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■星野リゾートについて
──1914年に創業し、2023年で創業109年目を迎えました。主な事業について教えてください。
大きく分けて宿泊運営、ブライダル、スノーリゾートの3事業です。軽井沢の長倉で星野温泉旅館という旅館を運営していたのがスタートで、先代がブライダル事業をはじめました。現代表の星野佳路に代わってから、「運営特化」という大きな戦略のシフトチェンジをしました。「地方の小さな温泉旅館が世界から来る外資系の運営会社に勝っていくためには、何が必要か」と考えたときに、運営 に特化して拠点を増やしてスケールメリットを活かした経営ができるようになること、そして運営会社としてブランドを確立することが、グローバル市場において競争力を持つうえでは欠かせないと判断し、運営と所有を分離しました。運営会社として最初に着手した施設が、「リゾナーレ小淵沢(現 リゾナーレ八ヶ岳)」、次いで、「アルツ磐梯リゾート(現 磐梯山温泉ホテルならびにネコマ マウンテン)」、「アルファリゾート・トマム(現 星野リゾート・トマム)」です。運営会社としてこの3施設の再生を成功させたことは、その後の星野リゾートの展開に大きな意義をもたらしたと捉えています。
──運営特化型はメリットが大きいのでしょうか。
運営特化型は土地や建物といった大きな固定資産を持たないので、施設を展開するスピードが速いことが特徴です。各施設にオーナーがいらっしゃるので利益が上がったときに、利益を再分配する仕組みになっています。所有と運営が一致している会社だと自社で展開するため、固定資産を持つ必要があり、展開のスピードは持ちづらいですが、利益が出たときは全てが自社の利益となります。どちらにもメリット・デメリットがあり、どちらを取るかという話になると思います。
── なぜ、世界と戦うためにスケールが必要なのですか。
世界のホテル運営会社は、円でいうと兆単位の資本事業規模です。それはスケールが一定を超えることによって、効率的に売上と利益を増やしていける構造があるからです。星野リゾートも約70施設中22施設ある「界」というブランドでは、スケールを活かした効率的な運営をしています。共通のオペレーションを装備しているということもそうですが、各施設で様々なトライアンドエラーを繰り返し、それを星野リゾート全体のナレッジとして共有するということも行っているのです。
サービス業である宿泊業は、事業の機械化が難しく人件費がかかる「労働集約型」のビジネスなので、収益コントロールが難しいです。欧米の宿泊運営会社はスケールメリットを活かしてできるだけコストを下げることで 運営会社としての評価を得ているので、そこと競争するためには欠かせない要素だと捉えています。
──仕組みの共通化が、コストダウンにつながるわけですね。
はい。またスケールを持つことは、ブランドを強くするという効果もあります。例えば3年前は九州に「界」ブランドの施設は一つしかなかったのですが、2023年現在は5施設運営をしています 。施設が増えるとそのブランドを知ってくださる方が増えます 。ブランドを構成する要素は様々ありますが、まずは認知率の向上が第一で、次にお客様にどう認知されているかという知覚品質ですので、やはり知っていただく機会を増やすということは重要だと考えています。
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