を見ます。
ESは全職種手書きです。ここにはこだわっていて、書いている内容とか字のうまい下手ではなく、丁寧に書いているかというところから、志望度合いや性格がある程度わかります。一番は、熱意とどれだけ気持ちを込めて自分の考えを自分の言葉で書いているかですね。
――パッと見てはじくのは、どんなESですか。
たとえば、空欄が多いもの、乱筆など、思いが感じられないものは厳しいかな。中身は、どうしてもみなさん書いてくる内容が似てくるので、そこからいかに見抜くかがポイントです。
――志望動機で多いのはどんなパターンでしょうか。朝日新聞社が主催する CA志望者向けの「就職フェア」で模擬ESを添削したときには「小さいころ御社の飛行機に乗ったときCAの方の笑顔が素敵で、私も……」というパターンが続出して閉口したことがあります。
「機内サービスを受けて、御社が好きになった」「幼少のころ海外に行ったとき、御社の飛行機を利用してよい印象を持ちました」といった書き出しが多いですね。そのころの印象って、本当に覚えてる?って聞きたくなります。どこかで聞いてきたテクニックなのかなと思うこともあります。
「飛行機が大好き」という人も多い。非常にありがたいですし、社員にも飛行機が好きな人間はたくさんいるので悪くはないんですが、それだけだと表面的で、「ありがとうございます。それで?」と聞きたくなります。なぜJALかという理由を含め出来るだけ具体的に書いてほしい。
――そういうありきたりな表現なら書かない方がむしろ目立ちますか。
目立つとまでは言えませんが、書いていない方が読みたくなりますね。それを書くために少なくとも2~3行使っていて、書かなければその分違うことを書けるはずですから。こんな観点もあるのか、と思ったりします。
――「なぜJALか」の動機で、説得力のあった例は?
JALは一度経営破綻して再建途上にあり、まだまだ社会の目は厳しいところがあります。そういう現状をちゃんと理解したうえで、たとえば「信頼はすぐに回復できるものではないが、自分もグループ社員がベクトルを合わせて一つの目的に向かうところに飛び込んでいきたい。あえて厳しいところで頑張りたい」などということが、過去の具体的なエピソードと絡めながら上滑りせず書かれているものを読むと、覚悟や気概が感じられますね。ここで話し過ぎると、みなさん同じ内容を書いてくるかな……(笑)。
――客室乗務職のESには、大きな全身写真を貼るんですよね。
昔はそうだったんですが、新生JALでは全身写真はなく、普通のサイズの証明写真だけです。選考の中で全身写真は必要ないと判断しました。実際にお会いする中で十分わかりますので。
――客室乗務職の選考において、容姿はどういう価値判断をするのですか。
難しいですね。容姿という評価はないです。基本的にはサービス業、機内でお客様に直接サービスする仕事なので、自然な笑顔や清潔感など、JALのサービスにふさわしいかというところを見ます。
――4月以降の面接は何回でしょうか。職種によって違いますか。
業務企画職は4回くらい。形式は、これまでは初回がグループディスカッション(GD)で30~40分くらい。2次、3次は数十分間のグループ面接ですね。最終は役員による個人面接です。客室乗務職は3回くらいです。初回はGDで2回目がグループ面接。最後は個人面接です。基本はそんなに変わらないですね。
JALフィロソフィに共感できるか、 人として基本的な素養を見る
――エントリーする学生に多いのはどんなタイプですか。
エアラインの特性からか、どちらかと言えば、社会貢献に関する意欲が高い方、また個人プレーを好む方より仲間と一緒にチームプレーで何かを成し遂げたいという意欲の高い方が多い気がします。
――求める人物像は?
新生JALとして、新たに「JALグループ共通の求める人財像」を策定しました。企業理念の実現のために全社員が持つべき価値観、行動指針である「JALフィロソフィ」をベースに、過去の反省に基づく弱みの克服、強みの保持とさらなる強化という二つの観点から策定しています。これは学生に対してだけでなく、私たちグループ全社員にも求められている人財像です。
日本航空は、高い安全性とサービスを提供している会社なので、もちろん公共交通機関としてのインフラ業という面もありますが、高い水準を持ったサービス業だと思っています。ハードだけではなく、そのハードを提供する人、社員がお客様の立場に立って心から寄り添えるか、が全ての職種、全社員にとって大事なのです。
この理念、考え方に共感していただくことがまず重要です。六つある「求める人財像」のうち、特に採用段階で求めたいものは二つ。一つは「感謝の気持ちと謙虚な学び」で、すべてのことに感謝し自己成長できる人のことです。二つ目は「仲間と共に働く」。一便一便のフライトは多くの仲間でつくりあげているので、単なる協調性ではなく仲間のことを常に想像しながら自ら汗をかく、それを自分の喜びと感じられるかどうか。人として基本的な素養である美しい心と豊かな人間性を持った方を求めています。
――応募者の中には、表面的な憧れで志望してくる学生も多いのでは?
多いですね。イメージが先行しやすい業界、会社なので、表層的なイメージで応募する方はいますね。華やかなイメージで捉える方が多い。たとえば国と国、人と人の架け橋とか、人やモノの輸送を通じて社会に貢献したいという人。
気持ちはわかるんですが、日本航空は航空業界でどういう状況にあるのか、一度経営破綻して多くの皆さんのご支援のおかげで再生のチャンスをいただいてようやく成長戦略を歩み始めた、こういう一連の流れの中で事実をきちっと考えてほしい。それを踏まえて何をしたいかを表現してほしい。破綻前と変わらず昔のJALのイメージで書いてくる人もいます。この点は私たちが採用広報の中でしっかりお伝えする必要がありますね。
――世界の航空業界の再編、格安航空会社(LCC)の台頭など、業界地図がガラッと変わっています。
その辺の状況を知っているかどうかも大きいですね。昔はCAというと全日空かJALでしたが、今はLCCもあり、CAになるチャンスは広がったかもしれません。でも、JALのCAはここを大事にしている、こういうサービスを目指しているという違いや特徴を書くなり、表現してもらえたらいいと思います。
――客室乗務職の選考で、適性や見ているポイントなど、他の職と違う点はありますか。
明るく前向きか、というところは会話の中から見ますし、簡単ではないですが、感謝の心や謙虚さをベースに持っているか、は面接の中で見ています。また自然な笑顔も大事ですね。これも適性の一つですから。
――感謝の心は、体験を聞いて判断するんですか。
そうですね。取り繕って作った感謝じゃなくて、本当に普段からそういう気持ちを持っているか。親から教わったものとか、長年自分の人生の中で培ってきたものとして落とし込まれているか。そこを見ますね。
表面的には「感謝しています」「ありがたいと思いました」って話す人はたくさんいます。いろいろ聞きながら、JALフィロソフィにもある「美しい心」かどうか、心根を見ます。
――心根をみるコツは?
普段の生活で何を感じているのかという感受性は大事だと思います。見方はいろいろあり、これだという方法はありませんが、たとえば、たまに面接の中で「今日、家から会社に来るまで、電車やバスの中で、何を見てどう感じましたか?」と聞くことがあります。人に関心があるかどうか、人の言動や様子から何を感じているか、その場の状況から次に何が起こるとシミュレーションできるかどうか、を探ってみたりもします。
■ずばりホンネ
――インターンシップはしていますか。
まだ実施していません。16年卒に向けて検討したいと思います。
――選考において大学名は関係ありますか。
一切見ていません。面接官もその情報は全く持っていない。ESにも書かせていません。学部と学科だけです。
――OB・OG訪問は、問い合わせがあったら社として紹介していますか。
会社として紹介はしていません。ただ、もし機会があればOB訪問は企業研究として、やった方がいいと思います。OB訪問をしたかどうかで選考で差をつけることは一切ありませんが、社員の様子、企業風土を知る意味では有効かもしれません。OBに会って会社を理解してもらえると、ミスマッチもなくなると思います。
――同業他社以外で、内定者が競合するのはどんな業界ですか。
昔は総合商社、金融、インフラ、鉄道、海運が多かったのですが、最近は傾向が変わってきました。2013年、14年の新卒を見ると、非常に幅広くて特定の分野がなくなっている感じですね。従来の業界に加え、メーカーやマスコミなども多いです。就職活動が非常に厳しく、特定分野に絞るとうまくいかないこともあるでしょうから、とりあえず幅広く受けておくということかもしれません。最終的な競合企業を見ると、あまり脈絡がないというか規則性がないことから、学生が業界を絞ってないのかなという感じもあります。
――客室乗務職はどうでしょう。
客室乗務職は同業他社との併願が多いですが、その他は、百貨店、教育業界、ホテル、メーカー、商社、金融など非常に多岐にわたります。
――経営破綻もあり、全日空と両方内定した学生は向こうに行ってしまいますか。
うーん。こちらも学生の皆さんにはしっかりとお話をさせていただいていますが、JALフィロソフィを学んでいくなかで、社内の風通しや企業風土がこれまで以上に良くなっていることもあり、そういったところを感じてもらえる学生さんも多く、それほど辞退者が多いとは感じていないですね。ここはこれからも地道に頑張るだけです。
――全日空が客室乗務職の正社員採用を始めましたが、JALはどうですか。
当面は現行の形を継続しようと考えています。今の仕組みが定着していて長いキャリアの中で人財育成上のメリットもあるので。大事なことは、社員が働きやすく活躍できる環境をいかに整えていくかです。
――ライバル社が正社員採用をすることに危機感はありますか。
それは、もちろんゼロではないですね。実際に入って働いて活躍している社員の姿、事実をしっかりお伝えして、学生に見てもらい、理解していただこうと思います。制度としては、1年間の契約社員を2回更新して、実績を積んでから4年目以降に本人の希望、適性を見て正社員に移る方がほとんどです。
――LCCや外国の航空会社との併願も多いですか。
多いですね。とくにCAになりたい方は、そういうところも併願しつつ、第1志望はうちという人が多い。
――英語力はどの程度重視するのですか。
業務企画職も客室乗務職も、SPIの中で英語のテストをしますが、一定の点数で足切りはしません。客室乗務職については、サービスで英語は重要なので、ある程度の力があるかどうか意識して見ています。
――抜群にTOEICの点数が高いとか、英語力の証明があればポイントになりますか。
それがプラスに働くことはありません。あくまで人物本位で選びます。客室乗務職だけは、募集要項に「TOEIC600点相当」と記載していますが、スコアを持っていない方もたくさんいます。あくまで目安です。
――全日空がエアラインスクールを開きました。
当社も今年から、人材教育の経験を持つ会社「キャプラン」と共同で、「JALエアラインアカデミー」というスクールを運営しています。選考とは関係ありません。
――CA養成スクールに通っている学生は違いますか。
それほど違いは感じません。専門学校に通うことは、もちろん否定はしませんし、CAを目指して強い熱意をもって努力することはとても大事です。ただし、選考の中でスクールに通った人が有利ということは決してありません。行っていない方も入っていますし。
テクニックは入社してから教えますので、それよりも人間性や心の部分を見ています。内定者にはスクールに行っていない人も多くいます。通った人は、立ち回りや所作を見ればわかります。ただ、それができていなくてもマイナスではありません。本当に欲しい要素を持っているかどうか。スクールに行っていることは関係ないですね。
成長させてくれる企業探しでなく、どう成長したいのかが大事
――研修制度について教えてください。
2013年度からJALグループ共通(同じプログラム)の入社教育を実施しています。社会人としての基礎、JALグループ共通の価値観・考え方、安全意識等を徹底して教育します。入社後の社員は、三つの義務教育、JALフィロソフィ教育、安全教育、JALブランド(JALらしさを学ぶ)セミナーを受けます。そのほか階層別研修や、経営力向上に資する教育も実施しています。
――配属は? 地方勤務、海外勤務もあると思いますが。
業務企画職は、入社前に業務の説明をして、配属希望を聞きます。どこに興味を持っているか、本人と配属面談をして、個々に適性を判断して決めます。希望通りになるとは限らない。
初期配属先は、お客様に直接接する空港や予約が主で、成田、羽田、札幌、福岡、大阪、沖縄などの空港や予約センターとなります。エアライン業務の基礎をきっちりと勉強してほしいので。その後は本人の適性を見て、さまざまな分野に分かれます。
――JALの仕事のやりがいと厳しさについて教えてください。
JALは、約3万名のグループ全社員で一便一便のフライトをつくりあげている、そういう会社です。目の前の仕事はそれぞれ違っても全て一便のフライトにつながっています。そういうチームワークで“お客様が常に新鮮な感動を得られるようなJALならではのサービス”をご提供し、心からご満足いただけた時には大きな達成感があります。
2010年の経営破綻後、新生JALとしてスタートし、成長戦略が少しずつ実を結びつつあります。現状に甘んじることなく、グループ全社員が必死で走っているところです。破綻のときに社会の多くの方から厳しい声がありましたし、今でも厳しく見られています。自分たちが担っている責任、社会に対する影響も大きいので、そこを自覚してやらなきゃいけない。
私たちが掲げた「世界で一番お客さまに選ばれ、愛される会社になる」という高い目標を達成するには、必死で努力し続けなければならず、そこに当然仕事の厳しさもあります。信じた道を歩む中で、少しずつではあるが着実に結果が出始めているので、それが実感、やりがいにつながってきていると思いますね。
――破綻後に稲盛和夫さんが会長(現名誉会長)として来て様々な改革をしました。「稲盛イズム」は社員に浸透したのですか。
破綻してから、グループ全社員対象に徹底的に様々な教育を通して意識改革を行ったので相当強く浸透していますし、意識しています。ただし、いつまでも名誉会長の稲盛に頼っていてはだめで、社員一人ひとりが自立しないといけないと思っており、自分たちにしっかり落とし込んで実践できるように努力しています。まだまだ途中で、ずっと学び続けなければなりません。
――一番大きいのはコスト意識ですか。
再生の柱は二つあって、「JALフィロソフィ」と「部門別採算制度」です。全社員が共通して持つべき考え方や価値観にあたる「JALフィロソフィ」の40項目は、重要度に差はなく、どれも大事です。たとえば「人間として何が正しいかで判断する」と書いていますが、そういう価値観、考え方が統一されたことで判断の軸が全社的にぶれなくなった。これが一番大きいですね。
そして採算意識です。企業として「収益性の高い会社にしていく」という意識は昔は低かったと思います。今は「部門別採算制度」のもと、小集団で収入と費用、収支を細かく管理するようになりました。鉛筆1本までといったら大げさですが、各組織のリーダーが責任をもって計画を立て、実績も細かく管理し、“売上を最大に、費用を最小に”なるよう努力しています。
■山本さんの仕事について
――山本さんの就活について聞かせてください。
就職活動をしていた当時は、社会貢献性の高い業種で、形になって見える仕事で世界とつながっていたい、こういう軸で活動していた記憶があります。意外かもしれませんが、インフラ業に加えて、ゼネコン、街づくりにも興味がありディベロッパー関連も受けていました。
最終的にエアラインにした決め手は、当時は、よりグローバルな企業だと感じたことと、高い社会的使命を担うサービスという側面を強く持っていてお客様との距離が一番近いことでした。
――グローバルにこだわったのはなぜですか。
世界とつながっている点に興味があった。英語は好きな分野で、学生時代から興味がありました。
――全日空も受けましたか。
受けました。併願している人は多いと思います。最終的には、選考の中で会った社員、面接官、人で決めました。他社がどうこうではなく、たまたまですが、JALは一生懸命仕事して一生懸命遊ぶ、オンとオフの切り替えがはっきりしていて、働いている姿が生き生きしていた。対人コミュニケーション能力が高いんでしょうね。引き込まれる人が多かった。
――入社してからの仕事について教えてください。
入社して最初は貨物部門に配属されました。その後、空港でのオペレーション業務で航空機のバランスと重量管理をやっていました。国際線出発便の搭載計画作成から重量管理、機体重心の調整を行い、まさに緊張感ある空港の最前線でオペレーションの基礎を学びました。
お客様、貨物・郵便、手荷物、燃料といろいろありますが、航空機に積める重さは決まっています。ぎりぎり飛べる重量で、効率よく搭載できれば収入が増える。航空機のバランス、重心の位置は航空法で決まっていて、バランスはお客様の座る位置、貨物・郵便や手荷物の搭載位置、燃料の量で変化します。今日の天候だと燃料をたくさん積むとか、重い貨物を載せてバランスが前か後に偏っているとか、出発直前まで分からない。お客様が乗ると、たとえば、ファーストクラスが多くてエコノミークラスが少ないと前方寄りの重心に。貨物・郵便、手荷物も直前です。すべてを調整して、最終的には出発間際に一番燃料効率の良いバランスにしていく仕事です。
その後は整備本部で人事を担当し、現在の人事部は5年目になりますので、かれこれ10年以上、人事業務に携わっています。
――今までで一番印象深い仕事は。
今は残念ながら路線がありませんが、かつて飛んでいたインドネシアのバリ線開設に関わりました。半年くらい出張でバリ島に行って、日々の空港業務を行いつつ、オペレーションマニュアルを作ったり、現地のスタッフを採用して初期教育をしたりしました。エアラインでしかできない仕事であり、新路線開設はめったにないので、すごくいい機会だったと思います。日本人社員は総務や整備など数名程度。現地の委託先スタッフには英語をしゃべれない方が多かったため、短期間で現地の言葉(インドネシア語)を必要最低限のレベルまで学習するのが大変でした。
整備本部時代に経験したグループ会社統合のプロジェクトも印象に残っています。私は文系出身で総合職事務系の入社なので整備のことは全く分からないのですが、整備現場でまさに直接安全を支えている整備士やエンジニアとコミュニケーションをとり、組織をまとめながら、人心を一つにしていくという業務はとても難しく、だからこそやりがいのある仕事でした。
みなさんに一言!
みなさんが企業を選ぶポイントには、企業の風土、仕事の内容、待遇などいろいろあると思います。入社後のミスマッチをなくすためにも、何を軸に企業を選ぶか、しっかり自分の中で持つことが大事です。
最近、「どこの企業なら自分を成長させてくれるか」という受け身な姿勢の学生がいます。受け身でいると就職活動自体が非常に窮屈なものになってしまいます。自分はこの会社で何をしたくて、どう成長したいのかという姿勢で臨んでほしい。そのうえで、選考では表面的なテクニックで装うのではなく、それまでの経験、学びから得た持ち味をどんどんぶつけてほしいと思います。
面接で難しい質問があったりしますよね。そんなときも、表面的な言葉やテクニックでかわさないでほしい。その場で困って、言葉が詰まっても構わないと思うんです。その状況から逃げずに必死で考えて、自分の考えをひねり出す。そういう素直さと最後まで諦めない強さが大切だと思いますし、そういう人は会社に入ってから伸びると思います。
就活はたくさんの企業に出会えるチャンスなので、いろんな角度から企業を研究して、その中からJALを選んでいただくのであれば、とても嬉しいです。採用活動の場でお会いできるのを楽しみにしています。
日本航空株式会社
【運輸】
グローバル化の進展により、航空需要は今後も拡大すると予測されていますが、LCC(ローコスト―キャリア)のシェア拡大など、航空業界を取り巻く環境は変化を続けています。 当社は2010年の経営破たん以降、多くの方のご支援とご協力を得ながら、しっかりと利益を上げられる会社に生まれ変わるために、事業運営のあり方を見直すと同時に、社員の意識改革を進めています。 2011年には企業理念と行動指針であるJALフィロソフィを、翌年には「2012~2016年度JALグループ中期経営計画」を策定し、全社員は心をひとつにして同じ目標へ向かって進んでいます。
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