人事のホンネ

ユニ・チャーム株式会社

2017シーズン 【第3回 ユニ・チャーム】
出る杭を伸ばす 大きな仕事を任せ社員が成長できる会社

ユニ・チャーム グローバル人事総務本部キャリア開発グループシニアマネージャー 清水直人(しみず・なおと)さん

2015年10月07日

ユニチャームの清水さん ■採用実績とエントリー数
 ――2015年春入社の採用人数を教えてください。
 48人です。男女比は6対4、文系・理系はほぼ半々で理系がほんの少し多い程度です。文系は営業職で、理系は商品開発、設備開発、製造技術の3職種に分かれています。学部卒生と院卒生の割合も半々です。

 ――2016年卒の採用予定人数は?
 景気や業績に関係なく一定の人数を採用するようにしているので、全職種あわせて50人前後になると思います。

 ――2015年卒採用のエントリー数を教えてください。
 いわゆる「プレエントリー」は約3万、そのうち実際にエントリーシート(ES)を出したのは2分の1程度です。
 エントリー数は少し減りました。当社は一括エントリーを採用していないのと、プレエントリーの段階で結構いろいろ書いて頂くので、志望度がそれほど高くない学生はエントリーしなくなっているのだと思います。

■採用スケジュール
 ――2016年卒採用のスケジュールは、前年とはかなり変えたのでしょうか。
 2015年卒採用では、理系は3年生の夏にインターンシップを実施しました。その後は文理とも夏から秋にかけて主要大学を回り、2月、3月に自社の大きなセミナーを開催、4年生の4月から選考開始という流れでした。説明会は営業職ですと1日に4~5回開いて各回200人くらいの学生と会っていました。
 2016年卒採用はいろいろと変えました。大学でのセミナーを3年生の12月から3月ごろまで行い、その後の説明会は規模を小さくして会う頻度を多くしました。今回から文系のインターンも始め、冬と春に開催しました。

 ――なぜ文系のインターンを始めたのですか。
 これまでは応募者を多く集めて、その中からいい人を選ぶ形で選考していましたが、文系も理系と同じように母集団はそれほど多くなくていいから、その分、会う時間、回数を増やしてしっかり見たい、と考えるようになりました。2016年卒採用から就活時期が後ろ倒しになったのでこれまでと同じやり方ではダメだということで、極端に言えば50人に会って50人採用できればいい、という考え方です。
 ユニ・チャームのインターンは参加した学生から「ほかとは違う」という評価をいただいているようなので、ぜひ参加してほしいですね。

 ――後ろ倒しの影響で、リクルーター制度をとる会社が増えましたが。
 当社ではリクルーター制度はとっていません。

 ――スケジュール変更で、学生に何か変化は感じますか。
 選考時期が後ろ倒しになったためか、昨年までと同時期の比較では学生の就活に対する考え方や態度が思ったほど習熟していないと感じることがあります。スケジュールが変わったため、一つ上の先輩の経験が参考にならなくなったという事情もあると思います。もちろん早期に就活を始めている優秀な学生もいますが。

 ――具体的には、どう習熟していないのですか。
 習熟といっても、特別な準備が必要というわけではありません。ただ、数年前ならとりあえず50社とか100社エントリーして、浅くても様々な会社の情報をとっていたと思いますが、最近はエントリー数が少ないのに、得ている情報量も少ない。深く情報を取ったりたくさんの情報に接したりして自分の価値観、判断基準をつくってほしい。まずは有名な会社、知っている会社、CMをやっている会社、何でもいいのですが、興味を持った会社について徹底的に調べるところからスタートしてほしいですね。

 ――内定を出すまでに、1人の学生に何回会いますか。
 今年は最大で7回くらいでしょうか。最終的には学生1人に役員と人事責任者の2人で会って決めます。

 ――近年、内定辞退が増えていると言われます。
 当社はここ何年も内定を辞退する学生はいません。ほかの就活をやめないとうちの内定を出さないというわけではなく、選考の過程でぞっこんにさせるんです。ぞっこんになっていない学生には、無理をせずに迷ってくださいと言います。迷いが少しでもあったら後悔するよ、と。だから学生によっては何回も会います。納得したうえで入社を決めてほしいからです。
 そもそも説明会の段階で、必ず「自分の志向と違うと思ったら無理して採用試験に臨まなくていいですよ」とはっきり言っています。当社は採用についても本音で話すので、違うなと思ったら選考に臨まないほうがみなさんの無駄な時間も減るでしょうと言っています。
 2017年卒の採用方法については、今年の採用が終わったあとで整理して改めて考えたいと思います。

理系男子に活躍の場 ESのポイントは継続性と「自分の言葉」

ユニチャームの清水さん ■ES
 ――プレエントリーの段階ではどんなことを書いてもらうのですか。
 3~4問、どういう働き方をしたいのか、会社で何をやりたいのかを聞きます。文字数はそれぞれ200~300字程度ですね。だから気軽にプレエントリーはできません。

 ――なぜプレエントリーの段階で書かせるのですか。
 ユニ・チャームに対して学生が抱きがちな「誤解」を払拭してもらうためです。ユニ・チャームは生理用品、子ども用や大人用の紙おむつといった商品を扱っていて、海外売上高が65%くらいになっている。名前の印象もあって、外資系だと勘違いしている学生が多いし、商品イメージもあってどこかフワフワ、ゆったりとした会社だと思われています。実際はコテコテの日本企業で、ガッツのあるタイプの人に来てほしいので、その誤解をまず解いてもらいたい。
 また、扱っている商品の影響もあって女性の志望者がものすごく多い。当社としては男性もたくさん来てほしいので、様々な工夫をしながら男性に受けてほしいというメッセージを発信しています。ユニ・チャームはこういう会社だと、なんとなくでもわかってくれた人に来てほしいので、会社のことを調べないと書けないプレエントリーにしています。

 ――どんな男子学生に来てほしいのですか。
 営業職志望の学生は増えてきましたが、理系の学生にも来てほしい。そもそも理系が活躍できるイメージを持たれていないのが難しいところです。
 当社は新商品を多く出しますし、他社と違って商品をつくるための製造機械も自前でつくっているので、エンジニアの活躍する場面がとても多い。でも機械をつくりたいと思ったら普通は自動車や電機などの業界に行ってしまう。そこを説明して、海外の工場にしょっちゅう出張するから面白いという話をすると、やっと興味を持ってくれる。ここまで持って行くのが大変なんです。理系なら、学部は関係ありません。

 ――そのあとES提出ですね。どんな項目がありますか。
 当社ではESを「コミュニケーションシート」と呼んでいます。学歴、留学、アルバイトなどの経験、保有資格などといった経歴に加え、「あなたがこれまでに目的をもって継続的に取り組んできたことについて教えて下さい」「あなたはどうしてユニ・チャームを志望しますか、働くフィールドとしてユニ・チャームでなければならない理由」の2項目を聞きました。

 ――ここではどんな要素を見ますか。
 何かにどれだけ続けて取り組んだかという継続性と、その中で壁にぶつかったときに自分でそれをどう打開したのか、ということです。
 あとは、書いてあることが「自分の言葉」になっているかどうかを見ます。かっこいい言葉である必要はありませんが、短時間で書いたのではなく自分の言葉になっているかどうか。読めば伝わってきます。全部しっかり読みますよ。

 ――「ユニ・チャームでなければならない理由」という項目の狙いは?
 この項目は難しいと思います。ユニ・チャームの情報を調べて知った単語を並べたら書けますが、だいたいそういうのはわかります。教科書的なきれいなESを書く人はたくさんいますが、「それで?」となる。

 ――評価のポイントは?
 名前を見なければ誰のESかわからないようなものは魅力を感じません。志望度が高くてユニ・チャームのことをしっかり研究していれば、自分の中で消化して自分の言葉で書ける。そういうESを読むと、「会ってみたいな」とワクワクします。

 ――自分の言葉で書いているかどうか、どうやって判断するんですか。
 自分の体験をふまえているかどうかですね。たとえば自分のおばあちゃんが要介護で、親が忙しくておむつ交換を自分がして、たまたまユニ・チャームの商品を使ったらよかったといったものとか。こうしたエピソードは作ろうと思ったら作れるでしょうが、面接で深く掘り下げて聞いていけば分かりますからね。
 文字数は400字くらい。書くのに3日半かかったとか、友だちに4回添削してもらったという声も聞きます。この学生は、質問項目は少ないのでちゃんと書かないとダメなんだろうなと思ったそうです。
 今年は入社前の2月に、内定者だけで企画する学生向けのセミナーを東京と大阪で開催しました。そこで彼らはみんな、「コミュニケーションシートが勝負。ここで力が入ってないとダメだから」と言うんです。我々はそこまでは言わないのですが。

 ――内定者によるセミナーとはユニークですね。
 4年前から行っていて、当社の特徴だと思います。1日3回、1回100人くらいの学生が集まります。内定者の育成にもつながるため継続しています。4月1日の段階で会社のことをわかって入ってもらえるので彼らにとってもいい機会なんです。
 就活生に対しては、ユニ・チャームの内定者ってこんなにすごいんだという憧れの姿を見せたいとも思っています。人事担当者がチェックはしますが、セミナーの内容も運営詳細も内定者で決めています。

 ――筆記試験はありますか。
 SPIとは違うものですが、国語、算数、思考力を見るテストがあります。自社セミナーを受けたあとに実施しています。国語や算数の力がある程度のレベルかどうかは確認させて頂きます。