人事のホンネ

東京海上日動火災保険株式会社

2015シーズン【第12回 東京海上日動】
自ら考え行動できる人がほしい あらゆる産業の挑戦を実現する仕事

東京海上日動 人事企画部 人事・採用グループ 課長 横山功介(よこやま・こうすけ)さん

2014年01月28日

■昨年の採用実績、職種
 ――2014年度入社予定の採用実績を教えてください。
 全体で約470人。全国型では約120人、地域型で約350人という内訳です。文系・理系は特に意識して採用していませんが、近年は理系学生の採用が少し増えている印象です。今年は院卒の学生も約20人いますが、これも事前に採用数を決めていません。

 ――エントリー数と近年の傾向は?
 エントリーは数万人規模です。具体的な数はお知らせできませんが、ここ数年変わらないですね。

 ――募集職種について教えてもらえますか。
 「全国型」「地域型」の2職種です。総合職・一般職という考え方ではなく、簡単に言うと「海外も含め転勤があるのが全国型」「本人の了解なく転居転勤がないのが地域型」です。当社では役割等級制度を導入しており、等級が同じであれば「全国型」「地域型」に関わりなく同じ役割を担うことになっています。エントリーしていただく学生の数は「地域型」の方が多いですが、「全国型」「地域型」の併願もできます。

 ――男子学生と女子学生で違いを感じることはありますか。
 一概に言うのは難しいですが、コミュニケーション能力は女性の方が高いと思います。就職活動の早い時期に面談したり、質問を受けたりするとそう感じますね。男性はその後、徐々にいろんな社会人に会ってか、コミュニケーション能力がもまれてくるんですけど。
 
 ――セミナーは内容を変えて何回も開いていますね。狙いを教えてください。
 企業選択は学生にとって人生を左右しかねない非常に大切な判断です。ありのままの東京海上日動を知っていただく機会を充分にご提供するのが一番大事だと思うので、学生に来てもらう「時期」「目的」にあわせてコンテンツを検討し、セミナーを開催しています。例えば、初期段階は大学説明会や合同企業説明会などの場で我々採用担当が「企業概要」「損害保険のビジネスモデル」をお伝えします。12月中旬ごろからは現場第一線の社員と会っていただき「仕事の醍醐味」「現場の厳しさ」「社風」にふれてもらう「マリンセミナー」を開催します。東京では1日40人を超える社員に協力してもらい、学生と1対10から15くらいの少人数でコミュニケーションをとる機会を提供しています。ありのままの姿を伝えるため多くの社員に協力してもらうのが、うちの会社のセミナーの大きな特徴です。我々人事はコーディネートに徹します。また、年明けには「仕事内容」を具体的に理解してもらうことを目的に「リスクコンサルティング体感セミナー」というセミナーを開催し、実際の案件をもとに本当に手を動かして仕事の中身を知ってもらう。それぞれのセミナーで、「会社のアウトライン」と「人」と「仕事の中身」を知ってもらいたいんです。

 ――志望者が多いでしょうから、すべての学生に直接説明するのは難しそうですね。
 たとえば「マリンセミナー」は全国で1万5000人くらいの学生とお会いしています。東京で10日間くらい、大阪・名古屋はじめ他の主要な都市でも複数日程行っています。「リスクコンサルティング体感セミナー」に参加できるのは2000人くらいで、1日に何回も開きます。5~6人のグループワークで、6チームにプレゼンで競争してもらう。6チームに社員が1人ついて、プレゼンのアドバイスやどのチームがよいかを評価する。学生には本気になってつくってもらい、社員もその場で感じたことを率直にアドバイスします。
 説明会の最初の段階は採用担当が数百人の学生を前に話をします。「企業概要」を知ってもらうという点では意味がありますが、それを繰り返しても学生が得るものは限られてしまう。ありのままの会社を知ってもらうために「あらゆる年次」「あらゆる部署」の社員が多数セミナーに出ます。セミナーによっては役員が出るなんてこともありますよ。

社員に会って、単なる憧れではないことを自分で確認して

 ――インターンシップはやっていますか。
 インターンシップは夏と秋に開いています。セミナーとは違う位置づけです。

 ――すると、セミナーは選考過程に入っているんですか。
 選考とは別です。セミナーの目的は、ありのままを学生に伝えることですから。会社と学生のどちらかが背伸びすると、入社したとたんに「こんな会社だとは思わなかった」「こんな仕事をやりたかったわけではなかった」と思ってしまう。等身大の企業を見て、自分自身とマッチングをしてこの企業を受けてみたいと自然に思ってもらいたい。学生がセミナーに参加してくれたかどうかは把握していますが、評価等は一切していません。

 ――セミナーには数多く参加するほど有利なんででょうか。
 選考では「当社で活躍してくれるのか」と「本当にうちの会社を志望してくれているのか」の二つの視点があります。セミナーの参加回数は、人柄や能力には全く関係ないと思っています。一方、以前から関心を持ってくれていたのかどうかはわかると思います。全てのセミナーに参加してくれている学生は嬉しいんですが、その学生が十分にいろんな企業と真剣に会って企業選択をしてくれているのか不安に思う時もあります。

 ――逆に1回とか0回だと残念な気持ちになるんですか。セミナーの参加回数に選考上の規定でもあるんですか。
 そんな規定はありません。0回でも話をして納得できる理由があればいいんです。たとえば「3月までメーカーを回っていました」とか、「損害保険会社は自動車保険を自分で直接売らないといけないと思っていたんで、関心を持てなかった」「いろいろ受けたけど落ちて就活をゼロからやり直した」とか。僕たちが腹落ちすれば問題ない。うちの会社をどうして志望してくれるのか、ざっくばらんに聞いたときに腹落ちするかどうか。うちの社員には、選考の直前にたまたまうちの会社を知って内定したという人が結構いる。セミナー参加が0回で内定した人もたくさんいます。実は、そういう人と会うと嬉しいものなんですよ。優秀な人、一緒に働きたいと思う人と「縁」があって出会えたと。

 ――エントリーシート(ES)にOB・OG訪問をしたかどうかを書く欄があるんですよね。
 昨年までありましたがやめました。「会わなきゃいけない」というのが都市伝説になって、とんでもないことになってしまったので。OB・OG訪問である必要はないんですが、今後5年、10年本気で働いてその仕事に無心になれるとか、この環境なら歯をくいしばっても働けるかとか、社員に会って自分で確認して「自分自身の活躍の場」を覚悟をもって決めてほしい。人事の話とか、パンフレットやホームページを見て決めるのは危ないことだと思います。少人数の説明会では現場にいる社員の話を聞けますが、1対15や1対20だと自由度が限られて、確認する場には十分になりきれていない。そうすると自分自身で機会を設けて確認してもらうしかない。東京海上日動を本当に知ってもらうための一つの方法だと思っています。

 ただ、いつの間にか都市伝説になり、「5人会うと評価が高い」とか「最低3人会わないといけない」という話になってしまった。もちろんOB・OG訪問をしていない内定者もたくさんいます。たとえば「セミナーの場で講演後に個別にこういう話を聞いた」とか「インターンシップに行ってこういう話を聞いた」「兄の友達が東京海上日動にいて話を聞いた」とか。どんな形でもいい。単なる憧れでこの会社に行きたいんじゃないということを自分で確認してほしい。就職活動のあらゆる行動を「何のためにするのか」その「目的」を自ら考え行動してほしいのに、「方法論」に行ってしまう。OB訪問の目的をほんとに考えてくれたら、回数なんて関係がないことはわかるはずなんですが……。

 ――選考より前の段階で、学生にOB・OGを紹介していますか。
 人事から紹介はしていません。ただ、OB・OGがいる大学のキャリアセンターには名簿を送っています。マネージャー以外の名簿です。おじさんが出て行ってもね(笑)。

 ――筆記試験はどんな内容ですか。
 昨年の選考で言うと、ESの提出は2月の中旬からで、筆記試験は3月下旬から。独自に作成した問題です。全国型は算数で、地域型は国語と算数。中学校入試の算数みたいな、ちょっと頭をひねると答えが出る問題です。損保の仕事では、1カ月に1回起きる出来事なのか、10年に1回なのかという感覚をもってリスクを捉えます。その感覚は持ち合わせていないと困るので算数の試験を実施しています。

 ――大量のESは誰が読んでいるんですか。
 われわれ採用担当が読んでいます。東京なら10人くらいが徹夜で。これを全国でやっている。採用選考は「全国型」は東京、大阪、札幌、仙台、名古屋、広島、福岡の全国7都市でやっていて、福岡でエントリーした学生はずっと福岡で選考します。優秀な学生は全国にいるはずなのでエネルギーをかけています。たとえば九州で優秀な学生を採用したいと思った時に、大阪に来てね、東京に来てねというのはほんとにいいのか。いい学生に会うための機会や費用は惜しみません。
 一方「地域型」も支店の採用担当が中心となり全国各地の都道府県にある支店で選考します。

 ――筆記試験とESによる書類選考で、学生をどのくらい絞るんですか。
 学生にお会いしている数は、他の企業より圧倒的に多いと思っています。面接は4月1日から。例えば、東京の全国型だけで数千人の学生さんに会います。