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――三菱地所は社名からは仕事内容がわかりにくいですよね。どういう会社で、何をしているのか、わかりやすく教えてもらえませんか。
伊藤さん 当社は総合ディベロッパーといわれる業界に属しています。業務内容をひと言で言うと「街づくり」です。街には住宅・オフィスビル・商業施設・ホテル・リゾートなど、様々な建物や施設があります。それらの開発、運営管理を通じて、皆さんの生活の場である街をつくり、育てている。それが我々総合ディベロッパーの仕事です。
――スケールの大きな仕事ですね。建物をつくって終わりではないんですね。
伊藤 当然、つくって終わりではありません。出来上がった建物は使用していただいて初めて意味を持つものです。分譲物件なら買ってくれる方を探す、賃貸物件なら借りて事業をしてもらうテナントを探す。また、建物というのは建てるまでより、建ってからの方がずっと長い。その長い期間にわたって、建物の快適な状況を保ち、価値を高めていく「運営管理」の仕事も非常に重要です。その中でも当社は、街全体を事業のフィールドと捉え、エリア全体としての価値向上を目指す「エリアマネジメント」を重視している点に特徴があると評価されています。
――東京・丸の内の開発が有名ですが、丸の内地区はもともと三菱地所の土地なんですか。
伊藤 歴史を紐解いていくと、かつて丸の内は大名屋敷が立ち並ぶ街でした。明治維新後は陸軍が練兵場(れんぺいじょう)として使っていたようですが、1890年、明治政府が払い下げを行った際に当時の三菱社が購入し、その後、三菱社の不動産セクションが独立化して三菱地所という会社ができて、丸の内一帯の土地を譲り受け、街づくりを行ってきました。とはいえ、三菱地所が所有している土地建物は、丸の内全体の約3分の1ですので、他の地権者とも共同しながら一緒に街づくりを行っています。
――横浜・みなとみらい地区も三菱地所の開発ですね。
伊藤 もともと三菱重工業の造船ドッグがあったエリアです。区画整理で現在の街区割りに整備された当地区を他の地権者や行政と共同しながら街をつくってきました。当社の開発した横浜ランドマークタワーが街づくりに与えた影響は非常に大きいでしょうし、その他の開発も含め、民間最大の地権者として主導的な役割を果たしてきたとは言えるかもしれませんね。
――開発した後のビジネスモデルは?
伊藤 開発した建物を保有し続けて、入居テナントからの賃料収入で投資を回収するケース、開発した建物を売却して投資を回収するケース、大きく分けて二つのビジネスモデルがあります。どちらが良い、悪いというわけではなく、物件の立地や市況、ポートフォリオの状況などを見ながら、判断を行っていきます。
――三菱地所本体の社員数は670人ほどとあまり多くない一方、グループ会社がたくさんあって合わせると8000人規模ですね。どう役割分担しているんですか。
伊藤 街づくりに関わる全てを三菱地所単独で行う訳ではありません。ある部分はグループ会社が担い、ある部分は三菱地所が、ある部分は一緒に、それぞれの専門性や特性を生かしながら仕事をしています。三菱地所本体で行っていた仕事が分社化されて誕生したグループ会社も多数あります。たとえばビルの運営管理をする「三菱地所プロパティマネジメント」という会社もそうですし、マンション分譲事業を担っている「三菱レジデンス」という会社は、三菱地所の住宅開発部門とM&A(買収、合併)した分譲マンション大手の藤和不動産などが一緒になって誕生した会社です。
山田さん 不動産業界って裾野が広いんです。開発、管理、仲介などいろんな仕事がある。扱う不動産の種類もオフィスビル、マンション、ホテル、ゴルフ場などさまざま。それぞれ専業のグループ会社がそれぞれの業界で勝てる体質をつくっていく。当社の社員は少ないですが、グループとしての一体感をつくる役回りも担っています。
――すると、三菱地所本体の役回りはグループ会社を束ねて統括することですか。
伊藤 機能が分かれている部分もあれば、三菱地所のみが担当している仕事もあるので単純に統括というわけではありません。現在当社が新卒で採用しているのは総合職なので、当社の携わるあらゆる仕事に関わる可能性があります。グループ会社に出向してそれぞれのプロフェッショナルとして働くケースもある。ある仕事で得た経験を、他のセクションに行って生かす。そういう横串的な役割があります。
――採用は、グループで一緒にしているのですか。
伊藤 それぞれ別に行っています。三菱地所グループ内で様々な会社が新卒採用を行っていますので、ぜひ興味のある分野の会社について調べてみてほしいと思います。併せて、グループ内の繋がりも意識していただけると嬉しいです。…続きを読む