人事のホンネ

ソニーミュージックグループ

2021シーズン【第5回 ソニーミュージックグループ】(後編)
好き+「愛あるダメ出し」歓迎! オタク多い「何でもあり」の会社

ソニー・ミュージックアクシス 人事業務グループ 採用研修部1課 佐々木初音(ささき・はつね)さん

2019年10月23日

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2021シーズン第5弾、ソニーミュージックグループの後編です。音楽やアニメのオタクだらけの会社だそうですが、「好き」だけでは通りません。「ダメ出し」ができるほどの「愛」が求められています。(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

■面接
 ──面接はどんな内容ですか。
 グループ面接を複数回受けてもらいます。「どんな勉強をしてきた?」と聞いて答えるような形式ではなく、キャッチボールみたいな面接で、いろんな面接官から唐突な質問が飛んできます。「準備ができない面接」ですね。みんなが答えを用意してきてしまうと判断のしようがありません。素で思っていること、常に考えているビジョン、一番正直なところを聞きたいと思っています。

 ──アニメや音楽のファンがたくさん受けに来ると思いますが。
 「好き」だけでは厳しいですね。「好き」というファンの視点を理解したうえで、「もっとこうしたほうがいい」「私ならこうする」というプラスの視点が必要です。たとえばアニメファンなら、好きだけでなく「こうしたほうがいいのに」「こんなビジネスをすればいいのに」と思うことがあると思います。「愛あるダメ出し」ができて、より良くする視点、拡大する視点を持っていてほしい。聞かないと判断できないので、恐れずに意見を言ってください。

 ──面接でニュースについて聞きますか。
 業界に関するニュースは聞く面接官が多いと思います。「学生=ユーザー」なので、直接意見が聞ける機会は貴重です。若者が今は何に興味を持っているのか、反応するニュースは何なのか。「普段から何にアンテナを張っているのか」を知りたいですね。

■学生の特徴
 ──受けに来る学生に特徴はありますか。
 学生同士が盛り上がることですね。面接の控え室で数人の初対面の学生が意気投合し、「面接、一緒に頑張ろうな!」となることが多い。自分が受けたときを振り返っても他社ではありませんでした。うるさすぎて、「静かにしてね」と注意することもあります(笑)。でも、初対面で人をひきつける魅力があったり、人に興味を持って、その人の良さを引き出したりできる学生はいい。社内にもそういうタイプの人が多いので、当社に合っているなと感じます。

 ──物静かで優秀な学生はいない?
 人見知りとか、話すのが苦手そうな学生も見かけますが、自分の好きなエンタメの話をしてもらうとすごいんです。本当に生き生きと語ってくれます。途中でスイッチが入ったように語り出す学生ばかりなので、困ることはありません。

 ──いわゆる「オタク」が多い?
 魅力的なオタクがいっぱい受けにきます(笑)。そもそも当社はオタクの集まりですから。私は「洋楽オタク」です。
 とはいえ、オタクだけでは通りません。オタクを究めると、「もっとこうしたい」という欲が出てくる。自分の中だけで完結せず、外に発信したいと思う。それを仕事に活かしてほしいです。

 ──社員の服装がラフですね。面接では学生は私服ですか。
 私服を強制しているわけではなく自由です。私服の学生は思い思いに着飾って来ます。下駄を履いてきた学生がいたり、Tシャツに自分のプロフィールを書いてきたり。一番好きなアーティストのTシャツを着て、突っ込みを待っている学生も(笑)。エンタメ企業なので目立とうとする学生が多いのは良い傾向です。
ただ、前後に他社の選考を受ける学生もいるのでスーツ姿も多くいます。リクルートスーツだとマイナスということはありません。

 ──採用で競合する業界は?
 テレビ、出版社などのマスコミはもちろん競合しますが、エンタメ系以外だと、広告会社、旅行、保険、銀行などの人気業界と重なります。「学生時代に学んだことを活かして保険や金融などを受けていたが、好きなエンタメも受けてみよう」という人など、全然違う業界の内定を持っている学生もいます。
 最近は業界や職種で選ぶより、職種や「自分には何ができるか」で選んでいますね。「企画をしたい」「制作をしたい」といった希望の仕事に、若いうちから携われる会社を選んでいるように思います。

ES提出はギリギリ 「牛丼屋でワンオペ」…面接はギャップ攻め

■社風とやりがい
 ──どんな会社か、ひとことで。
 何でもできる会社です。いろんな人がいて、いろんな仕事があって、それを自分でつくってもいい。何でもありの会社です。

 ──採用ホームページを見ると、常に職場で音楽が流れ、ギターをかき鳴らしている社員もいるとか。本当?
 本当です。私はこの会社しか知らないので、静かなオフィスの想像がつきません。音楽は流れているし、そうでなくても社員の声が大きいので、うるさいですね。大笑いできる職場です。

 ──音楽業界は、CDが売れなくなってストリーミングやサブスクリプションが普及するなど、大転換期ですね。
 正直なところ、アジア諸国やアメリカと比べると、日本の音楽市場はそれほど進化していません。世界の中ではいまだにCDが売れる国なので「ガラパゴス化」しているとも言えます。ただ、音楽を全然聞かない人は少ないし、ライブを体験する人は増えています。そこをチャンスにして、どうお金にしていくか。いろんなやり方で盛り上げていきたいし、若手にも期待しています。

 ──仕事のやりがいと厳しさは?
 やりがいは、自分が携わったものが多くの人に喜ばれることです。制作作品に自分の名前が載ったり、ユーザーから反応があったり、流行や時代感をつくっていけるのが大きなやりがいです。
 厳しさは、世の中の人がリラックスして向き合っているインターネット、アニメ、音楽といったものに、真剣に向き合わなくてはいけないところです。醍醐味でもありますが、プライベートとの境目がなくなるし、休んでいても仕事のことを考えてしまいます。

 ──「働き方改革」は進んでいる?
 ハードな部署はハードです。ライブは休日や夜にありますし、人々が余暇を楽しむ時間に仕事をするので大変です。何かをつくるため時間を忘れて深夜まで作業したいという人もいます。とはいえ、強制的にでも休んでもらうよう取り組んでいます。
 産休・育休から復帰する社員は多いです。いろいろな部署にいろいろな仕事があるので、子どもが小さいうちは時間を比較的コントロールしやすい部署で働くことも可能です。

■就活
 ──ご自身はどんな就活を?
 入社3年目です。手当たりしだいに気になる会社を受けました。ハウスメーカーやインテリア、アパレル、商社や広告、化粧品メーカーも……。女子学生が飛びつくような会社はひと通り受けました(笑)。その中で「楽しい」と感じた会社の志望度が上がっていきました。
 当社はたまたまES締め切りの日に見つけたんです。頑張って書いて速達で出しました。趣味で音楽やダンスが好きだったのですが、仕事にしようとは考えていませんでした。ただ、当社が出している音楽が小さいころからすごく好きで、企業ロゴを見たとき、「この会社知ってる。大好きなビヨンセの会社だ!」と。それをESに書きました。エンタメ系はここだけです。

 ──急ごしらえでも通った理由は?
 どうしてでしょう(笑)。「こんなギリギリでESを書く学生は採用しないだろうな。どうせ落ちるから」と、より正直な気持ちで書いたんです。でも受けるからには、絶対に内定がほしくなりました。
 面接では少しボケてみたら面接官がすごく笑ってくれたので、「これはいけるかもしれない」と。私の場合、中身はスカスカでしたが、見せ方で勝負して、「とにかく目立ちにいこう」という負けん気の強さを感じ取ってもらえれば、と思いました。正直なところ、将来のビジョンもなく甘いものでした。面接で嘘をつくのはダメですが、したたかに戦略的に受け答えするのはありだと思います。

 ──どんな受け答えをしたんですか。
 見た目がおとなしく見られるので、すべて真逆のイメージで答え、ギャップで攻めました。「バイトは何をしているの? カフェとか?」と聞かれたら、「牛丼屋をワンオペで回して、手に火傷をしながら頑張ってます」と。もちろん本当のことですよ。面接では隣にDJで金髪のチャラ男風の学生がいたのですが、彼の発言に対して、「申し訳ないんですが、私は彼の好きな音楽がまったく理解できないんですね」とすごく丁寧な言葉遣いでダメ出しをしてディスりました。面接官もチャラ男風の学生も面白がってくれて、結果的に彼と私は同期になりました(笑)。

 ──入社の決め手は?
 中小企業やベンチャーなど何社か内定をもらいました。ここが一番遅かった分、気合いを入れて面接に臨んだし、すごく笑ってもらえたので「この会社に向いているな。波長が合うし働きやすいだろうな」と思い、迷いなく決めました。他社の面接で同じ受け答えをしても、誰も笑ってくれず苦笑いで終わっていたと思います。また飽きっぽい性格なので(笑)、いろんな仕事ができそうなところにもひかれました。さまざまな未来の自分をイメージできたのも決め手のひとつです。