人事のホンネ

株式会社ベネッセコーポレーション

2015シーズン【第3回 ベネッセコーポレーション】
ビジネス志向でアグレッシブな人がほしい 教育への思い見せて

ベネッセコーポレーション 人財部組織人事課課長 澤和宏(さわ・かずひろ)さん

2013年10月03日

■昨年の採用実績
 ――2013年4月の入社実績を教えてください。
 83名が入社しました。内訳は女子44名、男子が39名です。

 ――女性が多いですね。
 組織構成上、男子比率をもう少し高めたい気持ちもあるのですが、公平に選考を行った結果として、女子が多い状態が常に続いています。

 ――「男子比率」ってあまり聞かない言葉ですね。
 この会社は、新卒採用を始めてからずっと女性の多い会社です。1986年に男女雇用機会均等法が施行されましたが、当時入社した社員は「そのころ女性が男性と対等に活躍できる会社はほとんどなく、だからベネッセを選んだ」と言っていました。岡山の地方企業からスタートしたので、優秀な男子学生をひきつけるのが難しかったということもあると思います。昔は優秀な男子学生には金融やメーカーが人気で、無名の地方出版社(当時は福武書店)が優秀な人を採るにあたって、大卒女子学生は一つのターゲットでした。
 最近は女子学生の方がエントリーが多いため、割合的に優秀な学生に遭遇する可能性が高くなっています。

 ――現役の社員数と男女比は?
 社員数は2800名、6対4で女性が多いですが、特に女性を優遇しているわけではありません。女性も男性と同様に働けるよう支援する、男女の違いがない社風であることの方が大きいです。女性社員が多いので、育休・産休などの制度が充実しているイメージは確かにありますが、基本は積極的にキャリアを考えている女性社員を支援するスタンスです。
 男性が多数の中で、女性をどう活用しようかを考える会社が多いと思いますが、ベネッセでは、女性活用という言葉はほとんど使いません。女性の方が多い中で、普通に社員の育成とか、社員のパワーの最大化を考えているだけです。あまり男女の意識がないのが特徴ですね。

 ――男性社員は肩身が狭くありませんか。
 そんなことはありませんよ。男女に区別がない、それだけです。私は中途入社だったので、最初はギャップもありましたが、すぐに慣れました。会議やエレベーターでも女性が多数という状態が普通ですから。女性ばかりの飲み会に男性1人で参加なんてこともありますが、今はもう気になりません。

 ――採用した学生の人物像は?
 選考のプロセスではいろんな学生が来ます。「まじめできっちりこつこつ」という優等生的な人が集まる会社、学級委員長タイプが多い会社だとよくいわれますが、一方で「求めている学生像」は少し違います。教育業界は今後変わっていかなければなりません。その変化をリードしていく人材がほしいんです。ビジネス志向でアグレッシブな人、困難を突破してそこから新しい物を作ってみたいというような人を求めています。学生時代からそういうことにチャレンジして実績をあげた、例えば外国で学校を建ててきた、塾経営をしている、など突き抜けた経験をしてきた学生を「挑戦者」という人物像に設定し、毎年若干名ではありますが、そういう学生を採用するために積極的な施策も打っています。

ESはまず文字数見る、無難な内容ではダメ

■ベネッセの採用試験について
 ――2013年新卒採用の総エントリー数を教えてください。
 プレエントリーは3万3000名で、前年並みでした。エントリーシート(ES)を提出するWEBエントリーは5000人くらい。書類選考およびグループディスカッションを経て、最終選考を突破して入社したのは83名です。

 ――具体的な選考方法をホームページで公開していますね。
 隠しても仕方ないのでオープンにしています。書類選考は3月、面接は4月1日からスタートします。管理運営上の都合が大きいのですが、一度に募集せず、日程を三つ作っています。早く申し込んだ人は面接が早く始まり、その次にエントリーした人はその次の面接にと。最初の内々定は4月の2週目ころに出しています。2回目がゴールデンウィーク前、最後はGW明けです。そのプロセスで最終面接の合格率を見ながら、追加選考を実施するかどうか判断しています。今年は追加募集をしました。

 ――大学名は関係しますか。内定者の出身大学に特徴はありますか。
 基本的に大学名は関係ありません。ただ、受験をビジネスとしている以上、ある程度の学力は必要です。東大や早慶、有名私立中学・高校の受験を支援する商品・サービスを考える可能性を思えば、一定の学力がある方がベターです。結果的にいわゆる偏差値の高い大学が多くなる傾向はあります。内定者に早慶の学生が多いのも事実です。でも、別に早慶の学生が欲しいわけではなく、バラエティーに富んだ人材を採用したいと思っています。地方の大学や理系の学生、デジタル系のITに強い学生、グローバルな海外経験のある学生……など、ターゲットごとにある程度目標をつくり採用計画を立てています。

 ――本社が岡山なので、もっと関西の学生が多いのかと思っていました。
 関西の大学が多いということはないですね。実際、社員の8割が東京にいて、多摩と新宿のオフィスで勤務しています。

 ――地方の学生に受けてもらうための工夫はしていますか。
 主要な国公立大をターゲット大学とし、説明会に力を入れています。ただ、特に優遇しているわけでもないので、最終的な採用数は多くありません。

 ―― ESは誰が読むのですか。
 ESは大事に読んでいます。5000枚なら5000枚、外部に委託することなく、人事の採用担当者で手分けして全部読みます。入口のスクリーニングですし、いろんなことがわかります。ここで結構な人数に絞ります。

 ――ESを評価するポイントを教えてください。
 まず文字数を見ます。どれくらい真剣に書いているか。他社に提出したものを使っていないか。質問と答えがずれていないか。コピペして答えが質問とずれていることがありますから。あとは誤字脱字がないか、丁寧に書いているか、文章としておかしくないか、ちゃんと日本語になっているか。最後に内容。論理的に書かれているか。今年は、学生時代に頭と体を使って問題解決した経験などを記述してもらいました。

 ――評価しないESは?
 決められた文字数の半分しか書いていないなど、分量が少ないものをまず除きます。それから、どの会社にも出せる無難なことしか書いていないのもダメです。あとは、恋愛の話とかESにふさわしくない内容のものもアウトです。ただ相当ユニークなものは拾う場合もあります。それを書くだけの理由がある場合ですね。

 ――WEB適性テストはどう活用しているのですか。
 ESを通過した人に受けてもらい、一定水準以下の人を外します。あとはストレス耐性など見ています。

 ――2次選考は、集団選考と「課題解決力テスト」ということですが、どんな内容ですか。
 グループディスカッション(GD)と、自社開発の「課題解決力テスト」を行います。GDでは、あるテーマについて話し合ってもらい、「論理的思考力」と「コミュニケーション力」の二つを見ます。6人程度のグループにそれぞれ違うイベントの案を渡し、議論しながらグループで一つに絞って発表してもらいました。
 「課題解決力テスト」は、世の中で起こる問題解決に必要な能力を測れないかと開発しているものです。一つの課題とその解決策やデータを提示し、そこから導かれた結論が書いてあります。その課題解決方法に対する意見や評価を書かせる記述式のテストで、主に批判的な思考力を見ます。書かれていることを鵜呑みにするのではなく、「本当に正しいのか」とか「ここで必要な情報ってなんだろう」と論理立てて相手に伝える能力が必要です。2年前から導入しているのですが、0点の人が結構な人数いて驚きました。白紙に書かなくてはいけないので、書き出しから何を書いたらいいかわからないという人も多かったですね。

 ――GDのポイントがあれば教えてください。
 「人の話をきちんと聞いて、自分の考えを論理的に伝える」としか言えません。論理的でないことを思い込みや感情だけで一方的に話したらダメですし、目立ちたいだけでもダメです。お互いが何を話しているのか、何が論点なのかをしっかり把握したうえで、自分はこう考えると言うことが大事。あとは運の要素もあります。優秀なメンバーがそろったチームに入ってしまう場合も当然あります。同じキャラがかぶったら目立たないこともあります。けっこう大事だと思いますよ、運って。