人事のホンネ

カルビー株式会社

2019シーズン【第2回 カルビー】
「好き」より「何をしたいか」考えて!厳しくて温かい会社

人事総務本部 人財・組織開発部主任 小池美帆(こいけ・みほ)さん、人事総務本部 人財・組織開発部 冨永玲奈(とみなが・れいな)さん

2017年11月21日

(小池さん=左、冨永さん=右)  企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2019シーズン第2回は、みんなが大好きなスナック菓子のトップ企業、カルビーです。海外進出に積極的なほか、女性の活躍や働き方での先進的な取り組みでも知られています。でも、「好き」なだけじゃダメなようですよ。(編集長・木之本敬介)

■採用実績
 ──2017年入社の実績と、2018年4月入社予定の数を教えてください。
 小池さん(写真左) 2017年は男性7人、女性10人の計17人で、2018年は男性7人、女性7人の計14人の予定です。年度によって若干の差はありますが、だいたい15人程度の採用です。2018年は理系が8人、文系が6人です。理系は院卒と学部卒が半々くらいでした。

 ──カルビーは女性が活躍する企業の先駆けで、女性管理職割合の目標数値も掲げています。採用でも女性の割合を設定しているのですか。
 冨永さん(写真右) 目標は半々程度ですが、決して必須ではありません。年によって変動はありますが、大体半々くらいで推移しています。
 小池 私の同期は18人中14人が女性でした。良いと思った人が、たまたま男性、女性だったということです。

 ──今年から既卒採用も始めたそうですね。
 小池 カルビーに新しい風を取り入れたいと思い導入しました。対象は、大学や大学院を卒業後5年以内の方です。応募者には卒業してから「自分のやりたいことをやっていた」「2年間留学に行っていた」という方や、「現在、他社で働いています」という方もいます。今後も続ける予定です。

■エントリーについて
 ──職種別採用ですね。文系だと「国内営業」「海外事業」「その他の職種」とありますが、「その他の職種」は総務など管理系ですか。
 小池 一概に管理系とは言えません。たとえば、新規事業、購買、人事、広報、財務などです。こちらが掲げている職種にはまらない仕事は、すべてです。あまり多くの職種をつくると職種別選考が増えてしまうので、大まかな分け方にしています。
 理系の方は「生産技術」「研究開発」だけでなく、「国内営業」「海外事業」「その他の職種」など全職種に応募できます。
 応募の際には、「入社時にしたい仕事」ではなく、「将来的に目指す仕事」を選んでもらうようにしています。「まず営業を経験してからその他の職種(商品企画)に行きたい」という人は「その他の職種(商品企画)」にエントリーしてください。

 ──「海外事業」の仕事は?
 小池 大きく二つあります。一つは、未進出国への進出に向けて戦略を考え実行することです。海外に進出する場合、事前に「進出しようとしている国でスナック菓子は受け入れられるだろうか」と検討するところから始まり、いざ事業展開する際にはパートナー会社を探し、従業員を採用し、工場を建てるかなどを検討します。海外にひとつの会社を起こすイメージです。二つ目は既に進出した国のシェアを拡大していくことです。カルビーは基本ローカライズの考えなので、現地のパートナー会社や従業員といかに連携してシェアを拡大していくかが鍵です。
 よく、「海外営業をしたい」という学生がいますが、カルビーの場合は営業は現地の従業員が行っているので、自分で営業をしに行くというよりは、現地の人にどのように営業をしてもらうかを一緒に考えていく仕事になります。

■採用スケジュールとエントリーシート
 ──インターンシップは行っていますか。
 冨永 過去に行っていた時期もあったのですが、現在は実施していません。
 小池 インターンシップは実施していませんが、カルビーをより知っていただくため、今年からWEBセミナーを実施して理解を深めてもらうような施策を検討しています。

 ──採用のスケジュールを教えてください。
 冨永 3年生の12月ごろから業界説明会や大学の学内説明会などに参加し、3月ごろから本格的な採用情報を発信します。エントリーシート(ES)の締め切りは4月初旬。書類選考を通過した人向けの選考と会社説明会を順次行い、内々定は6月の上旬~中旬くらいです。

 ──どんなESですか。
 冨永 「生産技術」と「海外事業」はWEB入力ですが、それ以外の職種は手書きです。「実際にカルビーはどんな仕事をしているのか」と一歩踏み込んで考えてから受けてほしいので、あえて時間をかけて考えるような質問を用意しています。
 小池 「他社さんにも同じようなことを書いているんだろうな」という内容はすぐに分かります。

 ──ハードルを上げているんですね。記入欄に罫線がありませんね。
 冨永 枠内に収めてもらえれば文字数や書き方など表現は自由です。写真を貼る人、絵を描く人もいます。

 ──部活動について、大学・高校・中学の経験を書く欄がありますね。中学時代のことを面接で聞く会社はありますが、ESで書かせる会社は珍しいですね。
 冨永 中学時代まで聞くと、その人の生き方が分かって参考になります。大学の話だけだと、どんな風に育ってきたか背景がわからないので。

 ──TOEIC、TOEFL iBTの基準点はありますか。
 小池 「海外事業」と「その他の職種」希望者には基準点があります。「海外事業」は受験段階でTOEIC750点、TOEFL iBT83点以上、「その他の職種」は、受験段階でTOEIC600点、TOEFL iBT62点以上の取得が必須となります。

 ──「カルビーに入社してチャレンジしたいことを具体的に聞かせてください」とあります。志望動機より踏み込んだ聞き方ですね。
 小池 はい。志望動機を聞くと「カルビーが好き」「商品が好き」で終わってしまうんです。「カルビーが好きだから入社する」のではなく、「こんなことをしたいから入社する」という思いを持って来てもらいたい。入社はゴールではありませんから。エントリーの段階で職種まで問うので、学生はかなり真剣に考えてきてくれますね。

 ──文系はどんな職種でもやる「総合職」が一般的です。「カルビーが好きで、どんな仕事でもいい!」という人はダメですか。
 冨永 ダメではないですし、とてもうれしいのですが、そういう方にも「真剣にキャリアについて考えてきてください」と説明会などで話します。「自分のキャリアは自分で決める」がカルビーの考えです。
 小池 求める人物像は「自ら考え、自ら学び、自ら行動する、自立的な実行力のある人財」です。ESの段階から自分のキャリアについて考えて、何をしたいか宣言してもらいたいと思っています。

 ──本気で考えないと通りませんね。職種別採用のメリットは?
 小池 職種別採用を始めたのは2016年卒からで、それ以前は総合職採用でした。まだ2年目ですが、より具体的に「自分のしたいこと」を持っている人が増えたと思います。

学生時代に何を考え何を成し遂げた? リーダーシップ経験も聞く

■面接
 ──面接はどんな形式ですか。
 小池 1次選考は集団面接で学生2~3人に対し、課長クラスの面接官が2~3人です。時間は学生1人に10分の計算なので、学生が2人なら20分、3人なら30分です。
 昔は1対1でしたが、1次選考は良い「人財」が受けに来ている重要な段階。それを1人の面接官でジャッジしていいのかという議論がありました。複数の目で見て「良い」と判断すれば確かだと思うので、3年ほど前から集団面接に変えました。

 ──複数の学生を同時に見るメリットは?
 小池 より多くの学生に会えることです。2人を面接しているからといってAかBかということはなく、両者が通ることもあります。
 冨永 同じ職種を志望している人同士で面接するので、志望動機などを比較できます。

 ──ESと同様、面接でも中学時代の話を聞きますか。
 小池 うちの面接官はなぜか高校時代の話が好きですね(笑)。受けに来る学生は大都市の大学に集中していることが多いので、高校時代の話は育ってきた背景が分かるからだと思います。

 ──1次面接で見るポイントは?
 小池 学生時代に何を考え、何を成し遂げてきたのかを見ます。コミュニケーションが取れるか取れないかも見ますね。
 私が面接する場合は「どんなリーダーシップ経験がありますか」「カルビーに入って具体的に何をしたいですか」を聞きます。リーダーシップのあり方には正解があるわけではなく百人百様ですが、求めるのは「自ら考え、自ら学び、自ら行動する、自立的実行力のある人財」ですから、「自分はどう考えたか」「どう動いたか」「どう周りを巻き込んだか」を聞きたい。そういう要素があれば、会社に入った後も物事を成し遂げてくれると考えています。

 ──2次と最終面接は?
 小池 2次選考も面接官2~3人に対し、学生2~3人の集団面接です。1人あたり15分ずつ。人事担当と希望する部署の部長が面接します。
 最終選考は、役員クラスの面接官2~3人に対して学生1人の個人面接です。1人30分。職種別採用なので、その部署のトップが見ます。

 ──ニュースの話題は面接に出ますか。
 小池 今年初めて1次面接で「1分間PR」を取り入れました。面接開始前に自己PRをしてもらいます。お題は人によって違います。質問の一つとして「最近関心のあったニュースは」と聞くこともあります。ただ、ニュースに関しては学生も準備してきていますね。

 ――最近の学生はあまり新聞を読んでくれないんですが。
 小池 けっこう調べていますよ。
 冨永 オンライン版で読む学生も多いようです。

 ──いきなりのお題で1分間PRとは大変ですね。狙いは?
 小池 ビジネスでは突発的なことがよく起こるので、どういう反応をするかを見ます。でも、これで選考するわけではありません。固まってしまってしゃべれない学生もいますが、それでアウトということはありません。その後の面接のほうが重要です。

 ──1分間PR以外で業界関連のニュースは話題に出ますか。
 冨永 ニュースの話はあまりしませんが、食品業界については質問します。
 小池 「営業」職なら業界ニュースに詳しいより、どうやって得意先とコミュニケーションをとるか、どうやって一緒に課題解決をしていくかのほうが大事です。
「研究開発」職は食に関わるニュースを知っておいてほしいのですが、興味のある人が非常に多いですね。

 ──面接で印象に残るのはどんな学生ですか。
 小池 自分のことを自分の言葉で語れる人が記憶に残ります。必ずしも雄弁が良いとは思いません。言葉の重みですね。

 ──面接は私服だとか。
 冨永 1次面接から「ぜひ私服でお越しください」と言っていますが、他社の面接とも重なるためリクルートスーツの人が7~8割ですね。2次以降は私服が増えます。
 ファッションセンスではなく、その人らしさを見ます。学生も私服のほうがリラックスして面接を受けているように感じます。

 ──あえて目立つ格好をする人は?
 小池 私ですかね(笑)。私が受けたときは「あなたらしい格好で来てください」と言われ、「どんな格好でもいいんですか」と当時の人事担当に聞きました。私は学生時代、テニスに打ち込んでいたのですが、人事担当から「テニスの格好でもいいですよ」とちょっとあおられたので、テニスの格好で行きました(笑)。

 ──えっ、スコートで?
 小池 いえ、ウィンドブレーカーにラケットバッグを背負って行きました。でも、本当に普段の通学着で来てもらえれば大丈夫です。みんなが部活着で来たり、相撲部の人がまわしで来たりしたら困りますから(笑)。だいたい、みなさん生活感のある服装ですね。
 冨永 私はずいぶん悩みましたが、ブラウスに膝丈スカートという清潔感のある服装にしました。