人事のホンネ

大成建設株式会社

2016シーズン 【第9回 大成建設】
差がつく「なぜインフラ志望?」 仕事は1年目からドンと任せる

大成建設 管理本部人事部人事室課長代理 河野耕作(こうの こうさく)さん

2015年02月02日

■採用実績、職種、女性社員
 ――2015年入社の新卒採用の内定者は何人ですか。
 2015年の入社予定者数は総合職と専任職あわせて300人です。内訳は全国転勤のある総合職が267人、地域限定の専任職が33人です。
職種は、建築・土木・事務の3つに大きく分かれます。建築・土木は理系出身者対象、事務は文理問わず、全学部出身者が対象となります。

 ――2014年入社の新入社員数は?
 総合職197人、専任職25人の計222人です。

 ――今年は採用人数が急増したんですね。
 弊社の中長期的な業績予想をベースとして、必要要員数を算出し、採用人数を設定しています。2015年は昨年よりも増員しました。

 ――男女比はどうでしょう?
 2015年入社の女性は54人、総合職が26人で専任職が28人です。専任職は33人中28人が女性です。入社後のワーク・ライフ・バランスを考えて専任職を選ぶ女性が多いですね。
 2014年入社の女性は全部で29人、総合職が12人で専任職が17人です。

 ――建築・土木の仕事に携わる女性を「けんせつ小町」と呼ぶネーミングを最近、業界が発表しましたね。女性社員の数は増えているんですか。
 増えていますね。積極的に採用しようという意識もあります。子どもの数が減るなか女性の活躍は会社の成長には不可欠。男性、女性をフラットに見て、いい人にはどんどん来てもらおうというのが今の大成建設の考え方です。
 ちなみに、私が入社した2004年は同期が110人いましたが、女性社員は1名のみでした。この10年で様変わりしました。

 ――11年前は1名だけだったんですか⁉ では、専任職や総合職で女性の採用を始めたのはいつからですか。
 2000年以降ですと、総合職が2003年入社、専任職が2004年入社からです。弊社では、2007年に「女性活躍推進室」という専門の部署をつくり、女性社員の活性化対策に取り組んできました。その後室名を「人材いきいき推進室」へと変更し、現在、ダイバーシティーに関する様々な活動に取り組んでいます。

 ――会社の雰囲気もかなり変わったんでしょうね?
 変わっていますね。もう女性がいて当たり前という文化になってきたと思います。外国籍の方も毎年5人前後入るようになりました。
 
 ――地域限定の専任職ですが、地域はいくつに分かれていますか。
 専任職の採用エリアは、北海道、東北、首都圏、北信越、名古屋、関西、中国、四国、九州の9地域です。

 ――専任職を志望する男子学生もいるんですね。
 います。地域によっては地元志向が強く、地元に残って貢献したいから地域限定職という意識の方もいます。ただ女性のほうが多いですね。

 ――技術系は大学院修了者が多いのですか。
 そんなことはありません。職種によって異なりますが、全体では、学部卒のほうが院卒より多いですね。設計職などは結果として院卒が多く面接に残るということはありますが、院卒を優先して多く採ろうという意図はありません。

 ――学部学科でいうと、やはり建築と土木が中心なんでしょうね。
 技術系の職種ですと、そうなります。たとえば、建築施工職の場合、会社に入ってから「一級建築士」を取らなければなりません。現場トップの「作業所長」になるには基礎知識の習得が大切です。建築士は、建築学科もしくは土木学科を出ていないと受験資格がないんです。休日に学校に行くなどしてみんな必死で取っています。
 土木施工職に関しても「一級土木施工管理技士」という土木専門の資格を取る必要があって、これも土木の勉強をしていないと難しい。だから基本的には、土木学科、建築学科を出た方がほとんどです。

 ――理系でも建築・土木以外は難しい?
 そんなことはありません。たとえば、建築の中に「エンジニアリング」という職種があります。弊社は人工で真水を海水にする技術を持っていて内陸部の水族館などで活用されています。そういったところを担当する社員は建築学だけではなく、機械工学などの知識が必要です。建築学科・土木学科以外の理系出身社員も多く活躍していますよ。

 ――技術職の採用は、学部学科を応募の条件にしているんですか。
 ええ。募集要項に応募条件のマトリックスがあります。横に職種の一覧、縦に出身学科系統の一覧があって、該当するところが着色されています。たとえば建築施工なら建築系、土木系、その他技術系の学科が対象となり、事務なら全学科学科が対象となります。

今は仕事も異動も男女同じ 学生時代の経験で「伸びしろ」見極める

■エントリー数と女子学生
 ――エントリーの状況を教えてください。
 正確な数字は公表していませんが、エントリーシート(ES)を出す本エントリーは数千人規模です。プレエントリーは、ウェブでのエントリーが普及した2000年代後半に一気に増えた時期がありますが、ここ4~5年はほぼ横ばいです。

 ――女性のエントリーは増えていますか。
 増えています。自分の人生や将来をよく考えている、まじめな方が多い印象があります。建築や土木を学んでいる方は「先輩も周りもみんなゼネコンを受けるから自分も受ける」という人が結構多く、それが志望のきっかけになっています。ただ女性の場合は「結婚して子どもができたとき、仕事もやりたいけど家庭も大事にしたいので地域限定の専任職がいい」と、一歩先のライフプランまで考えて受ける方が多いです。

 ――入社後の配属は男女で分けますか。
 一切区分けはしていません。仕事は同じですし、異動も普通にあります。

 ――海外赴任もありますか。
 基本的に、入社間もない時期に、海外に行くことはありません。建築など現場の管理は海外も国内もやることは変わらないので、まずは国内で基礎を学び資格をとって、それを生かして海外で活躍してほしいと考えています。

■採用スケジュール
 ――2015年新卒採用はどんなスケジュールでしたか。
 12月1日にプレエントリーを始めましたが、技術系と事務系で選考フローは違います。技術系はプレエントリー後にウェブテストを受験してもらい、合格したらESの提出が可能になります。ウェブテストでは数学や国語、行動特性などについて出題し、数理系に限らず複合的に見ます。通過率は、60~70%です。2~3月にかけてESを提出してもらい、そのあと筆記試験をしました。

 ――筆記試験はどんな内容ですか。
 建築と土木で内容は違いますが、専門問題と一般問題(英語、国語、数学、時事問題など)に分けています。専門問題はかなり専門性が高いので勉強していないと難しいと思います。

■面接
 ――4月に入ってからの面接はどんな形式でしたか。
 これも職種によって違いますが、回数は2~3回。基本的には、学生1人対複数の面接官という形の個人面接です。面接官の人数は面接によって違いますが、最終面接は5人前後です。時間は、最終面接で15分から30分ぐらい。その前は部門によって違いますが、かなり時間をかけています。

 ――面接は「本部」別に実施するのですか。
 設計、エンジニアリング、施工など様々な職種があり、職種毎に異なるフローで選考を進めています。

 ――面接で見るポイントを教えてください。
 いくつかありますが、たとえば事務の面接で重視しているのは「本人の伸びしろ」です。実は、いい大学とか部活で日本一になったとか、現時点での立ち位置はあまり関係なくて、会社に入ってからどれだけ成長できるかの可能性を見るようにしているんです。

 ――将来の可能性をどう見極めるのですか。
 会社に入ると「壁」の連続で大変だと思いますが、それを自分なりに消化してステップアップしていってほしい。そのためには、今までの人生で何を考え、どう行動して困難を乗り越え、どういう結果を得てきたかという「過程」が大切です。そういう過程をちゃんと経験していれば、入社後どんな壁もそれなりに越えて、自分なりに成長していけるだろうと思うんですね。ですから、学生時代をどう過ごしてきたかを聞きます。

 ――みんな面接できちんと学生時代を語れますか。
 海外で何かに挑戦したり部活を頑張ったり、いい経験をしている方はとても多いのですが、それを自分でうまく振り返ることができていない方が多い。海外に行った、部活を頑張ったという事実はあまり重要ではありません。なぜ海外に行き、そこでどんな困難があって、どう自分なりに考え、どう行動したのかを知りたいんです。でも、そこを突っ込んで聞くと、自分の中で整理できていず「そう言われると、ちょっとわかりません」という回答になることが結構多い。非常にもったいない。逆にそこをちゃんと答えられる方には説得力を感じます。自分のこと、自分が社会に出てからのことをよく考えている方がいいですね。

 ――今年、そんな学生はいましたか。
 今年の内定者の中に「学生時代に頑張ったのはコーヒーショップでのアルバイト」という人がいます。世間によくいる普通の大学生ですが、なぜコーヒーショップのアルバイトをやって、どんなことを考えて、どう行動してというストーリーを言えるんですよ。

 ――どんなストーリーがあったのでしょう?
 東日本大震災の時、混乱する中でコーヒーショップの店員が「みなさん落ち着いてください」とコーヒーを無料で配っていた。それに感動してアルバイトを始めたそうです。仲間や先輩もいい人で、自分も社会に貢献できる仕事に就きたいと考えた。そこで震災のことをいろいろ調べていたら大成建設は震災復興のためにいろいろやっていることを知り、それで受けた……という話でした。できすぎたストーリーなんですが、うまく自分なりに考え、「ああ、この学生は社会でこういうことをやりたいんだな」というイメージを湧かせてくれた。こういう学生に出会うと、いいなと思います。でも、そういうストーリーはみんな持っていると思います。