人事のホンネ

アクセンチュア株式会社

2019シーズン【第3回 アクセンチュア】
企業の戦略・戦術担う 実績はいらない! 成長意欲高い人来て

人事部 新卒採用チームリーダー 長谷川明里(はせがわ・あかり)さん

2017年12月05日

 企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2019シーズン第3弾は、世界最大の総合コンサルティング企業でITサービスにも強いアクセンチュアを訪ねました。外資系コンサルといえば、高収入だが激務というイメージもありましたが、かなり様相が変わりつつあるようです。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ──2017年卒と2018年卒の採用実績を教えてください。
 採用数は年によって変動がありますが、毎年数百名程度の新卒採用を行っており、2019年卒も同じくらいの人数を採用する予定です。

 ─―男女比は?
 50:50を目標としています。コンサルティング職は男性に人気が高いため、ここ数年は女性に興味を持ってもらえる取り組みを強化しています。実際の採用は女子学生が50%弱です。

 ──どんな取り組みを?
 そもそも女性には「コンサルティング会社は自分とは別世界」と思っている人が多いので、「働くとは何か」を考える小規模セミナーを行い、コンサルタント職に興味を持ってもらえるよう丁寧に説明しています。仕事内容が分かりづらいうえに、「男性社会」という先入観があるので。実際にはそんなことはなく、ずいぶん変わってきました。
 また、女子学生はライフイベントを意識して就活をするので、そうした情報をウェブサイトや小冊子で提供しています。

 ──内定者は東大はじめ学力トップ校の学生がひしめいているイメージですが、実際には?
 上位校の学生は多いですね。そのため「学歴で制限していますか」と聞かれますが、何もしていません。最近では地方での説明会も開いているので、地方の学生も増えてきました。
 内定を出した学生と話すと、「すごい人ばかりで気後れします。ここに入ったら埋もれてしまう」と心配や不安を抱いている学生も多いです。実は私も地方大学出身で、自分に早稲田や慶應など都心の大学の華やかさがなくて心配したことがあったので、「心配しなくてもいいんだよ」と話します。

■職種別採用
 ――応募者数はどのくらいですか。
 プレエントリーが数万、本エントリーは数千人規模です。会社の規模がどんどん大きくなっているうえ、知名度も上がっているので伸びています。

 ──職種別採用ですね。
 大きく分けるとコンサルタントとエンジニアで、具体的には「戦略コンサルタント」「ビジネスコンサルタント」「デジタルコンサルタント」「ソリューション・エンジニア」の四つ。学生には第3志望まで選んでもらいます。ビジネスコンサルタント志望の学生に適性を見たうえで「ソリューション・エンジニアの方が合っているのでは」と提案することもあります。フレキシブルな対応が可能です。

 ──どんな仕事内容ですか。
 まず「戦略コンサルタント」は、企業や組織がどの方向に進むかという局面に携わります。新規事業や企業戦略、経営戦略を立てたり、10年、20年後を見据えた戦略を立てたりする仕事です。
 「ビジネスコンサルタント」は募集人数の一番多い職種で、領域も多岐にわたります。業務改革やIT(情報技術)戦略、システム構築などを幅広く手がけます。基本的には「業界×何かのテーマ」を持ち、「小売業界のマーケティングに詳しい」「金融のシステムが得意」といった専門的なコンサルティングをしています。

 ──大まかにいうと「戦略コンサルタント」は企業の経営的な部分を担い、「ビジネスコンサルタント」は個々のテーマに応じた戦術を担当するんですね。
 そうですね。次の「デジタルコンサルタント」は、さらに「アクセンチュア・アプライド・インテリジェンス」「アクセンチュア・インタラクティブ」「アクセンチュア・インダストリーX.0(エックスポイントゼロ)」の三つのグループに分かれていて、それぞれ主に、データサイエンス(統計分析)、デジタルマーケティングなどのインタラクティブ(双方向)、そしてIoT(モノのインターネット)を活用した、デジタル技術に特化したコンサルティングを行います。
 最後の「ソリューション・エンジニア」は、企業の基幹システム構築や運用に関わります。

 ──コンサルタントは文系が多く、エンジニアは理系という印象があります。
 文系の学生には「文系で大丈夫ですか」と聞かれ、理系の学生からは「理系でいいんですか」と聞かれますが、特に指定はありません。もちろんプログラミングやテクノロジーの素養があることはプラスですが、弊社には人材育成の環境が整っています。入社後に研修があるので、ほぼまっさらな状態で入社しても心配ありません。

 ――文理どちらが多いのですか。
 全体では文系の学生のほうが多いですね。「ソリューション・エンジニア」はエンジニア職ですが、理系に限りません。文系の学生がインターンなどで実際にやってみて面白くなったり、「手に職をつけたい」と考えて志望したりする人もいます。

 ──文系だとどんな専攻の学生が多いのでしょう。
 金融機関や商社と併願する学生が多くいます。商社だと事業開発やグローバルなどの志望動機が、金融は企業支援という面で重なるので、そういった分野を学んできた学生が多いですね。

 ──理系で向いている学部は?
 デジタルコンサルタントは一定の関連知識が必要なので、ほかのコンサルタント職とは違います。たとえば、大学で統計学や応用物理を学んだ人、プログラミングなどの素養がある人は向いていると思います。
 「アクセンチュア・アプライド・インテリジェンス」は統計解析の手法などを駆使してさまざまなデータから経営に有用な情報を引き出し、科学的な根拠にもとづいた意思決定をお手伝いする仕事で、データ・サイエンティストの卵が応募します。「インタラクティブ」には、「今までにない顧客体験」を生みだすためのデジタル戦略をつくりたい人や、今までだと広告会社などでクリエーターやデザイナー職を目ざすような人たちが応募します。自分がつくったデザインでインパクトを与えて世の中を変えたいという使命感を持った人たちです。「インダストリーX.0」はIoTで製造業、モノづくりと関わるので、ITよりも工学系の素養がある人が向いています。電子工学、半導体、センサーやバッテリーの研究をしていた人は強いですね。
 とはいえ、素養を持っている人だけでなく、「やってみたいな」と思う人にも来てもらいたいです。

 ──どの職種が人気ですか。
 募集人数はビジネスコンサルタントが一番多く、ソリューション・エンジニア、デジタルコンサルタント、戦略コンサルタントの順です。やはり、ビジネスコンサルタントは幅の広い職種なので、一番人気がありますね。デジタルコンサルタントは最先端の仕事をしてみたいという学生が多く、戦略コンサルタントは難易度が高いと感じるようで「挑戦したい」という学生が多いですね。ソリューション・エンジニアはモノづくりを自分の手でやりたい、という方が多いです。

身の丈に合ったことでいい 自分で考え抜き自分の言葉でESに書いて

■研修
 ──入社後の研修期間は?
 配属先によって違いますが、1カ月強~3カ月くらいです。ビジネスマナーなど社会人の基礎を学んだ後、2~3週間プログラミングやプロジェクトマネジメントについて学び、各部署の最低限の知識を身につけてからプロジェクトに配属されます。

 ──入社前の研修もあるとか。
 強制ではありません。課題図書ではなく「推薦図書」という形で本を薦めたり、プログラミング未経験の人に、慣れるためのワークショップを行ったりしています。学生から「英語研修はないんですか?」と聞かれることが多いのでオンライントレーニングを提供しています。「成長意欲の高い学生」を求めていることもありますが、「入社後、スタートダッシュを決めたい」という人が多いですね。

 ──配属後の仕事はチームでするのですか。
 基本的にはプロジェクト単位です。配属部門ごとで仕事をすることはなく、お客様の課題や解決の方向性に沿っていろんな部門から経験、スキルを持った人が集まって仕事をします。戦略コンサルティングで「企業の青写真を描く」仕事は3~5人のこともありますが、システム構築になると数百人単位のプロジェクトになる場合もあります。また、お客様1社に一つのプロジェクトとは限らず、長くお付き合いしているお客様だと複数のプロジェクトが同時進行することもあります。

■採用スケジュールとインターン
 ──インターンシップから選考までの流れを教えてください。
 インターンシップは夏と秋に行っています。3年生の5月ごろから募集し、8・9月にインターンを行います。11・12月には秋のインターンもあります。3日間あるいは5日間のインターンはコンサルタント職、ソリューション・エンジニア職の仕事を理解してもらういい機会です。
 その後、冬から春にかけて本選考の募集を始め、内定を出します。

 ──エントリーシート(ES)の締め切りは何回かに分けていますか。
 2018年卒採用では3回締め切りを設けました。2016年内に一度締め切って選考し、2017年2月ごろから内定を出しはじめました。最後の締め切りは3月末頃で、内々定は5月から6月初めに出しました。採用予定数に達した時点でその年の新卒採用活動は終了します。

 ──インターンの選考は?
 インターンにも書類選考、グループディスカッション、個人面接の選考があります。インターンを受けると、アクセンチュアの仕事内容や社員の雰囲気などをつっこんで理解してもらえると思うので、興味を持っている方はぜひ挑戦してほしいと思います。

 ──内定者にインターン参加者は多い?
 「過半数がインターン参加者」という会社もあるようですが、それほど多くはありません。アクセンチュアでは、インターンと本選考は分けてとらえていて、インターンに参加しないと本選考で不利ということもありません。

 ──学生はみなコンサルタント職についてきちんと理解して受けていますか。
 選考中や内々定が出た後に理解が深まる学生も多いと思います。数年前から少人数で社員と対面で仕事についてお話ができる場を増やしています。面接官と「こういうことがやりたい」「それならできるよ」「こうしたらいいんじゃない」とやりとりする中で「アクセンチュアやコンサルタントに興味を持ちました」と言う人も多くいます。

■エントリーシート
 ──本選考の流れは日本の企業と同じですか。
 特殊なことはしていません。プレエントリーの後、ウェブ上でESを提出し、適性検査を受けてもらいます。書類選考後にグループディスカッション、複数回の面接を経て内々定となります。

 ──ESはどんな内容ですか。
 履歴書的な項目とエッセーです。エッセーは2~3題、400~500字で、テーマは職種によって違いますが、共通する題材として弊社が求める人材像を10カ条にまとめた「未来のアクセンチュアに必要なDNA」を読んで答えてもらう設問を用意しています。エッセーは、より深く考え、アクセンチュアに理解を深めてもらうためのツールでもあります。
 他のテーマは毎年変えています。

 ──過去にはどんなテーマを出しましたか。
 去年は「アクセンチュアという個人の夢を実現するプラットフォームに入って何をしたいか」というテーマでした。「自分を限界まで高めたい」「世間に何かを問いたい」でもいいし、「自動車産業が大好きだから、その発展に協力したい」という答えでも正解です。

 ──ESのポイントは?
 自分の想いを、自分の言葉で書くことです。アクセンチュアで求められるのは、コミュニケーションですから。他人からの受け売りや付け焼き刃で、自分の言葉でないものは、読んでいてすぐにわかります。

 ──良いESは?
 「こういう人なんだろうな」と、学生の人となりがイメージできるものです。自分で考えて書いているんだと思います。学生は「世界○○大会で優勝した」とか「長期インターンに参加した」など「すごいエピソードを入れなくては」と力むようですが、エピソードのすごさを競うわけでも、それで合否を判断するわけでもありません。身の丈に合ったことでいいので、自分で考え抜き、それを自分の言葉で書くことが大事です。

 ──入社前から英語力は必須ですか。
 グローバルチームに入ることを考えると、あるに越したことはありません。ただ、そこに向けて努力している人であれば選考で英語力は問いません。ESにTOEICの点数を書く欄はありますが、記入がなくても減点はしません。内定者には「最低限、勉強はしておいてね」とは言いますが、選考の段階では必須ではありません。ジャパニーズ・イングリッシュで頑張っている社員もいますから。