企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2019シーズン第4弾は、出版業界に常に新風を吹き込むKADOKAWAです。「ニコニコ動画」のドワンゴとの経営統合から3年。出版にとどまらず、映像、ゲームなど多彩なエンターテインメントビジネスを展開しています。個性的な「オタク」が求められていますよ。(編集長・木之本敬介)
■採用実績
──採用実績を教えてください。
2017年入社が20人、2018年卒の内定者が48人です。
──一気に倍以上に! なぜですか。
機構改革やレーベル、ブランドコンセプトもより明確になりましたので人事制度を統一し、新人・若手の採用をより一層強化することにしました。
──大手出版社の中では採用数が飛び抜けて多いですね。業務内容が「書籍」「文芸」「ゲーム」「映像」と幅広いからでしょうか。
はい。幅も広く、商品点数も多いです。また、若い人向けのコンテンツも多く、若い時期に「編集者としての旬」をむかえることができるのではないかと考えています。
──2014年に経営統合したドワンゴとは採用は別ですか。
現時点ではそれぞれ別に採用しています。
──男女比は?
ほぼ半々です。半々にこだわっているわけではなく、性別にもこだわっていません。偶然半々になっています。
──理系は?
もちろん、大歓迎です。実績としては、内定者の16%くらいでしょうか。論理的思考力、追究力が高い人材と期待して積極採用しています。
──理系の配属先はIT・技術系ですか。
特にプログラマーや技術職に限っているわけではありません。理系の編集者もいますし、文系でデジタル戦略部署に配属される人もいます。若い人たちは理系・文系にかかわらず、「本をすごく読むし、動画も配信するし、アプリのプログラミングもする」という方が結構います。また、今は本(紙)の仕事だけをやりたいと思っても、デジタルにも関わらざるを得ない時代です。
──理系出身者の特徴ってありますか。
理系の人は一つのことに没頭して深くまで分析します。自分の軸を持って、他の研究者とは違うことを進めるポジショニングが上手なので、編集者やプロデューサーに向いているとも考えています。ぜひ多くの理系学生に受けてもらいたいですね。弊社でも理系出身の社員は多く、優秀な編集者、プロデューサー、マーケティング担当として活躍しています。
──幅広い職種がありますが、「総合職」での一括採用ですね。配属はどのように決めるのですか。
編集希望の人がいきなり人事に行った例はありません(笑)。やはり「自分の得意分野でチャレンジしたい」という学生が多いので、なるべく希望に沿うように考えています。
総合職といってもアニメが好きな人はアニメ市場に近く、コミックが好きな人はコミック市場に近い部署、海外志向が強い人は海外事業など、本人の希望やこだわり領域に近いところへの配属を最優先します。3年に一度くらいの割合で異動し、10年くらいの間に総合プロデューサーや編集長のように何でもアレンジできるビジネスを生める人材に育ってもらいたいと考えています。
「KADOKAWAはどこに配属されるか分からない」と心配する学生も多いようですが、なるべく本人のこだわりがある領域に近い部署からスタートしてもらう予定です。
──どの分野が人気ですか。
ヒット作が出ると、その分野の応募が一時的に増えることもありますが、応募者の興味は「文芸」「実用」「ライトノベル」「コミック」「映画」「アニメ」など、ほぼ同じくらいの割合です。2018年卒生はインターンシップの影響か文芸志望が多かった印象ですね。
株式会社KADOKAWA
言葉選び、斬新さ、バランス、時流を読む…ESはセンスも見る
■インターンシップ
──インターンシップについて教えてください。
2017年2月に文芸とコミックのインターンを初めて行いました。企画を持って来て「本物の編集長にたたかれてみよう」という試みです。ハードかな?とも思ったのですが、意外と「自分の力を試してみたい!」という前向きな方が多かったですね。
参加者数は文芸が50人くらい、コミックは30人くらいです。応募が多かったのでエントリーシート(ES)による選考をしましたが、そんなに難しいものではありません。
――どんな内容ですか。
たとえば文芸インターンは1日で、課題はある書籍の販促の企画を考えてもらう実践的な内容です。事前課題で持ち寄った企画に対して、当日のグループワークで5~6人の学生で議論してブラッシュアップしたり、編集長から個別に細かい講評を受けたりするものです。編集をめざす学生同士なので刺激になったと思います。
──かなりたたくのですか。
たたくこともしますが、ほめることもします。学生も真剣に取り組んでいるので、こちらも真剣に返します。編集長たちも面白かったようで、「次回もぜひやりたい」と。最後は立食での懇親会を開催したのですが、私たちと同じ興味を持っている者同士なのでとても楽しい時間でした。
私たちにとっても新鮮で、学生もいろんな角度でものを考えていることが分かりました。活字離れが進んでいると思っていましたが、熱心な学生が多く、文芸だけでなくコミックもアニメも好きという方が多かったですね。その点もよかったです(2018年2月にはインターンの種類を増やして実施しました)。
──インターン参加者から内定者は出ましたか。
インターンによって弊社に興味をもってくれて本選考に進んだ学生が多く、うれしく思っています。内定した人もいます。
■会社説明会
──2018年卒採用では、会社説明会は開きましたか。
しばらく実施していなかったのですが、2018年度は「50人採用」ということもあり、少しでも弊社を理解してほしく、こちらの熱意もお伝えしたかったので、2日間で4回開催し、計1200名が参加してくれました。2018年度は東京のみの開催だったので、今後は他都市での開催も検討しています(2019年卒採用の説明会は実施済み)。
──説明会の内容は?
社長、役員からビジネス全体の戦略、PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)の状況、海外事業の展望と差別化などの話をし、メディアミックス、デジタル戦略について説明しました。話題になった作品の編集者やプロデューサーの取り組みや想い、IP(知的財産)戦略に関してはビデオで紹介し、2~3年目の先輩社員のパネルディスカッションも実施しました。
社長は今年も皆さんに会いたいと楽しみにしているようです。
──大学での学内説明会は?
できる限りうかがっています。デジタルを手がける私たちが言うのも何ですが、働いている人と同じ空気を感じてもらうのも大事だと考え、大学に出向いています。近い距離でお話しできることもあるので、「一緒に目指すものを思い描いてもらいたい」という気持ちまで伝わればいいなと考えています。来てくれた学生がどう感じているのか気になるところです(笑)。
■エントリーシート
──応募数の増減は?
出版業界、映像業界単体を目指す学生だけではなく、世界のエンターテインメントビジネス全体を意識して募集しました。合併前の出版業界単体で募集していたときの限界を超える数の人が応募してくれたように感じています。多くの方に興味を持っていただいたことは大変うれしく思っています。領域の枠を超えて考えられる人がたくさんいるということで、業界全体の可能性を広げていけるとも思いました。
──ESは手書きですか。
手書き部分もあるので郵送してもらいます。文字数の制限はなく、罫線も引いていないので自由に書けます。枠いっぱいに細かく書く人も、イラストを描いたり、何かを貼ったりする人もいます。後の面接で企画書などを提出してもらうので、そこで工夫する学生もいます。しかし、ギミック(仕掛け)がすごいことより内容が大事ですので、さっと書いたものでも内容が良ければ選考を通過します。気軽に応募してほしいです。
──項目数は多い?
A3サイズの見開き1枚なので、それほどでもありません。他の出版社さんよりは楽だと思います。
──出版社のESは、ちょっと毛色の変わったものが多い印象があります。
それほど変わったものではありませんが、「自分が夢中になっているもの」については書いてもらいます。「はまっているもの」ですね。自分の「オタク自慢」をキャッチコピー風に書いてもらったりすることもありました。
ほかには「自分の行動力」「視野の広さ」などがアピールできることを書いてもらいます。
──「オタク自慢」でユニークなものは?
縄跳び、昆虫、筋肉、「美坊主」のオタクがいました。たとえば「アニメが好き」という一般的なジャンルではなく、○○なスポーツものだけ、「魔法×○○」という「2軸」の掛け合わせのような独自の軸を持っている学生と会うのは楽しみです。
──「2軸」あると有利なんですか。
そうですね。2軸にこだわってはいませんが、コアなファン向けの商品を扱うので掛け合わせがあったほうが、よりこだわりがわかるような気がします。しかし、「それだけしか受け入れない人」ではなく「そのこだわりがあるから、他ジャンルでもこだわりのあるマーケットがわかる、興味を持てる」方を探しています。
──出版は「好き」を仕事にする業界ですが、好きなだけでは受かりませんよね。どんな人が受かるのでしょう?
「自分なりの好きの軸を明文化できる人」「差別化が上手な人」「人真似ではない人」といったところでしょうか。またその能力がアイデア立案の場面だけではなく、実行の戦略の上でも役立てることができる方がいいですね。
──ESで大事なポイントは?
丁寧に書くといった基本的なことはもちろんですが、言葉の選び方、斬新さ、全体的なバランス、時流を読んでいるといった内容とセンスも見ます。
ESを選考するのは、百数十名の編集長やメインプロデューサーなど課長職以上の現場の人間です。
──学生の志望ジャンルの編集長が読むんですか。
そうとは限りません。文芸志望者のESをコミックの編集長が読む場合もあります。編集長は幅広いジャンルで情報を持っていますので、ご安心ください(笑)。
──インターンシップについて教えてください。
2017年2月に文芸とコミックのインターンを初めて行いました。企画を持って来て「本物の編集長にたたかれてみよう」という試みです。ハードかな?とも思ったのですが、意外と「自分の力を試してみたい!」という前向きな方が多かったですね。
参加者数は文芸が50人くらい、コミックは30人くらいです。応募が多かったのでエントリーシート(ES)による選考をしましたが、そんなに難しいものではありません。
――どんな内容ですか。
たとえば文芸インターンは1日で、課題はある書籍の販促の企画を考えてもらう実践的な内容です。事前課題で持ち寄った企画に対して、当日のグループワークで5~6人の学生で議論してブラッシュアップしたり、編集長から個別に細かい講評を受けたりするものです。編集をめざす学生同士なので刺激になったと思います。
──かなりたたくのですか。
たたくこともしますが、ほめることもします。学生も真剣に取り組んでいるので、こちらも真剣に返します。編集長たちも面白かったようで、「次回もぜひやりたい」と。最後は立食での懇親会を開催したのですが、私たちと同じ興味を持っている者同士なのでとても楽しい時間でした。
私たちにとっても新鮮で、学生もいろんな角度でものを考えていることが分かりました。活字離れが進んでいると思っていましたが、熱心な学生が多く、文芸だけでなくコミックもアニメも好きという方が多かったですね。その点もよかったです(2018年2月にはインターンの種類を増やして実施しました)。
──インターン参加者から内定者は出ましたか。
インターンによって弊社に興味をもってくれて本選考に進んだ学生が多く、うれしく思っています。内定した人もいます。
■会社説明会
──2018年卒採用では、会社説明会は開きましたか。
しばらく実施していなかったのですが、2018年度は「50人採用」ということもあり、少しでも弊社を理解してほしく、こちらの熱意もお伝えしたかったので、2日間で4回開催し、計1200名が参加してくれました。2018年度は東京のみの開催だったので、今後は他都市での開催も検討しています(2019年卒採用の説明会は実施済み)。
──説明会の内容は?
社長、役員からビジネス全体の戦略、PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)の状況、海外事業の展望と差別化などの話をし、メディアミックス、デジタル戦略について説明しました。話題になった作品の編集者やプロデューサーの取り組みや想い、IP(知的財産)戦略に関してはビデオで紹介し、2~3年目の先輩社員のパネルディスカッションも実施しました。
社長は今年も皆さんに会いたいと楽しみにしているようです。
──大学での学内説明会は?
できる限りうかがっています。デジタルを手がける私たちが言うのも何ですが、働いている人と同じ空気を感じてもらうのも大事だと考え、大学に出向いています。近い距離でお話しできることもあるので、「一緒に目指すものを思い描いてもらいたい」という気持ちまで伝わればいいなと考えています。来てくれた学生がどう感じているのか気になるところです(笑)。
■エントリーシート
──応募数の増減は?
出版業界、映像業界単体を目指す学生だけではなく、世界のエンターテインメントビジネス全体を意識して募集しました。合併前の出版業界単体で募集していたときの限界を超える数の人が応募してくれたように感じています。多くの方に興味を持っていただいたことは大変うれしく思っています。領域の枠を超えて考えられる人がたくさんいるということで、業界全体の可能性を広げていけるとも思いました。
──ESは手書きですか。
手書き部分もあるので郵送してもらいます。文字数の制限はなく、罫線も引いていないので自由に書けます。枠いっぱいに細かく書く人も、イラストを描いたり、何かを貼ったりする人もいます。後の面接で企画書などを提出してもらうので、そこで工夫する学生もいます。しかし、ギミック(仕掛け)がすごいことより内容が大事ですので、さっと書いたものでも内容が良ければ選考を通過します。気軽に応募してほしいです。
──項目数は多い?
A3サイズの見開き1枚なので、それほどでもありません。他の出版社さんよりは楽だと思います。
──出版社のESは、ちょっと毛色の変わったものが多い印象があります。
それほど変わったものではありませんが、「自分が夢中になっているもの」については書いてもらいます。「はまっているもの」ですね。自分の「オタク自慢」をキャッチコピー風に書いてもらったりすることもありました。
ほかには「自分の行動力」「視野の広さ」などがアピールできることを書いてもらいます。
──「オタク自慢」でユニークなものは?
縄跳び、昆虫、筋肉、「美坊主」のオタクがいました。たとえば「アニメが好き」という一般的なジャンルではなく、○○なスポーツものだけ、「魔法×○○」という「2軸」の掛け合わせのような独自の軸を持っている学生と会うのは楽しみです。
──「2軸」あると有利なんですか。
そうですね。2軸にこだわってはいませんが、コアなファン向けの商品を扱うので掛け合わせがあったほうが、よりこだわりがわかるような気がします。しかし、「それだけしか受け入れない人」ではなく「そのこだわりがあるから、他ジャンルでもこだわりのあるマーケットがわかる、興味を持てる」方を探しています。
──出版は「好き」を仕事にする業界ですが、好きなだけでは受かりませんよね。どんな人が受かるのでしょう?
「自分なりの好きの軸を明文化できる人」「差別化が上手な人」「人真似ではない人」といったところでしょうか。またその能力がアイデア立案の場面だけではなく、実行の戦略の上でも役立てることができる方がいいですね。
──ESで大事なポイントは?
丁寧に書くといった基本的なことはもちろんですが、言葉の選び方、斬新さ、全体的なバランス、時流を読んでいるといった内容とセンスも見ます。
ESを選考するのは、百数十名の編集長やメインプロデューサーなど課長職以上の現場の人間です。
──学生の志望ジャンルの編集長が読むんですか。
そうとは限りません。文芸志望者のESをコミックの編集長が読む場合もあります。編集長は幅広いジャンルで情報を持っていますので、ご安心ください(笑)。
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