人事のホンネ

株式会社 日立製作所

2016シーズン 【第4回 日立製作所】
「グローバル」重視 技術系は研究内容も 強い「日立愛」

日立製作所人事教育総務センタ 採用グループ部長代理 大竹由希子(おおたけ・ゆきこ)さん

2014年11月05日

■採用実績と職種
 ――2015年春に入社予定の新入社員の数を教えてください。
 計画値として出しているのは、大学、大学院、高専以上で技術系500人、事務系100人の計600人です。あとは高校卒や、事業所ごとの採用もあります。今年入社の人数もほぼ同じ約650人です。

 ――男女比は?
 技術系と事務系で異なります。技術系はいま女性が約15%、事務系は40~50%の間くらいです。コントロールしてこういう数字になっているわけではなく、会社としてはもっと女性を採りたいのですが理系の女性は全体数が少なく、応募者の割合もほぼ同じ数字のため、こうなっています。事務系の新入社員も、だいたい応募者割合と同じですね。

 ――理系中心ですから、大学院修了者が多いのでしょうね。
 技術系は8割が院卒です。いわゆるドクターは1割で、応募者のほとんどは修士ですね。事務系の院卒は数人程度です。院卒は何人、ドクターは何人と最初に枠を決めているわけではないので、事務系でも技術系でもいい方であれば採用させていただきます。
 高専卒は、今年は日立製作所だけだと十数人の採用数でしたが、もっと採りたいと考えています。

 ――技術系ではどんな能力が必要ですか。
 技術系の中でも特に研究所は応募する学生もほとんど修士やドクターなので、四大卒生は難しいという面はあると思います。一方で、事業部でもっと現場寄りの設計や開発を担当する社員については、研究内容に加えて人間力というかコミュニケーション能力も問われてくるので、技術系でも単純に学歴だけではなく、コミュニケーション能力とかチームワークがとれるかどうかも見ます。

 ――四大卒で入れるのはよっぽど優秀な学生ということですね。
 そういうわけでもないんですが、基礎的な勉強をしっかりやっているかは見ています。あとは研究のアプローチや、研究内容を理解して勉強をしているかも。四大卒は応募割合が少ないだけで、それほど狭い門というわけではありません。

 ――女性の技術系採用を増やしたいそうですが、アベノミクスの影響ですか。
 アベノミクスの前からです。日立はいま事業の9割以上が「B to B」(Business to Business=企業間取引)ですが、最終消費者は一般の方々。それなのに上流の作り手が日本人男性だけなのはどうなのか、という考え方があり、以前から日立では社外取締役に女性を入れたりしています。

技術系の大半は推薦、自由応募採用を増やしたい

■職種選択
 ――募集要項には、研究開発、生産技術、システムエンジニア(SE)、営業、人事総務、生産管理など様々な職種が書かれていますが、応募の段階で細かく分けるのですか。
 技術系と事務系では採用の仕方が大きく違います。まず事務系は一括採用で、内定後に配属先を決めます。秋ごろに配属面談などをやり、3月ぐらいに決めるスケジュールです。

 一方で技術系は「ジョブマッチング」というシステムをとっています。最初から100職種以上のジョブリストを学生に提示して、その中から、何番を受けますという形で採用試験を受けてもらいます。リストの中から三つ受けることが可能です。もっとも、この採用方法は、来年少し変わるかもしれませんが。

 ――三つの職種は、どう選んでもいいのですか。
 日立は事業範囲が広いため、ひとつの事業が一会社のような大きさになっています。「ヘルスケア」「電力システム」「インフラシステム」など七つの「カンパニー」を社内に設けているのですが、技術系に関してはざっくり言えば、学生はカンパニーごとに1職種、全部で三つのカンパニーを受けていい、という形です。SE職などには別のルールもありますが大きくは三つです。

 ――このカンパニーは研究開発、このカンパニーは生産技術など、違う職種との併願もできるのですか。
 研究所が一番人気なので、自分の研究分野と比較的近い研究所を受けて、あとはそれに関連するカンパニーで近い分野の職種を、という受け方も多いですね。

 ――たくさんのグループ会社がありますが、採用選考は別ですか。
 技術系については、もともと日立製作所本体から分離した会社を中心にグループ会社6社(日立アプライアンス、日立ハイテクノロジーズ、日立産機システム、日立オートモーティブシステムズ、日立オムロンターミナルソリューションズ、日立パワーデバイス)と一緒に採用しています。例えば3職種を選ぶときに、日立製作所で2カ所、残り1カ所はグループ会社を受けるという学生もいます。
 ほかのグループ会社は個別に採用していますが、情報を共有するなど人事部門間で交流をしています。さきほどの6社も含めたグループ約25社でかなり大規模な就職フェア「Hitachi Square」も開催しています。日立グループの社員はとにかく数が多いので、社内で名刺交換をする文化があるんですよ。

■推薦と自由応募
 ――かつては理系の就職といえば大学の研究室ごとに各社の推薦枠が決まっていて、その推薦で入るのが当たり前でしたが、現状は?
 今は「後付け推薦」という形が増えています。こちらが内定を出してから学生が大学に推薦状の発行を依頼して我が社に提出するケースです。推薦状を出した学生は確実に入社してくれるので、こちらとしてはありがたいことです。

 ――技術系の自由応募と推薦の割合は?
 後付け推薦も含めれば、ほとんどが学校推薦ですね。そもそも技術系で日立を受ける学生は、ほとんどが推薦です。今は全国約200大学に求人票を出していて、そこからの推薦で受ける学生が多い。求人票は各事業に直結する専攻のところに出しています。求人対象外の学生については、自由応募でぜひ受けてくださいということです。

 ――今年、自由応募から入った技術系の新入社員はどのくらいいますか。
 数パーセントですね。ただ、割合を来年以降どうするか考えていきたい。農学系など求人対象外でも優秀な学生がとても多いし、たとえばSEの仕事に専攻分野はあまり関係ない。自由応募からの採用も増やしていきたいと思っています。

 ――技術系は学校推薦ですから特定の大学の内定者が多いと思いますが、事務系はどうですか。
 いろいろな大学から採りたいので、特に地方の国公立大や海外に留学している日本人学生を積極的に採用しています。地方の国公立の学生向けのイベントもやっています。

 ――総エントリー数は?
 自由応募もあるので6000くらいです。実は、3年ほど前から少し募集人数を減らしています。グローバルカンパニーになっていくために、日本人を今までより増やさない方針をとっており、その分現地法人で外国籍の方を採用するようになりました。本社採用の600人の中にも外国人が10%くらいいます。外国人の応募者が増えているので、採用数も増やしていきたいと考えています。

■ダイバーシティー
 ――外国人採用はどこの国の人が多いのですか。
 今は中国ですね。ダイバーシティーの観点からは様々な国籍の人がいた方がいいので、外国人留学生イベントを開いたり、外国籍の日立社員との座談会で仕事のやりがいや大変さなどを率直にお話しする機会を設けたりして、出身国のバラエティーも増えてきています。
 
 ――日本の学生と、外国人の学生の違いは?
 私が直接会う事務系の学生の印象ですが、日本語、英語、母国語のトリリンガルは当たり前という感じですし、チャレンジ精神というかバイタリティーが全然違います。日本の大学に留学していたアジア系の女子学生が「私はいつも一番前に座って全部ノートをとっているのに、日本の学生は後ろに座って、寝たり携帯をいじったりしているのが本当に不思議。私はこの与えられた時間を集中して勉強している」と言っていて、私でさえ負けそうだと思うほどでした。とはいえ、国内にもお客様がいますし、外国人の方は将来的に母国に帰りたいという人もいるので、もちろん日本人も安定的に採用していきます。