人事のホンネ

株式会社NTTデータ

2017シーズン 【第7回 NTTデータ】
世の中の課題をITで解決する会社 情熱・熱意を重視

人事部人事担当部長 渡辺浩(わたなべ・ひろし)さん

2016年03月05日

■採用実績
 ――2016年春入社予定の内定者数と男女比を教えてください。
 約380人でそのうち3分の2が男性、3分の1が女性です。B to B(企業間取引)の企業のためか、男性の応募が多くなっています。文理でみると3分の1が文系でそのほかが理系、理系のうち3分の2くらいが修士です。

 ――IT業界は好況と聞きますが、採用を増やす予定は?
 5年後、15年後の年齢構成がバラバラになって困らないよう、採用数は一定にしています。また、景気はいいと言われていますが、長期的にみると国内市場はそれほど伸びないとみています。我々は国内に主力事業が多い会社ですが、それだけでは業績は大きく伸びない。世界的にはIT業界の規模は拡大しているので、グローバル事業を伸ばしていきたい。NTTデータグループ全体でグローバル事業を伸ばしていくことになると考えているので、NTTデータの採用数は当面一定でいこうと考えています。

■エントリー数
 ――2016年卒採用のエントリー数を教えてください。
 プレエントリーが数万、本エントリーは数千です。例年に比べると減りました。就活のスケジュール変更の影響が大きいと思います。今までは業界を絞らずにまずはエントリーする学生が多かったのですが、スケジュール変更で業界研究の期間に余裕ができたため、志望業界をある程度絞ってからエントリーをしていた印象を受けます。

 ――人数は減ったが本気度は上がった?
 そうですね。面接で他に受けている業界を聞くと、以前は金融や商社など他の業界を挙げる学生が多かったですが、今回は少なかったですね。受ける会社も絞り込んでいると感じました。

 ――競合は同業他社が多いですか。
 同業というと野村総研や日本IBMやアクセンチュアなどをイメージするかもしれませんが、我々はシステムインテグレーション(SI)を手がけている日立や富士通といったメーカーも同業ととらえています。

スキルは入社後、必要なのはITに関わりたい気持ち 「ビジ生」「キャリ生」で理解深めて

■採用職種
 ――採用ホームページを見ると、営業、SE(システムエンジニア)、R&D(研究開発)、ファシリティマネジメント(建築系、電力系)、スタッフ(財務、法務)の5職種が載っています。
 一見、職種別採用に見えますが、採用の95%は「SE・営業」コースで、このいずれかになる総合職です。データセンターの設計などをする「ファシリティマネジメント」と財務や法務などの「スタッフ」は専門コースで、採用は若干名です。

 ――営業、SE、R&Dは、入社時に選ぶのですか。
 入社の段階で「あなたは営業だけ」とか「SEだけ」という選び方はしません。希望を聞いたうえで、最終的には我々が配属先を決めます。営業希望でもSEに配属されることがありますが、途中でキャリアチェンジする例もいっぱいあります。私も両職種を経験しています。
 学生と話すと、SEと営業を一括で採用している会社はあまりないそうで、入社後にキャリアチェンジできるのは非常に魅力に感じるようですね。学生はまだ社会に出ていないので、何かスキルがあっても何十年間もそれだけでやっていけるか自信がない。我々も最初はSE向きと思った新入社員が2~3年後に営業にも向いているとわかったりします。仕事をしながら志向は変わるものなので、フレキシブルに対応できるようにしています。

 ――専門職以外は学部・学科は不問だと思いますが、情報工学系が多いといった傾向は?
 あまりありません。バイオが専門という人とか、宇宙衛星の研究に見切りをつけて来た人とか、いろんな人がいます。本人がやりたいかどうかですね。
 情報系を大学で専攻している学生は世の中にそれほど多くない。理系でもプログラムに触ったことない学生がいますから、そういう人でも活躍できるような仕組みを作っています。もちろん経験はないよりあったほうがいいし、あれば面接の中で評価はしますが、マストではありません。

 ――SEは、文系の学生にはハードルが高いイメージがあります。
 本人が苦手意識さえ持っていなければ問題ありません。私も根っからの文系人間ですが、入社してSEをやりました。ITに興味を持っているのは大前提ですが、システム開発のテクニカルなスキルは入社後の研修で身につけても通用するから気にしなくていい、と学生には伝えています。
 必要なのは技術的なスキルではなく、ITを使って世の中に新たな価値を提供していきたいという気持ちを持っていること。「日本や世界の生活を支えているITにぜひ関わりたい」とか、「これからの世の中にはITは不可欠なのでぜひそれを仕事にしたい」、あるいは「そばにいられない田舎のおばあちゃんをIT技術で支えたい」という話でも構いません。

 ――理系の推薦採用は多いのでしょうか。
 理系の推薦制度はあり、我々の採用基準にマッチした学生を大学から推薦してもらっています。ただ、推薦制度を利用しない理系学生も多いので、文理関係なく公募で採用します。

■リケジョ
 ――男子学生と女子学生に違いは感じますか。
 大きな違いは感じません。ITへの気持ちや情熱、それを実現する力を持とうとしているかといった点を見ますが、男女という観点はあまり気にしません。傾向としては文系の女性は男性に比べて就活に関する情報量が多いと感じます。

 ――リケジョ(理系女子)にもっと受けてほしい?
 はい。今年はどの会社もリケジョを積極的に採用しようと動いたようです。ただ今年のリケジョは、IT業界より食品業界や消費財業界への志向が強く苦戦しました。情報系専攻の女子学生は多くないうえ、理系の女子は「これをやりたい」と明確な目標をもって大学に入る人が多く、それを実現できる会社を目指すのでしょう。だからこそ長い目でも見て、IT業界の人気度を上げなければいけません。

 ――人気度アップの取り組みは?
 そもそもNTTデータという会社は学生にそれほど知られていません。就活中の学生はIT業界でもそれなりの位置づけの会社だとわかってくれていますが、就活前の学生に聞くとほとんど知名度がなく、「電話の会社?」と言われるのがオチです。だからリケジョにもそれ以外の学生にも、採用広報の初期段階では「NTTデータはITの会社です」というところからPRを始めます。IT業界は何をやっているのか、NTTデータはその中でどういう位置づけの会社なのか、早めに理解してもらいたい。そのための活動を今後もっとやらなければいけないと思っています。

■インターンシップ
 ――認知度アップにはインターンシップが大事だと思いますが、どんな内容ですか。
 「ワークショップ型」と「プロジェクト型」の2種類があり、それぞれ夏季、冬季に実施しています。参加学生はそれぞれ約250人と約50人です。
 「ワークショップ型」は5日間で、まず業界全体のことを理解してもらい、IT業界ではどんな仕事をするのかを課題創出型プロジェクトで体験してもらう内容です。グループでわいわいがやがやとワークし、社員がそこに入ってアドバイスします。「プロジェクト型」は数週間、NTTデータの実際のプロジェクトの一員として就業体験をしてもらいます。いずれも無償です。

 ――学生はどちらかを選ぶのですか。
 希望者が多く、1人が両方に参加すると他の学生の機会を奪ってしまうのでどちらかにしてもらっています。ワークショップ型はIT業界って何かわからないけどとにかく受けてみたい学生に、プロジェクト型はある程度業界のことがわかっていて勉強してきたことを仕事で生かしてみたい学生に人気です。ワークショップ型は書類選考ですが、プロジェクト型は面接も実施します。

 ――インターン経験者からの内定者は多いのでしょうか。
 志望動機を聞くと、インターン参加者はそうでない学生より業界や会社に対する理解度が深いので、内定者の中にもそれなりの割合でいます。インターンに参加しながら当社を受けなかった学生もいますが、合わないと判断した学生がいるならそれはそれでいい。インターンで会社を理解し、ファンになってくれたらうれしいという気持ちでやっています。

■スケジュール
 ――2017年卒生の採用スケジュールはまた変わります。どんな予定ですか。
 当社は経団連加盟企業なので、3月説明会開始、6月面接解禁を遵守してスケジュールを組みます。インターンは夏にも1回やりましたが、冬季インターンシップも実施します。

 ――2016年卒採用のスケジュールを振り返ってください。
 3月からの説明会は自社セミナーが約50回、就職情報会社の大規模な合同企業説明会や大学の学内セミナーにも参加したほか、いろいろなタイプの説明会に参加しました。
 説明会の主眼は、当社のことを知ってもらい、社員に会って生の声を聞いてもらうことです。自社セミナーは「ビジ生(なま)」(ビジネス生トーク)、「キャリ生」(キャリア生トーク)と名付けています。「ビジ生」はパネル形式でNTTデータのビジネスの説明に重点を置いています。「キャリ生」は10人ほどの社員がブースに分かれ、学生がそこを回って社員のキャリアを聞くスタイルです。SEも営業もR&Dもスタッフもいて、各職場の生の話をしてもらいます。自社説明会は3月から7月まで東京を中心に実施し、一部は関西や九州でも開催しました。
 女子学生向けの「ジョシ生」というイベントもあります。女性ならではのライフイベントに配慮して、働き方が見える説明を多めにしています。こちらはパネルディスカッション、座談会という内容です。女性社員がどのようにNTTデータで働き、自己実現しているかがイメージできると学生には非常に好評です。

 ――選考前に学生と個別に会う機会はありましたか。
 個別にはほとんど会っていませんが、昨季は広報開始時期が変更となったため、夏季インターンシップでの経験や思いを振り返ってもらえるように、冬季に「インターンシップ6日目」として参加学生にグループワークの機会を提供しました。

 ――OB・OGの紹介はしていますか。
 学校によってはOBが何人もいるので、学生が社員を紹介してほしいと言ってくれば紹介することもあります。学内説明会はOBが参加することも多いので、そこで自然にOB訪問の形になることもあります。興味がある学生は学内説明会に来ますから、その場で会ったOBにアクセスすることが多いですね。