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――2014年度入社予定の採用実績を教えてください。
今の内定者の人数は公表出来ませんが、今年の4月に入社したのは136名。そのうち総合職が123名、アート職が13名です。男女比は7対3くらい。この10年ぐらいは女性が3割。電通は結構厳しいイメージがあるので応募者も男性の方が少し多い。理系は2~3割。残念なことに理系の学生の選択肢になかなか入れてもらえないんですよね。
――理系の職場はあるんですか。
特に技術職的な職種はありませんが、全ての部署で活躍してますよ。なかでもクリエーターやプランナー(戦略部門)には理系出身者が多くいます。理系の人は仮説の立証やPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを使い慣れていますから。大学院卒は2~3割です。大卒と院卒で区別はしていません。
――エントリーの状況は?
プレエントリーの人数は万単位ですが、これを増やすために採用広報に力を入れています。人材の多様性を求めていることもありますので。最近、採用広報はその企業のブランドイメージに影響するくらいに大きな存在になっています。就活生は社会人予備軍ですよね。たとえ入社に至らなかった学生でも社会人になってから電通と一緒に働いてみたいと思ったり、電通に転職を考えたりするかもしれない。計り知れない影響があると思います。
エントリー人数は千単位。エントリーの課題はコピペできない内容にしています。本気じゃないと書けないようにややこしく。
――なぜ多様な人材が必要なのですか。
電通でも広告以外のビジネスが増えています。広告には興味なくても、優秀で「コミュニケーションビジネス」に向いている人はいるはずです。そういう人たちにも受けてほしい。最近の学生は、「自分は理系だから」とか、「自分なんかとても受からないから」と決め付けがちです。そういう思い込みをせずにぜひ興味を持っていただきたいと思います。
――そのための戦略は?
人を動かす心のツボを「インサイト」と言うんですが、僕たちはなんとかして就活生のインサイトに迫ろうとしています。例えば、「女性のための働き方を説明します」というよりは「女子会やります。スタッフも全員女性、講演する人も司会も女性、女性だけの説明会です」とした方が学生に響く。「理系でも電通には仕事がありますよ」というよりは「理系の学生と理系の社員だけを集めたイベントやります」の方が分かりやすい。いろんなやり方で、就活生の心にどうしたら響くかを考えるようにしています。
以前の採用メッセージは「ヒトノココロヲウゴカスシゴト、ナンデモアリ。」でした。それを発している会社が就活生の心を動かせなかったら、「電通もできてないじゃん」って言われる。これが一番恐ろしい(笑)。自ら首を絞める話でもありますが、「自分たちにできなかったら学生に響かないよね、キレイゴトを言っても」っていうことですね。
――「就活生の心に響く」PRには、いつから取り組んでいるのですか。
2009年くらいからです。我々は電通のビジネスを「コミュニケーションビジネス」と呼ぶべきだと考えているんですが、それに見合ったユニークさがあってしかるべきで、いままでのように通り一辺倒のものを作って、説明会をやって、エントリーって言うんじゃなく、就活生、あわよくば世間一般に「電通って面白い会社だな」と思ってもらえるようなスペシャルな企画をみんなで考えていく。1回目は「就活生の夢」という企画で、広告会社に入ったら何をしたいのか10文字で応募してもらいました。電通ビルのすべての窓のブラインドを開け閉めして、ビルの壁面を使って就活生へのメッセージを発信して朝日新聞さんでも取り上げていただきました。
そのような、普通の採用広報じゃない電通ならではの仕掛けを毎年やっています。(ちなみに昨年は面談に臨む全ての学生に自己紹介をするためのオリジナル名刺を用意し、渡しました)ただ、どんなに評判が良くても同じことは二度やらないから結構きついですよ。今年はまだプランニング中です。あと一番大事なのは上から目線は当然、下から目線でもなく、いかに就活生と同じ高さの目線でコミュニケーションがとれるかですね。
――総合職で入ると、実際の仕事は主として営業ですか。
7500人の社員のうち約1/4が営業ですが、今年から新入社員の初任配属はなくなりました。新聞局、ラジオテレビ&エンタテインメント局などのメディア担当セクション、ネットを中心にしたデジタル・ビジネス局、コピーライターやプランナーがいるクリエーティブプランニング局(CRP局)などで数年経験を積んで自分の強みを持ってから営業に行くようにしています。営業はある程度仕事が分かってからやった方がいいという考え方です。
――クリエーティブ部門を志望する学生も多いのでしょうね。
もともとクリエーティブ志望の人はそれほど多くはありません。新入社員研修を受けてから、クリエーティブをやりたいという人が増えます。あとは、映像、スポーツビジネス、営業とか研修を通じていろいろな仕事に興味を持つようになります。グローバルビジネスに興味がある人もいます。一般の学生からは「電通はソフトバンクのCMを考えるくらいすごいアイデアがないとダメなんじゃないか」と、勝手に高いハードルがあると見られてしまう。よほどすばらしいアイデアの持ち主でなければ受けることすら出来ないんじゃないかと。そういうイメージを勝手に持たれてしまうのは残念です。
――実際は必ずしもそうではない、いろんなタイプがほしいということですか。
実際いろんな人がいるし、いろんな仕事があります。アイデアは大事ですが、その出し方は後から学べます。新入社員研修の初日は「アイデア発想演習」というプログラムからスタートしますし、経験値を積むことである程度のレベルには達することが出来るものだと思います。
――アート職は主に美大出身者ですか?
基本的には美大の出身者ですね。あとは一般の大学のデザイン系の学部で学んだ方なども入社しています。
――最近の新入社員はどんなタイプが多いのでしょう?
一見いい学生が多いですね。おとなしくて。生意気な学生が減ってきているということでしょうか。あとは、ちょっと諦めが早い傾向があるのかもしれない。
――本当は生意気な人がほしい?
そこは難しくて、今の電通のビジネスに合った人だけを採れば良いという訳ではなくて、将来を見据えて未来の電通のビジネスを担える人材を採らないといけない。将来の電通がどうなるかはよく分かりませんが、世の中も変化するだろうし、変化に強い会社になるために、いろんな人がいないと。人材の多様性を求めていますが、そのバランスが難しいと感じます。…続きを読む