人事のホンネ

TOTO

2022シーズン③ TOTO《前編》
GDできず適性検査2つに 一文のガクチカ×5で「盛るES」防ぐ【人事のホンネ】

人財本部 人財開発部 人財採用グループ 羽田野孟(はだの・はじめ)さん

2020年10月07日

 人気企業の採用担当者に直撃インタビューする「人事のホンネ」の2022シーズン第3弾は、誰もがトイレで毎日お世話になっているTOTOです。新型コロナウイルスの影響でグループディスカッション(GD)ができない分、適性検査を増やして自己PR動画も導入。エントリーシート(ES)は「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」をたくさん書かせるのはやめて、一文で5個書いてもらうようにしました。「美しい話を盛って書く」ESを防ぐためだとか。いろいろ工夫しています。(編集長・木之本敬介)

■WEB説明会
 ――2021年卒採用はいかがでしたか。
 通年採用を取り入れたので、実はまだ続いています。9月にエントリーを受け付け、10月以降に選考する「秋採用」です。いい人がいれば採用したいという考えです。
 2021年卒採用は結果的に、非常に充実した採用活動になりました。新型コロナウイルスは予想外でしたが、もともとWEB選考に切り替える方針でしたので、比較的スムーズでした。業界説明会は「会社で働くこと」「こんな業界です」といった内容を伝えるために夏から秋に対面形式で開き、自社説明会は録画映像をマイページに掲載して誰でもいつでもオンデマンドで見られるようにしました。TOTOの概要やモノづくりへのこだわりなど2~3分のチャプターに分けて、通しで見ても10~20分。電車の中や寝る前でも見られます。コロナ以前から、体育会系に所属する学生には大会があったり、地方から東京などの説明会会場に来られなかったりする学生へのアプローチが課題だったので。

 ──短時間動画への学生の反応は?
 内定者からは「社員に会えず困っていたが、WEB説明会で概要をつかめてよかった」と聞いています。例年の説明会参加数より多いビューがあったので、情報を必要とする学生にアプローチできたかなと。

■エントリー数
 ――面接はどうしましたか。
 WEB面接は前年から試験的に始め、2021年卒採用では遠方の人を対象に実施しようとしていたのですが、結局すべてWEB面接に切り替えました。

 ──一度も会わずに内定を出したのですか。
 はい。賛否両論あると思います。実はまだ、我々も内定者に実際に会えていません(笑)。ただ、春採用・夏採用を問わず、例年と同等かそれ以上のポテンシャルや魅力がある人、多様な人材が来てくれました。

 ──受けやすくなったから?
 エントリー数が増え、出身地も多様になりました。大学数が多い分、首都圏、関西圏の学生が多いのは変わりませんが、地方在住の内定者も増えています。体育会系で4年生の春まで一生懸命頑張っていた人、就活を体験していろいろ考えたうえで弊社を選んでくれた人もいます。学生に聞くと、自宅で気軽に選考を受けられてハードルが低かったと。
 TOTOが第1志望という人もいますが、「少し興味があるからエントリーはするけど面接までは……」という人が「WEB面接なら受けてみようかな」と思ってくれたのかもしれません。一方で「WEBでは会社の雰囲気が分からない」「ちょっと歯がゆい」「やりにくい」という人もいました。

 ──エントリーはどのくらい増えたのですか。
 採用は別々ですが、プレエントリーは新卒採用を行う国内TOTOグループ全体で受け付け、3万人ほどです。本エントリーはTOTOの営業職・企画職で約5000人、技術職は1500人くらいです。デザインは学生時代にプロダクトデザインを研究している学生が対象なので若干名です。
 営業職・企画職は約4000人から、ここ数年微増していましたが、2021年卒採用では前年比1000人ほど増えて過去最多でした。

WEBでも腹割って話せた手応え 半生振り返ってもらう面接

 ■採用実績
 ──採用実績を教えてください。
 2021年卒採用は、「技術職」50人、「営業・企画職」で60人ほど、「デザイン職」は1人です。「営業・企画職」は文系が多数ですが、理系も毎年1~2割います。「技術職」は大半が院卒です。ただ、院卒であるから評価するわけではなく能力を評価した結果です。
 「営業・企画職」と「技術職」は例年それぞれ50人~60人採用しています。全体の男女比は7対3くらいです。

 ──技術系に推薦制度はありますか。
 ありますが、自由応募が約8割を占めます。

■WEB面接
 ──WEB面接はどんな形式ですか。
 2021年卒採用では、「営業・企画職」の1次は1対1です。技術職は技術専門の社員と採用担当の2人による2対1です。時間はともに30分くらいで、回数は2~3回。最終面接は、執行役員2人+採用責任者1人に学生1人の3対1です。

 ──面接2回は少ないですね。
 2020年卒採用ではグループディスカッション(GD)、適性検査を受けてからの面接でした。今年はGDができない分、2種類の適性検査を例年よりも多く受けてもらったので、学生は戸惑ったかもしれません。面接はとても重要ですが、客観的にその人を捉えることも大切です。面接に関する研究では「面接官の目が一番信用ならない」という説もあります(笑)。適性検査による科学的な視点も強化しました。

 ──GDをなくした影響は?
 もともと「GDは訓練の結果でもあるな」と思っていたんです。GDで地頭の良さやコミュニケーション力は分かりますが、場数を踏んだ人のほうが緊張せずに評価され、東京や大阪など大都市圏の学生が残る傾向がありました。でも、我々は訓練された就活生より、ポテンシャルを持った全国の学生にもっと来てもらいたいので、少し考え方を変えました。

 ──WEB面接のメリット、デメリットは?
 最終面接をした幹部は、学生のちょっとした仕草や雰囲気が分かりにくかったと言っていました。WEB面接だと本人のオーラというか雰囲気が分かりづらいので、発言内容をしっかり聞き、話し方も注視するようにしました。
 一方で、リラックスして学生と腹を割って話せた手応えはあります。ガチガチに緊張せず、壁をつくらずに腹を割って話せる面接にしたいので、かえってやりやすかった面もあります。弊社は格好がきれいとか、話し方が上手とか、そこだけでは評価しません。「学生時代どうだったの?」と聞いて、何を頑張ったのか、どこがつらかったのか、自分の半生を振り返ってもらうような面接なので。

 ──対面よりリラックスできますか。
 人によりますが、おしなべてリラックスできると思います。接続がうまくいかず音が切れたり映像が乱れたりして緊張してしまった人もいますが。逆にリラックスしすぎて「あ、今カンペ読んだ」と分かる人もいます。お母さんが面接を聞いていたり、犬や猫が乱入したり……、担当者がびっくりしたケースもありました。自宅とはいえ面接の場なので事前準備で対処してほしいですね。

 ──カンペはNG?
 「細かい数字を確認するのでちょっと見させてください」という程度なら全然かまいません。ただ、志望動機を聞いたら、カンペを見ながら「御社は1917年に創業し……」などと棒読みされてしまうと、ちょっとこちらが不安になってしまいますね。本人の言葉で語ってほしかったなと思います。