人事のホンネ

アサヒ飲料

 人気企業の採用担当者インタビュー「人事のホンネ」2021シーズン第1弾、アサヒ飲料の後編です。一見華やかですが、年に1000もの商品が出ては消えていく厳しい業界でもあります。どんな人を求めているのでしょう?(編集長・木之本敬介)
(前編はこちら

■面接
 ──面接はどんな形式ですか。
 2020年卒採用は6月1日からで、事務系、技術系とも1次はGD、2次は個人面接、3次が最終面接でした。
 GDは例題に対して自分の意見を述べてから、ディスカッションしてもらい正解はありません。グループの全員が納得するよう議論して、意見をまとめます。

 ──何を見ますか。
 ロジカルに自分の意見が言えるか、他人の意見をどう考えるかなどです。否定も肯定もありますが、どう考え、次にどういかすか。時間内にグループの意見をまとめ一つの答えを導きだすことは、会社に入ったら日常的にすることですから。

 ──2次、3次面接は?
 2次、3次は個人面接で30~45分程度です。事務系、技術系ともに入社後どういう部門で活躍できそうかという視点で見ています。

 ──やりたい仕事について「何でもいいです」という学生は?
 具体的に「こんな仕事がしたい」が言えなくても、「御社の商品を通じて高齢化社会に貢献したい」など、考えていることを伝えてほしいんです。「カルピスに関わる仕事なら何でもいい」ではなく、「三ツ矢サイダーやカルピスを世界中の人に届けたい」でもいい。どこを向いていて、どうしたいのか言ってくれれば、入社後の配属先がいろいろ見えてきます。当社に入って社会にどう貢献するか、どう活躍したいのか、何がしたいのか教えてほしいですね。

 ──内々定出しはいつごろでしたか。
 6月早々に出しました。ピークは6月中旬ごろです。

■時事問題
 ──面接のポイントは?
 進め方は面接官に委ねていますが、会話のテンポで頭の回転の速さが分かります。突発的な質問を投げかけられたときにどう対応できるかも見ます。突然、時事問題を聞いて、学生の考え方などをみています。表面的でなく、自分の言葉で話せるか、自分の考えがあるのかなど。ここで学生の個性が出てきます。今年の内定者が「一番キツかった」と言っていたのは、「最近興味があるニュースは?」の質問でした。

 ――「気になるニュース」は定番質問ですが……。
 学生本人を深く知りたいため「どうして?」「どうして?」と深掘りするので、深く考えていなかった題材を取り上げてしまうと、考えが浅いため自分の意見が出て来なくて大変だったみたいですね。
 興味がどこに向いているかも見ています。世の中のいろんなことにアンテナを張っていることが大事です。たとえば、お茶の新商品を出すとき、お茶の市場だけを分析してもうまくいきません。食全体のトレンドや健康ブームなど全然違うものを掛け合わせたとき、どういう化学反応が起きるかに考えが及ばないと。お客様の求めている半歩先くらいの商品を出して初めて喜ばれるんです。どの部門に行っても、アンテナを高く張っていないと業界のスピードについていけません。

 ──キャリア育成方針にある「ゼネラリスト社員」「経営視点」とは?
 当社には、毎年100~200人採用していたバブル期の40代後半が多いのですが、これから入社するのは年30~40人。世の中の変化は早いので、社員の成長速度も早まらないと会社が回りません。また、プレーヤーで成功した人がマネジャーでも成功するとは限らないので、若いうちから広い視野を持ってもらいたい。若いうちからいろんな部門を経験することで、視野も広がり汎用性も出てきます。
 だから柔軟性、適応力のある人が望ましい。飲料業界はかなりスピードが速いので、指示待ちではなく、自分の頭で「今何をすべきか」を考えられることが必要です。新入社員なら、納期まで「うーん……」と一人で考え込むのではなく、先輩に「助けてください」と早く言えるのも年次に応じた仕事能力の一つです。

知名度高いブランドの集合体 柔軟性、受容性、吸収性の高さがアサヒらしさ

■社風
 ──アサヒ飲料って、どんな会社ですか。
 販売会社からスタートしてメーカーになり、いろんなブランドを取り入れ、カルピスと一緒になって成長してきました。昔の日本が外国の文化を取り入れたような柔軟性、受容性、吸収性の高さがアサヒ飲料らしさかと思います。

 ──その「らしさ」は、どこから生まれたのでしょう?
 会社の成り立ちだと思います。三ツ矢サイダーの販売会社からスタートして、メーカーになったのが1996年。ブランドよりも会社の方が歴史が浅いんです。もともと持っていたブランドもありますが、「六条麦茶」「おいしい水」「カルピス」など、まったく毛色の違うブランドを束ねて大きくなってきました。今は企業の文化をつくっている段階です。ブランドの知名度が圧倒的に高く、アサヒ飲料はその集合体です。

 ──社内の雰囲気は?
 上下関係、他部署とも、風通しがいいですね。私は若いときから「あれをやりたい」「これをやりたい」と生意気なことを言ってきましたが、怒られた経験がありません。いったん受け入れて、「じゃあ、どうしたらいいと思う?」と意見を聞いて一緒に考えてくれるスタンスの先輩や上司が多かったです。

 ──採用ホームページの新入社員座談会に「体育会系が多いかと思ったら、そうでもなかった」という声がありました。
 それは昔の名残で、「ビール業界=体育会系」というイメージもあったので。一方、アサヒ飲料のイメージがないので……。アサヒビールとは人事交流があり、営業で同じ得意先を担当していれば連絡を密に取り合います。部門ごとの交流もあります。

 ──サントリー、アサヒ、キリンはビールだけでなく、飲料でもライバルですね。
 そうですね。いつの時代も切磋琢磨しているいいライバルだと思っています。

 ──近年、食品・飲料メーカーの海外進出が目立ちます。
 国際事業は基本的にアサヒグループホールディングスで行っていて、売り上げで3割、利益で4割です。2019年から台湾の飲料事業はアサヒ飲料の事業になりました。将来的に意欲のある学生には来てほしいですが、今現在は入社2~3年目で海外に行くことはあまりなく、ビジネスの基礎をしっかり身につけて大半の人は30代半ばくらいで初めて行きます。「入社してすぐ海外で働きたい」という人には向きません。

 ──仕事のやりがいと厳しさは?
 やりがいは、自分の仕事が生活レベルで目に見えることに尽きます。
 厳しさは、スピードの速さですね。業界で年間約1000商品を出し、発売直後に大半が消えていきます。PDCA(Plan計画→Do実行→Check評価→Action改善の順に行う業務管理手法)をどんどん回して、ものすごいスピードで動いています。新商品開発は半年、1年かかりますが、商品を発売し続けるか終売するかのジャッジは、コンビニや大手スーパーでの売れ行きしだいで一瞬で厳しくジャッジされます。

 ――「働き方改革」のアピールポイントを一つ挙げてください。
 各部門・社員が、効率的な仕事の進め方を日々考えています。フレックスタイム制やテレワークなど、会社として働きやすい制度は整っているので、全社一斉に同じ制度ではなく、働き方に合った制度の利用を考えてもらうように推進しています。