企業の採用担当者に直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2018シーズンの第8回は、ナンバー1住宅メーカーの大和ハウス工業です。
「仕事がきつくて離職率が高い」イメージもある業界だけに、ちょっと聞きづらい質問もぶつけてみました。「断られることが多い厳しい仕事」と認めつつ、住宅メーカーならではの誇りを率直に語ってくれました。(編集長・木之本敬介)
■採用実績
──近年の総合職の採用実績とエントリー数を教えてください。
2016年入社は694人、2017年入社は841人の予定です。内訳は、やや文系が多いですね。
エントリー数は、文系・理系あわせて約2万5000人。選考に進むのが5,000人くらいですね。
──2017年入社では採用数を増やしたんですね。
そうですね。本来は、業容拡大にあわせて2016年にもっと採用したかったのですが。その分、2017年は増やした面もあります。
2018年入社の採用人数は前年と同じくらいです。
──募集職種を説明してください。
総合職には「営業系」と「技術系」があり、「技術系」はさらに、図面を描く「設計部門」、現場でモノづくりを指揮する「施工部門」のほか、電気、空調、防災、給排水などの設備を設計、施工する「設備部門」、地盤の整備や宅地造成をする「都市開発部門」などに分かれます。「設計・施工部門」は建築学科などで専門的に学んだ学生がほとんどで、「設備部門」には電気学科や機械学科の人が多いです。「都市開発部門」で行う大型の宅地造成には土木の知識が必要ですから、土木学科出身の学生がほとんどです。
また、奈良県に研究所があり、研究職の採用もあります。もちろん建築の研究もありますが、新しい分野の研究をしている社員もいます。たとえば、当社は植物工場ユニットの開発もしていますので、大学院等で農学系の研究をしている人の募集もしています。グループ企業のリチウムイオン電池を開発・販売している「エリーパワー」と共に電池の研究をしていますので、そういった分野の研究をしている人も募集しています。
──2017年入社の男女比を教えてください。
総合職は男性646人、女性195人で、女性が2割強です。例年、女性の比率はこのくらいです。
──住宅業界は「男性の職場」というイメージもありますが、女性の採用は増やす方向ですか。
まずは3割くらいに増やすのが目標です。やはり、「男性社会」のイメージが強いので、職場の雰囲気や人事制度もさらに整えて、性別に関わらず働きやすい職場にしたいですね。
─――大阪本社、東京本社で採用の役割分担は?
エリアで分けています。新潟・静岡・長野より東が東京の担当。富山、岐阜、愛知より西が大阪担当です。大阪のスタッフが12人、東京のスタッフは10人です。
──「総合職」以外に「事務職」の採用もありますね。
事務職は全社一括採用ではなく、各支店や営業所、工場ごとに欠員補充をしています。転勤や異動はなく、地元の大学に求人票を出したり、キャリアセンターに相談したりして、地域特性にあわせて柔軟に募集しています。全社で年間40人くらいの採用です。
■採用スケジュール
──2018年卒採用のスケジュールを教えてください。
経団連の指針に合わせ、3月に企業広報を始め、WEBの筆記試験などを行い、6月から面接開始です。3月から6月までの間に、会社説明会や先輩社員との「質問会」を開きます。
──筆記試験はどんな形式ですか。
パソコンとネット環境さえあれば、自宅でも受験できます。能力適性検査の一種で、あまり詳しくはお伝えできませんが、簡単に申し上げると「計数読解力と言語読解力を問う問題」です。数学の公式や国語の熟語は問いません。限られた時間で、どれだけ早く正確に多く答えられるかが問われます。また同時に、性格適性検査も行います。これらの試験では、本質的な能力や潜在能力をしっかり見たいと思っています。
■履歴書
──エントリーシート(ES)がないそうですが、大手では珍しいですね。
選考途中で履歴書を提出してもらうのですが、根底にあるのは、「人には会ってみなきゃわからない」という考え方です。書類や経歴だけでは、学生の皆さんも思いを伝えきれないんじゃないかと思います。
──履歴書だと、志望動機などはあまり書き込めませんが。
志望動機などは面接で聞きます。事前に履歴書の記述で評価することはありません。ちなみに、志望動機は選考の後段階ほど重要視しており、最終面接でも聞きます。就職活動を通して、学生の皆さんは大きく成長します。その時一番新しい思いを、大切にしたいと思っています。
大和ハウス工業株式会社
第一印象とコミュ力が大事 街づくりにも住宅メーカーの志
■質問会
──「質問会」について教えてください。
1回あたり学生20~30人くらいで、グループに分かれて社員を車座で囲み、わいわいと本音を話しながら会社や仕事への理解を深めてもらいます。2~3人の社員と順番に話します。社員1人につき30分くらい。若手と30~40代の社員が出ます。入社後の近未来像と10年後の像の両方を見てもらいます。4月~5月中旬に連日開きます。そのうえで「この会社でやっていきたい」と思った人に、6月の選考に進んでもらいます。
──開催地は大阪、東京ですか。
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡が主な会場となりますが、状況を見ながら新潟、長野、広島などでも開きたいと思っています。
──質問会の狙いは?
当社は「同じ目標に向かってひたむきに頑張れる人」「共感を持ってくれる人」を求めています。質問会での会話を通じて、「大変な面もあるけれども一緒に頑張りたい」と社員と同じ目線で語ってくれる仲間を探したいと思っています。
質問会は任意ですから参加しなくても構いません。ただ、来てくれた学生は早めの日程で面接が受けられるなどして、お得感が出るようにしています。
──実態として質問会は面接に近い?
本当に、面接は一切していません。当社への志望が強い人は、質問会に参加して積極的に話し、そこで得た情報を持って面接に早めに来てくれます。私どもも一生懸命に面接をして、意欲のある人には早めに次のステップに進んでもらいます。
──質問会での学生の様子や情報は、人事部で把握していますか。
私たち人事部はアテンドするだけで中には入りません。基本的な判断は質問会で話をする社員に任せています。担当の社員には「いい人財がいれば、きちんと大和ハウスの良さを伝えて、受けるよう伝えてほしい」と話しています。
■面接
──その後、6月から面接ですね。
面接は3回実施します。最初は学生3~4人に社員1~2人が聞く集団面接、次は学生1人に対して幹部社員2人、最終面接は1対1です。
1次は約30分、2次は40~45分くらい。最終面接は40分の設定ですが、だいたい1時間くらい話していますね。
──1次面接のポイントは?
第一印象やコミュニケーション能力です。特に営業系は第一印象が大事です。「人は見た目が9割」という本が話題になりましたが、お客様は少し話しただけで「この人は話を聞いてくれそうだな」などと見定めますから、「お客様から見てどうか」を確認します。
ですから1次のポイントは、基本的な会話ができるか、身だしなみが整い、清潔感があるかどうか。「学生時代に頑張ったことは?」など普通のことを聞きます。大事なのはレスポンスですね。答え方や顔色を見て、「好印象を持たれる人物か」を見ます。1次では志望理由などはあまり聞きません。
――2次と最終は?
2次面接は経験や実績がある社員が判断し、最終面接では総合的に見るようにしています。
2次で聞く内容は担当者によって様々です。担当者の経験や実績をもとにした「勘」も含めた判断を、大切にしています。
1対1だとじっくり話せるので、最終面接はざっくばらんに「上着脱いでいいよ。ところでどうして競合他社じゃなくて当社なの?」という感じで始めます。「まずは自己紹介をどうぞ」といったかしこまった雰囲気ではありません。腹を割って時間をかけて話していると、当社との親和性や共感性が分かってきます。
■最終面接後の面談
──最終面接の後はどのような流れに?
最終面接後に合格通知を出し、当社に来る意思を確認します。他社の選考もあるでしょうし、学生に考えてもらうわけです。「決めました」と言ってもらえれば、「では、もう一度会いましょう」と面談します。
面談では「大和ハウスはこういう会社で、こういう気持ちがないと続かないよ」といった説明をきちんとします。「まだ気持ちが固まっていないな」と判断したら、一度帰ってもらうこともあります。私たちの意図がうまく伝わっていないようなら何回でも会います。
考えが合わなかったり共感できなかったりして、辞退する学生もいます。
──たとえばどんなケースが?
大半は仕事を「きれい」に見ているケースですね。「街をつくる大きなプロジェクトがあって、将来リーダーを任されて、社会の役に立つ……」といったイメージしか持っていない人がいます。しかし、現実には「きれいな仕事」だけでなく、「泥臭い仕事」もたくさんあります。
私たちの仕事では、一人ひとりのお客様に向き合って真摯に仕事をしたら、結果的に街ができるのであって、最初から街づくりを目指しているわけではありません。「ここに家がほしい」「この場所で事業がしたい」というお客様のために、一生懸命、建物をつくる仕事をしています。
企業と学生双方にとって良い道は何なのかを考えて接しているので、「国土交通省や地方自治体、NPOに行った方が良いかもしれないな」と思った時は、評価の高い学生でも、そちらの方面へ進めるようアドバイスすることもあります。
──ディベロッパーと呼ばれる大手の不動産会社は、「街づくり」をPRしていますが、そことは違う?
違いますね。確かに大手不動産会社には街づくりの案件があります。「街をつくった」と言えるのは、都心の街区を丸ごと開発するような規模のものだと思います。私どもも大規模な市街地開発を手掛けることがありますが、それが仕事の中心ではありません。
不動産会社の場合は、自社で広い土地を買って、自ら建物を建てて貸す仕事が多い。一方、私どもは、まずお客様がいらして要望に合わせて建築します。仕事の出発点が違うんです。
最近、当社の代表的建築を紹介する冊子を作りました。一般的には、こういった冊子を「作品集」と呼ぶことがあります。でも私どもは、どんな建物も「作品」とは呼びません。「○○様宅新築工事」「○○株式会社様施設新築工事」と言います。「自分のお金で作った『作品』ではない。創作活動をしているわけではない。あくまでもお客様の建物」という考え方です。
──大和ハウスは大規模な商業施設なども手がけていて、結果的には「街づくり」をしていますよね。
学生のみなさんには、企業選びの際にその違いを見てほしい。「街をイメージしながら実際に“建物をつくる”会社」と、「開発事業者として“街のコンセプトづくり”をする会社」。結果的には似たようなビルを手掛けることになるかもしれませんが、目的や手法は異なるわけです。
不動産会社を希望する人には、「うちは少し違うよ。住宅メーカーの志、顧客志向を持って、“ものづくり”をする会社です」と説明しています。
──家づくりから始まった会社だからですか。
最初は「パイプハウス」という倉庫をつくり、創業から数年後に住宅事業に参入しました。今も根底にはハウスメーカーとしての気質が流れています。
住宅はお客様の顔が見える仕事です。私どもは新卒採用とは別に、キャリア採用(中途採用)で年間400~500人採用しています。不動産会社からの転職組には、「自分の業務が何の役に立っているのかが分かりづらいので、お客様の顔が見える仕事がしたい」という人が結構います。
住宅事業の根底にあるのは、「この方のために何とかしたい」「この人の喜ぶ顔が見たい」という気持ちです。そういう気持ちの人は、当社のほうが向いていると思います。
──「質問会」について教えてください。
1回あたり学生20~30人くらいで、グループに分かれて社員を車座で囲み、わいわいと本音を話しながら会社や仕事への理解を深めてもらいます。2~3人の社員と順番に話します。社員1人につき30分くらい。若手と30~40代の社員が出ます。入社後の近未来像と10年後の像の両方を見てもらいます。4月~5月中旬に連日開きます。そのうえで「この会社でやっていきたい」と思った人に、6月の選考に進んでもらいます。
──開催地は大阪、東京ですか。
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡が主な会場となりますが、状況を見ながら新潟、長野、広島などでも開きたいと思っています。
──質問会の狙いは?
当社は「同じ目標に向かってひたむきに頑張れる人」「共感を持ってくれる人」を求めています。質問会での会話を通じて、「大変な面もあるけれども一緒に頑張りたい」と社員と同じ目線で語ってくれる仲間を探したいと思っています。
質問会は任意ですから参加しなくても構いません。ただ、来てくれた学生は早めの日程で面接が受けられるなどして、お得感が出るようにしています。
──実態として質問会は面接に近い?
本当に、面接は一切していません。当社への志望が強い人は、質問会に参加して積極的に話し、そこで得た情報を持って面接に早めに来てくれます。私どもも一生懸命に面接をして、意欲のある人には早めに次のステップに進んでもらいます。
──質問会での学生の様子や情報は、人事部で把握していますか。
私たち人事部はアテンドするだけで中には入りません。基本的な判断は質問会で話をする社員に任せています。担当の社員には「いい人財がいれば、きちんと大和ハウスの良さを伝えて、受けるよう伝えてほしい」と話しています。
■面接
──その後、6月から面接ですね。
面接は3回実施します。最初は学生3~4人に社員1~2人が聞く集団面接、次は学生1人に対して幹部社員2人、最終面接は1対1です。
1次は約30分、2次は40~45分くらい。最終面接は40分の設定ですが、だいたい1時間くらい話していますね。
──1次面接のポイントは?
第一印象やコミュニケーション能力です。特に営業系は第一印象が大事です。「人は見た目が9割」という本が話題になりましたが、お客様は少し話しただけで「この人は話を聞いてくれそうだな」などと見定めますから、「お客様から見てどうか」を確認します。
ですから1次のポイントは、基本的な会話ができるか、身だしなみが整い、清潔感があるかどうか。「学生時代に頑張ったことは?」など普通のことを聞きます。大事なのはレスポンスですね。答え方や顔色を見て、「好印象を持たれる人物か」を見ます。1次では志望理由などはあまり聞きません。
――2次と最終は?
2次面接は経験や実績がある社員が判断し、最終面接では総合的に見るようにしています。
2次で聞く内容は担当者によって様々です。担当者の経験や実績をもとにした「勘」も含めた判断を、大切にしています。
1対1だとじっくり話せるので、最終面接はざっくばらんに「上着脱いでいいよ。ところでどうして競合他社じゃなくて当社なの?」という感じで始めます。「まずは自己紹介をどうぞ」といったかしこまった雰囲気ではありません。腹を割って時間をかけて話していると、当社との親和性や共感性が分かってきます。
■最終面接後の面談
──最終面接の後はどのような流れに?
最終面接後に合格通知を出し、当社に来る意思を確認します。他社の選考もあるでしょうし、学生に考えてもらうわけです。「決めました」と言ってもらえれば、「では、もう一度会いましょう」と面談します。
面談では「大和ハウスはこういう会社で、こういう気持ちがないと続かないよ」といった説明をきちんとします。「まだ気持ちが固まっていないな」と判断したら、一度帰ってもらうこともあります。私たちの意図がうまく伝わっていないようなら何回でも会います。
考えが合わなかったり共感できなかったりして、辞退する学生もいます。
──たとえばどんなケースが?
大半は仕事を「きれい」に見ているケースですね。「街をつくる大きなプロジェクトがあって、将来リーダーを任されて、社会の役に立つ……」といったイメージしか持っていない人がいます。しかし、現実には「きれいな仕事」だけでなく、「泥臭い仕事」もたくさんあります。
私たちの仕事では、一人ひとりのお客様に向き合って真摯に仕事をしたら、結果的に街ができるのであって、最初から街づくりを目指しているわけではありません。「ここに家がほしい」「この場所で事業がしたい」というお客様のために、一生懸命、建物をつくる仕事をしています。
企業と学生双方にとって良い道は何なのかを考えて接しているので、「国土交通省や地方自治体、NPOに行った方が良いかもしれないな」と思った時は、評価の高い学生でも、そちらの方面へ進めるようアドバイスすることもあります。
──ディベロッパーと呼ばれる大手の不動産会社は、「街づくり」をPRしていますが、そことは違う?
違いますね。確かに大手不動産会社には街づくりの案件があります。「街をつくった」と言えるのは、都心の街区を丸ごと開発するような規模のものだと思います。私どもも大規模な市街地開発を手掛けることがありますが、それが仕事の中心ではありません。
不動産会社の場合は、自社で広い土地を買って、自ら建物を建てて貸す仕事が多い。一方、私どもは、まずお客様がいらして要望に合わせて建築します。仕事の出発点が違うんです。
最近、当社の代表的建築を紹介する冊子を作りました。一般的には、こういった冊子を「作品集」と呼ぶことがあります。でも私どもは、どんな建物も「作品」とは呼びません。「○○様宅新築工事」「○○株式会社様施設新築工事」と言います。「自分のお金で作った『作品』ではない。創作活動をしているわけではない。あくまでもお客様の建物」という考え方です。
──大和ハウスは大規模な商業施設なども手がけていて、結果的には「街づくり」をしていますよね。
学生のみなさんには、企業選びの際にその違いを見てほしい。「街をイメージしながら実際に“建物をつくる”会社」と、「開発事業者として“街のコンセプトづくり”をする会社」。結果的には似たようなビルを手掛けることになるかもしれませんが、目的や手法は異なるわけです。
不動産会社を希望する人には、「うちは少し違うよ。住宅メーカーの志、顧客志向を持って、“ものづくり”をする会社です」と説明しています。
──家づくりから始まった会社だからですか。
最初は「パイプハウス」という倉庫をつくり、創業から数年後に住宅事業に参入しました。今も根底にはハウスメーカーとしての気質が流れています。
住宅はお客様の顔が見える仕事です。私どもは新卒採用とは別に、キャリア採用(中途採用)で年間400~500人採用しています。不動産会社からの転職組には、「自分の業務が何の役に立っているのかが分かりづらいので、お客様の顔が見える仕事がしたい」という人が結構います。
住宅事業の根底にあるのは、「この方のために何とかしたい」「この人の喜ぶ顔が見たい」という気持ちです。そういう気持ちの人は、当社のほうが向いていると思います。
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2024/11/21 更新
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